日本小児血液学会雑誌
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19 巻, 6 号
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  • 佐藤 貴, 小林 正夫
    2005 年 19 巻 6 号 p. 559-565
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児期の好中球減少症は種々の病因によって引き起こされる.細胞外要因によるものとして, 感染, 薬剤, 転移性骨髄腫瘍などのほか, 乳幼児期の本症の大半を占める免疫性好中球減少症があげられる.重症先天性好中球減少症に代表される内因性要因による好中球減少症は, いずれも頻度が低いが, 重篤な臨床経過をたどるものが多い.これらの疾患を鑑別するうえで, 特殊な検査を必要とすることはまれであり, 詳細な病歴聴取, 身体所見および骨髄所見で鑑別できることが多い.内因性要因による好中球減少症を引き起こす疾患群の病態について, 多くは解明途上であるが, 近年, 分子異常がいくつかの疾患で発見されている.本稿では, 好中球減少をきたす代表的な疾患をあげて, 臨床症状, 骨髄所見および現在までに明らかにされている分子異常について概説する.
  • 東 英一
    2005 年 19 巻 6 号 p. 566-577
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    造血細胞移植を行うと移植前処置の影響で長期間にわたる深い免疫不全状態となる.この期間と重症度に影響を及ぼすのは, T細胞除去などの造血細胞処理, 造血細胞移植の種類 (ドナーの種類とドナー源), 移植片対宿主病の出現, 年齢依存性の胸腺機能の回復などである.免疫不全状態は感染症や白血病再発による有病率と死亡率を上昇させる.自然免疫の早期回復は多くの病原体から防御するのに役立つが, メモリー機能をもつT細胞とB細胞の獲得免疫の低下が数カ月から1~2年続くので病原体への易感染性が持続する.本稿では免疫再構築の知見の現況について述べる.
  • 酒井 道生, 佐藤 哲司, 宮地 良介, 白幡 聡
    2005 年 19 巻 6 号 p. 578-585
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病治療での重大な問題として, 凝固因子製剤の補充療法開始後に一部の患者にインヒビターが発生する.これまで, インヒビターの発生機序にっいては多くの報告があるが, インヒビター保有患者の臨床経過にっいて検討した報告は少ない.そこでわれわれは, 1984~2004年の20年間に北部九州血友病センターを受診した血友病患者209例のうち, 1回以上の検査でインヒビターが陽性であった15例 (7.2%) を対象として, 臨床経過を後方視的に解析した.インヒビター初回検出時の年齢は生後3カ月-62歳で中央値2歳であった.観察期間中のインヒビター最高値は2-1,000 BU/mlであり, 4例のローレスポンダーのうち3例と11例のハイレスポンダーのうち2例の計5例でインヒビターが消失した.免疫寛容療法が3例に施行され, 免疫寛容療法中にインヒビターが消失した症例はなかったが, 2例で免疫寛容療法を中止した数年後にFVIII製剤での良好な止血管理が可能となった.
  • 佐藤 哲司, 酒井 道生, 宮地 良介, 白幡 聡
    2005 年 19 巻 6 号 p. 586-591
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    最近20年間に北部九州血友病センターを受診した209例の血友病患者の後方視的調査で, 33例 (15.8%) に合計57回の頭蓋内出血 (以下, ICH) のエピソードが認められた.ICH発症時年齢の中央値は1歳で, 56%は2歳以下の発症であった.重症 (第VIII因子活性1%未満) 群と軽・中等症 (同1~25%) 群の間でICHの発症頻度に差を認めなかった.初回ICHに限ると重症群のほうに非外傷性ICHが多かった (p=0.043).出血部位は, 硬膜下がもっとも多く, ついで脳実質の順であった.8.7%では同時に複数の箇所にICHがみられた.予後は, 死亡例3例, 後遺症あり9例, 後遺症なし21例であった.後遺症を残した9例中7例は2歳未満に最初のICHを起こしていた.一方, もっとも頻度が高かった硬膜下単独出血で後遺症を残した例はなかった.ICHの再発が33例中15例 (45.5%) に認められ, その7割は2年以内の間隔で起こっていた.すぐれた血液凝固因子製剤の開発により止血治療が格段に進歩した現在でも, なおICHは多発している.しかも, 一度ICHを経験した半数近くがICHを再発しており, ICH既往のあるケースはとくに注意深くフォローアップすべきであろう.
