わが国の血友病の補充療法は, 主として出血時に止血を目的として欠乏する凝固第VIII因子あるいは第IX因子を輸注する方法である.在宅自己注射療法の導入により, わが国の血友病患者のQOLは改善したが, 出血時の補充療法では繰り返す関節出血の結果として生じる血友病性関節症などの整形外科的問題は依然として未解決である.近年, ヨーロッパでは重症型血友病患者に対して, 非出血時に出血予防および関節症の発症進展抑止を目的として, 凝固因子製剤を乳幼児早期から長期間にわたり定期的に補充する定期補充療法 (一次定期補充療法) が行われ, その関節症発症阻止あるいは遅延効果が報告されている.しかし, 定期補充療法 (一次および二次定期補充療法) に関する研究の多くは後方視的な観察研究であり, まだその有効性, 安全性を含め多くの研究課題が残されている.そこで, わが国においても日本小児血液学会血友病委員会で重症型血友病の年少の小児を対象に定期補充療法の臨床研究を開始することになった.本稿では定期補充療法の歴史, 定義, 利点と危険性, 各国の現状, 今後の課題などにっいて概説する.
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