日本小児血液学会雑誌
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10 巻, 2 号
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  • 金子 安比古
    1996 年 10 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 周 燕文, 駒田 美弘, 薛 恵良, 張 小麗, 坂井 温子, 東 英一, 櫻井 實
    1996 年 10 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    腫瘍壊死因子受容体 (TNF-R) の発現について検索した.顆粒球, B細胞, T細胞にはTNF-Rp55, TNF-Rp75ともに, 単球にはTNF-Rp75が発現していた.Interleukin-2 (IL-2) にて刺激したT細胞では, TNF-Rp55およびTNF-Rp75の発現が著しく増強された.白血病細胞においては, TNF-Rp55の発現は51例中42例に, TNF-Rp75の発現は51例中32例に陽性であった.TNF-α添加によるDNA合成の抑制はALL細胞12例中9例に誘導された.しかしANLL細胞については有意なDNA合成の抑制 (17例中9例) と充進 (17例中2例) を示す症例があり, 多様なTNF-αの作用が見られた.1) TNF-Rp55のみを発現する白血病細胞において, TNF-αにより増殖が抑制されたこと, 2) TNF-Rp75に対するブロッキング抗体によっては, TNF-αによる増殖抑制は影響をうけなかったことより, 白血病細胞におけるTNF-αの増殖抑制作用はTNF-Rp55を介したシグナルにより誘導されることが示唆された.
  • 堀井 由博, 杉本 徹, 黒川 聡子, 江口 春彦, 生野 茅子, 岡村 純, 田坂 英子, 宮崎 澄雄, 澤田 淳
    1996 年 10 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    胞巣型横紋筋肉腫での特異的な染色体異常としてt (2;13) (q35;q14) やt (1;13) (p36;q14) の転座があることはよく知られている.最近になって, それらの転座によってPAX3-FKHRやPAX7-FKHRキメラ遺伝子産物が生じることが示された.われわれは, RT-PCR法を用いて横紋筋肉腫でのPAX3-FKHRやPAX7-FKHRキメラ遺伝子産物の発現を検討した.PAX3-FKHRは7種類のヒト横紋筋肉腫細胞株のうち2株 (KP-RMS-DHとSCMC-RM2) で認められ, また2例の胞巣型横紋筋肉腫の腫瘍でも検出された.一方, PAX7-FKHRは今回の検討したサンプルでは検出されなかった.RT-PCR法によるPAX3-FKHRの検出感度は非常に高く, HL60とKP-RMS-DHの混合細胞では10-7オーダー (HL60/KP-RMS-DH=1/10-7) でも検出可能であった.このようにRT-PCR法によるキメラ産物の検討は, 胞巣型横紋筋肉腫の迅速診断に有用な手段であり, 骨髄血や幹細胞移植血中の腫瘍細胞の同定にも役立つ方法である.
  • 朴 永東, 安井 昌博, 吉本 寿美, 茶山 公佑, 下野 卓爾, 岡村 隆行, 井上 雅美, 八木 啓子, 河 敬世
    1996 年 10 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    重篤な急性GVHD (graft-versus-host-disease) が予想される非血縁者間移植症例に対し, FK506によるGVHD予防を試みた.その予防効果, 副作用など使用上の問題点について報告する.非血縁者間移植を施行した, 12例を対象とした.2例にCsA (cyclosporine) を中心としたGVHD予防を行い, 10例にFK506によるGVHD予防を試みた.当初, 移植前日よりFK506を0.1mg/kg/dayで24時間持続点滴静注で投与開始したが, 副作用のため投与を途中で断念した症例を経験した経緯から, 0.05mg/kg/dayの初期量に変更し, 有効全血血中濃度を20~40ng/mlと設定し投与量の調節を行った.III度以上の急性GVHDの発症を, FK506非投与・投与断念群では5例中3例 (60%) に認めたが, FK506投与継続群では7例中2例 (29%) に認めた.副作用として, FK506投与を試みた全例に腎障害を認めた.FK506の投与直後に血中濃度の過度な上昇による腎障害を認めた症例が多かった.その他, 降圧剤投与を必要とした高血圧を7例に, インスリン投与を必要とした高血糖を2例に, 痙攣重積を1例に認めた.FK506投与症例での骨髄の回復は良好で好中球数>500/μlに要した期間は中央値17日であった.FK506によるGVHD予防効果は強力と思われたが, 副作用, 特に腎障害を回避するために投与量の工夫が必要であった.
