薬学教育
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総説
  • 永田 実沙
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-015
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/10
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    近年の災害情勢から災害医療への関心は高まっており,薬剤師の活躍事例が増えたことから薬学教育に対する社会的ニーズも高くなっている.学部教育と卒後教育の両方へのアプローチが災害時に活躍する薬剤師の養成には重要になると考え,机上シミュレーション,動画教材,オンライン研修などを通して薬学生と薬剤師双方に災害医療に関する教育研修を行ってきた.それらの結果から,研修や教育が災害時のイメージ構築を助け,他学部合同で行うことで多職種理解につながるとともに,より具体的な事例に踏み込んで行った研修では自己効力感向上につながることが明らかとなった.社会の災害医療に対する薬剤師への期待を考えると,災害時に医療従事者が取るべき行動や最低限の災害医療の知識を交えながら実践的シミュレーション教育を中心に学部教育に導入し,災害時のリスクを想定し,避難所や被災地のニーズを把握する力を養っていくことが望まれる.

  • 酒井 隆全, 亀井 智代, 長光 亨
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-017
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/27
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    大学教員にとって,研究活動と教育活動は相互に密接に関連しており,その両立が必要となる.加えて,若手教員には,結婚・妊娠・育児などのライフイベントを伴うことも多いため,職務に生活の要素も加えてマネジメントしていく必要がある.一方で,薬学部の教員には担うべき多様な業務が存在し,研究・教育活動の遂行は年々厳しさを増している.そうした状況下においても,発展途上にある若手教員は,自身の研究・教育に関する能力を積極的に高めていく必要がある.そこで我々は,薬学部における若手教員の教育・研究活動の現状を共有し,その活動を活性化することを目的にシンポジウムを企画した.本総説では,各若手教員の教育・研究活動における活動の実態や,具体的な取り組みについて報告する.

  • ~社会との接点をもたらす患者の存在~
    岩堀 禎廣
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-016
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー HTML

    第7回日本薬学教育学会における患者参加のシンポジウムの内容について演者と参加者を代表して報告する.薬学教育関係者及び薬学生は日本薬学教育学会には全員参加を基本とすべきである.現状,残念ながら薬学人のアイデンティティは「医学の後追い」「積極的な受け身の姿勢」「現状維持」「免許を持っている」である.現状の国家試験対策の講義は全てオンライン化し,対面の講義は全てPBL化すべきである.それに合わせて国家試験を改革する必要がある.現状の均質化を目指す薬学教育の副作用として個別対応力が欠如してしまっている.個々の患者に合わせた対応のためにはイマジネーションが必要であり,それを身に着ける教育学的方法論として最も有効なのが薬学教育における患者参加である.シンポジウムはオンラインの方が有効であったため,関係者の全出席を目指す意味でも学会はオンライン開催を基本とし,講義も含めて安易に対面に戻すべきではない.

  • ―学生支援の観点から―
    内田 尚宏, 苫米地 憲昭, 渡辺 由紀, 吉永 真理
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-022
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/21
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    従来,青年期の人格形成にとって,発達の観点からアイデンティティが注目されていた.それは,薬学教育においても例外ではない.高等教育機関にとって学生の人格形成支援は大きな役割の一つであり,社会からは学生に対してアイデンティティの視点から総合的な援助を行うことが求められている.本シンポジウムは「学生のアイデンティティ発達に大学はどこまで関われるのか」というタイトルで,大学が教育的な学生支援としてアイデンティティをどうとらえればいいか検討した上で,学生との向き合い方について,学生支援の現場にいる専門家に発表してもらい議論を深めた.そこでは,主体性の視点,自己受容,気づきのプロセスに寄り添う,関わり続ける,安全な空間と時間を作り上げることの重要性が指摘された.議論のなかで,支援者は主体性を育む方法を模索し,自身が安心して振り返る機会を提供し,その方法を模索し続けていく必要性が確認された.

