日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
21 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 杉田 完爾
    2007 年 21 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    近年の小児急性リンパ性白血病 (acute lymphoblastic leukemia, ALL) に対する化学療法の進歩にもかかわらず, Philadelphia染色体陽性ALLやMLL遺伝子に再構成のあるALLは依然として難治性である.この二大難治性ALLを攻略するためには, 臨床的・分子遺伝学的アプローチに加えて白血病細胞の生物学的特性に関するアプローチによって難治性白血病細胞の『弁慶の泣き所』を探し出すことが重要となる.本総説では, まず二大難治性ALLの染色体転座・融合遺伝子・融合蛋白, 白血病化の機序, 臨床像, 抗原発現, 癌抑制遺伝子, DNAチップ解析に関して, 現在までにわかっていることを概説し, 次に二大難治性ALLの細胞株, 化学療法剤に対する感受性, サイトカイン受容体の発現と機能, 分子標的療法, 細胞障害分子に対する感受性について, われわれのデータを中心に紹介するとともに, 臨床応用へ向けた現状について触れる.
  • 杉田 憲一, 有阪 治
    2007 年 21 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    内分泌障害は, 小児白血病の長期生存者の晩期障害でもっとも頻度が高く, 重要なものである.本論文では, 内臓脂肪肥満, 耐糖能異常, 高脂血症, 高血圧からなるメタボリック症候群の発症を, 幹細胞移植症例を中心に記述した.これまでの報告では, 幹細胞移植後の晩期障害としてのメタボリック症候群の頻度は高いとするものと高くないとするものなど一定していない.また, これまでの報告から結論するのは難しいが, 以下の2点は確かと思われる.第1に, 幹細胞移植後の検査所見で高脂血症は高頻度に存在する.第2に, 幹細胞移植後のより長期の経過観察でメタボリック症候群は増加する可能性が高い.肥満を含め発症の原因に放射線治療が重要なものとしてよく知られている.それに加えて, 最近インスリン抵抗性や肥満が慢性の全身性炎症, とくに肝炎と脂肪組織の炎症に深い関わりがあること, 脂肪細胞と脂肪組織に浸潤したマクロファージ間で脂肪酸とTNFαを含めての悪循環が成立することが報告されている.このことは, 慢性の炎症と近似した病態の慢性GVHDで産生されるサイトカインがメタボリック症候群を発症させる可能性があると考えられ, 実際の報告もある.結論として, より有効な結果を得るためには, 長期の経過観察と前方視的研究が計画されるべきと思われる.
  • 森口 直彦, 石田 也寸志, 加藤 剛二, 鬼頭 敏幸, 篠田 邦大, 水江 伸夫, 西村 真一郎, 中畑 龍俊
    2007 年 21 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児白血病研究会 (JAcLs) ALL-02のプロトコール治療における重症感染症の発生状況を検討した.2003年6月から2004年5月までの1年間の急性リンパ性白血病 (ALL) 登録症例数は223例で, 62症例の感染症の報告があり, このうち49症例は末梢血好中球500/pa1未満で感染症をきたしていた.好中球減少時の感染症の起炎菌では, グラム陰性菌が32.7%, グラム陽性菌は59.2%で, 真菌は8.2%であった.グラム陽性菌, グラム陰性菌の敗血症では, すべての症例が初期の抗菌剤に反応して軽快治癒していたが, 好中球減少時の真菌感染では治療抵抗例があり, このうち全身性Candida症をきたした2症例, Aspergillusの1例で病変が消失せず, これらの3症例ではALL-02プロトコール治療は中止になった.ALL治療での発熱に対しては, 低頻度ながら難治性の深在性真菌症がみられることより, 広域の抗生剤によるempiricaltherapyとともに, 真菌に対する予防と治療管理が重要と思われた.
  • 山下 敦己, 大井 千愛, 瀧 正志
    2007 年 21 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Fontan手術の9ヵ月後に脳塞栓症を発症した5歳の男児を経験した.プロテインC, プロテインS, アンチトロンビン, ヘパリンコファクターIIおよびプラスミノゲンに異常は認めず, ループスアンチコアグラント (LA) も陰性で, 凝血学的な血栓性素因を認めなかった'本症例の血栓症発症の要因は, Fontan術後特有の循環動態によるものと考えられ, 散発する心室性期外収縮が増悪因子として関与した可能性が考えられた.Fontan術後の血栓症は予後を左右する重大な因子であり, エビデンスに基づいた術後の抗血栓療法のガイドラインの策定が待たれる.
  • 福島 優理, 吉田 幸一, 黒澤 知子, 櫻井 嘉彦, 安原 肇, 高橋 幸博, 嶋 緑倫, 吉岡 章
    2007 年 21 巻 1 号 p. 29-31
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    臍出血で発症し, 集中治療管理を必要とした血友病Aの新生児例を経験した.臍帯脱落後, 出血が持続したため, 硝酸銀焼灼と圧迫止血を試みたが止血できず, 顔色不良となったため当院小児科を紹介された.PTは正常であったが, APTTは180秒以上と著明に延長していたため, 血友病を疑いただちに精査を行ったところ, 第VIII因子活性は1%未満, 第IX因子活性46%であったことから血友病Aと診断した.臍出血に対してはすみやかに第VIII因子製剤を投与し止血できたが, 出血により急激に貧血が進行したためMAP血の投与を余儀なくされた.血友病は新生児期の発症が少ないことから診断に難渋し, そのため治療開始の遅れから重症化を招くことがある.新生児期の出血傾向を診療する際には, 血友病も念頭に入れたうえで, 早期に的確な診断を行い, 凝固因子製剤投与の判断を行う必要があると思われた.
  • 犬飼 岳史, 根本 篤, 赤羽 弘資, 広瀬 衣子, 高橋 和也, 佐藤 広樹, 合井 久美子, 杉田 完爾, 中澤 眞平
    2007 年 21 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    成人型呼吸窮迫症候群 (ARDS) は, 好中球による肺障害がおもな病態である.われわれは, 急性リンパ性白血病の強化療法中にARDSを発症した症例を経験した.症例は12歳の女児.強化療法中の無好中球状態で発熱し, 中心静脈カテーテルの血液培養でα溶血性連鎖球菌 (α-Strept) が検出された.抗生剤投与で解熱したが3日後から再び発熱し, 顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) の投与を開始した.8日後の白血球数は140/μlであった.9日後に突然呼吸停止をきたし, 胸部X-Pで両側肺野に浸潤影を認めARDSと診断した.白血球数は800忽1に増加していた.多臓器不全のため5時間後に死亡した.無好中球状態で発症したα-Strept敗血症では約10%にARDSの併発が報告されており, 本症例でもα-Strept敗血症がARDSの誘因と考えられた.本症例は, G-CSF投与による好中球増多でARDSを発症した症例に多く認められるHLA-B51を有しており, ARDSを発症した背景となったと考えられる.
feedback
Top