  • I.新生児期を中心とした血漿tPAおよび血漿PAI-1の動態
    田中 妥永子, 高橋 幸博, 橋本 和子, 吉岡 章
    1996 年 10 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    線溶反応の開始段階において重要な役割を果たすtPAおよびPAI-1の動態を小児において検索した.tPA抗原は瞬帯血ではばらつきが大きく, その後日齢1~5では低下し, 日齢7~13で成人値まで回復した.一方, 新生児期を通じてPAI活性およびPAI-1抗原量は高値を示した.新生児期のPAI-1抗原量はPAI活性の2倍に上昇していた.また, 生後早期 (少なくとも日齢3まで) において, 一部に従来から報告されている線溶充進がみられた.それらの例ではtPAとPICの高値が認められた.これらの結果よりtPAとPAI-1による調節が新生児期の線溶系の動的変化に影響しているものと思われた.
  • 寺町 紳二, 尾内 善四郎, 常盤 和明, 日比 成美, 今宿 晋作
    1996 年 10 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性腹症にて発症した14歳女児のMALT (mucosa-associated lymphoid tissue) lymphomaを報告した.腹部単純X線写真にてfreeairが認められ, 消化管穿孔として緊急手術を施行.胃の穿孔部病変を切除, 病理診断からMALT lymphomaと診断された.再開腹にて病変辺縁を含め胃1/3を切除後, B-リンパ腫に対する化学療法を6カ月間行い, 治療開始後14カ月の現在寛解を維持している.小児MALT lymphomaの報告は稀であるが, 成人ではこの種のlymphomaは予後良好とされている.Helicobacter pyloriが発症に関与するとされるが, 本症例ではH.pyloriは陰性であった.
  • G-CSFに対する異常反応を含めて
    伊従 秀章, 安西 加奈子, 小林 尚明, 藤沢 康司, 北島 晴夫, 星 順隆
    1996 年 10 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    今回筆者らは, 化学療法により完全寛解に導入した後, 骨髄再発をきたした急性前骨髄球性白血病 (M3, 以下APL) の1例にall-trans retinoic acid (ATRA) を投与し, 再寛解に導入し得たので報告する.症例は16歳男性.BH-ACAMP療法, 東京小児白血病グループ13次案のプロトコールに準じた寛解導入療法により初回寛解に導入した.発病1年2カ月後再発したため, BH-ACAMP療法を施行したが, 寛解に導入できず, ATRA (45mg/m2) の投与を開始.第2次完全寛解に導入した.しかし, 約3カ月後骨髄再発を確認した.再度ATRAを開始したが, 完全寛解に導入することができず永眠した.今後, 寛解導入後早期の骨髄移植を含めた寛解後療法を確立し, 小児科領域でもATRA投与を試みていくべきと思われた.なお, 本症例は, G-CSF投与により, 芽球の著明な増加, DICの悪化を示し, G-CSF増殖試験も陽性を示したので併せて報告する.
  • 飯島 純, 杉田 完爾, 小鹿 学, 丹 哲士, 犬飼 岳史, 斎藤 みどり, 中澤 正樹, 中澤 眞平
    1996 年 10 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1993年12月25日, 11歳の女児が発熱, 頸部リンパ節腫脹を主訴に当科に入院した.血液検査で軽度の貧血と血小板減少を伴う著明な白血球減少, LDH高値, フェリチン高値が認められた.骨髄は低形成で, 増殖した組織球による血球貪食像が認められた.入院後全身に紅皮症様の皮疹が出現し, 稽留熱と頸部リンパ節腫脹が続いた.第19病日のリンパ節生検で亜急性壊死性リンパ節炎 (subacute necrotizing lymphadenitis, SNL) と診断され, 諸症状はプレドニソロンの内服で数日で消失した.患児は3歳時, 4歳時にSNLの既往を有していた.近年SNLと血球貧食症候群 (hemophagocytic syndrome, HPS) の合併症例の報告が増加してきており, SNLと組織球増殖性疾患の病因的関連性が注目されている.
