日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
18 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 織田 信弥, 岡村 純
    2004 年 18 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    分子生物学の勃興により, さまざまな腫瘍のふるまいや宿主病態が分子の言葉で語られるようになった.癌治療のフィールドも変化しつつある.腫瘍病態に関与する生体分子に対して「ねらい撃ち」的に働きかける薬剤を用いようとする治療を「分子標的治療 (target-based therapy) 」と呼んでいる.これまで常に帰納的にっくられてきた治療薬を, 演繹的に創出しようという分子標的治療の試みは, 治療学の歴史のなかでは画期的な出来事であるかもしれない.しかし, この黎明期にある治療学にも, 多くの問題が存在する.本稿では, 分子標的治療薬の現状をふまえ, その問題点, とくに1) 作用原理とドラッグ・デザイン, 2) 適応, 3) 作用と副作用, 4) 検証過程にっいて議論した.
  • 小澤 美和
    2004 年 18 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1980年代に, 小児癌患児らの心理的問題がPTSD症状に酷似していると報告された.そして, 1994年のDSM-IVではPTSDとしてのトラウマの概念が拡大され, 生命を脅かしかねない疾患に罹患することもトラウマと解釈されるようになった.その後, 小児癌患児・家族の心の問題をPTSDの枠組みで考えることの有用性が検証され, さらに, 脆弱因子などの調査も進んできた.欧米での患児におけるPTSSの発症が2.6~47%に対して, 少ない報告ながらわが国の報告では80~83%と非常に高い頻度であった.PTSS発症における予防的介入は, 患児自身のみならず両親に対しても必要である.主観的治療強度, ソーシャルサポート授与感, 特性不安, 告知などを考えに入れて介入する.また, 日本での調査では, アレキシシミック (感情表現困難) な性格傾向とPTSS発症との関係が指摘され, これが, 日本人に特有な性格傾向であることは興味深く, 今後, 日本での調査を進め, われわれがもつ特性とPTSS発症の関係が明らかになることで, 小児癌患児にとってさらに有効な援助を行うことができるだろう.
  • 中村 和洋, 佐藤 貴, 小林 正夫
    2004 年 18 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    自己免疫性好中球減少症は乳幼児期の慢性好中球減少症の原因として頻度が高い疾患であり, 好中球特異抗原に対する抗体が原因となる.数種の好中球特異抗原 (HNA) が同定されてきており, 抗体の検出には好中球免疫蛍光試験や好中球凝集試験が用いられている.乳幼児期の慢性良性好中球減少症の50~70%で抗体が検出され, HNA-1抗原に対する抗体が原因となる例が多い.自施設では各種好中球表面抗原に対するモノクローナル抗体を作製し, 抗原の同定に用いてきた.本症は数カ月から数年の経過で, 抗体の消失とともに自然軽快する例が多い.自験例の検討ではST合剤の予防投与により感染症合併頻度の減少が期待される.発症時の抗体の有無, 強度により好中球減少期間に差が認められることから, 本症の診断, 予後の推定に抗好中球抗体の定量的検査は有用である.本総説では本症の臨床像にっいて自験例を交えて概説する.
  • メシル酸ガベキセート (FOY®) との比較
    塙坂 八重, 高橋 幸博, 川口 千晴, 森川 肇, 安原 肇, 吉田 幸一, 吉岡 章
    2004 年 18 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 播種性血管内凝固 (disseminated intravascular coagulation : DIC) を合併した病的新生児に対する蛋白分解酵素阻害薬nafamostat mesilate (Futhan®) の臨床効果を, 同じく蛋白分解酵素阻害薬gabexate mesilate (FOY®) と比較し検討した.対象は1993年1月~2001年12月に当院新生児集中治療部門に入院した低出生体重児および外科症例を含むハイリスク新生児のDIC症24例であった.全例が生後28日未満にDICを発症し, 白幡のDICスコアー3点以上であった.Futhan®投与例とFOY®投与例が各12例であった.両蛋白分解酵素阻害薬ともDICスコアーを有意に低下させ, 血小板数とFDP値を有意に改善させた.Futhan®は新生児のDIC治療に有用であった.しかし, Futhan®投与群の1例に, 腎不全を伴わない高カリウム血症を認めた.Futhan®投与の期間中は血清カリウム値に注意を払う必要がある.
  • 石田 周, 奥田 久美子, 黒木 文子, 藤井 久紀, 山崎 桜子, 渡辺 由佳, 松田 基, 後藤 裕明, 後藤 晶子, 藤岡 憲一郎, ...