  • 今西 孝至
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-033
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/12
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    日本は世界に類をみない速さで高齢化が進んでいる.そのため,地域医療を担える薬剤師の養成,特に在宅医療を担える薬剤師の養成が重要な課題である.京都薬科大学では,在宅医療で活躍できる薬剤師を養成するために,在宅医療における多職種連携教育および在宅医療に必要なフィジカルアセスメント教育に関するプログラムを構築し,実践している.在宅医療における多職種連携教育では,1)京都薬科大学・京都橘大学合同多職種連携教育(IPE)研修会,2)在宅研修アドバンストプログラム,の2つのプログラムがある.また,薬剤師のためのフィジカルアセスメント教育では,卒前教育から卒後教育へと一貫したフィジカルアセスメントに関連した教育プログラムがある.本稿では,これらのプログラムを構築し実践することで得られた知見について概説し,さらに在宅医療で活躍できる薬剤師養成に対する今後の課題について私見を述べたい.

誌上シンポジウム:どう伝える?医療プロフェッショナリズム~医学部のこれまでと薬学部のこれから~
  • 宮田 靖志
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2021-044
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/03
    [早期公開] 公開日: 2022/04/12
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    プロフェッショナリズム教育には,アンプロフェッショナルな行為をしないという最低限の目標と,常に高みを目指すという向上心的目標の2つの学修目標を見据える必要がある.向上心的目標のためには,規範に基づいた教育からナラティブに基づいた教育への視点の転換が重要であり,これにはロールモデル,自己の気づき(省察),ナラティブ能力,コミュニティ・サービスが挙げられる.学修者には,これらにより,実際の臨床経験を通じて患者・住民・社会の期待を実感することが求められ,このことがプロフェッショナルとしてのアイデンティティ形成につながる.また,社会のニーズに応えるという社会的説明責任を学んでいくことにもつながる.そして,個人・対人・社会レベルにおけるプロフェッショナリズムを考え,複雑で混沌とした医療状況の中で悪戦苦闘しながら課題解決に当たる省察的実践家である真のプロフェッショナルを養成することを,医療専門職教育者は考える必要がある.

  • 孫 大輔
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/03
    [早期公開] 公開日: 2022/04/12
    ジャーナル フリー HTML

    医療におけるプロフェッショナリズムの主要な要素として,卓越性,人間性,説明責任,利他主義があるが,共感(empathy)は人間性に含まれる重要な要素である.医療者の共感の代表的な定義に「患者の内的経験および視点を理解し,患者にその理解を伝える能力を伴う認知的属性」というものがある.医学教育によっていかに学習者の共感を涵養できるかは大きな課題である.患者が語る病いの物語(ナラティブ)を医療に応用する能力,すなわち「ナラティブ・コンピテンス(物語能力)」が共感教育の鍵となる.患者ナラティブの活用手法として,患者の語りデータベース「ディペックス(DIPEx)」があり,インターネットで視聴できる.また,当事者に体験を語ってもらう「患者講師(patient storyteller)」の養成も重要である.ディペックス動画や患者講師を授業に活用した事例では,学生が患者の苦悩や心理の理解に迫っており,共感の涵養につながる可能性が示唆された.

  • ―卒業時にどこまで到達するか―
    小佐野 博史
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-055
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/03
    ジャーナル フリー HTML

    本稿は,令和3年8月に行われた第6回日本薬学教育学会シンポジウム「どう伝える?医療プロフェッショナリズム~医学部のこれまでと薬学部のこれから~」で発表した「薬学部におけるプロフェッショナルを考える―卒業時にどこまで到達するか―」という講演の内容をまとめたものである.帝京大学薬学部では,ディプロマ・ポリシー(DP)に「プロフェッショナリズム」という言葉を用いている.現行(平成25年度改訂版)の薬学教育モデル・コア・カリキュラムには含まれていないが,DPに使用した以上,1年生から考えさせなければならない.しかし,プロフェッショナリズムとは,大きな一般的概念の下に,〇〇におけるプロフェッショナリズム,という具体性のある場を繋げて考えてゆかなければならないものであり,この〇〇にはとても多くの場が含まれる.国家資格のない学生に,プロフェッショナルという概念をどのように伝えるか,筆者が薬学6年制教育の開始以来,考え続けてきた「大学における薬学生のプロフェッショナリズム」についての概略と教育に用いた方法を紹介し,今後の教育をどう発展させるか,という私見を込めて記載した.

