日本小児血液学会雑誌
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16 巻, 1 号
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  • 土屋 滋
    2002 年 16 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    X連鎖重症複合免疫不全症 (XSCID) は, T細胞・NK細胞の欠損, B細胞の機能不全を特徴とする致死的な免疫不全症であり, 早期診断, 早期治療が不可欠である.HLA一致ドナーが得られない場合は, HLAハプロタイプ一致ドナーからの移植が標準的な治療法となる.この治療法によるXSCID患者生存率は約70%であるが, 免疫学的な再構築は決して完全ではない.一方, フランスのFischerらのグループはXSCID患者に対し, 自己骨髄造血幹細胞へ野生型γc鎖遺伝子を導入し, 遺伝子治療を行った.遺伝子導入を受けたT細胞は増殖優位性を示し十分機能を回復し, またB細胞も特異抗体産生能を獲得, NK細胞も末梢血に出現するというめざましい成果が報告された.この治療法は従来の造血幹細胞移植療法に匹敵するか, あるいはそれを凌ぐ効果が期待でき, 症例数を増やした有効性, 安全性の検討が必要である.
  • 松原 央, 高山 順, 立花 幸晃, 佐々木 吉明, 山本 美智雄, 伊藤 仁也, 牧本 敦, 大平 睦郎
    2002 年 16 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    重篤な肝線維化を合併した一過性骨髄増殖異常症 (transient abnormalmyelopoiesis : TAM) のDown症児を経験した.出生時に白血球増多によるhyperviscosity syndromeを起こし, 循環・呼吸障害のため人工換気, 交換輸血および化学療法を施行した.症状は改善し, 芽球は消失したが, その後徐々に肝機能障害が出現し, 腹部CTで肝臓右葉の萎縮と脾腫を認めた.高ビリルビン血症が進行し, 日齢145に肝不全により死亡した.剖検で肝臓の著明な線維化を認めたが, 肝内に芽球はみられなかった.われわれが調べ得た範囲で肝線維化を併発したTAM合併Down症児は, 1例を除き全例100日以内に死亡している.TAMはその多くが自然軽快するとされるが, 肝線維化を伴った場合の予後は不良である.これらの例に対する治療法の確立が望まれる.
  • 春名 英典, 木下 恵司, 大日方 薫
    2002 年 16 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は8歳男児.帽状腱膜下血腫を認め, 血小板数, 凝固スクリーニング検査が正常であったため, 凝固第XIII因子 (以下, FXIII) 活性を測定したところ, 13%に減少していた.その後FXIII活性値は6%まで低下したが, FXIII製剤を繰り返し投与したところ, 帽状腱膜下血腫は徐々に改善した.FXIII活性は4カ月間にわたり70%以下であったが, その後は正常化し, 出血症状も認めていない.本症例は自然経過とともにFXIII活性が正常化したため, 先天性FXIII欠乏症は否定された.著明なFXIII活性低下の原因としては, 多量の出血による消費, 0過性のサブユニット抗体出現の可能性などが考えられた.凝固スクリーニング検査が正常であっても, 出血が遷延する場合には, FXIII低下症を疑い, FXIII活性を測定する必要がある.
  • 鹿野 高明
    2002 年 16 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    髄膜炎と血球貧食症候群様所見を伴い発症したSjögren症候群 (以下SjS) の2例を報告する.2例とも乾燥症状はないものの, 抗SS-A抗体・抗SS-B抗体高値で唾液腺造影所見よりSjSと診断した.症例1 : 11歳男児.頭痛・発熱, 血球減少, 高サイトカイン血症を示し髄液細胞数増多を認めた.2年後再発し, そのときも髄膜炎を起こした.症例2 : 8歳女児.頭痛・発熱, 血球減少, 高フェリチン血症.高トランスアミナーゼ血症, 高サイトカイン血症を示し, マクロファージを含む髄液細胞数増多を認めた.半年後に再び頭痛を訴えた.小児SjSでの無菌性髄膜炎や血球貧食症候群様所見合併の報告はまれであり報告した.
  • 岩井 朝幸, 岩井 艶子, 濱田 嘉徳
    2002 年 16 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Burkittリンパ腫の寛解導入中に重症水痘に罹患した9歳男児例を報告する.寛解導入療法期の4週目に激しい背部痛を訴えた.エックス線検査, CT検査にて原因は不明であったが, 同日午後より小水庖を伴う皮疹が出現し, 水痘と診断し, アシクロビルの投与を開始した.激痛であったため, 塩酸モルヒネの投与を必要とした.肝機能障害は急速に進行し, 発疹も一部出血性となり全身へ広がったが, 約10日間の経過で改善した.水庖内容物の水痘・帯状庖疹ウイルス (VZV) DNAは陽性で, VZV抗体価の上昇を認めた.化学療法中に原因不明の腹痛や背部痛を認めた場合は, 重症水痘を疑い, アシクロビルの早期投与を考慮する必要があると考える.
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