背景:潰瘍性大腸炎治療における第1選択薬は5–ASA(5–aminosalicylic acid)製剤であるが,副作用により5–ASAの継続投与が困難になる,5–ASA不耐と呼ばれる症状を起こす患者が1割程度存在し,その発生頻度は経年的に増加傾向である.5–ASA不耐が起きるリスクが高い患者を事前に予測することができればより安全な治療を目指すことができるが,潰瘍性大腸炎患者に対する5–ASA不耐発生の予測モデルはほとんど存在しない.
目的:本研究の目的は,リアルワールドデータを用いて日本人における潰瘍性大腸炎治療時の5–ASA不耐発生の臨床予測モデルを開発し,そのモデルの内的妥当性確認を行うことである.
方法:株式会社JMDCが提供するJMDC保険者データベースの2005年1月から2023年3月までのデータを用いて予測モデルを構築した.潰瘍性大腸炎の診断名が付与され,5–ASA内服薬の処方があった15歳以上の日本人を解析対象とした.5–ASA内服薬が初めて調剤された日をIndex dateと定義し,Index dateからイベント(5–ASA不耐)発生までの日数をアウトカムとしたCox比例ハザードモデルを用いて予測モデルを構築した.予測子は,臨床専門家の意見とCox回帰分析の結果を参考に選択した.判別能はオプティミズム(ブートストラップ法により推定)補正済みC統計量,較正は較正プロットにより評価した.
結果:解析対象集団は9,520例(イベント数:931)となった.選択された予測子は,性別,年齢,5–ASA内服薬の種類,5–ASA内服薬の処方量,Index dateから遡って1年以内の6つの疾患(腸管感染症,インフルエンザおよび肺炎,鉄欠乏性貧血,胃食道逆流症,胃潰瘍,急性膵炎)の診断の有無であった.構築した予測モデルのオプティミズム補正済みC統計量は0.5934であった.較正プロットより,較正は良好であった.
結論:本研究で構築した臨床予測モデルは,潰瘍性大腸炎治療時に5–ASA不耐を起こしやすい患者を見極めるのに役立ちうる.
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