日本小児血液学会雑誌
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20 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 横田 昇平, 岡本 朋美, 鶴澤 正仁
    2006 年 20 巻 2 号 p. 71-83
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初診時の白血病患者体内には1012個 (約1kgに相当) もの白血病細胞が存在する.急性白血病では, 初診時の末梢血白血病細胞数などをもとにリスク分類を行い, これに応じた治療プロトコールを設定する, いわゆるセット療法が一般的である.しかし, 血液腫瘍では固形腫瘍のように画像診断等で残存する腫瘍量を測定することが困難であることから, 再発しない限り, 一度定めたプロトコールを途中で変更することなく, 最後まで治療を行うことが一般的であった.寛解導入後も体内に存在する微小残存病変 (MRD) を診断する手段として, 1980年代後半から分子生物学, 免疫学的手法が次々と開発された.とくにPCR法は腫瘍細胞にあっては正常の造血細胞にはない遺伝子の再構成を同定することで104~106に1個の高感度でMRDの診断を可能にした.フィラデルフィア染色体のBCR/ABL遺伝子再構成をはじめ, 20種類もの染色体転座に伴う遺伝子の再構成がPCR増幅可能でMRD診断に応用されている.一方, 多くのリンパ系腫瘍では, 免疫グロブリンH鎖, T細胞受容体δ・γ鎖遺伝子が単クローン性に再構成している.再構成の結合部塩基配列はクローン特異的であり, これをPCR増幅することでMRDの診断が行われている.また, 白血球分化抗原をモノクローナル抗体で検出する細胞免疫学的方法も2個以上の抗原のパネルをマーカーとし, flow cytometry (FCM) を利用することで, 感度と特異性をあげている.これらの方法を利用して多施設共同臨床研究において治療経過の定時に骨髄でのMRD定量を行い, MRDと予後との関連を調べた結果, 治療早期のMRDと予後との強い相関が明らかになった.また, 再発例に対する治療 (salvage therapy) においても, 早期MRDと予後の関連が認められ, 再発例に対する造血幹細胞移植においても, 移植前のMRDは予後を決定する因子であることが報告されている.このような知見を得て, MRD結果を治療に応用する試みが始まっている.早期MRD量に基づいて, 治療介入を行うプロトコールはドイッを中心としたBFMグループや日本のCCLSGグループで2000年から始まっている.
  • 最近の戦略と今後の課題
    多賀 崇, 富澤 大輔, 多和 昭雄
    2006 年 20 巻 2 号 p. 84-94
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    最近の諸外国ならびにわが国の, ダウン症候群に伴うものと急性前骨髄性白血病を除く小児急性骨髄性白血病 (AML), いわゆるde novo AMLの治療について解説した.多くのグループが薬剤の量や投与方法を変えるなどして治療強度を高め, 現在, 寛解導入率は90%前後, その後の治療により長期生存率は 50%前後となっている.寛解後治療として造血幹細胞移植は, 急性リンパ性白血病 (ALL) に比べ比較的積極的に行われているが, 自家移植の有効性がないこと, リスクによっては化学療法に比べ有用性がないという報告もみられ, その適応にっいての検討が必要である.また最近では, 移植の回避を含めた層別化治療のための予後因子の解析が盛んに行われ, 芽球染色体, 治療反応性などはすでに使用されている.今後, 芽球の分子生物学的解析と微小残存病変測定によるin vivoの治療反応性が有力な予後因子となるであろう.一方, 従来の化学療法ならびに造血幹細胞移植は治療毒性が強く, これ以上の治療強化は困難であることから, 新規薬剤, とくに正常組織への毒性が少ないことが期待される分子標的薬物の導入に期待がもたれている.
  • 国島 伸治
    2006 年 20 巻 2 号 p. 95-97
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    先天性巨大血小板症は先天的に巨大血小板と血小板減少症を呈する疾患群の総称である.近年, 本疾患群は従来考えられていた程まれではなく, 慢性あるいは難治性の特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断され, 不必要な治療を受ける症例が少なくないことが明らかになっている.本稿では, 先天性巨大血小板症の中で最も頻度が高いBemard-Soulier症候群とMYH9異常症の臨床的および診断的特徴について解説する.
  • 加藤 格, 真部 淳, 小川 千登世, 森本 克, 細谷 亮太
    2006 年 20 巻 2 号 p. 98-100
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は, 小児領域において, しばしば遭遇する血液疾患の1つである.粘膜出血, 点状出血と比べ, 肉眼的血尿はITPとしてはまれな表現形式である.今回われわれは, 肉眼的血尿を初発症状として発見されたEBウイルス初期感染によるITP症例を経験したので, ここに報告する.
  • 松永 貴之, 山本 詩子, 宮本 健志, 仲島 大輔, 坪井 龍生, 萩澤 進, 福島 啓太郎, 黒澤 秀光, 杉田 憲一, 金兼 弘和, ...
    2006 年 20 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    X連鎖無γグロブリン血症 (X-linked agammaglobulinemia; XLA) は, γグロブリン置換療法開始前に約20%の頻度で好中球減少症を合併し, 合併例における緑膿菌敗血症は致死的である.症例は1歳の男児で, 発熱と痙攣精査のため当科紹介となった.入院時の血液検査で低γグロブリン血症 (IgG<150 mg/dl, IgA < 2mg/ dl, IgM l 8 mg/dl) と好中球減少症 (好中球数18/μl) を伴った白血球減少症 (白血球数1,800/μl) を認めた.血液培養では緑膿菌が同定された.髄液検査に異常は認められなかった.抗生物質とγグロブリン製剤の投与にて治療し, 後遺症なく救命された.白血球数および好中球数は感染症の改善に伴い正常数に増加した.Bリンパ球の欠如とBTK遺伝子の変異が認められたことよりX連鎖無γグロブリン血症と診断した.好中球減少症を伴った重症細菌感染症に遭遇した際は, 血清γグロブリン検査を行うことがXLAの早期発見のたあに重要と考えられた.
  • 山本 詩子, 仲島 大輔, 宮本 健志, 杉田 憲一, 江口 光興
    2006 年 20 巻 2 号 p. 105-107
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 今回, 第5子を妊娠した抗HPA-4a抗体陽性の母親の周産期管理を行い, 出生後も良好に経過した症例を経験したので報告する.両親の血小板型および母親の抗HPA-4a抗体価の強陽性所見から, 重篤な同種免疫性血小板減少症 (NAIT) であった第2子と同様に, 第5子もNAITを発症する可能性が高いと予想された.このため, 妊娠中の超音波検査などによる慎重な経過観察と, 出生後には母と同型の血小板輸血の準備をし, 帝王切開で児を娩出した.出生後はただちに免疫グロブリン治療を行った.その結果, 血小板数減少は軽微 (血小板数最低値;11.7×104/ul) で, 良好な経過を得た.前子がNAITであった場合の次子の対応には, 十分な周産期管理が必要と思われた.
  • 木村 千春, 小嶋 靖子, 小原 明, 月本 一郎
    2006 年 20 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    A香港型インフルエンザウイルス感染による肺炎罹患時に, 血球貪食症候群Hemophagocytic syndrome (HPS) を呈した1歳女児例を経験した.骨髄血のEpstein-Barr (EB) ウイルスクローナルバンド, 血清のEBウイルスのコピー数の著増, その後のEBウイルスの抗体価の推移から, EBウイルス初感染とインフルエンザウイルスとの混合感染を契機としてHPSを呈したものと考えた.γグロブリン製剤, ステロイド, およびシクロスポリン投与にて寛解した.経過は通常のEBウイルスによるHPSに比較し軽症であった.
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