日本小児血液学会雑誌
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17 巻, 3 号
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  • 山下 孝之
    2003 年 17 巻 3 号 p. 93-103
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ファンコニ貧血 (FA) は, 骨髄不全, 白血病への進行, 染色体不安定性を特徴とする常染色体劣性の遺伝性疾患である.遺伝的に異なる8群 (A, B, C, D1, D2, E, F, G) に分類され, そのうちB群を除く7群の遺伝子が同定されている : これらのFA蛋白は共通の分子経路で働き, この経路の下流で機能するFANCD2は家族性乳癌遺伝子産物BRCAlと相互作用する.さらに, BRCA2がDl群遺伝子であることが判明し, FA/BRCA経路はDNAの相同組み換え修復を制御することが示唆されている.本総説では, この経路の分子メカニズムの最新の知見を説明し, FAに関する重要な遺伝学的トピックスを紹介する.FA/BRCA経路は造血幹細胞におけるゲノム安定性の維持に重要な役割を果たし, その分子機構の解明は, 後天性の骨髄不全, 骨髄性腫瘍などの発症機構に新しい知見をもたらすと考えられる.
  • 福嶋 義光
    2003 年 17 巻 3 号 p. 104-110
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    遺伝カウンセリングは, 遺伝的問題で悩む人に対して遺伝医学的情報を提供するとともに, 心理的精神的支援を行う医療行為である.小児血液疾患との関連では, 患児をもつ両親を対象に次子のリスクについての対応が求められる場合が多いが, 出生前診断や親の保因者診断など倫理的に解決の難しい問題に直面することもある.遺伝カウンセリングは医師であれば誰でもできるというものではなく, 特別な教育, 訓練が必要である.医師を対象とする研修システムとしては「臨床遺伝専門医制度」がある.倫理的問題の解決は個人的努力だけでは困難な場合が多く, 遺伝カウンセリング体制の構築など組織だった取り組みが必要である.小児血液の専門家は遺伝情報の特殊性を理解し, 必要な場合には臨床遺伝専門医と連携をとって遺伝カウンセリングを行うことが望ましい.
  • I.ストレッサーの同定と意義
    原 三智子, 平賀 健太郎, 浜本 和子, 藤本 和美, 上田 一博, 小林 正夫
    2003 年 17 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究では, 入院中の血液腫瘍疾患患児に関するストレスの状態について検討を行った.看護師への質問紙調査の因子分析から, 入院生活におけるストレッサーは, 身体的不快感, 服薬, 院内生活制限, 家族/友人との面会制限で構成されていることが明らかとなった.さらに, この4因子の程度について, 看護師と子どもの両方に半構造化面接によって尋ねたところ, 看護師は, どの病院に所属しているかにかかわらず, 院内生活制限と家族/友人との面会制限より身体的不快感と服薬のストレッサーが多いのではないかと捉えていた.しかし, 子ども自身が多いと指摘したストレッサーは看護師と異なった.さらに, 子どもはストレッサーが病院によって異なり, H病院では院内生活制限より家族/友人との面会制限に関するストレッサーが, N病院では身体的不快感より服薬に関するストレッサーが多いと感じていた.以上の結果より, 各病院での正確なストレッサーの同定が, 血液腫瘍疾患患児の入院生活におけるQOLの向上に重要であることを示唆している.
  • II. ストレスに影響を与える要因
    原 三智子, 平賀 健太郎, 浜本 和子, 藤本 和美, 上田 一博, 小林 正夫
    2003 年 17 巻 3 号 p. 117-122
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは入院している血液腫瘍疾患患児のストレッサーを同定した.同定されたストレッサーは四つの因子 (身体的不快感, 服薬, 院内生活制限, 家族/友人との面会制限) で構成された.本研究では6~13歳までの幼小児25名を対象とした.患者は院内学級への参加程度, 年齢, 性, 入院期間をもとにそれぞれ2群に分類した.ストレス得点は二つのグループを比較することにより評価した.院内学級への参加程度の少ない児童ほど高いストレス総得点を示した.年齢, 性と入院期間は, ストレス総得点には影響を与えなかった.さらに, 院内学級への参加程度の低さは, 身体的不快感, 院内生活制限, 家族/友人との面会制限というストレッサーに対して高いストレス得点を生じさせた.また, 入院期間の長さは, 服薬と院内生活制限に対して高いストレス得点をもたらした.以上の結果から, 院内学級への参加と入院期間は, 入院している血液腫瘍疾患患児のストレスに大きく関与していることが示唆された.
