ピアノ打鍵動作における手指運動を張力, 加速度, 筋の放電量, 目標テンポに対する時間の遅れと進み等から分析した. 打鍵動作は, ピアノの鍵盤モデルを使用して, 基本練習曲のテンポ(60, 240, 480/min), 強弱(ff, mf, p), 奏法(legato, staccato)等を, 熟練者と未熟練者に行わせ, 検討した. 打鍵時の指張力は, 熟練者が未熟練者に比べてffからpの指力発揮範囲が広く, 速いテンポになると, 総体的に指張力が低下するが, 熟練者においては, その減少率が小さかった. 指の振り上げ時の加速度量は, 強度に比例して大きい値を示したが, テンポによる顕著な差はみられなかった. 目標テンポに対する時間遅れと進みは, 未熟練者では熟練者に比べて広範囲の分散を示した. 各筋群の積分放電量は, 熟練者ではテンポが速くなるに比例して放電量も増加したが, 未熟練者では, テンポが速くなっても変化しなかった.
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