  • 前田 尚子, 堀部 敬三, 工藤 寿子, 小島 勢二, 加藤 剛二
    2005 年 19 巻 6 号 p. 592-597
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1983~1998年までに造血幹細胞移植を行った60例 (男35例, 女25例) の小児の最終身長について検討した.移植時年齢の中央値は11歳3ヵ月, 観察期間中央値13年 (5年5カ月~19年9カ月), 原疾患は急性白血病37例, 再生不良性貧血12例, 悪性リンパ腫7例, 神経芽腫2例, 慢性骨髄性白血病2例.前処置は全身放射線照射 (TBI) 36例, 全身リンパ節照射 (TLI) 9例, 非照射15例であった.移植前に頭蓋放射線照射 (cRT, 18-24 Gy) を施行されたものは急性リンパ性白血病25例中9例で, うち7例ではTBIが用いられた.ホルモン補充療法は, 成長ホルモン3例, 男性ホルモン5例, 女性ホルモン13例に行われた.最終身長標準偏差値から移植時身長標準偏差値を減じたΔSDS低値に寄与する因子について検討した.TBI群はTLI群 (p=0.002), 非照射群 (p=0.0007) に比べ有意にΔSDS低値を示した.6歳未満でTBIを受けた群のΔSDSはそれ以上の2つの年齢群に対して (p=0.01, p<0.0001) 有意に低値であった. CRTの有無では, 有意差はみられなかった (p=0.39).多変量解析では, 男児, 移植時低年齢, TBI施行が移植後成長障害に影響する因子であった.
  • 榊原 崇文, 稲垣 二郎, 岸本 朋子, 朴 永東, 吉岡 章
    2005 年 19 巻 6 号 p. 598-602
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は9歳の女児と6歳の男児.急性リンパ性白血病 (ALL) と診断し, 寛解導入療法を開始したところ, 治療開始31日目と20日目にそれぞれ痙攣発作を発症した.頭部MRIでT2強調画像およびfluid.attenuated inversion recovery (FLAIR) 画像で両側後頭葉から頭頂葉領域を中心に異常高信号を認めた.対症療法により神経症状および画像所見の改善を認めたことからposterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) と診断した.自験例ではいずれも神経症状の出現前に高血圧と急性膵炎を呈しており, 寛解導入化学療法とともにPRES発症の契機となったと考えられた.2症例とも降圧薬と抗痙攣薬投与により以降の化学療法を継続できた.PRESは成人のみならず小児においても, 化学療法中に起こりうる合併症であり, とくに化学療法中に高血圧を呈する症例では注意が必要である.
  • 神田 健志, 小林 健一郎, 宇佐美 郁哉, 久保田 優
    2005 年 19 巻 6 号 p. 603-608
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    外傷性脾破裂による遅発性出血性ショックをきたした慢性骨髄性白血病 (CML) の12歳男児例を経験した.患児は, 軽微な腹部打撲後に持続する左季肋部痛を主訴に近医を受診した.その際実施された画像検査にて脾臓の被膜下出血と診断され, 当院に搬送された.来院時の血液検査, 骨髄検査でCML慢性期と診断された.保存的に経過観察を行ったが, 受傷42時間後に突然, 尿量減少, 頻脈, 血圧低下をきたした.脾破裂による遅発性腹腔内出血と診断し, 緊急摘脾術を施行した.術後の経過は合併症もなく順調で, ハイドロキシウレアおよびインターフェロンαの治療後, 実姉より血縁者間同種骨髄移植を施行し寛解状態を維持している.CMLに脾破裂を合併した症例の報告はきわめて少ない.また文献上の報告例は自然破裂であり, 本例のように外傷を契機としたものは非常に珍しいと思われる.
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