日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
19 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 杉本 充彦
    2005 年 19 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血小板粘着・凝集反応は生理的止血機構の基盤であるとともに, 病的血管内血栓症のトリガーでもある.従来から, 静止系の粘着能や閉鎖撹拌系の血小板凝集計で血小板機能が評価されてきた.しかじながら, 血小板は生体内では赤血球, 白血球とともによどみなく血流にのつており, 血管壁の状態の微妙な変化を読みとって迅速に反応 (初期粘着) する.したがって, 血小板機能の評価には血流環境を考慮する必要があると考えられる.実際, 生理的血流状況を組み入れた実験系 (フローチャンバーシステム) による近年の研究で, 血流 (とくにずり速度) によつて, 血小板粘着・凝集メカニズムが大きく異なることが明らかとなつた.本総説では, 最近確立された “生理的血流下における血小板血栓形成メカニズムの最新の概念” を古典的概念と対比させて概説し, これを基盤として, 代表的な先天性血小板粘着・凝集障害症の出血病態を解説する.
  • 瀧 正志
    2005 年 19 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    わが国の血友病の補充療法は, 主として出血時に止血を目的として欠乏する凝固第VIII因子あるいは第IX因子を輸注する方法である.在宅自己注射療法の導入により, わが国の血友病患者のQOLは改善したが, 出血時の補充療法では繰り返す関節出血の結果として生じる血友病性関節症などの整形外科的問題は依然として未解決である.近年, ヨーロッパでは重症型血友病患者に対して, 非出血時に出血予防および関節症の発症進展抑止を目的として, 凝固因子製剤を乳幼児早期から長期間にわたり定期的に補充する定期補充療法 (一次定期補充療法) が行われ, その関節症発症阻止あるいは遅延効果が報告されている.しかし, 定期補充療法 (一次および二次定期補充療法) に関する研究の多くは後方視的な観察研究であり, まだその有効性, 安全性を含め多くの研究課題が残されている.そこで, わが国においても日本小児血液学会血友病委員会で重症型血友病の年少の小児を対象に定期補充療法の臨床研究を開始することになった.本稿では定期補充療法の歴史, 定義, 利点と危険性, 各国の現状, 今後の課題などにっいて概説する.
  • 江藤 陽子, 吉野 修司, 岡田 仁, 今井 正, 磯部 健一, 伊藤 進
    2005 年 19 巻 2 号 p. 74-78
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Castleman's diseaseはリンパ増殖性疾患であり, 小児期にはまれな疾患である.症例は11歳の女児.平成14年7月よりCRPの持続高値を認め精査を行うも, 原因不明であった.平成15年8月に精査目的にて当院小児科を紹介され受診.微熱, CRP 6.25 mg/dl, ESR 60mm/hの高値, 小球性貧血などを認めた.原因検索のためにPETを施行したところ上腹部に集積像を認め, 開腹にて腫瘤を摘除した.病理診断はCastleman's disease (hyaline vascular type) であった.原因不明の慢性炎症疾患の全身検索にPETは有用であり, 鑑別にCastleman's diseaseを考慮する必要があると考えられた.
  • 工藤 友恵, 八木 久子, 金澤 崇, 小川 千登世, 森川 昭廣
    2005 年 19 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Ganciclovir (GCV) 抵抗性で長期にわたりfbscamet (PFA) 治療を要した変異サイトメガロウイルス (CMV) 感染症を経験した.症例は1歳男児, 若年型慢性骨髄単球性白血病 (JMML).生後3カ月時に発症.前医受診時よりCMV抗原血症陽性であり, JMMLとCMV感染症との鑑別に苦慮した.非血縁者間骨髄移植 (UBMT) 目的に当院転院.転院時にはCMV抗原血症は陰性化していたが, UBMT後day26よりCMV抗原血症陽性となりGCV投与を開始じた.しかじ反応不良であったためPFA投与を開始したところ, 良好な結果を得られた. GCV抵抗性であつたため, 変異株を疑い検索を行ったところ, DNAポリメラーゼをコードするUL54変異のmutanttypeであり, したがってUL54変異のGCV耐性株にも感受性を示すPFAが有効であつたと考えられた. GCV抵抗性CMV感染症では, 変異株を疑い早期PFA導入を考慮すべきであると思われた.
