薬剤疫学
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17 巻, 1 号
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原著
  • 神垣 有美, 大森 崇, 小田嶋 博, 佐藤 俊哉
    2012 年 17 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    目的:本邦でベータ2刺激薬(beta 2 agonist:BA)は急性気管支炎に対して,「気道閉塞障害に基づくこと」を前提として効能効果を持つが,近年,小児の急性気管支炎や風邪に対して処方されているとの報告があり,処方実態把握は重要な課題である.そこで,本研究ではレセプトデータベースを用いて小児の急性気管支炎に対するBA処方実態を明らかにし,小児科医へのインタビュー調査にて,その処方理由等を探索することとした.
    研究デザイン:レセプトデータベース研究
    方法:株式会社日本医療データセンターのレセプトデータベース調査,およびエキスパートインタビュー調査を実施した.2005年~2008年の間で,0~18歳に該当した約10万人を対象とした.上気道感染症,インフルエンザおよび急性気管支炎の全ての新規診断「Visit」を抽出し,新規診療開始日から21日間追跡した.新規診療開始日までに喘息ガイドラインに則った抗喘息薬の処方がある41,064 visitsを喘息群とし,それ以外の321,223 visitsを非喘息群とした.エンドポイントは新規診療開始日から21日間のBA処方とし,年齢階級別に2群間でBA処方割合を比較した.さらに,小児科医10名にインタビューを実施し,BAの処方理由等を聴取した.
    結果:3~5歳の全対象者のうち,BAが年1回以上処方された割合は49.9%であった.急性気管支炎におけるBA処方割合は,3~12歳では喘息群,非喘息群ともに,ほぼ同じであった.さらに,喘息群のBA処方割合は年次減少傾向,非喘息群のBA処方割合は不変であった.インタビュー調査にて,BA処方根拠は気管支収縮が関与する気道閉塞,もしくは分泌物による気道内腔の狭小化を防ぐためとの意見に大別された.
    結論:本データベース調査から,急性気管支炎におけるBA処方の現状が明らかになり,BA適正使用を推進するためには,特に非喘息患者に注目する必要があると考えられた. (薬剤疫学2012;17(1):1-12)
特集/ ISPOR 日本部会共同企画 医療経済評価に関する諸問題 ~理論的・倫理的側面からの検討~
活動報告
  • ―米国と日本の市販後研究の比較と日本の安全性監視計画への提言に関するタスクフォースからの最終報告―
    古閑 晃, 甲斐 靖彦, 景山 茂, 久保田 潔, 津谷 喜一郎, 西 利道, 前田 玲, 政田 幹夫, 宮川 功
    2012 年 17 巻 1 号 p. 55-66
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    目的:日米での市販後安全性研究を比較することにより,日本で最良の安全性監視の方法を提言する.
    方法:2010 年に日本で新たに承認された医薬品のうち,すでに米国では市販されている12品目を対象とした.まずは米国で承認された時点での薬剤に対する市販後の安全性の懸念と,それに対応して企業に研究実施が求められるPostmarketing Requirementを抽出し,日本については同じ薬剤で審査の段階で重点調査項目として議論された安全性の課題と,それに対応する市販後の安全性の研究について検討した.
    結果:両国とも安全性の課題については共通することが多かったものの,対応する研究については,米国では安全性の懸念に応じた個別の研究であるのに対して,日本では通常の製造販売後調査や全例調査といった定型的なパターンであった.日本での理想の市販後安全性研究の提案については,比較群を必要とする研究は,学会,第三者研究機関に委ねるべきものや,全国的ながん登録の構築が望まれるものなど,企業独自の努力ではその達成に限界があるものがほとんどであった.
    結論:日本でも2013年から医薬品リスク管理計画が実装されることとなるが,その際には国際的に通用する科学的な安全性監視計画の実施が患者の安全性確保につながる.これまでの市販後の調査を基盤として,日本でも実施可能な方策を産官学で検討していくことが喫緊の課題である.(薬剤疫学 2012;17(1):55-66.)
日本薬剤疫学会 第17回学術総会記録 会長講演
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