日本小児血液学会雑誌
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最新号
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  • 加藤 元博, 小川 誠司
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 323-330
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性リンパ性白血病 (ALL) は, さまざまなゲノム異常を背景として発症する.しかし, これまで報告されているゲノム異常は白血病細胞の発生に重要ではあるが, 小児ALLの病態のすべてを説明することはできない.一方, 近年のゲノム解析技術の進歩は目覚ましく, マイクロアレイを用いた解析により, 網羅的かつ高解像度にゲノムに生じている異常を検出することが可能となった.さらにわれわれが開発したCNAG/AsCNARアルゴリズムで解析を行うことで, 2本のアレルのそれぞれについてコピー数を推定することができ, かつ正常対象が得られない検体や, 正常細胞が70-80%混入した検体においても高精度なアレル特異的ゲノムコピー数の解析が可能となった (molecular allelo-karyotyping).この手法を用いて小児ALL399例を体系的に解析した結果, 発症の基盤となるゲノム異常のプロファイルが明らかになり, PAX5をはじめとしたB細胞の分化に関与する遺伝子の異常が小児ALLの病態形成に重要であることが示された.
  • 別所 文雄
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 331-339
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    光学顕微鏡による形態学的観察は血液学を学ぶための基本である.光学顕微鏡による観察は, 光源から発して標本を透過してきた光をみることにほかならない.したがって, 満足のいく観察のためには, 試料が適切であり, それから作られた標本が適切な処理により作られていることはもとより, 質の良い光が必須である.骨髄を試料とする場合には, 骨髄小片が含まれているかどうかがその質の判定上重要である.質の良い標本とは, 正しい約束事に基づいて作られていて, 適当な観察面が広いものである.適当な観察面とは, 赤血球が重ならずに分布し, 中心部が薄い円板状にみえる部分である.質の良い光は, Köhler照明によって得られる.視野絞り, 開口絞り, コンデンサーの位置を調整することにより, 明るくかつコントラストの良い像を得ることができる.
  • 小児白血病研究会 (JACLS) におけるアンケート調査
    梅田 雄嗣, 太田 秀明, 茶山 公祐, 力石 健, 石田 宏之, 渡邊 修大, 松本 公一, 原 純一, 鈴木 信寛
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 340-346
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    小児白血病研究会 (JACLS) 全参加施設にアンケート用紙を送付し, 同種造血幹細胞移植後の小児患者へのワクチン接種の現状調査を行った.回収率は66.7% (66/99施設) であった.34.1%の施設がEBMT, CDC等のガイドラインを用いていた.免疫抑制剤中止患者群の接種率は不活化・トキソイドワクチン86.8%, 生ワクチン86.8%, 免疫抑制剤少量投与患者群の接種率は不活化・トキソイドワクチン30.2%, 生ワクチン11.3%であった.半数以上の施設で免疫学的回復を指標として開始していた.一部の施設では免疫抑制少量投与患者に対しても水痘, ポリオ (弱毒生) ワクチンを接種していた.また, 多くの施設で生ワクチンを移植後6または12ヵ月に接種していたが, 重篤な副作用は認めなかった.今後, 移植後早期のワクチン接種の安全性・効果を考慮する際, 免疫回復の指標の有用性を評価する前向き研究が必要である.
  • 石原 卓, 安井 昌博, 中山 京子, 近藤 統, 小山 真穂, 澤田 明久, 井上 雅美, 河 敬世
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 347-353
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    (1) 腫瘍崩壊症候群が懸念されたり, 通常の化学療法では寛解を得られない症例のcytoreductionを図り, 化学療法や移植につなぐ, (2) 非寛解期症例で移植前処置の一部として腫瘍量減少を図る, (3) 非悪性疾患で移植片の生着率を高めるためのcytoreductionと免疫抑制の強化を図ることを目的に, 2002年3月から2007年6月までに35例 (延べ52コース) のetoposide 30mg/m2/day+cytarabine 20mg/m2/dayの持続静注を施行した.35例中白血病 (非寛解期) が27 例;急性骨髄性白血病 (AML) 17例, 急性リンパ性白血病 (ALL) 10例, その他8例であった.目的 (1) で延べ46コース施行し, 32コースで, 目的 (2) では延べ17コース施行し, 13コースで末梢血から白血病細胞の消失をみた.目的 (3) で延べ6コース施行し, 本法投与終了直後の白血球数の減少率は88.3%であった.有害事象は口内炎など計8コース (15.3%) で認めた.本法は, 副作用も軽度でcytoreductionに有効であり, 根治療法までの「つなぎ」として有用であった.
