日本小児血液学会雑誌
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6 巻, 1 号
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  • 秋山 祐一
    1992 年 6 巻 1 号 p. 2-15
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性骨髄性白血病の世界各国における治療の現状を紹介した.化学療法の過去10年間を振り返ると治療体系の違いで大きく予後因子が変動している.特にM1M2とM4M5の間で治療方法の差が予後に大きく関係し全く逆の結果が報告されている (st.Jude vs BFM).M1M2では従来のAra-Cとアントラサイクリンを主体としたある一定期間の強力な化学療法が有効でVP-16もある程度有効に働いている.M4M5ではVP-16を種々の併用療法として大量に投与するデザインが有効である.Mitoxantrone (MTZ) の第一選択の治療薬としての評価は今後の問題である.小児急性骨髄性白血病はきわめてheterogenousな対象である一方頻度は多くないので, 今後全国的な共同研究によってのみ個別的な病型にあった化学療法の開発が可能になる.各病型における骨髄移植の位置づけは今後の化学療法の成績の改善でsalvage療法の主体となろう.しかし現状では全体の約30%の症例は早期に再発をきたすか寛解導入不能であるのでこのような症例を的確に区別し診断6ヵ月以内に早期のAllo-BMT, ないしAuto-BMTの決断をなすことが重要である.
  • 安友 康二, 高上 洋一, 岡本 康裕, 斎藤 慎一, 田口 義行, 阿部 孝典, 平尾 敦, 佐藤 純子, 渡辺 力, 河野 嘉文, 広瀬 ...
    1992 年 6 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    各種小児癌患者に, 全身放射線療法を用いない超大量化学療法を移植前処置療法として用いて自家末梢血幹細胞移植術 (PBSCT) を施行し, 移植術後2週以内に発生した心肺合併症について検討した.移植患者32名中9名になんらかの心肺合併症が発生し, その内1名は薬剤治療を要する心不全をきたした.合併症発生頻度を, 心毒性があるanthracycline系薬剤の総投与量240mg/m2以上群と未満群, あるいは移植前処理療法に用いた薬剤の種類について比較したが, 有意差を認めなかった.心肺合併症の症状は輸液制限により4名で改善し, 残り5名ではカテコールアミン療法を要したが, いずれも早期に治癒し, 後遣症も残さなかった.化学療法の既往を有する小児では多量の輸液投与により容易に心肺機能の過負荷が生じると思われ, 適切な輸液管理とともに, 合併症発生例に対しては早期にカテコールアミン療法を選択すべきと思われた.
  • 気賀沢 寿人, 小田 孝憲, 縄田 淳, 本多 康次郎, 豊田 恭徳, 西平 浩一, 長尾 大
    1992 年 6 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 無菌ベッドでの骨髄移植を1982年6月から1990年3月までに, HLA適合同種骨髄移植19例, 不適合6例, 自家骨髄移植13例, 計38例に施行した.移植後の感染死は2例であった.1例は神経芽腫で真菌感染, 他の1例は生着の得られなかった悪性リンパ腫であった.GradeIVのGVHDで死亡したのは2例で, ともにHLA不適合移植例であった.現在の成績は, HLA適合同種骨髄移植19例中13例が再発なく生存中, 6例死亡 (再発4例, 肺線維症1例, 真菌感染1例) であった.HLA不適合移植では6例中2例が生存, 4例死亡 (GVHD2例, 再発1例, 脳梗塞1例), 自家骨髄移植では13例中6例が再発なく生存し, 7例が死亡 (再発6例, 感染1例) した.感染および重第なGVHDによる死亡が少ない結果から, 無菌ベッドでの移植は小児科領域では簡便で有用と考えられる.また死因として再発が最も多いことから, 予後不良例に対するより有効な前処置の考案が必要である.
  • 長尾 大, 石川 正明, 太神 和廣, 堀尾 恵三, 別所 文雄, 藤巻 道男, 福武 勝幸, 星 順隆, 成宮 正朗, 生田 治康, 木村 ...
