特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は代表的な後天的出血性疾患であり, 血小板単独の減少に加え, 他の全身疾患が否定されて診断される.一般に, ITPの病態は自己抗体感作血小板の網内系での捕捉と破壊と考えられるが, この免疫学的機序を普遍的に証明する方法はなく, 血小板膜蛋白特異自己抗体もすべてのITPで検出されるわけではない.したがって, ITPと診断される疾患のhomogeneityには疑問がある.さらに, とくに慢性ITPでは血小板産生の異常を示す証左もあり, 本症の血小板減少機序は複雑である.したがって, 従来ITPに導入されてきた脾摘以外の治療法は, 必ずしも本症の免疫異常を特異的に標的としているとはいいがたく, その多くは効果が一過性の対症療法である.小児のITPはその80%は早期に治癒する急性型で, 血小板減少の割に出血症状も概して軽微である.また, 血小板減少が6カ月以上遷延して診断される慢性型においても, 成人とは異なり高率に寛解ないし血小板が増加して症候は安定する.加えて, 薬物療法は一般的にも短期的効果しか期待できない.このため血小板著減の小児期新規診断ITPおよび顕性慢性ITPに対して, 重大出血予防のために積極的治療介入を行うことの是非に関しては, 今日いまだ意見の一致をみていない.
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