日本小児血液学会雑誌
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9 巻, 1 号
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  • 殺菌・遊走能の生化学
    安井 耕三
    1995 年 9 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    好中球は, 細胞内情報伝達機構解析の格好のモデルとして認知され, 近年多くの研究がなされてきた.好中球は, 刺激の認識から始まりNADPH oxidase活性化, 遊走能発現, 酵素放出に至る経過を持っている.Oxidase活性は複合酵素系であることが知られ, 休止期には構成成分が一部膜に一部は細胞内に存在している.遊走能発現にもアクチン, 微小管のほかgelsolinなどの多くの蛋白が関与している.生化学的研究は, これらの経過にチロシンリン酸化やG蛋白質共役, ホスホリパーゼ活性が重要な役割を果たしていることを明らかにした.この総説では特にoxidase活性化と遊走能発現における情報伝達機構について述べ, 各種疾患の病態や, 生化学的側面にも触れた.
  • 胎盤臍帯血より採取可能な造血幹細胞総数について
    西平 浩一, 本多 康次郎, 豊田 恭徳, 後藤 裕明, 井口 晶裕, 田渕 健, 気賀沢 寿人, 長尾 大
    1995 年 9 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植療法の際の幹細胞の主な供給源は骨髄, 化学療法後の末梢血液幹細胞である.最近, 幹細胞の新たな供給源として臍帯血幹細胞が注目されている.われわれは今回28個の胎盤を対象に, 採取できる臍帯血の幹細胞数を検討したので報告した.臍帯血は正常分娩の胎盤の臍帯静脈より採取した.臍帯血の赤血球の除去はHESを添加して行い, 白血球, 幹細胞を含む血漿層を分離した.幹細胞数はin vitroコロニー形成法により評価した.CFU-GM数は0.8-33.1×105 (中央値4.5×105), BFU-E数は1-2-35.1×105 (中央値4.1×105), CFU-mixは0.15-7.23×105 (中央値0.57×105) であった.臍帯血のCFU-GM総数は検体によりばらつきがみられたが, 相当数の幹細胞が含まれていることは明らかである.この結果から一つの胎盤臍帯から得られる幹細胞数は小児骨髄を再構築するに十分な量であると思われた.
  • 線維芽細胞様ストローマ細胞の長期培養による解析
    ハシナ フェルドーシ
    1995 年 9 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    同種骨髄移植後のホストの骨髄微小環境の構成細胞はホスト由来であり, 生体において骨髄支持構成細胞が移植されないことが報告されている.骨髄微小環境の構成細胞が移植し得るか否かを調べるために由来の異なる12組の長期培養支持細胞を用いて, in vitroの移植モデルを作製した.造血細胞を除去した後に支持細胞を培養してconfluent layerを形成した上に, 由来の異なる支持細胞の浮遊液を加えて混合培養した.その結果, 位相差顕微鏡上, 既存のconfluent layer上に付着し増殖している移植支持細胞が観察された.免疫染色にて, この細胞はビメンチン陽性の線維芽細胞様ストローマ細胞であった.PCR-RFLPでは, 12組すべてがキメラを示した.キメラ成立には, confluent layerの細胞数の1/10以上の線維芽細胞様ストローマ細胞を移植することが必要であった.これらのデータはin vitroにおいて線維芽細胞様ストローマ細胞はたとえホストの線維芽細胞様ストローマ細胞が培養面を完全におおっていても移植し得ること, そして, 骨髄移植後のドナーの線維芽細胞様ストローマ細胞の生着には, 移植する細胞数が大きく関与していることを示している.
  • 川上 哲夫, 石河 由佳, 梅原 俊介, 福永 真紀, 西川 健一
    1995 年 9 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    小児急性リンパ性白血病寛解導入にvincristine, prednisolone, L-asparaginaseの3剤にpyrarubicin (THP) を併用した群とadriamycin (ADM) を併用した群との問で骨髄抑制と感染症合併率を比較した.ADM投与群の好中球500/μ1未満および200/μ1未満の期間はそれぞれ13.7±9.9日, 8.4±7.3日, THP投与群はそれぞれ23.9±5.1日, 20.0±8.9日であり, 両群間に有意差があった.感染症合併率はADR投与群は12例中1例であるのに対し, THP投与群は9例中7例で, 1例死亡した.感染症を合併した7例はいずれも治療の変更や中断を要した.2群間の感染症合併率は有意差があった.THPを併用する場合は, ADMを併用する場合に比べ骨髄抑制が強く, 厳重な感染予防が必要である.
  • 血清サイトカイン値と臨床病期分類の有用性について
    石田 也寸志, 檜垣 晶, 横田 佳子, 田内 久道
    1995 年 9 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    今回検討したのは血球貧食症候群 (HPS) 8例であり, 悪性組織球症1例, 家族性組織球リンパ細網症 (FEL) が1例, ウイルス関連HPSが3例 (EBVI, CMV2) 1マイコプラズマ感染によるHPSが1例, Still病とhybrid leukemiaに続発したものが各々1例ずつであった.骨髄中に幼弱な異形性のある組織球が増殖していた3症例では, 汎血球減少・臓器障害が重篤で, 血清のサイトカイン測定でも IL-6, IFN-γ, sIL-2R などが高い傾向がみられた.現在6例が診断後12-57カ月間 (中央値27カ月) 無病生存を続けている.今回の検討によると, 予後の予測は骨髄の形態分類 (Manoharan分類など) と今宿や岡らが提唱している病期分類の両方を考慮して行うのが望ましいと考えられた.