  • 細谷 治
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-048
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/03
    [早期公開] 公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー HTML

    プロフェッショナリズムをどう伝えるか.アカデミアだけでなく,臨床にいる薬剤師にとっても大変難しい課題である.2006年,医療技術の高度化や医薬分業の進展等に伴い,高い資質を持つ薬剤師養成のために薬学部の修業年限は4年から6年に延長された.現行の改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムには「薬剤師に求められる基本的な資質」が示され,生涯にわたりそれらの資質や能力の研鑽が求められている.医療現場で生じる様々な課題に向き合い,医療者として,あるいは薬剤師としてどのように行動すべきかを考えるとき,その推進力になるのがプロフェッショナリズムであろう.このプロフェッショナリズムをどのように伝え,どのように身につけていくのか.コロナ禍で社会構造が激変するなか,患者中心の医療を提供し続けるためにプロフェッショナリズムを維持することは決して簡単なことではないが,教育として伝え続けなければならないことは明白である.

誌上シンポジウム:しくじりから学ぶオンライン教育~先人たちの知恵袋~
  • 上田 昌宏
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-029
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    [早期公開] 公開日: 2022/05/25
    ジャーナル フリー HTML

    2020年からのCOVID-19の感染拡大に伴い,教育は大きな転換期を迎えた.薬学教育においても,対面授業が大きく制限され,薬学部教員の多くが,慣れないオンライン教育の実施を余儀なくされた.このため,薬学部教員は,全くノウハウがない中でそれぞれが独自に取り組みを行う必要に迫られた.2020年度内から教育系の学会では,オンライン教育の実施に関する情報共有の場が設定された.しかし,その多くは,成功体験や構築例の報告であり,意図せぬ小さな失敗や間違い(しくじり)を共有する機会は限られていた.そこで筆者は,薬学部教員を対象として,オンライン教育における「しくじり」およびその対策に関する調査を実施した.その結果,9名のしくじり先生から,報告を受けた.本稿では,しくじり先生の経験談を紹介することで,オンライン教育における「しくじり」を振り返る.今後の教育に活用し,良い点は継続し,改善すべき点は良くすることで質の高い教育を実践するためのPDCAサイクルを進める一助になることを期待している.

  • ~薬学専門科目の講義とハンディキャップ体験学習の教育効果を検証する~
    渡部 俊彦
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-020
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクルは教育改善に活用されている.特に,Check(評価)は教育の質向上に重要で,評価する方法も今は数多く報告されている.しかし,教員が自分の行う教育が抱えている問題点を認知できていなければ,適切な評価を行うことはできない.教育の失敗例は教育の問題点を認知するための重要な教材となる.本稿では教育現場で実際に起きた2つの事例について検証を行い,問題点の確認と改善策の有効性について検証を行ったので報告する.

    1つ目は講義方法の失敗例である.定期試験結果を指標にした解析により,教育効果が低い科目を検出した.この科目の講義方法を知識修得の理論に基づき修正したところ,教育効果が有意に向上した.

    2つ目は体験学習の体験項目の変更時に起きた失敗である.内容変更した体験学習の感想文を解析したところ,変更前に比べ教育効果が有意に低下していることが判明した.

    これらの結果は,適切な評価が教育効果の向上を導き出すことを示している.

