日本認知症の人の緩和ケア学会誌
Online ISSN : 2760-7038
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  • 認知症の人の「その人の生きる希望」を支える緩和ケアの実践とこれから
    鈴木 みずえ
    2026 年1 巻2 号 p. 1
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
  • 中西 三春
    2026 年1 巻2 号 p. 2-8
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・BPSD 対応は緩和ケアにおいて中核的課題であり、非薬物療法を第一選択とする全人的アプローチが国際的に推奨されている。

    ・BPSD 介入は単一ではなく、背景要因に基づくマルチモダル・多職種介入が世界的標準となっている。

    ・スウェーデンの BPSD レジストリを原型として、日本版 BPSD ケアプログラム、オランダの STIP-Method など、各国でケアプログラムの開発と実装が進展している。

    ・各国の実装戦略は制度依存的に異なるが、時間確保・人材育成・管理者の関与など共通課題が存在する。

    ・国際共同研究では、データ共有の倫理的課題と解析手法の標準化が重要であり、AI 活用も含め今後の発展が期待される。

  • 鈴木 みずえ, 平原 佐斗司, 小川 朝生
    2026 年1 巻2 号 p. 9-20
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・近年、BPSD はチャレンジング行動(Challenging Behavior)とも呼ばれ、認知機能障害等によって生じた、困った・つらい状況に対し、本人なりに変えようと努力した結果、現れた行動としてとらえられるようになった。

    ・認知症の人がBPSD を発症すると、「認知症になると何もわからなくなる」という社会の偏見も加わり、本人の問題にされてしまっていることが課題の根底にある。

    ・一般・急性期病院におけるBPSD は高頻度に認められる一方、せん妄や身体疾患、治療内容などが複雑に関係する。BPSD だからこうすればよい、という定型的な対応はできず、その全身状態の確認から丁寧に要因を探ることが重要である。

    ・地域におけるBPSD への実際のアプローチに関しては、特効薬はない。薬剤は「もろ刃の剣」であり、基礎疾患と副作用を考慮して慎重に選択され、漫然とした投与は避けるべきである。

    ・BPSD を認知症の人が発するメッセージとして受け止め、丹念に情報を収集し、総合的にアセスメントし、多職種チームで包括的な対策を検討し、確実に実行すること以外に、BPSD に苦しむ本人の苦痛を和らげ、地域での暮らしの継続を支える特別な方法はない。

  • 成本 迅
    2026 年1 巻2 号 p. 21-25
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・入院中の BPSD は、環境変化、せん妄、疼痛、排泄障害、睡眠障害、薬剤、家族分離などが重なって表出する苦痛・不安・混乱のサインとしてとらえる。

    ・初期評価では、安全確保と並行して、症状の発症時期、日内変動、誘因、軽減要因を把握し、せん妄や身体疾患、薬剤性要因などの可逆的要因を優先して検索する。

    ・ケアの基本は非薬物的介入であり、環境調整、コミュニケーションの工夫、生活リズム、排泄、疼痛、睡眠への支援を、家族からの情報と多職種連携に基づいて個別化する。

    ・向精神薬は、非薬物的介入で不十分な場合や切迫した安全確保が必要な場合に、標的症状、利益・不利益、再評価時期、中止基準を明確にした SDM に基づく時間限定の治療試行として用いる。

    ・進行期・終末期では、検査・治療の継続だけでなく、安楽、栄養・水分摂取、療養場所、鎮静の要否など について、本人の推定意思と尊厳を軸に目標を再設定する。

  • 新川 祐利
    2026 年1 巻2 号 p. 26-30
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・在宅医療における BPSD の緩和ケアは終末期に限定されず、診断早期から全経過にわたり、本人と家族 を含めた包括的ケアとして位置づけられる。

    ・BPSD は単なる問題行動ではなく、生物学的要因、心理的要因、社会的要因が複雑に関与する苦痛の表現であり、行動の意味を生活史や家族関係の中で理解する姿勢が必要である。

    ・在宅医療における BPSD 対応の要点は、身体的要因・環境要因・心理社会的要因・介護者の状態を統合 的に評価する多面的アセスメントにあり、とりわけ介護者の状態は結果であると同時に増悪因子として双 方向的に作用する。

    ・ケアの基本はパーソン・センタード・ケアを軸とする非薬物療法である。家族への教育支援、生活環境の 調整、その人らしさを支える活動の提供、介護サービスの適切な導入を通じて生活の持続可能性の維持を 目標とする。

    ・薬物療法は苦痛軽減と安全確保を目的とする補助的手段として、本人の苦痛や安全確保の必要性に応じて 慎重に用いる。同時に、ACP に基づく継続的な意思決定支援と家族ケアを統合しながら在宅療養と終末 期ケアを支える。

  • 山下 真奈美, 福光 由希子
    2026 年1 巻2 号 p. 31-34
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
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    ・認知症ケア加算や制度整備に伴い、急性期病院においては身体拘束に頼らないケアの実践が模索され始め、医療現場における身体拘束への考え方は大きく変化した。

    ・当院では認知症ケアチーム発足時、介入患者の約 60%に身体拘束が実施されており、身体拘束 3 原則に基づくアセスメント不足が課題であった。この課題に対し、多職種での認知症ケアチーム活動を基盤に、身体拘束最小化を目的とした組織的取り組みが段階的に導入された。

