日本小児血液学会雑誌
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11 巻, 5 号
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  • 鶴澤 正仁
    1997 年 11 巻 5 号 p. 329-338
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初期の3H-チミジン法を中心とした25年間に及ぶヒト腫瘍の細胞回転動態の研究は, 正常組織と腫瘍組織との間の細胞回転上の差異を明らかにしてきたが, 癌治療法の改善に寄与するだけの成果は認められなかった.しかしながら, 最近10年間でのサイトメトリー関連機器の臨床研究・検査分野への普及により, ヒト腫瘍の多数の細胞回転パラメーターを, 短時間で容易に測定することが可能になった.また, GM-CSFなどのサイトカインの癌治療への臨床応用により, G0期細胞の増殖相へのリクルートメント後に, S期特異的薬剤を投与する新しい治療計画が, 急性骨髄性白血病で進行している.このような細胞回転動態研究の臨床分野での発展は, サイクリンなどの細胞周期調節遺伝子の基礎研究の進歩とともに, 将来の癌治療研究への, 古くて新しい突破口となり得る可能性がある.
  • 澤田 明久, 八木 啓子, 井上 雅美, 岡村 隆行, 安井 昌博, 吉本 寿美, 茶山 公祐, 中野 崇秀, 中野 智巳, 江口 政志, ...
    1997 年 11 巻 5 号 p. 339-344
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児MDS9例に対し, 同種造血幹細胞移植を施行した.対象はRAl例, RAEB (± T) 3例, infantile monosomy 7 syndrome 2例, JCML 3例であった.RAは一期的にstandard risk regimen (BU+CY) で移植し, 長期寛解を得ている.RAEB (±T) 3例のうち1例は全身状態不良で, TBI+VP+CAで前処置を行ったが, 移植後早期に死亡した.残る2例に行ったAra-C少量療法は無効であったが, ANLL protocolで1例が部分寛解となり, high risk regimen (TBI+Thiotepa+L-PAM) で移植した.Monocytosisを認めた5例中4例はOCLSG N91で治療し, うち2例が完全寛解後の移植であった.High risk regimenで移植した7例の成績は, TRDが3例, CCRが4例であった.本high risk regimenは予後不良のMDS, 特にJCMLに有用な前処置法と思われた.
  • 野呂 恵子, 前田 美穂, 山本 正生
    1997 年 11 巻 5 号 p. 345-350
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    赤血球中の亜鉛プロトポルフィリン (ZPP) は鉄欠乏性貧血において増加することが知られている.新生児および乳児期における鉄代謝を評価することは様々な要因で困難である.今回, われわれはこれらの時期の鉄代謝を解明する手段の一つとしてZPPを測定し検討した.ZPPは, 操作が簡便で少量の全血検体より測定可能なhematofiuorometerを用いて測定し, 補正式によりビリルビンの影響を除外した.ZPPは新生児期に低値を示した後徐々に上昇し, 4カ月以降はほぼ安定していた.一方, 新生児期において赤血球遊離プロトポルフィリン (FEP) が高値となっており, ZPPの低下とあわせ, この時期に遊離プロトポルフィリン (FPP) の占める割合が増加していると思われた.これは生後の赤血球造血の充進を示すものであると考えられた.また, 4カ月以降の乳児期にはZPPとHb, およびZPPとトランスフェリン飽和度 (TS) の間にそれぞれ負の相関が認められ, 成人と同様にZPPが鉄欠乏状態の指標として有用であることが示唆された.
  • 川上 哲夫, 西川 健一, 小泉 晶一, 渡辺 新, 菊田 敦, 三間屋 純一, 関根 勇夫, 三宅 宗典, 岩井 朝幸, 川上 清, 具志 ...
    1997 年 11 巻 5 号 p. 351-355
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病 (ALL) の寛解導入療法における4'-O-tetrahydropyranyladriamycin (THP) 併用の安全性を評価するため, CCLSG 911および941 HR pilot studyの寛解導入の成績を検討した.911 LRではTHPが, 9111Rおよび941 HR pilotではTHPと3者髄注 (methotrexate 12.5mg, cytarabine 30mg, hydrocortisone 50mg) が使用された.911HRではadriamycinと3者髄注が使用された.9111Rと941 HR pilotの寛解導入失敗あるいは1週間以上の治療中断例はそれぞれ50.0%, 42.9%, 寛解導入率は88.2%, 91.9%, 穎粒球減少期間 (<500/μl) は平均20.4日, 24.8日, 感染症合併率は91.9%, 78.6%, 血小板減少期間 (<50×103/μl) は10.2日, 18.5日であった.941 HR pilotは911 HRに比べ血小板減少期間が有意に延長した.911 IR導入失敗例はいずれも寛解導入中の感染症により死亡した.ALLの寛解導入に, THPと3者髄注を併用すると著しい骨髄抑制をきたす可能性のあることを認識すべきである.