  • 木下 淳
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    [早期公開] 公開日: 2022/04/29
    ジャーナル フリー HTML

    2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,瞬く間にパンデミックへと拡大した.兵庫医療大学では,2020年度からオンデマンド型オンライン授業を導入した.本稿では,筆者が経験した “しくじり” 事例とその対処方法や回避法について報告する.兵庫医療大学は,G Suite for EducationおよびMoodleを導入している.オンデマンド型授業動画は,画面キャプチャソフトや編集ソフトを用いて作成した.オンデマンド型オンライン授業では,学習者のリアルタイムの反応が確認できないため,学習者の意見を引き出す工夫が必要であると考えられる.しかしながら,オンデマンド型オンライン授業では学習者が質問することが極めて少ないため,多様な形式で質問可能な環境を用意することが必要だと思われる.また,学習者からの意見を引き出す環境を整備しておくことで,自身の授業で改善すべき事項が把握でき,授業改善へとつながっていくと考えられた.

誌上シンポジウム:薬学人のアイデンティティを支える研究倫理
  • 有田 悦子, 入江 徹美
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-021
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/27
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  • 田中 智之
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-012
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー HTML

    競争的資金の申請資格となったこともあり,研究倫理講習は研究者にとって身近な存在となっている.また,生物医学研究を実施するにあたって有用な研究倫理教材も多数提供されている.一方で,研究不正の発覚は後を絶たない.人類の知を拡大したい,新たな治療法を開発したいというモチベーションをもつ研究者にとって不正行為には価値がないことを考えると,そうしたモチベーションを歪める要素が研究環境にあると考えられる.競争的な研究環境がもたらす研究評価の変質,ライフサイエンス研究に内在する問題点は研究不正を誘発する要因となることがある.社会学者のMertonにより提唱された科学者の行動規範(共有性,普遍性,無私性,懐疑主義)は,健全な研究活動に立ち返る上で有用な理念である.専門家として社会に貢献することが求められている研究者が,Merton的規範をもつことは,社会からの信頼を得る上で極めて重要である.

  • 氏原 淳
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-019
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー HTML

    臨床において医学系研究を実施する際には「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(生命・医学系指針)」が適用され,倫理審査委員会の承認が必須となる.薬学領域においては,人対象であっても診療情報を伴わないアンケート調査や,教育/心理学系の研究など,生命・医学系指針の対象とならない研究もある.これらは,規制上は倫理審査を求められてはいないが,発表する学会等から倫理審査を要求される場合がある.また,倫理的配慮が必要となる研究も存在している.こういった状況を受け,当院研究倫理委員会では,規制対象外の研究であっても審査が必要なものは受付け,事前の確認を行う「プライマリレビュー」体制を整備した.それにより事務局の労力を増大させずに倫理審査を合理的に運用する事が可能となった.薬学領域の規制対象外研究において,倫理審査が必要な研究は合理的に倫理審査を実施していく体制整備が有用と考えられた.

原著
  • 久松 亜紀, 舘 知也, 寺町 ひとみ, 足立 哲夫, 松永 俊之
    原稿種別: 原著
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-056
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した実務実習では,新たに大学・薬局・病院の連携,8疾患の体験,体験型実習の実施およびルーブリック評価を行っている.そこで,指導薬剤師および実務実習生の実務実習の実態や取り組みの意識などを把握し,比較して違いを明らかにすることを目的に,2019年度および2020年度の岐阜薬科大学実務実習生受入れ施設の指導薬剤師および本学実務実習生を対象にアンケート調査を行った.大学と実習施設との連携に関しては,連携できていたとの回答が指導薬剤師に比して学生の方が有意に高かった.8疾患の体験については,病院実習では糖尿病以外で,薬局実習では感染症が,また体験型実習では,薬局の「在宅(訪問)医療・介護への参画」を除くすべての項目で,学生の方が体験できたとの回答が有意に高かった.今後両者の意識の差がなるべく小さくなり,より有意義な実務実習を行えるようにしていく必要がある.

