日本口腔顔面痛学会雑誌
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4 巻 , 1 号
December
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依頼総説
  • 今村 佳樹, 岡田 明子, 野間 昇
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_3-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    国際疼痛学会は,神経障害性疼痛を「体性感覚神経の傷害または疾患によって惹き起こされる痛み」と定義している.組織障害性の刺激による侵害受容線維の活性化や神経の終末が刺激されなくても活動電位が生じることで痛みが生じうる.国際疼痛学会の神経障害性疼痛分科会は,神経障害性疼痛の診断基準ならびに診断のためのフローチャートを公表している.これに従い,痛みの分布や病歴から神経障害を伴う病変や疾患が疑われるときは,体性感覚検査や血液検査,疾患に見合った検査を行って確定すべきである.マギル疼痛質問票は原因不明の疼痛の性状を引き出す上で有用な方法であろう.罹患部位を明らかにするには,ブラシの刷掃やピンプリックなどの定性感覚検査を用いる.感覚鈍麻,アロディニア,痛覚過敏,ディセステジア(不快な異常感覚)は神経障害に伴って特異的に見られる感覚の変化である.感覚鈍麻は,細いフィラメントや綿花の毛先を用いて調べることができる.アロディニアは,ブラシや綿棒を刷掃することで観察する.痛覚過敏はピンプリックで見られる.歯内療法後の神経障害性疼痛を診断する際に除外すべき病態としては,フェネストレーション,外傷性咬合および咀嚼筋からの関連痛がある.
  • 山田 和男
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_13-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    目的:神経障害性疼痛の治療に用いられる向精神薬について概説する.
    研究の選択:神経障害性疼痛の治療に用いられる向精神薬のうち,ランダム化比較試験によって有効性が確立しているものや,神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインにて推奨されているものを中心に紹介する.
    結果:神経障害性疼痛に対しては,ノルトリプチリンやアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬,デュロキセチンなどのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,ガバペンチンやプレガバリンなどのカルシウム・チャンネルα2-δリガンドによる治療が,エビデンス・レベルの高い薬物療法である.
    結論:ノルトリプチリン,アミトリプチリン,デュロキセチン,ガバペンチン,プレガバリンは,神経障害性疼痛に対して有効である.また,神経障害性疼痛と疼痛性障害の鑑別も重要である.
  • 村岡 渡
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_23-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    目的:口腔顔面領域の神経障害性疼痛に対する診断から薬物療法までの実際を2例の症例報告をもとに解説する.
    症例の概要:症例1:57歳,女性.1年半前,某口腔外科にて上顎前歯部口蓋側歯肉の血管腫と診断され切除術を受けた.術後,創部は治癒したが,数か月かけてぴりぴりとした痛みが生じるようになり当科を受診した.症例2:62歳,女性.某歯科医院において左下第2小臼歯部にインプラント埋入術を受けた.手術後,左下唇およびインプラント周囲の歯肉の知覚鈍麻が継続していた.その後,さらに接触痛が生じるようになったため当科を受診した.両症例とも,疼痛部位に異常感覚(Allodynia,Dysesthesia)を伴っており,外傷性神経障害性疼痛と診断した.プレガバリンによる薬物療法により症状は改善した.
    考察:神経障害性疼痛の診断には,異常感覚(Allodynia,Dysesthesia)の発現を確認することや診断的局所麻酔を用いることが有効であった.また,治療は,神経障害性疼痛の薬物療法のガイドラインを参考にして,副作用を確認しながら有効な薬剤を選択することが重要であると考えられた.
    結論:口腔顔面領域での神経障害性疼痛は,適切な診断および薬物療法を行うことによって症状の改善を得ることが可能であると考えられた.
  • 坂本 英治, 風間 富栄
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_29-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    口腔領域の慢性疼痛に悩む方は少なくない.そのひとつに神経障害性疼痛のひとつである帯状疱疹後神経痛症例を経験した.
    症例:67歳の女性.左側前額部,鼻根部,上眼瞼部,頬部に水疱形成に伴い,自発痛,接触痛が出現したため近医皮膚科受診し,帯状疱疹の診断にて抗ウイルス薬,非ステロイド消炎鎮痛薬での治療を受けた.その後,近医ペインクリニック科にて星状神経節ブロック療法,薬物療法を受けられていたが症状に変化がないため受診された.薬物療法では抵抗性があるため,星状神経節ブロックを行ったところVAS 50-70/100が20/100に軽減した.しかしその効果が持続しないため,プレガバリン75-150mg/日を併用することで効果の持続を認めた.
    考察:診断治療に苦慮する神経障害性疼痛に対してはその病歴等から解剖学的に妥当な神経損傷を伴うエピソードと感覚異常などの所見を伴う.このような痛みは神経障害性疼痛の可能性が高く,プレガバリンは有用なことがある.本症例でもプレガバリンにて疼痛軽減の持続を認めた
    結論:適切な神経障害性疼痛の診断下にてプレガバリンは有用なことがある.