    2004 年 18 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初診時に縦隔腫瘤を有していた小児T細胞性腫瘍患者に対して, 治療終了後に18-fluorodeoxyglucose (FDG) -positron emission tomography (PET) を施行し, 縦隔に残存する腫瘤性病変の鑑別診断を行った.FDGの集積は5例中4例に認められ, うち2例が再発した.1例は臨床的にも再発が認あられた時期であったが, 同時期に試行したGaシンチよりもPETのほうがより明瞭に病巣を描出していた.他の1例は集積を認めた3カ月後に再発した.この症例のFDGのstandard uptake valueは, 再発時に上昇, 再導入療法後に低下し, 病勢をよく反映していた.PET陽性のうち残りの2例は, 治療終了後それぞれ3年, 4年経過しているが腫瘤の増大傾向はなく, 正常胸腺への集積と判断した.またPET陰性の1例では腫瘤は瘢痕組織と考えられ, 治療終了後3年間無病生存中である.FDG-PETは小児T細胞性腫瘍の残存縦隔腫瘤の鑑別法として非常に有力であるが, 正常胸腺との鑑別が困難な場合があり, 注意深い経過観察が必要と考えられた.
  • 佐野 弘純, 窪田 恵子, 金 智裕, 澤田 明久, 時政 定雄, 藤崎 弘之, 橋井 (松田) 佳子, 原 純一
    2004 年 18 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性前骨髄性白血病に対してaclarubicin (ACR) を用いた強化療法施行後, 両側腎孟出血を起こし両側尿管閉塞のため腎後性腎不全に陥った1例を経験した.ACR投与後5日目より肉眼的血尿を認め, さらに5日後尿閉となり, 画像上両側上部尿管閉塞が疑われた.その2日後凝血塊排出とともに利尿再開し, 腎機能の改善を認めるも, 10時間後再度尿閉となり, UN : 92mg/dl, Cre : 13.9mg/dlと腎不全に至った.二度目の尿閉から4日後再度凝血塊の排出がみられ, 利尿の再開とともに腎機能は改善した.本薬剤による腎尿路系出血に関して両側尿路閉塞から透析を余儀なくされた報告もある.ACRによる腎孟出血には特異的な対処法がなく, 使用時には十分な利尿をつけ代謝産物が長時間尿路に接触するのを防ぎ, 頻回に検尿を行うなど, 注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 加藤 博文, 赤堀 史絵, 太田 茂, 鈴木 淳史, 多賀 崇, 竹内 義博, 黄瀬 一慶
    2004 年 18 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    11ヵ月男児が貧血と肝腫大を主訴に来院し, 急性リンパ性白血病と診断された.CCLSG infant ALL874 protocolに従って治療を行い, 完全寛解に達した.しかし, その12年後に12歳の弟が汎血球減少をきたし, 急性骨髄性白血病と診断された.CCLSG AML 9805 protocolに従って治療を行い, 彼もまた完全寛解に達した.われわれはPCR-SSCP解析にてp53の変異を調べたが, 兄弟ともに異常を認めなかった.兄と弟の発症時期がかなり離れていることと, 兄弟で白血病の病型が異なることから, 同一原因によるとは考えにくかった.なお, 兄弟ともに現在も寛解を維持している.
  • 松原 央, 渡邉 健一郎, 小林 道弘, 足立 壮一, 柴田 実, 清益 功浩, 橋本 尚子, 秋山 祐一, 中畑 龍俊
    2004 年 18 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ランゲルハンス細胞組織球症 (LCH) による二次性の胆汁性肝硬変のため生体肝移植を施行した男児例を報告した.ブドウ膜炎でフォロー中に肝腫大, 肝機能異常を認め, 腹部CT・MRIおよび肝生検により硬化性胆管炎と診断した.その後も腹痛, 発熱等の胆管炎様症状を繰り返したため, 拡張胆管切除および胆管空腸吻合術を施行した.病理組織から胆管壁粘膜下層に著明なランゲルハンス細胞の浸潤と肝硬変を認めた.肝硬変が進行したため肝移植適応ありと判断し, 母親から生体肝移植を施行した.患児は移植後9カ月で無病生存中である.LCH関連の肝硬変に対しては, 肝移植が有効であり積極的に考慮すべきと考えられた.
  • 小野寺 典夫, 平野 浩次, 伊東 亮助
    2004 年 18 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2004/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    最重症型の特発性再生不良性貧血の2小児例に対して, 炭酸リチウムの投与を試みた.症例1は16歳女児で2回目の免疫抑制療法後も無効と判定され, 重症型で輸血依存であった.症例2は9歳女児で免疫抑制療法1年を経過しても中等症型であり, 感染症を反復していた.炭酸リチウムは初期量およそ10mg/kg/dayで開始し, 臨床効果をみながら調節した.2症例とも好中球の増加に引き続き血色素および血小板数の改善を認め, 副作用もなく臨床的に有効と考えられた.作用機序については不明な点もあるが, 再生不良性貧血の治療に有用性があると考えられた.
feedback
Top