  • 宮崎 誠
    原稿種別: 原著
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-058
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル フリー HTML

    本学6年次生の読解力を測定し,得られた能力と学内で実施された試験の成績および薬剤師国家試験成績との関係を検討した.読解力の偏差値は中央値が63程度であったが,一部には50に満たない者もいた.5年間の学内総合成績が低い者は『イメージ同定』の能力が低く,国家試験不合格者は合格者に比べて『推論』の能力が低かった.個々の学生の読解力の特徴から,学生を4つのタイプに分けることができた.『推論』,『イメージ同定』,『具体例同定』のいずれもが低いタイプでは5年間の学内総合成績も国家試験模擬試験成績も他のタイプに比べて有意に低かった.以上より,読解力が国家試験の合否に間接的にも影響している可能性が示唆され,薬学部における学生の教育・指導において読解力は考慮すべき基礎能力であると考える.

  • 吉井 圭佑, 毎熊 隆誉, 小野 颯章, 森 翔馬, 中西 陽菜, 橋本 ひかり, 広本 篤, 島田 憲一
    原稿種別: 原著
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-011
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー HTML

    2011年の東日本大震災における薬剤師の活動を契機として,災害時に必要とされる薬剤師の活動内容や薬学部での教育手法について具体的な経験事例が集積されてきているが,薬学生が感じている災害時の薬剤師活動についての報告はない.そこで今回,薬学生に対する効果的な災害教育を見出すために,薬学生に対して災害時の薬剤師活動に関する意識調査を実施した.結果として,災害現場への出動要請を受けた際に参加したいとする回答に有意に影響した因子は,1年生であるということ,また,その回答に影響した因子として「薬剤師は災害時の活動に参加する義務がある」,「薬剤師は災害時の活動で役に立つ」や「患者の話を聞いて心のケアに徹することは災害時の薬剤師活動である」とするものであった.従って,災害時に薬剤師が必要な義務感や貢献感,精神面のケアを行う必要性や実施方法に関して,薬学教育を充実させることが今後起こりうる災害救護活動の促進に繋がると思われる.

短報
  • 井上 信宏, 大野 修司, 山内 理恵, 久保 元, 浅井 和範
    原稿種別: 短報
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-044
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    学習効果を高めるために学生が実践する学習方法(認知的方略)が,薬学生の学習成果にどのような影響を与えているかを推察するため,薬学生の認知的方略と卒業試験成績との関連性について解析した.学年を区別して確認的因子分析を行う多母集団同時分析により,「深い処理方略」,「まとめ作業方略」,「反復作業方略」の3つの認知的方略が共通に使用されていることが抽出され,また因子間相関から各認知的方略の使用傾向が学年によって異なることが示された.これらの認知的方略と薬学科6年生の卒業試験との関連性について,「深い処理方略」の使用が卒業試験成績に対し正の影響を示した.一方「反復作業方略」を多く使用する学生ほど成績が相対的に低く,この方略による学習は卒業試験成績に反映され難いことが推定された.以上より,将来の卒業試験に向けた「深い処理方略」の使用促進のため,低学年のうちからその有効性を認知させることが重要であると考えられた.

実践報告
  • 羽野 卓三, 秋月 麻友子, 土井 光則, 岩城 久弥, 崎山 晃宏, 松原 和夫, 太田 茂
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-059
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー HTML

    目的:診療所と調剤薬局をシームレスに経験する実習を行い,処方計画をシャドーイングすることで,学生の気付きに変化があるかを検証した.

    方法:薬学部5年生14名を対象に,外来患者の病態および処方意図について解説を行った後,実際の外来患者の処方計画を学生自身が行った.実習前後で,処方計画に重要と思われる要素を8個列挙させた.

    結果: 共起ネットワーク分析では,実習前には薬剤,患者の既往や病態に関するもの,実習後では患者の生活や習慣を示す語が抽出された.質的解析によるカテゴリーは,薬剤(適応・用法・用量),患者の身体的背景,患者の生活・意識特性の3群が抽出され,実習前の3群の頻度は49.2%,47.5%,3.4%,実習後は33.1%,44.1%,22.8%であり,患者の生活・意識特性が増加した.

