日本小児血液学会雑誌
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16 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 藤沢 康司
    2002 年 16 巻 3 号 p. 109-122
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は代表的な後天的出血性疾患であり, 血小板単独の減少に加え, 他の全身疾患が否定されて診断される.一般に, ITPの病態は自己抗体感作血小板の網内系での捕捉と破壊と考えられるが, この免疫学的機序を普遍的に証明する方法はなく, 血小板膜蛋白特異自己抗体もすべてのITPで検出されるわけではない.したがって, ITPと診断される疾患のhomogeneityには疑問がある.さらに, とくに慢性ITPでは血小板産生の異常を示す証左もあり, 本症の血小板減少機序は複雑である.したがって, 従来ITPに導入されてきた脾摘以外の治療法は, 必ずしも本症の免疫異常を特異的に標的としているとはいいがたく, その多くは効果が一過性の対症療法である.小児のITPはその80%は早期に治癒する急性型で, 血小板減少の割に出血症状も概して軽微である.また, 血小板減少が6カ月以上遷延して診断される慢性型においても, 成人とは異なり高率に寛解ないし血小板が増加して症候は安定する.加えて, 薬物療法は一般的にも短期的効果しか期待できない.このため血小板著減の小児期新規診断ITPおよび顕性慢性ITPに対して, 重大出血予防のために積極的治療介入を行うことの是非に関しては, 今日いまだ意見の一致をみていない.
  • 戈木クレイグヒル 滋子
    2002 年 16 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児がん医療において医師と両親の関係は重要である.その関係のありようは, 子どもが亡くなった後の家族の状態にまで影響を及ぼすほどのもので, これが良い方向に働けば両親の悲嘆からの踏み出しは容易になるが, 実際には反対の状況も起こりうるからである.小稿では両者の関係を育むために大切だと思われる, はじめての医療面談の場での配慮, 病児本人への説明, 家族やきょうだいへの配慮, 患者側の教育, 治療選択のための迷いの共有, 感情面のサポート, ターミナルケアでの役割, チームとしての関わり方などについて述べる.
  • 入院, 両親の関わりおよび年齢による影響
    小林 正夫, 松原 紫, 平賀 健太郎, 原 三智子, 浜本 和子, 上田 一博
    2002 年 16 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    現在の血液・腫瘍性疾患患児の治療には長期の入院が必要となってきているため, 患児に多くの心理学的, 社会学的な問題が生じてきている.このような問題を解析するために, 患児の入院, 年齢および両親との関わりに着目してレジリエンス (困難に直面したときに乗り越えるための全般的能力) 尺度で検討を行った.6~25歳までの小児科で治療を受けた血液・腫瘍性疾患患児29例を対象とした.両親の患児への関わりに関する質問60問, レジリエンスに関する質問14問を面接法で行い, 点数化して統計学的解析を行った.患児は両親との関わり度から関わり高群と低群に分けた.レジリエンス得点は, 両親の関わり高群で入院中の患児のほうが, 両親の関わり低群で外来患児より高かった.低年齢層 (6~13歳) がそれ以上の年齢層より高いレジリエンス得点を示した.さらに, 低年齢層のレジリエンスは両親の関わりに強く依存していた.以上の結果より, 両親の関わりは血液・腫瘍性疾患患児の心理社会的問題の改善やレジリエンスの促進に重要な役割を演じていることが明らかとされた.
  • プロトコールJLSG-96による治療成績
    生嶋 聡, 衣川 直子, 日比 成美, 石井 榮一, 上田 一博, 圀府寺 美, 迫 正廣, 藤本 純一郎, 森本 哲, 別所 文雄, 堀部 ...
