症例は14歳の女児で, 1986年10月, 関節痛を主訴に当科入院となった.入院時, 芽球が末血に5%, 骨髄に76.4%認められ, その形態はFAB分類L2であった.細胞表面マーカー検査では, CD2, CD3, CD8が陽性, E-ロゼットも陽性であり本例をT-ALLと診断した.ALLプロトコールに従って治療開始し5週後に完全寛解を得たが, 1989年7月, 左乳房に再発した.免疫組織染色で芽球はTcell系のマーカーを有していた.治療により腫瘤は消腿したが, 1991年5月, 乳房と骨髄に再々発した.この時の芽球は, CDIlb, CD33, HLA-DRが陽性で, Plateletperoxidaseが陽性であり, acutemegakaryoblasticleukemiaとした.ANLLプロトコールに従って治療したが, 肺炎を併発して死亡した.本例は, Tcell系とmegakaryocyte系の両方の特質を有しており, 血球分化の過程でT cell系とmegakaryocyte系の両方へ分化することのできる多能性前駆細胞が存在することを示しており, 貴重な症例と思われた.
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