    結語:今回の体験実習により,学生は処方計画の理解が深まり,患者の生活や意識特性に沿った要素をより考慮する必要性に気付きがみられた.

  • 西崎 有利子, 吉田 林, 五十鈴川 知美, 浅井 将, 牛久保-酒井 裕子, 速水 耕介, 黒岩 美枝, 川嶋 芳枝, 金子 正裕
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-053
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    生体の構造と機能を理解する生物系機能形態学実習では,動物愛護や新型コロナウイルス感染症拡大下での教育という社会的要請に応えつつ,優れた医療人・薬剤師を育成することを目指している.今回,タブレット端末を用いた “バーチャル” な解剖とラットの観察を併用した対面形式による解剖実習を行い,スケッチ課題を課した.以前の従来型のラット解剖実習の課題得点と比較したところ,“バーチャル” な解剖実習の得点が有意に高かった.実習後,教育効果を検討・改善するために,受講学生にアンケート調査を実施した.多くの学生がデジタル教材の利点を活かして一時停止や反復観察をしており,概ねわかりやすく満足できる実習であったと回答があった.今回の試みにより,動物愛護や感染症対策等の社会的要請にも応えられたと考えられる.今後,臨床系科目との連携を目指して動画内容や題材をさらに改善し,優れた医療人・薬剤師の育成に寄与する実習につなげていきたい.

  • 畦地 拓哉, 齊藤 有希, 小柴 聖史, 鈴木 賢一
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2022-049
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    本研究では,実務実習中の薬学生が抱くがん化学療法に関わる患者・薬剤師のイメージとその変化を調査した.外来化学療法実習の参加前後にアンケート調査を実施したところ,薬剤師の役割として,副作用モニタリングの重要度は実習後に最も高くなった.一方,抗がん剤の臨床薬理やpharmacokinetics/pharmacodynamics,医療費負担への理解の重要度は実習後で低く,これらの関わりや活用が不足していると考えられた.自由記述回答からは,薬学生は「がん患者」に対して不安や痛みなどの弱い面だけでなく,がんを受け入れて前向きに治療に取り組む姿勢を併せ持つイメージ,「がん患者指導に関わる薬剤師」に対して「がん患者」が抱える想いに寄り添い,患者一人ひとりに適した薬学的管理を行うイメージをそれぞれ形成していると考えられた.薬学生が抱くイメージを踏まえて,治療効果や副作用のみならず経済面や臨床薬理の面からも実習生を様々な患者と向き合わせることが重要であると考える.

  • 巽 道代, 熊谷 聡美, 七戸 俊明, 片山 真育, 武隈 洋, 菅原 満
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/10
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の流行は薬学教育に大きな影響を及ぼした.COVID-19感染対策として,栄養サポートチーム(NST)実習は遠隔配信(オンライン,対面での交流なし;以下,オンデマンド実習)に移行した.今回,NSTで協働する医師,歯科医師,管理栄養士,理学療法士,薬剤師が協力し,薬学生の学生指導に活用できるオンデマンドコンテンツを作成した.オンデマンド実習の効果を検証するため,実習前後の実習生の知識習得度,実習生の実習担当者(薬剤師)に対する評価,および学習意欲の変化を調査した.また,顧客満足度分析すなわちcustomer satisfaction(CS)分析により,研修の満足度を調査した.実習生の知識量と学習意欲は実習後に大きく向上した.CS分析の結果,実習の理解・達成において,最も改善が必要なのは「チームにおける薬剤師の役割の理解」と「薬剤師がNSTに参加することのメリットの理解」であることが示唆された.オンデマンド実習は病院実習において教育効果があることが示された.

