高校運動部員430名(男子293名, 女子137名)を対象に部活動適応感に関連する心理社会的要因を質問紙を用いた縦断的な調査を実施した. そして重回帰分析を用いて部活動適応感に影響する心理社会的要因を分析した結果, 以下のことが明らかになった. 1) 部活動適応感の実態は, 中不適応感が2.1%(男子1.0%, 女子4.4%), 弱不適応感が7.9%(男子7.2%, 女子9.5%), 弱適応感が42.8%(男子40.0%, 女子48.9%), 中適応感が39.3%(男子42.7%, 女子32.1%), 強適応感が7.9%(男子9.2%, 女子5.1%)であった. 2) 男子の部活動適応感に対する心理社会的要因15の影響度を5%有意水準をめどにした変数増減法による重回帰分析で分析した結果, 「部活動変化出来事・ポジティブ」, 「部活動変化出来事・ネガティブ」, 「特性不安」, 「達成動機」, 「部活動・ソーシャル・サポート」の5要因が選択された. その重相関係数はR=0.585(R^2=0.342)であった. 標準偏回帰係数から要因の規定力の方向をみると, 部活動変化出来事・ポジティブではポジティブと感じる変化出来事が多いほど, 部活動変化出来事・ネガティブではネガティブと感じる変化出来事が少ないほど, 特性不安では不安が低いほど, 達成動機では高いほど, そして部活動・ソーシャル・サポートではサポートが多いほど, 部活動適応感を高めると解釈される. 3) 女子の部活動適応感に対する心理社会的要因15の影響度を5%有意水準をめどにした変数増減法による重回帰分析で分析した結果, 「生活変化出来事・ネガティブ」, 「特性不安」, 「日常生活・コーピング・スキル・逃避的」の3要因が選択された. その重相関係数はR=0.322 (R^2=0.103)であった. 標準偏回帰係数から要因の規定力の方向をみると, 生活変化出来事・ネガティブではネガティブと感じる変化出来事が多いほど, 特性不安では不安が低いほど, そして日常生活・コーピング・スキル・逃避的ではその傾向が低いほど, 部活動適応感を高めると解釈される.
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