  • 服部 浩佳, 堀越 泰雄, 天野 功二, 三間屋 純一, 今泉 益栄
    1996 年 10 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    重症型再生不良性貧血の非血縁者間骨髄移植では良好な結果を得るためには, 拒絶とGVHDの克服が問題となる.HLA, DR, DP, DQ遺伝子型も一致の非血縁者ドナーより, 骨髄移植を行った13歳女児例を報告する.前処置はcyclophosphamide (50mg/kg×4days), TBI (5Gy), TLI (5Gy), ATG (2.5mg/kg×4days) を使用, GVHD予防はshort termMTX+cyclosporineとした.急性GVHDI度 (皮疹, 口腔内水庖) がみられたが, prednisolone内服により軽快した.Day50~90頃原因不明の軽度血小板減少がみられた.Day90水痘に罹患, day 110頃より慢性GVHD (手掌, 顔面の皮疹, 口内炎) が出現, prednisoloneとcyclosporineの増量を試みたがcomplianceが悪く結局漢方薬の投与のみで徐々に改善をみた.移植後1年7カ月の現在漢方薬内服のみにて, 外来経過観察中である.Cyclophosphamide, TBI, TLI, ATGを用いた強力な前処置法は, 小児重症型再生不良性貧血の非血縁者間骨髄移植において有効な治療法になり得ると思われた.
  • 島田 俊明, 麦島 秀雄, 陳 基明, 藤沢 孝人, 原田 研介
    1996 年 10 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    自家骨髄移植後に発症したリステリア髄膜炎の1例を報告した.症例は5歳の男児.左副腎原発のstage IVA神経芽腫で自家骨髄移植を行った.移植後70日目より39℃台の発熱, 頭痛を認め, 項部硬直がみられた.髄液検査では細胞数799/μ1 (M : P=495 : 104), 蛋白138mg/dl, 糖21mg/dl, クロール121mEq/lであり, 髄液培養よりListeria monocytogenesが検出された.ABPC 400mg/kgの投与を行い, 治療開始後11日目には血清CRPは陰性化し, 髄液所見も改善を認めた.ABPCはその後3週間投与し, 後遺症を認めず治癒した.便培養からも同菌が検出されたことからチーズを摂取したことによる消化管からの感染が考えられた.リステリア髄膜炎は骨髄移植後の免疫不全状態にある患児において, 注意すべき合併症の1つと考えられた.
  • 佐藤 宣貴, 神鳥 理子, 小友 勇人, 北澤 淳一, 高橋 義博
    1996 年 10 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病Aインヒビター症例に対し, 少量ないし中等量の第VIII因子製剤による免疫学的寛容導入療法を行った.症例1は11カ月男児, high responder (インヒビター値48 BU) に対し, 第VIII因子製剤500単位 (60単位/kg) ×3回/週による寛容導入を行い, 治療開始後10週目にはインヒビターの上昇 (78 BU) を認めたが, 68週目にはIIBUまでのインヒビターの低下を認めた.症例2は20歳男性, low responder (インヒビター値0.9BU).左腸腰筋血腫を認め, 第VIII因子製剤6,000単位 (74単位/kg) を連日10日間と, 3,000単位 (37単位/kg) を連日14日間の投与を行った.投与後1.8 BUまでのインヒビター値の上昇をみたが, 投与終了後2年の時点で0.5BU未満と低下した.本療法は血友病インヒビター症例に対し, 比較的安価で安全な治療法であると考えられた.
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