日本口腔顔面痛学会雑誌
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最新号
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原著論文
  • 片浦 貴俊, 杉本 是明, 飯久保 正弘, 庄司 憲明
    2019 年 12 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:痛みは歯科臨床において頻繁に遭遇する身体的ストレスであるが,視床下部‐下垂体‐副腎系を介した内分泌反応に及ぼす影響については未だ不明な点も多い.本研究では,舌へのcapsaicin刺激が視床下部‐下垂体‐副腎系に及ぼす影響について,血漿ACTHおよびコルチコステロンとストレス応答ホルモンであるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)のへテロ核RNAおよびmRNA発現を指標として検討した.
    方法:実験動物は,9〜10週齢の雄性Wistar系ラット54匹を用いた.吸入麻酔により非動化後,舌尖部左側にcapsaicin溶液(capsaicin群)またはその溶媒のみ(vehicle群)を注射した.注入5,15,30および60分後(各n=6)に断頭後,躯幹(体幹)血液と視床下部室傍核を採取した.また注射および吸入麻酔の無いコントロール群(n=6)も設定した.血漿ACTHおよびコルチコステロン濃度はECLIA法およびEIA法により測定し,CRH hnRNAおよびmRNA発現量はreal time PCR法にて定量した.
    結果:capsaicin注入30分後において,血漿ACTHはvehicle注入30分後群に比べて有意に上昇した.また,capsaicin注入60分後において,血漿コルチコステロンはvehicle注入60分後群に比べて有意に上昇した.視床下部のCRH hnRNA発現はcapsaicin注入後15分で3.2倍に増加した.一方,CRH mRNAはcapsaicin注入後60分で2.6倍に増加した.
    結論:舌へのcapsaicin刺激は,CRH遺伝子発現を介し,視床下部‐下垂体‐副腎系を活性化することが示された.
  • 内田 貴之, 小見山 道, 飯田 崇, 西村 均, 石井 智浩, 大久保 昌和, 下坂 典立, 小出 恭代, 榊 実加, 増田 学, 神山 ...
    2019 年 12 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:日本大学松戸歯学部付属病院を紹介にて受診した患者の中で,紹介元で原因不明とされたが,実際の診断が歯原性疾患であった症例(特に臨床診断が歯髄炎)について検討を行った.
    方法:2016年1月〜2018年12月までの3年間,紹介内容が「原因不明」であった患者(原因不明患者)を調査対象とした.
    結果:調査期間中に受診した患者は13,152名,紹介患者数2,147名で,そのうち原因不明患者は287名であり,原因不明患者の主訴は76.3%が口腔顔面痛であった.原因不明患者は総患者,紹介患者に比べ有意に女性が多かったが,年齢分布に特徴は認めなかった.原因不明患者のうち原疾患が,歯原性疾患と診断された症例は107例で,歯髄炎が32例で最も多かった.歯髄炎の診断に至らなかった原因として,歯冠修復物直下(5例)もしくは補綴物内部(2例)のう蝕が7例,深在う蝕の処置後の歯髄炎が6例,歯根破折が5例などであった.また非歯原性疾患と診断されたのは131例で,最も多かったのが顎関節症29例,次いで舌痛症25例,神経障害性疼痛10例であった.
    結論:原因不明で紹介された患者の40%以上が歯原性疾患であった.痛みの原因が歯原性疾患であれば苦痛を早期に除去できる可能性が高く,口腔顔面痛の診断においては,まず歯原性疾患を確実に鑑別することの重要性が再確認された.
  • —星状神経節ブロックとの比較—
    下坂 典立, 神山 裕名, 大久保 昌和, 石井 智浩, 内田 貴之, 成田 紀之, 和気 裕之, 小見山 道, 牧山 康秀, 渋谷 鑛
    2019 年 12 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:低出力レーザー光処理(low-level laser treatment:LLLT)の星状神経節近傍照射(stellate ganglion area irradiation:SGR)による,頬部の血流量と表面温度の変化を星状神経節ブロック(stellate ganglion block:SGB)の効果と比較検討した.