総説
  • 武田 守, 坪井 美行, 北川 純一, 中川 量晴, 岩田 幸一, 松本 茂二
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_35-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    三叉神経系における神経損傷/炎症動物モデルを用いた,これまでの多くの研究において,一次感覚ニューロンの興奮異常が引き金となり二次ニューロン以降の疼痛伝達路に影響を及ぼすことが知られている.これらの変化が病的疼痛の一つであるアロディニアの原因となることが示唆されている.一次感覚ニューロンの過興奮に複数のタイプの電位依存性イオンチャネルが関わることが知られているが,中でも,電位依存性Kチャネルは,侵害受容ニューロンを含む興奮性細胞の静止膜電位調節の重要な生理的因子として知られている.電位依存性Kチャネルの開口は膜電位を過分極側へシフトさせ,結果としてニューロンの興奮性を低下させるため,いくつかのタイプの電位依存性Kチャネルは疼痛治療における分子標的の候補として期待されている.本総説では,三叉神経領域における神経因性/炎症性動物モデルにおいて共通の変化として見出された電位依存性Kチャネルの変調について,特に三叉神経節ニューロンの興奮性と電位依存性のKチャネルの変調との関連について焦点をあてて解説する.また電位依存性Kチャネルがアロディニア発現を防ぐ治療の分子標的になり,Kチャネル開口薬が治療薬として奏功する可能性についても議論する.
原著論文
  • 塚越 香, 西山 暁, 木野 孔司, 杉崎 正志, 羽毛田 匡
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_47-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    目的:目的:心理社会的要因と習癖行動要因が顎関節症の機能時痛にどのような影響を与えているのかを,構造方程式モデリングを用いて検証すること.
    方法:企業就労者を対象に行った質問票による調査によって得られた2203名のデータを解析対象とした.質問票は顎関節症関連症状に対する4質問と心理社会的要因(ストレス感,不安感,抑うつ感,慢性的な全身疲労感),上下歯列接触癖,睡眠時ブラキシズムに起因する起床時症状に関する6質問の合計10質問(5段階評価)から構成されている.得られたデータは無作為に2群に分け,それぞれ探索的因子分析と構造方程式モデリングを用いた検証的因子分析を行った.
    結果:2203名のうち362名(16.4%)が顎関節症と判定された.構造方程式モデリングの結果から,習癖行動要因は顎関節症関連疼痛に対して影響を及ぼし,心理社会的要因は顎関節症関連疼痛への直接的影響は少なく,習癖行動要因に対する影響が大きかった.
    結論:ストレス,不安感,抑うつ感や慢性的な全身疲労感などの心理社会的要因は上下歯列接触癖や睡眠時ブラキシズムなどの習癖行動の増加を引き起こし,それにより顎関節症の機能時痛の増加を引き起こす可能性が示された.
症例報告
  • 安藤 祐子, 山崎 陽子, 新 美知子, 冨澤 大佑, 井村 紘子, 細田 明利, 川島 正人, 嶋田 昌彦
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_57-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は67歳の女性で,当科初診時には,左側頬粘膜と舌尖部の自発性灼熱痛を訴えていた.さらに,痛みは刺激物で増強した.13年前,口腔内の荒れ感を自覚するようになり,上顎義歯装着後,症状は痛みに変った.5年前の本院口腔外科初診時に,口腔扁平苔癬が疑われ経過観察となった.その後,カンジダが検出されため抗真菌薬をしばらく処方されていた.当科初診時には,舌乳頭の萎縮が認められ,ガムテストでは6.8ml/10分間で,細菌検査ではカンジダが検出された.血液検査では軽度の鉄欠乏性貧血が考えられた.以上から,口腔カンジダ症,口腔乾燥症および鉄欠乏性貧血と診断した.抗真菌薬の処方によりカンジダは消失したが,頬粘膜と舌の痛みは消失しなかった.そこで,立効散の鎮痛作用を期待して処方したところ,舌尖部を除き頬粘膜の症状は軽減し,痛みの範囲は縮小した.立効散開始2ヶ月後,刺激物摂取時以外に自発痛は消失し,また,痛みの頻度が減少した.その後,鉄欠乏性貧血は改善されなかったが,口腔内の症状は初診時に比べ軽減した.
    考察:本症例では鉄欠乏性貧血は改善されなかったが,立効散を用いた治療により,口腔内の症状は軽減した.
    結論:立効散は器質的病変に由来する口腔粘膜痛の対症療法として有用であると考えられた.
  • 原 節宏, 滑川 初枝
    2011 年 4 巻 1 号 p. 1_63-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/05/11
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は33歳女性.主訴:約1年前より顎部,頬部,側頭部,頚部,肩部の自発痛,約6ヶ月前より舌の辺縁部の自発痛およびしびれ感,目の奥の痛み,味覚障害を自覚.整形外科,脳神経外科,耳鼻咽喉科,眼科を受診するも異常所見は認められず,歯科にて加療するも改善なく,当院顎関節症診療センターを受診した.初診時の味覚感度は塩味,酸味,苦味について舌全域で4~6を示し,味覚の低下が認められた.また,舌に強い圧痛が認められた.CMI領域はIIであった.筋膜性疼痛症候群の診断のもと,頚部・顎部・側頭部・顔面部・舌を含む口腔部の筋に対して阻血(虚血)性圧迫,および圧搾マッサージを施術し,運動療法と行動治療を併用した.治療開始後約4ヶ月で舌の症状,味覚障害が改善,約1年でその他の症状も全て消退した.
    考察:舌筋の筋膜性疼痛,および胸鎖乳突筋,内側翼突筋,顎舌骨筋をトリガーポイントとする関連痛が舌に生じている場合は長期にわたる灼熱性疼痛やしびれ感が舌に生じる例があり,局所に原因がある口腔内灼熱性疼痛症候群であるにもかかわらず,一次性と診断することになりかねない.
    結論:阻血(虚血)性圧迫と圧搾マッサージは舌筋における筋膜性疼痛の非侵襲的治療法として有用であった.また,二次性口腔内灼熱性疼痛症候群の要因としては認識されていないものの,筋膜性疼痛症候群による舌痛症状を局所的要因のひとつとして考慮するべきと思われる.
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