    1992 年 6 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病患者では, 血液製剤の補充療法によるHIV, 非A非B型肝炎等の感染が問題となり, 加熱や化学処理によるウィルス不活化処理製剤が開発されている.今回, 有機溶剤/界面活性剤 (S/D) でウイルスを不活化し, 抗第皿因子モノクローナル抗体により純化精製した第皿因子濃縮製剤, ヘモフィルMのこれらのウィルスに対する安全性を検討した.血液製剤の投与歴のない血友病A患者10例 (年齢 : 8ヵ月~54歳, 平均13.3歳) において, ヘモフィルM初回投与後5~24ヵ月間追跡調査した.AST.ALT等の肝疾患マーカーの上昇, HIV抗体, HCV抗体の陽性化は認められず, ヘモフィルMによるHIV, HCVの感染の徴候は認められなかった.臨床的に, ヘモフィルMはこれらのウイルス感染に対し安全な製剤と考えられる.なお, 1992年3月より, 日本赤十字社が献血血漿をヘモフィルMの製法を用いて処理した第皿因子製剤 (クロスエイトM) を供給する予定である.
  • 非照射聖域治療の評価を中心に
    堀部 敬三, 岩村 春樹, 小島 勢二, 松山 孝治, 子安 春樹, 小崎 武, 岩間 正文, 高島 芳樹, 久野 邦義, 矢崎 雄彦
    1992 年 6 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性リンパ性白血病88例をプロトコール8104で治療した.標準危険 (SR) 群では, 中枢神経系 (CNS) 予防として頭蓋放射線照射を行わず, 髄注を併用してmethotrexate500mg/m224時間点滴を3回行った.高危険 (HR) 群に対しては, 24Gy頭蓋照射を行った.生存観察期間は, 46~114ヵ月 (中央値80カ月) である.6年event-free survivalは, SR群で45.8%, HR群で41.9%と差はないが, overall survivalでは, SR群が75.7%で, HR群の53.1%に比べ, 有意に高かった (P<0.03).再発率は, SR群が48.7%, HR群が41.9%と両群に差はないが, 髄膜単独例は, SR群で20.5%とHR群の7.0%に比べ高かった.HR群では, 診断後18ヵ月以内に12例が再発し, SR群の3例に比べ有意に多く (P=0.017), 早期治療の強化が望まれた.再発例の予後は, HR群全再発例とSR群骨髄再発例できわめて予後不良であったが, SR群髄外再発例は再発後も長期生存が期待できた.
  • 日本小児血液学会骨髄移植委員会
    1992 年 6 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    日本小児血液学会骨髄移植委員会は, 1983年より毎年, 我が国小児における骨髄移植の全国集計を行っている.1991年6月30日現在, 61施設において1,013例の造血幹細胞移植が行われていた.その内, 自家骨髄移植と末梢血幹細胞移植は, 主として血液・固形悪性腫瘍に行われており, 前者は262例 (137例生存), 後者は101例 (74例生存) に行われていた.同系・同種骨髄移植ならびに胎児肝細胞移植は, 646例に行われていた.その内, 急性リンパ性白血病は184例 (97例生存), 急性非リンパ性白血病は162例 (106例生存), 成人型慢性骨髄性白血病は51例 (35例生存), 若年型慢性骨髄性白血病は5例 (2例生存), 非Hodgkinリンパ腫は29例 (21例生存), 固形悪性腫瘍は14例 (6例生存), 重症再生不良性貧血は120例 (108例生存), 重症複合免疫不全症は31例 (13例生存), その他が50例 (39例生存) であった.
  • 小林 治, 武 弘道
    1992 年 6 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    放射線学上hair-on-end pattern (逆立った髪) と呼ばれる頭蓋骨の肥厚を認めた鉄芽球性貧血の一例を報告した.患者は10歳女児で, 著明な頭囲の拡大と前頭部の突出を認めた.骨髄検査で多数の環状鉄芽球があり, 赤芽球内のδ-aminolevulinic acid合成酵素活性の低下により鉄芽球性貧血と診断した. Hair-onend patternは慢性の著しい造血の充進を示唆しており, 著者の調べた限りでは先天性の溶血性貧血での報告はあるが鉄芽球性貧血での報告はないため報告する.