  • 杉田 憲一, 坪井 龍生, 松永 貴之, 萩澤 進, 佐藤 雄也, 黒澤 秀光, 江口 光興
    2003 年 17 巻 3 号 p. 123-127
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児癌治療後に晩期障害としての精神症状を呈した4症例を提示し, 外傷性ストレス症候群 (PTSD) を念頭に考察した. [症例1] ウイルムス腫瘍 (発症時9歳, 男児) で, 計3回の手術と長期の化学療法を行った.とくに, シスプラチン投与時に激しい嘔吐を認めた.治療終了1年後より軽度のストレスで嘔吐し, 入退院を繰り返し, 最終的に嘔吐時の電解質異常で死亡した.PTSDによる身体症状と診断した. [症例2] 急性リンパ性白血病 (発症時12歳, 女児) で, 入院3週後より不穏状態になり外来治療に変更した.治療終了後, 多くの問題を起こした.人格変化を基盤としたPTSDと診断した. [症例3] 非ホジキンリンパ腫 (発症時5歳, 女児) で, 治療終了1年後より微熱を, 10歳頃より胸痛, 嘔気を呈し, 13歳時より不登校になった.高校生になり過呼吸症候群, 異常行動, 意識喪失を認めた.転換障害, 人格障害と診断した. [症例4] 急性骨髄性白血病 (発症時9歳, 男児) で, 治療終了1年後の11歳時より微熱, 頭痛, 腹痛などを訴え, 14歳ころより, ボーとしていることが学校でみられた.専門学校入学後症状が悪化した.解離性障害とPTSDとの重複例と診断した.
  • 黒岩 常祥
    2003 年 17 巻 3 号 p. 128-136
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    真正粘菌でミトコンドリア核を発見したことによって, ミトコンドリアの分裂は, ミトコンドリア核分裂とミトコンドリア基質の分裂 (ミトコンドリオキネシス) に分けて研究することが可能となった.ミトコンドリオキネシス, いわゆるミトコンドリアの分裂機構は, 主にミトコンドリアの分裂が同調化できる原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeで解析された.その結果, ミトコンドリアは, 古代からのFtsZリング, 内外のMDリング, そしてダイナミンリングの四重のリングを順次に使って分裂していることが明らかとなった.驚くことに, ほとんど同じリングが, 植物の機能の現場である葉緑体 (色素体) の分裂にも使われていた.これは偶然であろうか.ミトコンドリアと色素体の起源が同じであるという視点からも真核細胞誕生の謎を考察する.
  • 野村 みどり
    2003 年 17 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1950年代以降, 西欧諸国では, 病院におけるこどものためのあそび支援プログラムの発展と, その担当専門家の活躍によって, 家族中心ケアやプリパレーション (あそび・まなびを導入した診療準備) 等の支援も推進されてきた.1988年「病院のこども憲章」EACH Charterが作成され, 2002年, その現代的注釈が刊行された.本憲章の履行は, 国連こどもの権利条約の履行である.すなわち, 病院において親は, いつでも (夜間, 治療・検査時, 局所麻酔・鎮静中, 麻酔導入時・覚醒時, 昏睡状態, 蘇生処置中) こどもに付き添う権利を有し, 親は全面的にサポートされねばならない.こどもと親が処置すべてを事前に知っていることが意思決定に積極的に関わるための前提条件である.こどもを医療者の対等のパートナーに据えるとともに, 家族中心ケアの実現がもとめられており, わが国におけるその効果的推進のためには, 家族が付き添える病院環境の整備とホスピタルプレイスペシャリストなど, 専門家の養成・導入は緊急課題といえる.
  • 吉岡 章, 三間屋 純一
    2003 年 17 巻 3 号 p. 142
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 三間屋 純一
    2003 年 17 巻 3 号 p. 143-148
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    現在わが国の医療現場で行われているインフォームドコンセント (IC) は成人患者や小児患者の親を対象としたもので, 小児患者自身に対しては十分には行われているとはいいがたい状況である.医療者, とくに医師は, 子どもの権利を尊重し, 親の理解と協力を得ながら, 患者である子どもに同意能力があると判断した場合には, 積極的にICを試みるべきである.また, たとえ, 同意能力を欠く子どもに対しても, 年齢に応じたわかりやすい言葉や絵などを用いて, 子どもの病気の説明と告知が必要である.とくに一生自己管理を要する血友病患児においては, 自立を促すためにも小児期でのICは必須となる.
  • 岡 敏明
    2003 年 17 巻 3 号 p. 149-152
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    地域における血友病ケアのための緊密な医療連係を構築するためには, 血友病ケアに関する医療情報を, 医療者や患者どうしで共有することが重要である.このため, 北海道ではわれわれ血友病専門医が中心となり, 血友病治療やケアに関するさまざまな研究会やセミナーを開催してきた.また北海道の血友病患者会 (道友会) とも協力して, 患者会総会や血友病ケアに関する患者・家族のためのセミナーも毎年開催している.これらの活動を通し, 血友病専門医, 治療に関わる医療関係者, 患者会, 製薬メーカー関係者などとの血友病医療連携が北海道で生まれてきている.また, 最近ではeメールやホームページを利用した, 新しい形の医療連携も, 北海道で生まれてきている.地域の血友病専門医は患者会と協力し, 緊密な血友病医療ネットワークを地域で構築するように, 持続的に活動すべきと思われる.
