ヒメシャクナゲ連,シラタマノキ連,ネジキ連,オキシデンドラム連を構成する13属のうち12属・41種の花粉形態を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察した.これら4連の花粉は3溝孔(類孔)型・偏球形の花粉粒からなる四集粒という点で共通し,ステノパリナス(狭範花粉型)であった.花粉形態形質はこれら連のレベルでの分類システムと明瞭に対応しているという訳ではなかったが,ヒメシャクナゲ連,シラタマノキ連,オキシデンドラム連の四集粒においては,各花粉粒は通常密に合着しているが,ネジキ連(特にネジキ属)の四集粒では各花粉粒が遠心極側に突出している種が多い.密に合着しているヒメシャクナゲ連の四集粒はセプタム(隣接する4花粉粒間の壁)が薄く穿孔がある点で特徴づけられる.各連の遠心極域の外壁表面模様は粗いしわ模様型から平滑型まで変異し,しわにある「二次模様」は縞模様で,その縞模様は不明瞭から明瞭なものまで,微細なものから粗いものまである.表面模様全体と二次模様の明瞭さに基づいて,外壁は2つの主型:R型とS型,6亜型,さらに7つのより下の型に分けられた.しかし,各連の中においてはこれら外壁表面模様や定量的な花粉形質は連続的につながって変異していた.それでも時に外壁表面模様はある属でほとんど変化がなく安定している:イワナンテン属(S2とS2**型),アガリスタ属(R2-3とR4型)やネジキ属(R3, R3*, R3**型).外壁表面模様とともに,四集粒の合着程度やサイズ,セプタムの厚さ等の花粉形態形質は,シラタマノキ属,アガリスタ属,ネジキ属などの属内分類体系を明らかにする上で有効な形質であることが分かった.これまでのツツジ科全体の花粉形態研究を基にすると,二次的な縞模様を持った外壁表面はスノキ亜科全体を特徴づける花粉形質と思われる.
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