薬剤疫学
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早期公開論文
早期公開論文の2件中1~2を表示しています
  • 前川 拓也, 北出 貴章, 原 梓, 漆原 尚巳
    論文ID: 31.e1
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー 早期公開
    電子付録

    目的:SGLT–2阻害薬(SGLT–2i)の医薬品リスク管理計画に示された重要な潜在的リスクを臨床実態下にて評価した.

    研究デザイン:大規模レセプト特定健診データベースを用いた,SGLT–2iとDPP–4阻害薬(DPP–4i)の単独処方患者をそれぞれ曝露群,対照群とする後ろ向きコホート研究.

    方法:DeSCヘルスケア株式会社から提供を受けたレセプト・特定健診データベースにて,2014年4月から2021年8月に2型糖尿病(T2DM)の傷病コードを有し,かつSGLT–2iまたはDPP–4iを単独処方された患者を対象集団とした.傾向スコアマッチング(PSM)および逆確率重み付け(IPTW)により投与群間の比較妥当性を確保した.アウトカムを肝障害,悪性腫瘍,骨折,心血管系疾患,急性膵炎,急性腎障害,下肢切断の診断コードより特定しイベント発生とした.Cox比例ハザードモデルにてハザード比(HR)を推定し,5通りのバイアス分析を実施した.

    結果:PSM対象集団では,DPP–4i群に対するSGLT–2i群のHR(95%信頼区間[CI])は,急性腎障害0.63(0.28–1.44),骨折0.75(0.58–0.95),肝障害0.85(0.67–1.07),心血管系疾患0.87(0.71–1.05),悪性腫瘍1.15(0.88–1.51)および急性膵炎1.51(0.71–3.19)であり,下肢切断の発生は認めなかった.IPTW対象集団では,DPP–4i群に対するSGLT–2i群のHR(95%CI)は, 急性腎障害0.72(0.47–1.10),骨折0.76(0.67–0.86),肝障害0.91(0.80–1.02),心血管系疾患0.86(0.78–0.94),悪性腫瘍1.04(0.92–1.18),急性膵炎1.81(1.24–2.64)および下肢切断2.89(0.69–12.1)であった.悪性腫瘍全般の発生リスクについては,PSMおよびIPTW集団のいずれも有意な結果を示さなかったが,臓器別解析の一部ではIPTW集団で有意な結果が認められた.バイアス分析でのみ,急性腎障害および肝障害のHRの有意な減少,下肢切断のHRの有意な増加が認められた.

    結論:DPP–4iの使用と比較し,SGLT–2iの使用は,重要な潜在的リスクである悪性腫瘍全般でのリスク増加を示さなかったものの,一部臓器別に有意なリスク増加または減少がみられた結果は,骨折,心血管系疾患のリスク減少,急性膵炎のリスク増加を示唆する結果とともに,最適化された研究デザインによる検証が必要である.

  • 小城 一翔, 中田 美津子, 内山 和彦, 高木 智久, 手良向 聡
    論文ID: 31.e2
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/11/21
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景:潰瘍性大腸炎治療における第1選択薬は5–ASA(5–aminosalicylic acid)製剤であるが,副作用により5–ASAの継続投与が困難になる,5–ASA不耐と呼ばれる症状を起こす患者が1割程度存在し,その発生頻度は経年的に増加傾向である.5–ASA不耐が起きるリスクが高い患者を事前に予測することができればより安全な治療を目指すことができるが,潰瘍性大腸炎患者に対する5–ASA不耐発生の予測モデルはほとんど存在しない.

    目的:本研究の目的は,リアルワールドデータを用いて日本人における潰瘍性大腸炎治療時の5–ASA不耐発生の臨床予測モデルを開発し,そのモデルの内的妥当性確認を行うことである.

    方法:株式会社JMDCが提供するJMDC保険者データベースの2005年1月から2023年3月までのデータを用いて予測モデルを構築した.潰瘍性大腸炎の診断名が付与され,5–ASA内服薬の処方があった15歳以上の日本人を解析対象とした.5–ASA内服薬が初めて調剤された日をIndex dateと定義し,Index dateからイベント(5–ASA不耐)発生までの日数をアウトカムとしたCox比例ハザードモデルを用いて予測モデルを構築した.予測子は,臨床専門家の意見とCox回帰分析の結果を参考に選択した.判別能はオプティミズム(ブートストラップ法により推定)補正済みC統計量,較正は較正プロットにより評価した.

    結果:解析対象集団は9,520例(イベント数:931)となった.選択された予測子は,性別,年齢,5–ASA内服薬の種類,5–ASA内服薬の処方量,Index dateから遡って1年以内の6つの疾患(腸管感染症,インフルエンザおよび肺炎,鉄欠乏性貧血,胃食道逆流症,胃潰瘍,急性膵炎)の診断の有無であった.構築した予測モデルのオプティミズム補正済みC統計量は0.5934であった.較正プロットより,較正は良好であった.

    結論:本研究で構築した臨床予測モデルは,潰瘍性大腸炎治療時に5–ASA不耐を起こしやすい患者を見極めるのに役立ちうる.

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