薬剤疫学
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原著
  • 小林 哲, 柴田 寛子, 石井 明子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 24 巻 2 号 p. 43-52
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    [早期公開] 公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    目的 : Infliximab は TNFα を標的とし,慢性炎症性疾患の治療に用いられるキメラ型モノクローナル抗体である.点滴静脈注射で投与され,注入に伴う反応 (infusion related reaction, IRR) を引き起こすことがある.近年,カナダにおける疾患登録データベースを用いた研究で,抗ヒスタミン薬の前投与と IRR の発現頻度とは関連することが示された.本研究では infliximab を被疑薬の一つとしてカナダ,米国,英国,および日本から報告されていた個別症例安全性報告を用い,抗ヒスタミン薬の併用と IRR の比例報告比との関連が確認できるかどうかを検討した.

    デザイン : ケースコントロール研究

    方法 : WHO の個別症例安全性報告データベースである VigiBase を使用した.IBM SPSS version 24 を用いて,国別に 1:1 の傾向スコアマッチング解析を行った.主要なエンドポイントは,infliximab に対する IRR の併用薬との関連を評価することであった.

    結果 : Infliximab を被疑薬の一つとするカナダ,米国,英国,および日本の個別症例安全性報告のうち,患者の年齢または性別が不明な症例を除外した報告は,それぞれ35,729,19,095,4,618,および 1,565 例であった.IRR はそれぞれ2,293,1,427,303,および 69例の報告があった.カナダにおける抗ヒスタミン薬の併用は IRR の比例報告比と有意に関連していた (p<0.001).米国 (p<0.001),英国 (p<0.001),および日本 (p=0.007) でも抗ヒスタミン薬併用が IRR の比例報告比と有意に関連していた.

    結論 : 個別症例安全性報告データベースを用いたケースコントロール研究により,infliximab による IRR の比例報告比と抗ヒスタミン薬の併用との関連は,カナダと米国,英国,および日本で確認された.

  • Tomomi KIMURA, Toshifumi SUGITANI, Takuya NISHIMURA, Masanori ITO
    原稿種別: research-article
    2019 年 24 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    Objective: The Charlson and Elixhauser comorbidity indices (CCI and ECI, respectively) are widely used to study comorbid conditions but these indices have not been validated in Japanese datasets. In this study, our objective was to validate and recalibrate CCI and ECI in a Japanese insurance claims database.

    Methods: All hospitalizations for patients aged≥18 years discharged between January 2011 and December 2016 were randomly allocated to derivation and validation cohorts. Predictability for hospital death and re-admission was evaluated using C statistics from multivariable logistic regression models including age, sex, and individual CCI/ECI conditions at admission month or the derived score in the derivation cohort. After stepwise variable selection, weighted risk scores for each condition were re-assigned using odds ratios (CCI) or beta coefficients (ECI). The modified models were evaluated in the validation cohort.

    Results: The original CCI/ECI had good discriminatory power for hospital death: C statistics (95% confidence interval) for individual comorbidities and score models were 0.845 (0.835-0.855) and 0.823 (0.813-0.834) for CCI, and 0.839 (0.828-0.850) and 0.801 (0.790-0.812) for ECI, respectively. Modified CCI and ECI had reduced numbers of comorbidities (17 to 10 and 30 to 21, respectively) but maintained comparable discriminatory abilities: C statistics for modified individual comorbidities and score models were 0.843 (0.833-0.854) and 0.838 (0.827-0.848) for CCI, and 0.840 (0.828-0.852) and 0.839 (0.827-0.851) for ECI, respectively.

    Conclusions: The original and modified models showed comparable discriminatory abilities and both can be used in future studies using insurance claims databases.

企画/ディオバン事件のもたらしたもの
  • 鍵村 達夫
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 2 号 p. 65-66
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
  • 桑島 巖
    原稿種別: 論説
    2019 年 24 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    ディオバン臨床研究不正事件とは,製薬会社ノバルティス社が発売する高血圧治療薬ディオバンの有効性を検証した 5 つの大規模臨床試験において論文不正が明らかになるとともに社員が統計解析などに深く関与していた事件である.本事件ではノバルティス社元社員が逮捕され,裁判になるという臨床研究の分野では極めて異例の事態にまで発展した.

    裁判は,元社員の不正な関与と改ざん行為は認定したが,論文作成は法律で定める広告には当たらないとの解釈によって 1 審,2 審とも無罪となった.