  • 後藤 裕明, 後藤 晶子, 渡辺 由佳, 松田 基, 半沢 典生, 関口 晴之, 甲斐 純夫, 船曳 哲典, 生田 孝一郎, 佐々木 秀樹, ...
    1997 年 11 巻 5 号 p. 356-362
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    4例の小児急性白血病, 悪性リンパ腫症例に対し, 計5回の同種末梢血幹細胞移植を施行した.ドナーはHLA一致同胞で, 末梢血幹細胞採取のためドナーに5-10μg/kgのG-CSFを5日間投与し, 5, 6日目にapheresisを行った.G-CSF投与, apheresisに伴う重篤な副作用はみられなかった.移植前処置後, 患児にCFU-GMとして2.7×105/kg (中央値) の同種末梢血幹細胞を輸注した.移植後15日で好中球数500/μ1, 14日で血小板数2万/μ1に達し (いずれも中央値), PHA, ConA刺激に対するリンパ球幼弱化試験は1カ月後には正常値を示した.同種末梢血幹細胞を施行した4例は全例原疾患の再発なく生存中である (移植後48-259日).同種末梢血幹細胞の採取は安全に施行可能であり, 移植後の生着, 細胞性免疫機能の回復は速やかであった.しかし, 4例中2例に慢性GVHDがみられ, 自験例の同種BMTよりも慢性GVHDの発症頻度が高かった.
  • 豊田 美香, 山本 初実, 岩本 彰太郎, 柴田 丈夫, 多喜 紀雄
    1997 年 11 巻 5 号 p. 363-369
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性型ITP3例につき大量免疫グロブリン投与が免疫機能に及ぼす影響につき検討した.それぞれ免疫グロブリンを400mg/kg/日を5日間連続投与した.治療前, 全例で末梢血単核球の免疫グロブリン産生細胞数は充進していたが免疫グロブリン投与により有意に抑制された.また末梢血リンパ球サブセットのうちCD4/CD8T細胞比は全例で投与後有意に低下した.そこで症例3の末梢血および対照として健康成人より分離したCDI9B細胞, CD4T細胞を用い, 患児B細胞に対する患児ヘルパーT細胞機能と成人B細胞に対する成人ヘルパーT細胞機能の比を, 治療前後で比較した.患児のヘルパーT細胞機能は, 治療2週後に著明に抑制され, その効果は7週後も認められた.以上より, 大量免疫グロブリン療法による免疫グロブリン産生細胞数抑制のメカニズムの1つに, 免疫グロブリンによるCD4ヘルパーT細胞機能の抑制が関与することが示唆された.
  • 本郷 輝明, 井上 紀子, 堀部 敬三, 矢崎 信, 小島 勢二, 松山 孝治, 石井 睦夫, 山田 幸治, 駒田 美弘, 伊藤 正寛, 櫻 ...
    1997 年 11 巻 5 号 p. 370-376
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    高危険群小児急性リンパ性白血病 (ALL) に対する8610HRパイロットプロトコールの治療成績を解析した.対象は, (1) 10歳以上, (2) 初診時白血球数 (WBC) 50,000/μl以上, (3) 中枢神経などへの髄外浸潤, のいずれかが認められるALLで, 1986年10月から1991年1月までにTokai-POSGで診断治療された43名である.治療は, vincristine, dexamethasone, cyclophosphamide, daunorubicinによる寛解導入療法, 頭蓋予防照射 (24Gy), 強化療法に引き続いて大量L-ASP投与を含めた多剤cyclic維持療法を3年間行うものである.43名中39名に完全寛解が得られ, 43名の5年event-free survival (EFS) は72.6±7.1%であった.EFS不良に関与している因子で統計学的有意差を認めたのは, 10歳以上の24名での, 初診時WBC 10,000/μl以上 (7名, 3年EFSは57.1%) のみで, WBC 10,000/μl未満の17名の3年EFS (82.4%) より有意に低下していた (p=0.002).生存率の検討では, 男子が女子より, また初診時WBC 10,000/μl以上群が10,000/μl未満群より有意に低下していた (p=0.031, p=0.0012).L-ASPによる膵臓炎とアレルギー反応, 予防照射による成長ホルモン分泌不全症が副作用の主なものであった.高危険群ALLに対する8610HRパイロットプロトコールは有効な治療であるが, 10歳以上でかつWBC 10,000/μl以上の症例に対してはさらなる治療法の改善が必要である.