  • 西牧 可織, 二瓶 裕之
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー HTML

    数理・データサイエンス・AI教育(応用基礎レベル)に対応する授業として「医療データサイエンス入門I」を,薬学部をはじめとする複数の医療系学部で開講した.本稿では,その授業デザインと教育用ロボットを活用した教材について紹介する.「医療データサイエンス入門I」では,薬剤師など医療従事者を目指す学生がAIやプログラミングに興味を持つよう教育用ロボットを活用した.また,学修プラットフォームとして「医療データサイエンス学修サイト」を作成し,Google Colaboratoryを用いたプログラミング演習をサイトに組み込むことで,ロボットを活用しながら応用レベルの基礎学修項目を体系的に学修できるよう工夫した.

  • 筒井 和斗, 小林 典子, 中村 友紀, 岩田 紘樹, 山浦 克典
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
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    慶應義塾大学では,4年次の実務実習事前学習のセルフメディケーション実習に実務実習を修了した6年生が準備・実施に関与している.これにより,下級生の実践的な実務実習イメージの形成に寄与するだけでなく,上級生自身にも実務実習の振り返りや知識の再確認を促すなど,双方への学修効果が期待される.本研究では,4年生に対して実習前後に,6年生に対して実習後にアンケート調査を実施した.その結果,4年生は6年生が実習に関与することで,実践的な経験を積むことができ,実務実習のイメージや将来の自分像の形成および知識の理解が深まるなど様々な学修効果があったことが明らかになった.また,6年生自身も来局者役の立場を経験することで,来局者の心情を理解すると共に,内省を深め,自身の実務実習を振り返るなど学修効果があったことがわかった.

  • 川上 美好, 園部 尭仁, 上田 祥貴, 吉山 友二
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-009
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/09
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    トレーシングレポート(Tracing Report: TR)は,情報提供・連携ツールとして近年着目されている.今回,北里大学薬学部実務実習事前実習において,新たにTR作成実習を導入しその有用性を評価した.模擬薬局を利用して「後発医薬品への変更可の処方箋を持参した患者への対応」に関するロールプレイを行った.その症例について医師への情報提供の内容を考え,TRを作成した.終了後に学生272人にアンケートを実施した.回収率は100%であった.TRという言葉を事前に知っていた学生は28.7%であった.98.1%の学生がTRについて「十分またはやや理解することができた」と回答し,88.3%の学生が「次年度の薬局実習の中で,TRを作成して医療機関に情報提供できると思う」と回答した.事前実習でTRを知り,模擬薬局での実践を通して情報提供の内容を考え,実際に作成したことは,薬局実習での実践に繋がると考える.

  • 広瀬 雅一, 松田 幸久, 山中 智香, 猿橋 裕子, 藤井 早由利, 長崎 信浩, 高根 浩
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/15
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    改訂モデル・コアカリキュラム下での実務実習の受け入れ経験を有する薬局の薬剤師は,実習指導を行ったことへの達成感を得ていることや実習生への対応に不安を感じていること等が,我々の先行研究で明らかになった.本研究では,薬局における日常業務の視点から薬剤師が実習指導を議論するワークショップを開催した効果を,先行研究と同じ43項目からなるアンケート調査によって評価した.2つのセッション(症例への薬学的介入の議論,薬剤師や事務員の能力を指導に生かす方法の検討)を実施後の調査で,43項目中12項目で参加者の意識に有意な正の変化が示された.項目別では,指導内容の認識に関する項目で肯定的な変化が得られたことに加えて,実習生との関係に関する項目でも有意な正の変化が認められた.本ワークショップは,薬局薬剤師の実務実習に対する理解と受入意欲を向上させる効果が期待できることが示された.