    本事件を契機として臨床研究法が制定されたが,事件の根幹にあるものは製薬企業と研究者の医療モラルの低下である.

  • 安原 浩
    原稿種別: 論説
    2019 年 24 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    高血圧治療薬につき多施設型臨床試験の結果を治療効果があるように装った虚偽のデータを提供するなどして研究者に学術雑誌に論文を発表させたとして,製薬会社と元社員が薬事法違反として起訴された事件について,東京地裁平成29年3月16日判決,控訴審の東京高裁平成30年11月19日判決は,製薬会社とその元社員をいずれも無罪とする判断を示した.その理由とするところは,薬事法は広告目的で虚偽または誇大な記事を記述した場合に限り処罰する規定であるから,学術論文の発表は該当しない,というのである.しかしながら,薬事法の規定が広告目的に限るという解釈に疑問があり,かつ本件の学術論文発表の経緯からみて広告目的と認定できる余地があるから,判旨には賛成できない.
  • 手良向 聡
    原稿種別: 論説
    2019 年 24 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    問題となったディオバンの臨床試験に共通するのは,1)データマネジメントの専門家を配置したデータの質管理体制が構築されていなかったこと,2)臨床試験の方法論(科学性・倫理性,実施体制などのあらゆる側面を含む)を熟知した試験統計家が参画していなかったこと,3)イベント判定の盲検性や中間解析の独立性を担保する手順書などが存在せず,試験事務局の医師や統計解析担当者などが,試験途中に重要なデータを自由に閲覧・編集できる状況にあったことである.我が国の生物統計家のコミュニティである日本計量生物学会は,2013 年に「臨床研究に関する日本計量生物学会声明」を公表するとともに「統計家の行動基準」を策定し,2017 年からは試験統計家認定制度を開始した.大学・研究機関などがスポンサーの(医師主導治験以外の)臨床試験では,標準業務手順書が整備されておらず,試験実施体制も責任の所在も明確でないものが多くある.また,統計コンサルティングと称して,臨床試験の標本サイズ算出やデータ解析の技術指導を行っているだけで試験統計家を名乗っている人が少なからず存在する.ディオバン事件を教訓として,大学・研究機関および学会は,社会的な責任を自覚した信頼できる試験統計家を育成し,その社会的地位を確立するという使命を担うべきである.

  • 永井 洋士
    原稿種別: 論説
    2019 年 24 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2019/08/27
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    万人が願う医療の進歩には,新たな治療法の開発だけでなく,今ある治療法の最適化が必要なことは言うまでもない.両者を推進する手段が臨床試験であり,その成果は直接医療に還元されるが故,目の前の患者に不利益が無ければよいものではなく,未来の多くの患者にも不利益があってはならない.そのためには,実施する研究の科学性と信頼性を十分に確保する必要があり,国民に誤ったメッセージを与える研究は国民福祉上の脅威である.

    であるにもかかわらず,偽りのデータに基づいて論文が作成され,それを利用して大々的に自社薬の販売促進が図られたのがディオバン事件であった.当時,国やマスコミは犯人探しと企業の責任追及に躍起だったが,そのような問題の発生を許した背景として,わが国にはアカデミアで行われる臨床試験の信頼性を確保する科学の基本的ルールが欠如したことをよく認識せねばならない.

    同事件をきっかけに,ようやくわが国でもアカデミア臨床試験の信頼性に関する議論が始まり,2018 年の臨床研究法の施行に至ったのである.臨床研究法によって,アカデミア臨床試験の信頼性はある程度向上するであろう.しかしながら,本法は外部との整合性や連携を十分に考慮しない法規制であり,本法の下で行われた研究でどんなに良い成果が得られても,それを具体的な国民利益に還元する仕組みがない.すなわち,薬機法との連携が無いため,本法下の臨床試験でどれだけ良い成績が得られても,医薬品・医療機器等の承認や適応拡大にはつながらないのである.換言すれば,この法律には臨床研究の成果を積極的に医療と国民福祉の向上に役立てようとする姿勢が見えないのである.そもそも臨床研究の原点は,たとえ目の前の患者は救えなくても,次の患者は救いたいという医療者の「心」である.今一度,その原点に立ち返り,医師とそれを支える医療者の「心」に報いる制度の確立を願って止まない.

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