  • 豊田 恭徳, 石井 雅巳, 大沼 圭, 西平 浩一, 加藤 啓輔, 康 勝好, 本多 康次郎, 気賀沢 寿人, 長尾 大
    1997 年 11 巻 5 号 p. 377-380
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Ki-1 lymphomaの3症例に対し造血幹細胞移植を行った結果を報告した.1例は初診時より骨転移を有するIV期症例であり, 初回寛解中にHLA一致の同胞より移植を施行した.他の2例は治療終了後に再発をきたした症例であり, 1例はHLA一座不一致の同胞より同種骨髄移植を, 他の1例は末梢血幹細胞移植をそれぞれ第2寛解期に行った.全例前処置はTBIを含む方式によった.3例とも移植後16-32カ月再発なく生存中である.本邦の小児科領域においては, これまでKi-1 lymphomaに対し造血幹細胞移植を施行した症例が4例報告されており, 今回報告した3例を含めて7例全例移植後良好な結果を取っている.予後不良のKi-1 lymphomaに対して造血幹細胞移植は有効な治療法と思われる.
  • 石河 由佳, 川上 哲夫, 小西 恵理, 福永 真紀, 梅原 俊介, 西川 健一
    1997 年 11 巻 5 号 p. 381-384
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初発時よりDICを合併し, 頭蓋内出血をきたした急性前骨髄球性白血病の2例を経験した.2例とも診断後よりATRAによる寛解導入療法を開始した.開始後著明な白血球増多をきたしたためetoposideを投与したが, DICが増悪したため中止.ATRA投与を再開したところ, 白血球数はさらに増加し15×104/μl以上となった.これに対しleukapheresisを施行したところ, DICを増悪させることなく白血球数を減少させることができ, 完全寛解に至った.引き続き化学治療を継続し, 各々4年および3年半完全寛解を維持している.今回のように, 発病初期よりDICを合併したAPLの場合, ATRA投与による白血球著増に対して, leukapheresisが有効な方法であった.
  • 石井 武文, 迫 正廣, 細井 岳
    1997 年 11 巻 5 号 p. 385-391
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    2歳2カ月の若年型慢性骨髄性白血病 (JCML) 男児に対し, HLA完全一致の同胞から末梢血幹細胞移植 (Allo-PBSCT) を施行し, 予後良好に経過しているので報告する.前処置はthiotepa 150mg/m2×2/日2日間, melphalan (L-PAM) 70mg/m2/日2日間, TBI 12Gyで行い, CD34陽性細胞5.4×107/kgを移植した.Graft-versus-host disease (GVHD) 予防はcyclosporin-A+short term methotrexate (MTX) で行い, G-CSF持続静注300μg/m2/dayをday lより開始した.骨髄回復は速やかであり, day 12に白血球1,000/μl以上, 穎粒球500/μl以上, day 32に血小板5×104/μl以上に達した.Day 24より皮膚GVHD grade Iを認めた.Day 33にはgrade IIに進行したため, メチルプレドニゾロンパルス療法で治療を行った.移植後早期には肝脾腫が残存していたが, GVHDの発症とともに肝臓・脾臓ともに徐々に縮小し, day 71には消失した.移植後2ヵ月より, 肝の慢性GVHDを発症したが, Cs-A, prednisoloneで軽快した.移植後9ヵ月現在, 軽度の慢性GVHDがあるものの, 少量のCs-A, prednisoloneでコントロールされている.移植前in vitroの培養でマクロファージからなるspontaneous colonyが観察されたが, 移植後には著減した.このことは移植によりJCMLクローンが根絶されたか, または抑制されていることを示している.
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