1. この小論は, 体育という名を冠した科学の中に,「体育教育学」というものを加え, その領域の確立を求めようとするものである. 2. これまで, 「体育教育学」に類するものは,「体育(科)教育法」 または,「教材研究」 という名のもとに, 教師になるものにとっての必修科目の一つとなっていた. しかし, そのあつかわれ方が, いわゆる teaching method の手ほどきという程度のものであって, 真の意味で専門家によって研究されたものではなかった. 科学でもないが, 実践でもない, というようなもので, 極めて経験主義的なものであった. 3. このような状況を抜け出して, それを科学的なものにまで高めようとしたのは, 体育関係諸科学の成果をふまえて, 体育という教育的な営みを一層進めようとする意図があってである. 体育科学はますます隆盛になろうとしているのに, 学習指導や教授法そのものが一向に進歩しないとすれば, 折角の科学が活かされないことになる. 体育の実践では, 体育諸科学を直ちに応用できるものもないわけではないが, 多くは, それらをもう一度, 一定の場で学習している具体的な状況におろしていかなければならない. その作業をするのが, ここでいうところの 「体育教育学」 のねらいとするところである. 4. この意味での研究が進み, 体系化が可能となれば, 既存の体育科学の成果は, いっそうその光りを放つことになろう. では, 誰が, そのような方法でこれにとりくむか. これらは, 今後の問題になろう.
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