日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
22 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 海老原 康博
    2008 年 22 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    線維芽細胞はさまざまな組織において, サイトカインなどの成長因子の分泌や細胞外マトリックスの産生にとって重要な役割を果たしている.組織が損傷を受けた場合には, 炎症反応を制御する役割を担っていると考えられている.これまでは, 線維芽細胞や筋線維芽細胞は局所組織で産生されると考えられてきたが, 近年, 骨髄由来であることが明らかにされた.単一造血幹細胞由来の細胞を移植するマウスモデルが開発され, 従来, 間葉系幹細胞由来であると考えられてきた線維芽細胞や筋線維芽細胞の中に造血幹細胞由来のものも存在することが示された.線維芽細胞や筋線維芽細胞は病的状態だけではなく, 定常状態維持にとって重要であるため, 線維芽細胞や筋線維芽細胞への分化のメカニズム解明は再生医療を考えるうえで, 興味深いと考えられる.
  • 白血病発症をめぐって
    右田 真, 島田 隆
    2008 年 22 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    2000年代に入り, それまで大きな副作用はないものの, はっきりとした治療効果を認めることができなかった遺伝子治療の様相は一変した.X連鎖免疫不全症 (X-SCID) に対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治療の成功が現実のものとなった一方で, 遺伝子治療を受けた患者の造血細胞に遺伝子の挿入変異が起こり, 白血病が発症するという重大な副作用が報告された.このことは, ヒトの遺伝子を操作することに対する危険性を楽観視したことに対して警鐘をならすと同時に, 遺伝子治療研究が新たな段階に入り, 新たな時代を迎えようとするものであり, これまで以上の基礎研究の重要性を示すものである.
  • 東京小児がん研究グループ (TCCSG) 13次および14次研究より
    富澤 大輔, 木下 明俊, 田渕 健, 井田 孔明, 太田 節雄, 清谷 知賀子, 小池 和俊, 高橋 浩之, 黒澤 秀光, 気賀沢 寿人, ...
    2008 年 22 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    TCCSG M91-13およびM96-14研究 (1991~1998年) に登録された急性骨髄性白血病 (AML) の乳児症例について, 臨床像および予後の検討を行った.乳児例ではFAB分類上M4/M5 (58.4%) とM7 (25.0%) が約80%を占め, 1歳以上の症例の2倍以上の比率であった.染色体では11q23異常 (20.8%) の比率が高かった一方, t (8; 21) を示す例がないなど1歳以上とは異なる所見を示した.乳児例 (n=24) と非乳児例 (n=168) の5年無イベント生存率はおのおの49.4%± 20.2%対55.2%± 7.5%で差はなかった (p=0.46).乳児例では感染合併症死亡の比率が高く, 寛解導入中に観察されたイベントの60.0% (3/5), 全イベントの41.7% (5/12) を占めた.乳児AMLに対する化学療法において感染合併症対策は重要であり, とくに寛解導入中の対策が今後の課題と考えられた.
  • 柳町 昌克, 後藤 裕明, 横須賀 とも子, 薬袋 周, 藤井 久紀, 黒木 文子, 高橋 浩之, 横田 俊平
    2008 年 22 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植 (SCT) が必要な症例においてHLA一致骨髄ドナーが得られない場合, 代替ドナーの選択基準は必ずしも明らかではない.当科では移植片対白血病 (GVL) 効果誘導を期待して, HLA一致骨髄ドナーが得られなかった2例の小児再発急性骨髄性白血病患者に対し, 母子間マイクロキメリズム陽性を確認したnon-inherited maternal antigen (NIMA) 相補的同胞からのSCTを施行した.いずれの症例でも速やかな生着が得られ, 初期には重症移植片対宿主病 (GVHD) の発症はみられなかったが, ドナーリンパ球輸注療法や免疫抑制剤の急速減量に伴い重症肺GVHDを発症した.NIMA相補的同胞からの移植後免疫療法の危険性が示唆された.
  • 岩田 あや, 梅田 雄嗣, 丹羽 明, 由井 理洋, 平松 英文, 渡邉 健一郎, 足立 壮一, 中畑 龍俊
    2008 年 22 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    骨髄移植後に重症アスペルギルス感染症を発症した小児2例に対してボリコナゾール (VCZ) を含む抗真菌薬多剤併用療法を行った.症例1はALLの4歳女児で, 骨髄移植後再々発し, 少量抗癌剤治療中にβ-D-グルカン値が著明に上昇し, アスペルギルス抗原が検出された.ミカファンギン (MCFG) + amphotericin-Bは無効で, VCZを追加投与したところ著効した.症例2は慢性肉芽腫症の15歳男児で, 移植片拒絶に対するドナーリンパ球輸注後, 急性GVHDを発症しtacrolimusとmethylprednisoloneを投与中にアスペルギルス肺炎を発症した.MCFG+ VCZの2剤を投与し, 3カ月後には著明に改善した.2症例とも抗真菌薬多剤併用療法は非常に有効で重篤な副作用も認めなかった.造血幹細胞移植後はVCZと相互作用のあるさまざまな薬剤を併用するため, 血中濃度モニタリングは非常に有用であった.
  • 外松 学, 朴 明子, 嶋田 明, 林 泰秀
    2008 年 22 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    遷延する肝機能障害を呈するtransient abnormal myelopoiesis (TAM) と診断したダウン症候群児に対して確定診断のため肝生検を実施した.組織学的にはTAMに特徴とされる肝の線維化, 芽球の浸潤等は認められず, 毛細胆管に胆汁うっ滞があり小葉間胆管の発達不全が認められ, nonsyndromic paucity of inter-lobular bile ducts (Ns-PILBD) と診断された.高度の肝機能障害を伴うTAMではNS-PILBDも鑑別に入れるべきであると考えられた.