    2002 年 16 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    多病変ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis : LCH) に対する多施設共同治療研究の結果を報告する.1996年6月~2001年2月までに登録されプロトコールJLSG-96で治療された症例 (新規症例78例, 既治療症例12例) の解析を行った.追跡期間は中央値22.8カ月 (範囲4.7~58カ月) であった.新規症例 (33例はSM型, 45例はMM型LCH) に対する標準的寛解導入・維持療法であるプロトコールAでのSM型症例の寛解率は97%, 再発率30%, Kaplan-Meier解析による推定4年無病生存率は68%, 推定4年生存率は100%であった.尿崩症は1例にみられ, 発症率は3%であった.同様にプロトコールAでのMM型症例の寛解率は51%, 再発率22%, 推定4年無病生存率は34%であった.死亡例は1例のみで推定4年生存率は97.5%であった.尿崩症は6例に認められ, 発症率は13%であった.既治療・再発/難治の40症例 (12例の既治療例と新規症例でプロトコールAに対しNR/PDであった17例およびCR後再発した11例を含む.9例はSM型, 31例はMM型) に対するサルベージ療法としてのプロトコールBでの寛解導入率は, SM型およびMM型において各々100, 42%であった.ヨーロッパでの大規模スタディによる治療成績と比較すると寛解導入率はSM型, MM型LCHともほぼ同様であったが, SM型では再発率が高く, 一方, 全体の死亡率は2%と有意に低値であった.
  • 菊地 陽, 康 勝好, 上山 潤一, 新井 心, 山本 圭子, 花田 良二
    2002 年 16 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例はPh1染色体陽性の急性リンパ性白血病 (Ph1 ALL) の11歳男児.寛解導入不能のままHLA一致同胞より同種骨髄移植を施行したが, 血液学的回復が不十分であり, BCR/ABLのメッセージが移植後も陽性であったことから, 予防的にドナーリンパ球輸注 (DLI) を施行した.DLI後, 肝の急性移植片対宿主病 (GVHD) がみられたが, 血液学的な回復がみられ, BCR/ABLのメッセージも消失した.患児はその後肝の慢性GVHDを発症したが, 5年間の免疫抑制療法によりコントロールが可能であった.移植後81カ月を経た現在まで無病生存中であり, DLIはPh1 ALLの非寛解期移植例のようなきわめて予後不良と考えられる症例においても有効な治療となりうる可能性が示唆された.
  • 加藤 麻衣子, 麦島 秀雄, 山田 亜古, 七野 浩之, 陳 基明, 原田 研介
    2002 年 16 巻 3 号 p. 148-151
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    軽度の閉鎖性腹部外傷により, 十二指腸壁内血腫をきたした血小板無力症の7歳女児例を報告する.患児は11カ月時に血小板無力症と診断されていたが, 今回, 乳児を抱えて走っていて転倒し, 腹部を打撲, 2時間後から激しい腹痛と嘔吐を生じて来院した.腹部CT検査で十二指腸壁内血腫と診断した.Hbが7.4g/dlと減少していたため, 赤血球輸血を行った.絶飲食とし, 計30単位の血小板を輸血し, 保存的に経過を観察した.経時的に腹部エコー, CT検査を行ったところ, 血腫の縮小がみられ, 発症8日目から経腸栄養剤の経口摂取を開始した.経過は良好で30日目に血腫は消失した.血小板無力症の患者では, 軽度の打撲でも重篤な出血につながる場合があり, 今回, まれな十二指腸壁内血腫をきたした症例を経験した.慎重な経過観察やCT検査などによる積極的な出血部位の検索と適切な治療が重要と考えられた.
  • 多賀 崇, 赤堀 史絵, 河原 敦, 加藤 博文, 鈴木 淳史, 太田 茂, 竹内 義博
    2002 年 16 巻 3 号 p. 152-155
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    シクロスポリンとdanazolの併用療法中に播種性血管内血液凝固 (DIC) をきたした再生不良性貧血の8歳女児例を報告した.患児は再生不良性貧血と診断後, シクロスポリンと2回の抗胸腺グロブリンによる治療を受けたが無効で, シクロスポリンに加えdanazolの投与が開始された.Danazol開始4ヵ月後, 患児は著明な出血傾向のために入院となった.血液検査で血小板数ならびフィブリノゲンの減少と, FDPの増加を認めた.ダルテパリンナトリウム, メシル酸ナファモスタットとFFPの投与によって, 臨床症状ならびに血液所見は改善した.しかし, その2週間後, 再び著明な出血傾向と凝固検査の悪化がみられたため, シクロスポリンとdanazolを中止するとともにダルテパリンナトリウムとメシル酸ナファモスタットを投与したところ, 速やかに臨床症状と検査所見は改善した.患児はその後DICをきたすことなく元気にしており, DICの7カ月後に非血縁骨髄移植を受けた.
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