  • 三浦 琢磨, 中村 満, 後藤 亮, 鈴木 孝美, 小佐野 満, 目黒 嵩, 山田 兼雄
    1992 年 6 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ウロキナーゼによる血栓溶解療法が著効を示した新生児の血栓症の1例を報告した.患児は生後9日の男児でB群溶連菌による敗血症・髄膜炎の経過中DICを合併した.ヘパリンによるDICの治療中患児は右第1趾の動脈血栓症を合併した.ウロキナーゼを6,000U/kg/day2時間かけて静注したところ治療開始日より血栓症は徐々に軽快していった.ウロキナーゼは新生児の動脈血栓症にもきわめて有効である.
  • 宮島 雄二, 片山 功, 堀部 敬三
    1992 年 6 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    乳児急性リンパ性白血病 (ALL) の3例を経験し, いずれも初回寛解を維持し生存中であるので報告した.年齢は8ヵ月から10ヵ月で, 初診時の白血球数は症例1が10.8×103/μl, 症例2はlo6×103/μl, 症例3は388×103/μ1で, 3例とも肝脾腫は認めたが中枢神経系への浸潤はなかった.表面マーカーの結果は, 症例1はCD10陰性, 症例2と3はCD10陽性, CD19陽性であった.染色体分析の結果は, 症例1は低2倍体であったが3例とも構造異常はなかった.治療は, 多剤併用による化学療法および大量メソトレキセート静注と髄注による中枢神経系再発予防療法を行い, 頭蓋放射線照射は併用しなかった.症例1は4年間, 症例2, 3は8ヵ月間で治療終了とし, それぞれ治療終了後13ヵ月から3年4ヵ月間初回寛解を維持し生存中である.乳児ALLは一般に予後不良とされているが, 今回の症例のように年齢が6ヵ月以上で染色体分析で構造異常を伴わない症例は, 比較的良好な予後が期待でき, 乳児に多い11p23に切断点を持つ症例とは異なった治療に対する反応を示す可能性が考えられた.
  • 右田 真, 村上 由加里, 五十嵐 徹, 渡辺 淳, 小松崎 英樹, 伊藤 保彦, 金子 清志, 福永 慶隆, 山本 正生, 並松 茂樹
    1992 年 6 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は, CALLの7歳の男児.東京小児白血病研究グループ (TCLSG) 11次案S2プロトコールに従い, 初回寛解を持続してきたが, 3年目の維持療法中に急激な貧血と血小板減少をきたした.骨髄は, 低形成で, ウイルス抗体価, DNA診断にてヒトパルボウイルスB19 (B19) 感染による骨髄不全と診断した.B19に対する抗体の産生に伴い, 貧血と血小板減少を認めてから1ヵ月後に, 血液所見の改善をみた.B19感染は, 白血病治療経過中のような, ある種の免疫抑制状態の患児では, 骨髄不全を惹起する可能性が示唆される.
  • 藤波 彰, 阪田 まり子, 田窪 良行, 迫 正廣, 中川 喜美子, 小西 省三郎
    1992 年 6 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 1992/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    12歳男子, 腹水を主訴として入院したB細胞悪性リンパ腫の1例について報告した.Vincristine (以下VCRと略す), cyclophosphamide (以下CPMと略す) の治療により尿酸腎症を併発したが, 4日間で軽快した.次いで強化療法中に腎障害を併発した.この腎障害はmethotrexate (以下MTXと略す) 大量療法によるものと考えられた.尿酸腎症, MTX腎症ともに後遺症なく軽快し, 発病後2年7ヵ月寛解を続けている.腹水が大量に存在するときには, 尿酸腎症を十分に考慮しなければならない.
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