  • 単一施設での37年間の経験
    大久保 淳, 浜之上 聡, 岩崎 史記, 福田 邦夫, 松本 正栄, 井上 裕靖, 田渕 健, 田中 祐吉, 気賀沢 寿人
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 354-359
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    多彩な臨床経過をたどるランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis : LCH) の臨床経過と転帰を明らかにするため, 当センターが開設した1970年より2007年までのLCH症例に対する後方視的検討を行った.対象は50例, 診断時年齢の中央値は3.6歳, 平均追跡期間は8.0年であった.診断時の病型はSS型が29名, SM型は10名, MM型は11名であった.死亡例は4例 (8%) で, 全例は1988年以前に治療を受けた2歳未満で発症した多臓器多病変型であった.生存率は単一臓器病変群39例で100%, 多臓器病変群11例では63.6%であった (p=0.00008).再燃率はSS型で21%, SM型で40%, MM型で71%であった.SM型, MM型の25%が診断から10年以上経過しても再燃がみられた.後遺症は生存例の26%にみられ, SS型, SM型, MM型では8%, 60%, 72%にみられた.尿崩症が4例, 整形学的異常が4例, 甲状腺機能低下が3例にみられた二次がんはみられなかった.
  • 神波 信次, 芳山 恵, 中山 京子, 吉川 徳茂
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 360-365
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病維持療法中に生じたPneumocystis pneumonia (PCP) の3症例を報告する.全例trimethoprim- sulfamethoxazole (TMP- SMX) 予防内服をしていなかった.菌体の証明はできなかったが, 急速に進行する低酸素血症, 画像所見, 血清β-Dグルカン高値, 他の感染症の否定, 入院後の治療経過から, PCPと診断した.高フェリチン血症, 血清可溶性IL-2レセプター高値, 尿β2ミクログロブリン高値がみられ, 骨髄検査を実施した1例で血球貪食像がみられた. TMP-SMXにステロイド併用が有効で, ステロイド使用が遅れた症例では呼吸障害は増悪し, 検査所見, 胸部X線所見も悪化した. PCPの病態を修飾する宿主の免疫反応に対するステロイドが有効と考えられた.これらの高サイトカイン血症を示唆する検査所見は, PCPにおけるステロイド使用の指標になりうると考えられた.
  • 岡 敏明
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 366-369
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血漿由来第VIII因子製剤 (pd FVIII製剤) による免疫寛容導入療法 (ITI) 開始33ヵ月後も反応不良でITI不成功と判断された7歳の血友病A男児に対し, 第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子製剤 (FVIII/VWF製剤) による救済ITIを行った.FVIII/VWF製剤は1,500単位 (55単位/kg) を週3回投与で開始した.その結果, 救済ITI開始後にインヒビター値は急激に低下した.さらに救済ITI開始8ヵ月後にはインヒビター値は5 BU/ml以下となった.その後インヒビター値は3 BU/ml以下の値が5カ月以上続いており, 部分的成功に達したと判断した (最新値は0.6BU/ ml).また関節内出血や筋肉内出血はほとんど起きなくなり, 患児の生活の質 (QOL) は著しく改善している.この臨床経過から, FVIII/VWF製剤による救済ITIはきわめて有効と思われた.しかし救済ITIの成否と関連するさまざまな要因などについては, さらなる検討が必要である.
  • 大竹 正俊, 森谷 邦彦, 近岡 秀二
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 370-373
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変により死亡したランゲルハンス細胞組織球症の3歳男児例を報告する.入院時検査で胆汁うっ滞所見を認めた.化学療法を行うも肝機能障害が持続した.入院2ヵ月後の経皮的肝生検では門脈域における比較的広範囲の線維化病変とリンパ球浸潤を伴う細胆管増生が認められた.発症5年後より食道胃静脈瘤破裂による吐血を繰り返し, 内視鏡的硬化療法が計10回施行された.生体肝移植が考慮されたが, 種々の理由により実施には至らなかった.発症13年後より腹水および凝固異常が出現した.その2年後に急激な呼吸障害をきたし急死した.剖検では肺出血と肝硬変が認められた.
