日本小児血液学会雑誌
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12 巻, 6 号
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  • 河野 嘉文
    1998 年 12 巻 6 号 p. 389-399
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    G-CSF動員末梢血細胞には骨髄と比べてより多くのCD34陽性細胞が含まれており, 免疫学的手法で純化する標的細胞群として適している.移植細胞をCD34陽性細胞に純化すると, 自家移植では移植片への癌細胞の混入防止が, 同種移植ではT細胞除去が可能である.さらに純化CD34陽性細胞の浮遊液量はきわめて少量で, 細胞輸注時の副作用が無視でき, 造血機能回復は非純化細胞と同等である.したがって, 純化末梢血CD34陽性細胞移植術は造血細胞移植術の分野で革新的な方法になる可能性をもっている.しかし, 癌治療戦略において患者の生存率/治癒率の向上にどれだけ貢献できるかは不明である.現在は幹細胞救済療法のひとつとして実用化が可能になった段階である.各種の治療戦略における純化末梢血CD34細胞移植の有用性は, 非純化末梢血細胞や骨髄血, 臍帯血を用いた移植術と比較する前方視的検討で証明する必要がある.
  • 山本 隆, 磯川 貞之, 松原 和則, 紀野 崇子, 宮田 曠
    1998 年 12 巻 6 号 p. 400-405
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血小板減少性疾患を対象に, 末梢血中の血小板のRNAをthiazole orange (TO) を用いて螢光染色し, TO-陽性血小板の比率を検討した.急性特発性血小板減少性紫斑病ではcontrolに比較してTO-陽性血小板比率の有意な増加がみられ, 他方, 再生不良性貧血では増加を認めなかった.すなわち, TO-陽性血小板比率の増加は血小板造血の亢進を示唆すると考えられた.そこで, 化学療法に伴う血小板減少で検討したところ, 血小板nadir後の回復期にTO-陽性血小板比率の増加がみられ, TO-陽性血小板の測定は血小板造血回復のよい指標になると考えられた.造血幹細胞移植後の顆粒球コロニー刺激因子の併用による骨髄造血の再構築に伴う末梢血の変化は, 好中球の回復に遅れてTO-陽性血小板, 網赤血球の増加がみられた.TO-陽性血小板の比率は治療後の血小板造血のよい指標になり, 測定の臨床的有用性は高いと考えられた.
  • 李 桃
    1998 年 12 巻 6 号 p. 406-416
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    例のIgG2サブクラス欠乏症の患者の血清学的観察から, この疾患ではしばしばEpstein-Barrウイルス (EBV) に対する異常な抗体反応を示すことがわかった.この機序を解明するために, これらの患者における免疫機能について検討した.7例中4例がEBV感染症において異常な抗体反応を示したが, そのうちの3例は異父兄弟とその母親であった.リンパ球サブセット, 非特異的キラー活性およびリンパ球増殖反応は, それぞれフローサイトメトリー, 51Cr遊離, 3Hサイミジン取り込みアッセイで測定した.さらに, 自己EBV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞反応の解析を, 51Cr遊離法に細胞除去と冷ターゲット抑制アッセイを組み合わせて行った.EBVの異常な感染パターンを示した4例では, CD4/CD8比が低下 (<1.0) していたが, 非特異的キラー活性とリンパ球増殖反応は正常であった.自己EBV感染細胞で刺激されたリンパ球では, その自己EBV感染細胞を傷害する機能が低下していた.4例の%細胞傷害値 (mean±SD) は対照の20.8%±45%に比較し5.8%±1.5%と減少していた.EBVの異常な感染パターンを示さなかった3例ではそのような細胞傷害性T細胞の欠陥はなかった.細胞傷害性T細胞の形質的および機能的解析では, この減少は, 少なくとも一部は, EBV特異的細胞傷害性CD8+T細胞の産生不全により引き起こされていることが示された.本研究によって, IgG2サブクラス欠乏症の一部では, EBVに対する細胞傷害性T細胞の反応不全があり, そのために非典型的なEBV感染を起こすことがわかった.この疾患の一部は, IgG2サブクラス欠乏およびEBVに対する細胞性免疫不全で特徴づけられる複合免疫不全症であると思われる.