    ・ 日常的なラウンドとカンファレンスを通じて、患者中心のアセスメントと「拘束解除を前提とした検討」へと意思決定プロセスが変化したことが、実践の質向上に寄与した。

    ・リンクナース育成、研修、身体拘束体験などの教育的介入と、データの可視化・共有により、スタッフの意識変容と主体的な実践が促進された。

    ・これらの継続的取り組みに加え、OT ラウンドなど新たな介入の導入により、身体拘束実施率は有意に低下し、拘束に頼らないケアが組織的に推進された。

  • 藤本 遼
    2026 年1 巻2 号 p. 35-38
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・せん妄は転倒や自己抜針などのリスクだけでなく、要因が探索されないまま対応が遅れると症状遷延や入院延長につながるため、早期発見と適切なケアが課題である。

    ・高齢患者のフレイル予防の一環として、「食べる・動く・しゃべる」の 3 つの柱を掲げたポスターを作成し、フレイル予防の実践を、低活動せん妄の予防・早期発見の視点として日常ケアに組み込んだ。

    ・さらに、患者の見当識を補い、理解を確認することを目的に、リアリティ・オリエンテーションの院内統一の可視化ツールを作成し、多職種およびリンクナースと連携して組織全体を巻き込んだ取り組みを行っている。

    ・これらの取り組みにより、スタッフのせん妄への意識向上や日常ケアの質の均てん化につながる可能性が示され、患者の安心感向上や低活動せん妄への早期介入の契機となった。一方で、現時点ではこの取り組みの効果や有効性は主観的評価にとどまっており、今後は客観的指標による有効性検証と、組織全体への教育・普及体制の強化が課題である。

  • 花野 郁子
    2026 年1 巻2 号 p. 39-42
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
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    ・認知症研修認定薬剤師として、地域での啓発活動(認知症サポーター養成講座と相談会)や電話相談を通じて、地域住民の認知症理解の促進と早期発見・早期対応につなげる取り組みを行っている。

    ・電話相談を契機とした症例では、服薬管理の困難さに着目し、用法の簡素化や一包化、自己注射の回数調整などを医師と連携して行い、アドヒアランスと基礎疾患のコントロール改善につなげた。さらに薬剤師がスクリーニング(TOP-Q)を実施し、医師への情報提供と受診勧奨を行うことで軽度認知障害の早期発見に至り、本人の不安軽減と継続的な支援体制の構築につながった。

    ・ 在宅独居の症例では、服薬管理困難や視力低下、生活環境の乱れに対し、多職種と連携して服薬支援方法(色分け、1 日分の手渡し等)を調整し、服薬継続を可能とした。さらに薬物療法の再評価と適正化により BPSD が軽減し、本人の意思表出や生活機能の改善につながり、在宅生活の継続支援と要介護度の改善につながった。

  • 雜賀 匡史
    2026 年1 巻2 号 p. 43-45
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
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    ・認知症高齢者は疼痛や不快症状を言語化できず、BPSD やせん妄悪化につながることも多い。行動変化の背景に疼痛が潜んでいないかを検討し、観察所見や多職種情報に基づいて客観的に判断することが求められる。

    ・日常観察と家族・多職種との情報共有により、疼痛のパターン・頻度・関連要因を踏まえて薬剤調整や環境調整を行うことが有効である。

    ・疼痛評価スケールは補助的活用にとどめ、観察・薬学的評価・生活支援・多職種連携を統合した介入により、症状緩和と患者・家族の QOL 向上を図ることが重要である。

  • 吉際 俊明
    2026 年1 巻2 号 p. 46-49
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
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    ・療養病床の重度認知症高齢者では関節可動域制限(拘縮)が進行しやすく、清拭や更衣など基本ケアの困難化や苦痛、尊厳の低下につながるため、早期かつ継続的な予防が重要である。

    ・意思表明が困難な患者に対しては、「できないこと」だけでなく「できること」に着目し、残存機能を活かした活動機会を提供しながら自律と尊厳を支える視点が求められる。

    ・当院では「最期の姿からそれまでの対応を評価する」という考えのもと、拘縮のない自然な姿で最期を迎えることを目標に、身体機能と生活の両面から支援を行っている。

    ・理学療法士は運動プログラムの提供と生活内での活動機会の確保を担い、看護・介護職と連携して他動運動や環境調整を行い、関節可動域の維持を図っている。また、離床と余暇活動を組織的に提供することで活動性と社会参加を維持している。その結果、約 75%の患者が拘縮の少ない状態で最期を迎えたが、入院中の発生例もあり、今後の課題である。

  • 村島 久美子
    2026 年1 巻2 号 p. 50-52
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

    ・作業療法士は、医療保険、介護保険、行政の枠組みの中で地域に広く配置され、活動している。

    ・在宅生活においては、認知症の進行段階にかかわらず、本人の生活背景や価値観を踏まえ、「本人らしい生活の継続」を目標に介入する。

    ・認知症初期段階の事例では、記憶・注意障害により本人の役割(料理)が中断される課題に対し、動線の単純化などの環境調整により作業遂行を改善し、役割継続と家族の安心につなげた。

    ・重度認知症の事例では、拘縮による身体的苦痛とコミュニケーション低下による孤立に対し、関節可動域訓練とかかわり方の再構築(本人中心の対話)を組み合わせて介入した。その結果、苦痛の軽減と関係性の再構築が促され、尊厳を保った在宅生活の継続につながった。

    ・作業療法士は、在宅生活で困りごとを有する認知症の人に対して、物理的・人的環境の調整と本人の声を起点としたかかわりを通じて、本人が自分らしく暮らし続けていくことを支援する役割を担う。

  • 谷向 仁
    2026 年1 巻2 号 p. 53
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/15
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