  • 川崎 圭一郎, 林 耕平, 竹田 洋樹, 長谷川 大一郎, 小阪 嘉之
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 374-377
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    t (6;9) (p23;q34) を有する急性骨髄性白血病 (AML) の12歳男児例を経験した.初回寛解導入療法後に鏡検上は寛解に入ったが, 転座部位に生じるDEK/ CANキメラmRNAは長期間検出され続けた.この症例に対して第一寛解期に非血縁者間同種骨髄移植 (u-BMT) を施行した.移植後の経過は概ね順調で重篤な感染症や移植片対宿主病 (GVHD) は認めず, 生着も比較的速やかであった.移植後の骨髄検査では完全ドナー型キメラを維持しており, DEK/CANキメラmRNAも消失している.t (6;9) (p23;q34) は症例数も少なく, 現在独立した予後因子としては認められていない.今後このような稀有な予後不良核型をもつ症例の移植適応や前処置法などを明らかにするためにも症例のさらなる蓄積が望まれる.
  • 三浦 琢磨, 三間屋 純一, 石井 榮一, 藤沢 康司, 太田 茂, 瀧 正志, 今泉 益栄, 岡 敏明, 梶原 道子, 北澤 淳一, 久保 ...
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 378-381
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の臨床像, 予後と管理の実態を明らかにするため, 本委員会では, 日本小児血液学会評議委員を対象として2000年度から毎年小児ITP全国調査を実施してきた.2007年にも2006年1月から12月までに新たに診断されたITP患児と経過観察症例を対象として同様の調査を行ったので報告する.新規症例167例は男児94例, 女児73例で, 男女比は1.29 : 1で, 平均年齢は3.93±3.63歳であった.年齢別報告数は1歳以下がもっとも多く, 年齢が大きくなるにつれて報告数は減少していた.診断時の血小板数は1万未満がほぼ半数であった.初期治療では, 血小板数が1万未満ではIVIgGの使用比率が80%以上であったが, 血小板数が2万以上の症例では無治療経過観察の割合が多かった.慢性型は26.4%であり, 年齢が高いほど慢性型の頻度は高く, ワクチン接種後のITPでは慢性型の頻度は非常に低かった.慢性型の経過観察症例は199例で, 48例は無治療であり, 脾摘は28例に行われていた.
  • 北澤 淳一, 三浦 琢磨, 白幡 聡, 高橋 幸博, 石井 榮一, 今泉 益栄, 太田 茂, 岡 敏明, 梶原 道子, 久保田 優, 瀧 正 ...
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 382-384
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    日本小児血液学会ITP委員会で行ってきた症例登録事業から抽出したワクチン接種後発症特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) について検討した.2000-05年発症のワクチン接種後発症ITPは8例で, 年齢0-6歳, 男児7例, 風疹ワクチン接種後が5例, dry purpuraが6例, 慢性化例は2例であった.2006年発症のワクチン接種後発症ITPは18例で, 年齢0--9歳, 男児8例, 先行感染あり8例, dry purpuraのみが13例, 慢性化例は1例であった.今後の調査により接種されたワクチンを明らかにする必要がある.ITPに限らずワクチンの副作用について大規模でシステム化された調査が必要である.
  • 管理ガイドライン作成に向けて
    三間屋 純一, 白幡 聡, 石井 榮一, 今泉 益栄, 太田 茂, 岡 敏明, 梶原 道子, 北澤 淳一, 久保田 優, 高橋 幸博, 瀧 ...
    2008 年 22 巻 5-6 号 p. 385-390
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 患者の入院基準および運動など日常生活指導は各医療施設, 主治医によりさまざまであるため, 患者家族にも戸惑いがみられる.今回日本小児血液学会ITP委員会では2006年に日本小児ITP研究会で研究会会員所属の施設を対象に施行した [小児ITPのQOL調査] の結果を参考に管理ガイドラインの作成を試みた.本ガイドライン案は患者の年齢, 性別, 家庭環境, 施設の状況などさまざまな社会的な要因があり, 一概に統一することはできないが, 医学的なおおよその目安となるであろう.
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