    方法:対象は健康成人ボランティア21名とした.LLLTのSGRはLumix2を用い,904〜910nmの波長,最大出力45W,平均出力0.3W,照射時間30分,総エネルギー486Jの条件で右側第6頸椎横突起部に皮膚上から照射した.SGBは右側第6頸椎横突起に1%メピバカイン塩酸塩6mlの投与で行った.LLLTのSGRおよびSGB前の5分間の血流量の平均をベースラインとし,処置後5分間ごとの平均値を測定した.表面温度は,処置前をベースラインとし,処置後5分ごとに30分まで測定した.コントロールは同ボランティアで,照射部位にアタッチメントを接触させるのみで同条件下に血流量および表面温を測定した.
    結果:健康成人ボランティアへのLLLTのSGRは,有意な頰部血流量増加および表面温上昇をもたらした.LLLTのSGRに比べてSGBは,25分後から血流量の有意な増加と10分後から表面温度を有意に上昇させた.
    結論:LLLTのSGRはSGBと比較すると効果が弱いものの,一定の効果が認められたことから,SGBによる副作用を避ける必要のある患者には積極的に行うことを推奨したい.
  • 関根 尚彦
    2019 年 12 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:バーニングマウス症候群(BMS)は,主に舌に生じる原因不明の慢性疼痛疾患である.BMSの発症は主に閉経後の女性に多くみられることから,性ホルモンを介した内分泌機能異常が影響していると考えられているが,発症機構に関しては全く明らかにされていない.そこで,性ホルモンの変化と舌痛との関係を調べることを目的として本研究を遂行した.
    方法:卵巣を摘出した雌性ラット(OVX)と,舌にTri-nitro Benzene Sulfate(TNBS)を塗布したBMSモデルラットを作製し,舌における機械刺激と温度刺激に対する舌ひっこめ反射閾値(TWT)を測定した.また,OVXの舌上皮をHE染色で観察し,炎症性変化の有無を観察した.
    結果:OVXと卵巣摘出したTNBSラットの機械刺激に対するTWTは有意に低下したが,温度刺激では変化しなかった.OVXラットの舌表皮にはリンパ球の集積がほとんど認められず,炎症が生じている可能性は低いと思われた.
    結論:卵巣摘出やTNBS処置により,機械刺激に対する舌の痛覚過敏が生じ,性ホルモンがBMS発症に関与している可能性が示唆された.BMSの発症機構には,炎症の関与はないと思われるが,舌神経線維のさらなる検索が必要と思われた.
症例報告
  • —論理からみた患者への説明—
    佐久間 泰司
    2019 年 12 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    症例の概要:54歳女性.抜髄後の難治性疼痛に対し,歯科医師から「歯を抜かないといけないような悪いところが無い」と言われたにもかかわらず納得せずに抜歯を希望した.最終的に他院で抜歯を受けたが,非歯原性歯痛と思われた.
    考察:非歯原性歯痛は歯痛を生じうる疾患であるが,執拗に抜歯を希望されることが少なくない.患者が抜歯を希望するのは,歯痛の原因が歯にあると患者自身が思ったからである.なぜそう思うのであろうか.
    「歯が痛い.歯が悪いと思う.」と患者が言った場合を考える.「歯が痛い」は前提(症状)であり,「歯が悪い」は結論(診断)である.症状と診断の間に「歯が痛いのは歯が悪いからだ」「歯が痛い時は歯が悪いことが多い」「歯が悪いと歯が痛くなる」などという患者の理由づけが省略されている.この3つの理由づけは同じように見えるが,演繹,帰納,アブダクションに相当する.それぞれの違いに応じて患者への説明が変わる.
    結論:患者(一般市民)は妥当性のある推論を使って説明したとしても,理由づけが経験や知識から得られる考えと一致しないと受け入れない.
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