小児癌治療後に晩期障害としての精神症状を呈した4症例を提示し, 外傷性ストレス症候群 (PTSD) を念頭に考察した. [症例1] ウイルムス腫瘍 (発症時9歳, 男児) で, 計3回の手術と長期の化学療法を行った.とくに, シスプラチン投与時に激しい嘔吐を認めた.治療終了1年後より軽度のストレスで嘔吐し, 入退院を繰り返し, 最終的に嘔吐時の電解質異常で死亡した.PTSDによる身体症状と診断した. [症例2] 急性リンパ性白血病 (発症時12歳, 女児) で, 入院3週後より不穏状態になり外来治療に変更した.治療終了後, 多くの問題を起こした.人格変化を基盤としたPTSDと診断した. [症例3] 非ホジキンリンパ腫 (発症時5歳, 女児) で, 治療終了1年後より微熱を, 10歳頃より胸痛, 嘔気を呈し, 13歳時より不登校になった.高校生になり過呼吸症候群, 異常行動, 意識喪失を認めた.転換障害, 人格障害と診断した. [症例4] 急性骨髄性白血病 (発症時9歳, 男児) で, 治療終了1年後の11歳時より微熱, 頭痛, 腹痛などを訴え, 14歳ころより, ボーとしていることが学校でみられた.専門学校入学後症状が悪化した.解離性障害とPTSDとの重複例と診断した.
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