  • 石田 修一, 天野 芳郎, 落合 二葉, 百瀬 芳隆, 小林 悟子, 石井 栄三郎, 小池 健一, 小宮山 淳
    1998 年 12 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    腸重積を契機に腹部悪性リンパ腫と診断した3例を経験した.症例は10歳の男児, 8歳の女児, 3歳の女児で, それぞれ回盲部にび漫性大細胞型腫瘍, 回盲部にBurkitt型腫瘍, 空腸にBurkitt型腫瘍を認めた.これらの3例は, 症状の発現から診断までに3~4週かかった.過去12年間に文献的に検索しえた同様の25例でも, 主訴の出現から診断までに6週間程度 (中央値4週) を必要としていた.年長児の長びく腹痛では, その原因として悪性リンパ腫に伴う腸重積も念頭におくことが肝要と思われる.
  • 栗山 貴久子, 日比 成美, 内藤 岳史, 橋田 哲夫, 大塚 拓治, 澤田 淳, 今宿 晋作
    1998 年 12 巻 6 号 p. 423-428
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    γδ型T-ALL発症9カ月後にAMLにlineage switchした14歳男児を報告した.初発時には胸水, 縦隔腫瘤があり, CD2, 3, 5, 7, 8, TCRγδ陽性の芽球を骨髄に43.5%認め, TCRγ遺伝子の再構成がみられた.多剤併用化学療法により寛解するも9カ月後の骨髄検査でFAB分類M2の芽球を70%認めた.マーカー解析の結果CD4, 7, 13, 33が陽性でCD3, 5, TCRγδは陰性であった.しかしTCRγ遺伝子は初発時と同じ再構成パターンで, 初発時と同一クローンの白血病細胞がlineage switchを起こしたと考えられた.文献的に初発時と再発時の同一クローンの異同を検索した症例の大部分はT-ALLであり, T-ALLはnon T-ALLに比しlineage switchを起こしやすいと考えられる.
  • 畑江 芳郎, 中野 育子, 飯塚 進, 武田 武夫
    1998 年 12 巻 6 号 p. 429-433
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス (SLE) の21歳の女性に併発した急性骨髄性白血病 (AML) の報告である.患者はSLEの治療としてコルチコステロイドおよびアザチオプリンなどの投与を受けていた.治療開始約11年してAMLを発症した.抗白血病剤による強力な寛解導入療法を行ったが, 完全寛解を得ることができなかった.剖検では骨髄はもとより肝, 脾, 腎, 大腸およびリンパ節などほとんどすべての臓器に白血病細胞の浸潤が著明であった.自己免疫性疾患にリンパ系増殖性疾患の合併はいわれているが, SLEの治療経過中にみられるAMLの併発は稀と思われる.本例においてはAML発症の原因はあるいは偶然の一致かもしれないし他の要因によるのかもしれないが, 免疫抑制剤であるアザチオプリンの投与による可能性も否定できない.SLEの治療にさいしてこのような薬剤選択に当たっては慎重であらねばならない.
  • 林 英蔚, 浜畑 啓悟, 渡邊 健一郎, 宇佐美 郁哉, 秋山 祐一, 久保田 優
    1998 年 12 巻 6 号 p. 434-438
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    骨髄球系抗原陰性の急性骨髄性白血病 (AML) の1例を経験したので報告する.French-American-British (FAB) 分類では光顕的にperoxidase (POX) 染色陽性をもってAMLとし, 一般にPOX陽性芽球は骨髄球系表面抗原が陽性である.本症例の芽球は骨髄有核細胞の88.2%を占め, その15%が光顕的にも電顕的にもPOX陽性でflow cytometryでもmyeloperoxidase陽性であった.細胞表面抗原解析では芽球はCD10, 19, 20, Sm-IgM, Sm-λ, TdTのみが陽性で骨髄球系抗原CD13, 33などは陰性であった.骨髄染色体分析では20細胞中9個にt (1;19) (q31;p13) を認めた.また, Ig (H) JH, Cμ, Ig (L) CLに遺伝子再構成を認めた.以上より本例はPOX陽性のみが骨髄球系の特徴であり, その他はリンパ球系の特徴をもつ稀な急性白血病であると考えられた.これまでに同様の症例報告は成人例の5例のみであり小児での報告は本例が初めてである.