  • 永井 正高, 東 英一, 平竹 晋也, 駒田 美弘, 櫻井 實
    1995 年 9 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Glioblastoma multiforme (GBM) の9歳女児に腫瘤摘出術後 (約95%摘出), 自家骨髄移植を用いた多剤併用大量化学療法を1コース施行した.Nimustine, etoposide, vincristine, methotrexate, carboplatinおよびprocarbazineを使用した.自家骨髄血は0.85×108/kg (0.32×105 CFU-GM/kg) を輸注し, day 1よりG-CSFを併用した.造血能の回復は, 好中球数>500/μlはday 13, 血小板数>5万/μlがday 28であった.輸血回数は赤血球が3回, 血小板が4回であり, それぞれの最終日はday 18およびday 19であった.発熱は好中球が回復するまで18日間続いた.心および腎への急性毒性がみられたが, いずれの副作用も可逆性であった.3年1カ月経過後も完全寛解を維持している.自家骨髄移植を用いた多剤併用大量化学療法はGBMに対し有効な治療法と考えられた.
  • 櫻井 嘉彦, 神末 政樹, 嶋 緑倫, 吉岡 章
    1995 年 9 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    患児は6カ月の男児で貧血を主訴として来院した.著明な鉄欠乏性貧血, 胸部CTにて背側優位のCT濃度の上昇を伴う呼吸障害, および胃液中のヘモジデリン貧食マクロファージ (siderophage) の検出より, 乳児特発性肺ヘモジデローシス (IPH) と診断した.自験例の治療経験から, 急性増悪期のステロイドパルス療法, 寛解期のリポステロイド投与がIPHの長期コントロールに有効であると考えられる.
  • 土橋 浩, 関根 勇夫, 子川 和宏, 吉岡 重威
    1995 年 9 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    10歳女児.再生不良性貧血の診断にてHLA表現型一致の母親よりmajor ABO不適合の骨髄移植 (donor A, Rh ±; recipient O, Rh+) を受けた.移植後の経過は順調であったが, 赤血球系の回復遅延が続き, 骨髄より赤芽球はほぼ消失しており赤芽球癆 (PRCA) と診断した.骨髄移植9カ月後よりerythropoietin (Epo) の大量皮下注を施行したが反応しなかった.移植14カ月後にガンマグロブリン大量療法 (400 mg/kg, 5日間投与) を施行したところ網赤血球の上昇を認め, 終了4日目の骨髄では赤芽球過形成を示した.ガンマグロブリン大量療法終了14カ月後の現在まで無治療にて寛解を持続している.
  • 五十嵐 俊次, 衣川 直子, 沖本 由理
    1995 年 9 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は14歳男児.t (4;11) (q21;q23) を有した急性リンパ性白血病で治療中 (初回寛解期間8カ月) に骨髄再発を認めた.予後不良と考え, 一卵性双生児の兄をドナーとしてdouble transplantationを計画した.寛解導入目的にBU+VP-16+CYを前処置としてドナーより採取した骨髄の半分を移植し, 残りは凍結保存した.Day 30に完全寛解を確認しday 65よりPSL+VCR+6-MP+MTXによる維持療法を施行した.2回目の移植に際し, 血球回復を早め, 合併症を回避する目的で, ドナーにG-CSFを投与して末梢血幹細胞を採取し, 保存してあった骨髄と一緒に移植した.前処置はTBI+L-PAMで行った.現在, 無治療で10カ月以上無病生存中である.予後不良例に対してはdouble transplantationが有用であり, また, ドナーにG-CSFを投与して, 末梢血幹細胞を採取し移植する方法も有用と考えられた.
  • 今井 正, 河田 興, 日下 隆, 矢口 善保, 合谷 智子, 石井 禎郎, 伊藤 進, 大西 鐘壽
    1995 年 9 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 1995/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは神経芽細胞腫 (stageIVA) に対し自家骨髄移植を施行後, 6カ月間繰り返し輸血を必要とした1歳4カ月の女児を報告する.Alプロトコールを3クール施行後, 原発巣の摘出術を行い, その後さらに化学療法を行った.前処置は大量化学療法と全身放射線療法施行で行った.骨髄移植後に好中球はday20に500/μl, 白血球はday21に1,000/μlを越えたが, 血小板, 赤血球の回復は悪く, 頻回の血小板輸血, 赤血球輸血を繰り返し必要とした.このために, M-CSFの投与をday107より開始した.M-CSF投与開始7日後, 浮腫がみられ投与を中止したが, 高血圧, 血尿, タンパク尿を一過性に認めた.腎機能回復後も高度の貧血が続き頻回の輸血が必要であった.血清エリスロポエチン値はhematocrit値に反応して産生が増加しないため不適切に低く, リコンビナント・エリスロポエチン投与は効果的で, 貧血は改善した.
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