  • 未解決の課題と新しい展開
    土田 昌宏, 岡村 純
    2005 年 19 巻 2 号 p. 83
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 豊嶋 崇徳
    2005 年 19 巻 2 号 p. 84-86
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    移植片対宿主病 (GVHD) は移植片に混入したアロ応答性ドナーT細胞がレシピエントの抗原提示細胞に提示されたアロ抗原を認識することによって発症する.その後のGVHDの維持・発症には, ランゲルハンス細胞や, ドナー由来の抗原提示細胞が関与する.自然免疫系はこのT細胞・抗原提示細胞間相互作用を促進する.急性GVHDのエフェクターは細胞傷害性T細胞や炎症性サイトカインである.GVHD標的上皮細胞上のアロ抗原の発現は, GVHDの発症に必須ではないが, GVHDを増強する.しかし逆にgraftversus-leukemia (GVL) 効果を抑制する可能性がある.慢性GVHDは, その発症に胸腺障害の関与が示唆される.
  • 屋部 登志雄, 森島 泰雄
    2005 年 19 巻 2 号 p. 87-89
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    NK細胞は強力なアロ反応性を示すため, 臓器移植における役割が示唆されてきた.国内非血縁者間HLA-A, B, -DR血清学型一致移植について, HLA-C抗原のNK細胞受容体KIRリガンド適合性と移植成績を調べたところ, GVH方向不適合では急性GVHD発症率が有意に高く, 全生存率も低下していた.一方, イタリアグループは急性白血病における血縁者間haplo-identical末梢血幹細胞移植において, GVH方向KIRリガンド不適合症例で拒絶および急性GVHD発症がみられず, AML患者の場合は再発もなく無病生存率 (5年) が良好であったことを報告した.このようなNK細胞受容体KIRリガンド適合性の移植成績への影響が異なる原因としては, 移植レジメの相違が大きく影響していることが考えられる.
  • 松本 公一, 加藤 剛二
    2005 年 19 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血栓性微小血管障害 (thrombotic microangiopathy;TMA) は細小動脈を主体とする微小血管内皮障害に基づく虚血性, 出血性の臓器障害である.造血幹細胞移植の現場において, しばしば急性GVHDとTMAは混同され, 鑑別が困難な場合も少なくない.とくに近年, 消化管TMAという概念が導入されて以来, いっそう両者の境界は混沌としている.これは急性GVHDの診断基準が, TMAの存在を抜きにして設定されていることと, TMAの診断基準が明確でないことが影響しているものと考えられる. TMAの危険因子として, FK 506などの免疫抑制剤, 非血縁者間移植, HLA不適合血縁者間移植, ABO不適合移植, VODがあげられる.完成されたTMAの治療は困難であるので, 大腸生検などにより早期にTMAの存在を認識し, 過度の免疫抑制を控えることが移植成績の向上につながると考えられる.
  • 永利 義久, 岡村 純
    2005 年 19 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    移植幹細胞源の多様化に伴い, 造血幹細胞移植を受ける機会に恵まれる患者が増えるとともに, 慢性移植片対宿主病 (GVHD) を合併する患者が増えてきた.本邦における慢性GVHD合併率は諸外国に比較すると低いが, 慢性GVHDは移植後の生活の質を損ないうるのみならず, 移植関連合併症死に関係する.しかしながら, 有効な予防法とステロイドによる治療失敗例に対する確立された治療法は存在するとは言い難い.慢性GVHDを対象とした今後の精力的な臨床研究が望まれる.
  • 福島 敬, 清水 崇史, 須磨崎 亮, 大津 真, 小野寺 雅史, 小池 和俊, 土田 昌宏, 加藤 俊一, 中内 啓光, 大橋 一輝, 坂 ...
    2005 年 19 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2005/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    細胞自爆遺伝子を用いて移植片対宿主 (GVH) 病の制御を行うという試みは, 1990年代にイタリアで始まった.造血細胞移植後に白血病が再発した症例に対して, ドナーリンパ球輸注を行う際に, 細胞自爆遺伝子を導入・発現したものを使用する.輸注後に制御不能のGVH病が発症した際には細胞自爆遺伝子を作動させると, リンパ球は自動的に細胞死に陥り, GVH病は沈静化するというプログラムである.ここでは細胞自爆遺伝子としてヘルペスウイルス・チミジンキナーゼを用いる.本来ヒトの細胞はこれをもっていないが, 遺伝子導入によって細胞内にこの酵素蛋白をもつようになる.するとガンシクロヴィルを活性化させる能力を発現して, 本来ヒトには無毒であるガンシクロヴィルが, 細胞毒性を発揮するようになる.この遺伝子治療をわが国に導入・応用するべく準備をすすめ, 2004年11月に至って第1例目を実施した.本プロジェクトの概要を報告する.
feedback
Top