本研究の目的は, 体育の授業における特性としての目標志向性と有能さの認知が動機づけに及ぼず影響についてDweckのモデルを検証することであった. 特性としての目標志向性には, 課題志向性と自我志向性がある. 対象は, 中学生958人であり, 特性としての目標志向性, 有能さの認知と行動の強度・持続性, 内発的動機づけという尺度を用いて評価した動機づげの調査を実施した. 課題志向性得点, 自我志向性得点を基準に対象を4つのグループに分け, 課題志向性のみが中央値以上を示したものを「課題志向性」,自我志向性のみが中央値以上を示したものを「自我志向性」とした. 各動機づけ尺度に関して2(特性としての目標志向性)×2(有能さの認知)×2(性)の3要因の分散分析を行った. 主要な結果は, 次の通りである. 1) 行動の強度・持続性においては, 課題志向性は, 自我志向性よりも, 有能さの認知の高い 生徒は低い生徒よりも, 男子は女子よりも行動の強度・持続性が高いことか認められた. しかし, 特性としての目標志向性×有能さの認知の交互作用は有意ではなかった. 2) 内発的動機づげにおいては, 課題志向性は, 自我志向性よりも, 有能さの認知の高い生徒は低い生徒よりも, 男子は女子よりも内発的動機づけが高いことが認められた. そして, 特性としての目標志向性×有能さの認知の交互作用は有意であった. この交互作用は, 課題志向性を持つ生徒よりも自我志向性を持つ生徒の方が有能さの認知の影響が大きいということを示していた. すなわち, 自我志向性を持ち, 有能さの認知の低い生徒は, より内発的動機づげが低いということを示していた. したがって, この結果は, Dweckのモデルを支持するものではなかった.
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