  • 瀧 正志
    2003 年 17 巻 3 号 p. 153-156
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    わが国の血友病治療の主流は出血時に欠乏する凝固第VIIIあるいは第IX因子を補充するon demand療法が主であるが, 北欧では近年, 乳幼児期の超早期から欠乏する凝固因子を定期補充することにより, 重症型の血友病を軽症化させ, 筋肉や関節の出血を未然に防ぐことにより関節症の進行を阻止する定期補充療法が主となり, きわめて臨床的に有効であることを報告している.われわれの施設においても1999年から本治療法を試行し, まだ短期間ではあるが十分な手応えを感じている.間もなく, わが国においても日本小児血液学会血友病委員会を中心に本治療法の臨床研究が実施される予定である.
  • 嶋 緑倫
    2003 年 17 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病の止血治療の原則は第VIII因子あるいは第IX因子製剤による補充療法である.しかしながら, 一部の患者に, 製剤中の第VIII因子や第IX因子に対する同種抗体であるインヒビターが出現する.インヒビターは第VIII因子や第IX因子の凝固活性を失活させて補充療法の止血効果を激減~消失させるために, インヒビターの発生は血友病の医療において重要な問題である.インヒビター症例の止血療法は, 一般に, バイパス止血療法が施行されるが, その有効性は必ずしも確実ではない.免疫寛容療法 (immune tolerance induction : ITI) はインヒビターを消失させる治療法であるが, インヒビター症例の治療としてはもっとも有効とされている.ITIの治療プロトコールは大きく, 高用量の第VIII因子製剤を投与して行うBonnプロトコール, 低用量の製剤を投与して行うvan Creveldプロトコールと, 高用量の製剤とさまざまな免疫抑制剤を使用するMalmöプロトコールに分けられる.ITIの成功のもっとも重要な要因は, 治療開始時のインヒビター力価である.さらに, 一般には製剤投与量が多いほど成功率は高いものと考えられているが, 科学的な根拠はいまだにない.最近, 国際血栓止血学会科学的・標準化委会員第VIII因子/第IX因子小委員会がITIに関する国際的無作為化比較対照試験を開始した.本研究の目的は高用量と低用量ITIにおける有効性, 有害性, 経済効率を比較検討し, さらに, ITI成功要因を明らかにすることである.わが国もこの国際ITI研究に参加予定である.
  • 酒井 道生, 白幡 聡
    2003 年 17 巻 3 号 p. 162-166
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    在宅注射療法の普及や凝固因子製剤の開発等により止血治療が格段に進歩した現在でも, 血友病患者にとって血友病性関節症は重要な問題である.われわれは, 1984年に北部九州血友病センターを開設して以来, 多科連携のもと血友病患者の包括診療に取り組んできた.今回, 当センターに蓄積したデータに基づき, 血友病患者の関節症の現況を調査した.まずDe Palma変法による評価では, 足, 膝, 肘関節の順に高1頻度に血友病性関節症を認め, とくに足関節では20歳以下でも約半数に関節症を認めた.次に, 関節症進行の予見因子について検討したが, 診断および治療開始の年齢, 家族歴, 在宅注射療法や二次的予防投与の導入の有無およびそれらの開始年齢は有意な予見因子とならなかった.これまでわれわれは, 凝固因子製剤の投与方法として出血時投与と二次的予防投与のどちらかを選択してきたが, 関節症の発症を完全に抑制するためには一次的予防投与の導入を検討すべきだと考える.
  • 加藤 俊一
    2003 年 17 巻 3 号 p. 167
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 大村 敦志
    2003 年 17 巻 3 号 p. 168-171
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    「移植医療における小児ドナーの人権-法学の立場から」という表題で, 三つのことを述べる.第一に, 「児童の権利条約」と国内の法律の関係について簡単に触れた上で, 第二に, 国内の法律の基本・出発点となる民法上の制度につき説明する.そして第三に, 具体的な問題をどう考えるかにつき, 若干のことがらを述べる.
  • 秋山 祐一
    2003 年 17 巻 3 号 p. 172-173
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 今泉 益栄
    2003 年 17 巻 3 号 p. 174-177
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 土田 昌宏
    2003 年 17 巻 3 号 p. 178-179
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児血液学会造血幹細胞移植委員会では, 加藤俊一前委員長を中心に, 秋山佑一委員の原案をたたき台として指針をまとめた.理事会にこれを諮って末梢血幹細胞移植ドナーの適格年齢下限を6歳から10歳に引き上げることになった.指針に指摘されている内容を具体化するためには, さらに検討し, 幼児, 低学年学童向けのイラストなどの資料を作成し, また心理専門家またはこれに準ずる役割をはたす人々へのガイドライン作成を実現し, 指針が形骸化しないように配慮する役割をもっていると考えている.
    以下は, そのためのポイントについて述べたものである.小児ドナーからの造血幹細胞採取の技術指針が, 委員会から示されているが (今泉益栄委員), 小児ドナーの年齢に応じた身体的, 心理的適格性基準については, 当委員会の課題として検討を行う予定である.
  • 河野 嘉文
    2003 年 17 巻 3 号 p. 180-181
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 新
    2003 年 17 巻 3 号 p. 182-183
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
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