  • 岩澤 晴代, 岸本 成史, 長谷川 仁美, 安原 眞人, 厚味 厳一, 北 加代子, 安藤 崇仁, 渡邊 真知子, 横山 和明, 板垣 文雄 ...
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-020
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/15
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    薬剤師に求められている職能の変化を受け,薬学生は様々な知識を関連づけて学び,活用する能力を養う必要がある.帝京大学薬学部では,薬学基礎から薬学臨床の内容を関連づけ統合的に理解することを目的として,2020年度6年生前期にオンデマンド形式による分野横断統合演習を実施した.受講生の到達目標自己評価(48項目)は,全ての項目で授業後に有意に上昇した.授業後アンケートの「理解の深まり」と「満足度」の評価が高い学生のグループは,定期試験平均得点率も有意に高かった.授業を受けた感想から,本科目は個人学習による理解を深める効果や自主的な共同学習を促す効果もあったと考えられた.今回実施したオンデマンド形式の授業による分野横断統合演習は,教員側が段階を踏んだ課題提示を行うことで,学生に自主的な学習を促すことができ,「理解の深まり」と「満足度」および定期試験の結果から効果的なプログラムである可能性が示された.

  • 橋本 怜史, 西丸 宏, 八巻 史子, 加瀬 義夫
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-026
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/12
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    薬学生の学力低下が問題となっており,各大学は薬学教育の質を担保すべく対策を実施している.本学でも低学年時から支援を行っており,特に重要な最終学年では国家試験形式の試験を行って学習状況を把握し,学生の学習状況に応じて個別面談を行っている.これまで,模擬試験の成績推移と国家試験の合否の関係については解析がされていたが,個別面談の効果については検証がなされていなかった.本研究では,面談の回数,対象者の成績,時期の違いが面談の効果に与える影響を解析した.まず,2017~2021年度に行っていた面談の実施方法と効果について検証を行った.検証結果に基づき,2022年度の面談実施方法を修正し,その効果について検証を行った.面談方法の違いが面談の効果に与える影響を解析した結果,面談を早期に幅広い成績層の学生に行うことが重要であり,同じ学生に複数回面談を行うことの効果は小さいことが示唆された.

  • 刀根 菜七子, 石川 さと子, 三島 健一, 冨田 陵子, 松末 公彦
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-025
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/12
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    学生の能動的な学修意欲の涵養につなげるために,1年次前期開講科目「薬学化学入門」に濃度・単位をテーマとしたグループワークを取り入れた.入学直後から学生が疑問を他者と気軽に共有し,楽しみながら学修できる契機にするとともに,その効果を検証した.参加者の感想を分析した結果,「違う-考え方-知れる」,「いろいろ-意見-聞ける」,「濃度-計算-理解」などの語句が共起していた.プレ・ポストテストの結果では,グループワークにより回答者の43%で得点が上昇し,有意差が認められた.さらに,プレ・ポストアンケートの結果を解析したところ,濃度および単位それぞれについて,回答者の29%と40%が苦手意識を改善していた.実施したグループワークの効果が明らかになったため,今後テーマの選定を工夫し,グループワーク後に個別の学修支援を組み合わせることで,化学に対する学修意欲のさらなる向上につながることが示唆された.

  • 土肥 弘久, 大和 幹枝, 伊藤 俊将, 水谷 顕洋, 廣澤 伊織, 松野 純男, 長南 謙一, 宮﨑 美子
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 7 巻 論文ID: 2023-031
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
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    社会構造の変化に伴い医療者へのニーズも多様化している.この状況に適応できる薬剤師を養成する方法の1つに分野横断型教育がある.我々は,薬局・病院実務実習を終了した学生を対象に症例検討を実施する際,基礎から臨床分野の様々な講義を受講することで分野間の繋がりを意識できるかを3年間のアンケート調査により検証した.その結果,分野横断型カリキュラムへの興味の有無により学生の学習に対する認識に違いがあった.多くの興味を持った学生は,横断的な思考を臨床で活かしたいという意識がある一方,興味を示さなかった一部の学生は,薬剤師としての知識を獲得することへの意識が強く,知識を「患者」の治療に活用するという視点が欠如しているように思えた.実務実習を経験した学生を対象に分野横断型授業を実践することは,5年間の振り返りだけでなく症例を多角的に捉えることの重要性など気付きを与える機会として重要であると思われた.

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