  • 小林 千恵, 小嶋 靖子, 三井 一賢, 小池 和俊, 中嶋 玲子, 清水 崇史, 福島 敬, 佐藤 武幸, 土田 昌宏
    2008 年 22 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Bu, CY, VP16の前処置で非血縁臍帯血移植を行い, 重症の肝VODを発症した乳児白血病症例を経験した.乳児白血病プロトコールに従い, Bu投与量は試験投与により1回2mg/kg (目標血中濃度676ng/ml) と決定したが, 本投与時にはクリアランスが低下し, 平均血中濃度は967ng/mlと予測値を上回った.移植後day6頃より血小板輸血不応, 肝腫大, 腹水貯留, 体重増加 (+57.7%) を認め, 肝VODと診断した.呼吸管理・輸液管理に加え, 活性型プロテインC製剤を6日間投与した.VODはday60までに軽快, 原病は移植後30ヵ月以上寛解を維持している.Bu血中濃度が高値となったことが肝VODの発症に関与した可能性はある.また肝VODに対する治療として活性型プロテインC製剤の投与は試みる価値がある.
  • 原井 朋美, 種市 尋宙, 榊 久乃, 野村 恵子, 金兼 弘和, 宮脇 利男
    2008 年 22 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Klinefelter症候群に縦隔胚細胞腫瘍を合併した13歳男児例を経験した.初診時より著明な女性化乳房を認め, 当初はKlinefelter症候群の一症状と考えていた.初診時血清中のAFPおよびβ-hCGは著明な高値を示した.胚細胞腫瘍は化学療法と摘出術施行後に完全寛解となり, 同時に女性化乳房も改善した.自験例における著明な女性化乳房はKlinefelter症候群のみならず, β-hCG産生胚細胞腫瘍によるものと考えられた.
  • 加藤 宏美, 田野島 玲大, 後藤 晶子, 高橋 浩之, 甲斐 純夫
    2008 年 22 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    寒冷凝集素価が非常に低値であるにもかかわらず高度の溶血発作をきたした, 低力価寒冷凝集素症の小児例を経験した.症例は3歳男児で, 発熱と下痢に引き続き黄疸が出現, 傾眠状態となり入院した.検査所見上, ヘモグロビン5.7g/dlの著明な正球性正色素性貧血を認め, 直接ビリルビン増加, LDH上昇, ハプトグロビン低値などより溶血性貧血と考えられた.直接クームス試験では抗C3bC3dと抗C3dが陽性, 抗IgMが弱陽性で, 抗IgGは陰性であった.患児血清による赤血球凝集試験では低温でのみ陽性を示したが, 寒冷凝集素価は32倍と低値であった.しかし他の溶血性貧血が除外された結果, 低力価寒冷凝集素症と診断した.室内加温 (30℃) とプレドニゾロンで治療を開始し, 翌日ヘモグロビンが3.9g/dlまで低下したため, 加温MAP血の輸血を行った.以後再溶血発作なく寛解し, 発症後1年半経過した現在まで再燃を認めていない.
  • 小原 明
    2008 年 22 巻 1 号 p. 52
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 日本小児血液学会再生不良性貧血委員会疫学調査1988-2005年
    小原 明
    2008 年 22 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血委員会で追跡調査している1988~2005年診断の特発性再生不良性貧血1,002例, 肝炎後129例, 二次性8例, Diamond-Blackfan貧血98例, Fanconi貧血89例, 先天性重症好中球減少症36例, その他の先天性造血障害49例, 総計1,411例について, その臨床像と予後について述べた.特発性再生不良性貧血の10年生存率は, 1994-2000年診断の414例で86.7% (95%信頼区間82.6-90.8%) であり, 免疫抑制療法や非血縁者間同種骨髄移植などの治療の進歩により, 診断時重症度分類による予後の差は消失している.診断後長期経過した症例の死因は移植関連死亡が多い.1994年以後診断症例では, 肝炎後再生不良性貧血, Fanconi貧血ともに予後が改善し, それぞれの10年生存率は92.7%, 83.8%であった.MDS白血病移行症例は1994年以後減少し, 年間1例ほどである.2006年以後, 診断症例は小児血液学会疾患登録事業により一元的に登録されるようになった.今後の小児造血障害データベースは, より精度の高いものになることが期待される.
  • 研究実施計画書改訂第1.1版
    小原 明
    2008 年 22 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 小島 勢二, 谷ヶ崎 博, 高橋 義行
    2008 年 22 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    わが国においては, 小児再生不良性貧血 (再不貧) に対する前方視的な多施設共同研究が1993年から開始され, これまでに500人以上の症例のデータが蓄積されている.免疫抑制療法と同種骨髄移植の治療成績はともに向上したが, なかでも非血縁者間同種骨髄移植の治療成績の向上は著しい.最近10年間の小児重症再不貧患者の長期生存率は90%を超えている.以前に, わが国から免疫抑制剤とG-CSFの併用療法を受けた再不貧患者から, 高頻度に2次性の骨髄異形成症候群 (MDS) や急性骨髄性白血病 (AML) が発症することが報告されたが, 前方視的多施設共同研究が開始されてからは, モノソミー7をともなう2次性MDS/AML発症頻度は著しく減少した.
feedback
Top