  • 倭 和美, 山口 悦子, 宮田 雄祐
    1998 年 12 巻 6 号 p. 439-442
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    頻回再発Ph1陽性ALLの6歳の男児に, HLA2座不一致の父親より無処理の骨髄移植を行つた.前処置は全身照射, 大量cytosine arabinoside, busulfanで行った.移植前陽性であったminorBCR-ABLはday40でも陽性であったが, その後day96,180には陰性化した.移植後2年を経過してサイトメガロウイルス網膜炎による高度の視力低下と, 慢性GVHDを合併しているが, 再発はない.Graft-versus-leukemia効果ではないかと考えている.
  • 中村 誠, 杉田 完爾, 飯島 純, 合井 久美子, 宮本 直彦, 柄木田 直子, 中澤 眞平
    1998 年 12 巻 6 号 p. 443-447
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    4;11転座を有する急性リンパ性白血病 (ALL) と診断される2カ月前に血球貧食症候群 (HPS) を発症した1歳3カ月の女児を報告する.症例は, 発熱, 顔色不良, 肝脾腫, 汎血球減少症の精査のために入院しHPSと診断されたが, G-CSF投与などの保存的治療で軽快した.HPS発症の2カ月後, 発熱, 白血球増多, 血小板減少の精査のため再び入院した.骨髄で貪食細胞の増加はなく, FAB分類L2の芽球が大部分を占めていた.細胞膜マーカー解析からB-precursor ALLと診断され, 化学療法で完全寛解に導入された.骨髄芽球に予後不良を示唆する4;11転座とMLL遺伝子の再構成が認められたため, HLA一致の姉をドナーとして同種骨髄移植を施行した.現在移植後2年が経過したがHPSやALLの再発は認められない.HPSとALLの発症との関連性について考察した.
  • 井上 雅美, 安井 昌博, 朴 永東, 岡村 隆行, 八木 啓子, 河 敬世
    1998 年 12 巻 6 号 p. 448-451
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    自家骨髄移植後再発した乳児白血病患児に対して同種移植を計画したがHLA適合ドナーが得られず, 同胞からの3抗原不一致臍帯血移植を施行した.移植前処置は脳脊髄照射6Gy+全身照射12Gy+thioTEPA 600mg/m2+Endoxan 120mg/kgで行った.移植単核球数は2.5×107/kgで, GVHD予防はcyclosporineA単独で行った.生着は速やかであったが, 重症度III度の急性GVHDを発症した.ステロイドパルス療法とtacrolimusで加療し, 慢性GVHDもコントロールできた.移植後152日にはサイトメガロウイルス (CMV) 腸炎を発症したが, ganciclovirが奏効した.現在移植後2年が経過したが, 元気に外来通院中である.適切なGVHD予防を行えば同胞間HLA3抗原不一致臍帯血移植は試みる価値のある治療法と考えられた.また, 臍帯血移植においてもCMVにたいする監視・対策は重要であると思われた.
  • 菊地 陽, 海老原 康博, 三井 哲夫, 梅本 有美, 植田 高弘, 吉野 浩, 石井 武文, 江口 直宏, 久川 浩章, 谷ヶ崎 博, 真 ...
    1998 年 12 巻 6 号 p. 452-456
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Ph1陽性小児急性リンパ性白血病の2症例において, 多分割高線量の全身放射線照射 (13.5 Gy, 9分割) を含む前処置を用いた同種骨髄移植を施行した.移植病期は症例1が血液学的再発期, 症例2がPCRレベルでの再発期であり, ドナーは症例1が非血縁者, 症例2がHLA部分不一致の母親であった.前処置に伴う合併症は許容範囲であった.血液学的回復は順調で, 症例1ではday 14, 症例2ではday 12に生着を確認し, 骨髄のBCR/ABLのメッセージは症例1ではday 89, 症例2ではday 19に消失し, 以後, 再出現することはなかった.GvHD予防は短期MTX+Cy-A持続投与にて行ったが, 症例1ではIV度, 症例2ではIII度のGVHDがみられ, また2例ともアデノウィルス11型による出血性膀胱炎を発症した.症例1は間質性肺炎のためday 442で死亡したが, 症例2はday 231現在無病生存中である.この前処置はPh1 ALLに対する骨髄移植において試みる価値のある治療であると思われた.
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