薬学教育
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総説
  • ―LGBTQ+と教育をつなぐ視点―
    荘島 幸子
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10014
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/16
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    近年,SOGIE(性的指向・ジェンダーアイデンティティ・性表現)の多様性への関心は高まっているが,大学におけるLGBTQ+学生支援は十分になされているとはいえない.本稿は,LGBTQ+学生をめぐる課題を大学教育の文脈から整理し,学生支援と教育実践の在り方を検討することを目的とする.まず,SOGIEに関する概念および医学的分類の歴史的変遷を概観した.ついで,大学生活においてLGBTQ+学生が直面しうる困難を対人関係,制度・環境,専門職養成課程の三つの側面から整理し,メンタルヘルスへの影響について考察した.さらに,LGBTQ+学生支援を特定の学生への配慮にとどめるのではなく,大学における学習環境や教育実践を問い直す契機として位置づけ,「知る」ことから「ともに学ぶ」姿勢へと転換する必要性を論じた.LGBTQ+学生支援は,すべての学生にとって安心して学べる教育環境の形成に資する取り組みである.

  • 中尾 豊
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10027
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/02
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    デジタル技術の進展に伴い,薬剤師の役割は従来の「対物業務」から「対人業務」へと移行している.本稿では,デジタル社会で薬剤師が果たすべき新たな役割と薬学教育への波及について,3つのフェーズに分けて総括する.フェーズ1では,ICTツールやクラウド型電子薬歴の活用による,業務効率化と情報管理のデジタル化について解説する.フェーズ2では,蓄積されたリアルワールドデータ(RWD)と臨床・アカデミアの連携を通じた,患者中心の医療提供と新たな価値創出をもたらすオペレーションの変革を示す.フェーズ3では,AIの活用による質と量の改善に焦点を当て,臨床現場における個別化対応の最適化や,アダプティブラーニングを通じた薬学教育の変革について考察する.これらの変遷を踏まえ,次世代の薬剤師育成において教育・支援側に求められる役割を展望し,更なるエビデンス構築へと繋げる.

誌上シンポジウム:研究実践できる薬剤師を養成するために必要な教育
  • 鈴木 すみれ
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10043
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
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    臨床における研究実践,エビデンスの創出が重要視される中,薬局薬剤師による研究も徐々に増加している.その一方で,薬局業務と並行して研究に取り組むことは容易ではない.研究計画の立案や文献検索に不慣れなことに加え,研究時間の確保,相談相手の不在など,多くの困難を伴う.本稿では,筆者が学会発表,社内の臨床研究プログラムへの参加と論文執筆,社会人大学院での学びを通して直面した課題と,それを支えた環境について述べる.薬局薬剤師が研究をするためには,「研究したい」という本人の意志が不可欠である.加えて,同じ立場で学ぶ仲間の存在や職場・周囲の理解も欠かせない.さらに,薬局という環境や薬局薬剤師の立場・役割を理解した指導者の存在が重要である.そして研究を実践する際には,「その研究は患者や社会にどう役立つのか」という問いを持ち続けることが,意義のある研究の出発点となる.

  • ―社会人大学院生になった経緯を踏まえて―
    堤 竹蔵
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10018
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    [早期公開] 公開日: 2026/05/13
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    6年間の大学生活で研究に取り組むことができる期間は限られる.したがって,多くの薬剤師は十分な研究経験を持たずに社会へ出ると考えられる.研究経験の少なかった筆者が臨床研究を開始する際は,研究デザインや統計の知識不足および時間の制約など多くのハードルが存在した.しかしながら,信頼できる指導者の支援により臨床で感じた疑問を臨床研究として形にすることができた.それらの成功体験により研究への心理的ハードルが徐々に低下したことで,次の研究へ挑戦する意欲が高まった.加えて,研究の継続には家庭,業務および研究を両立するライフワークリサーチバランスの確立が重要であったと考える.これらの経験から,研究実践できる薬剤師を育成するためには,早期の成功体験により研究のハードルを下げ,自主性と継続可能性を高めることのできる教育指導体制および研究環境の整備が不可欠であると考える.

  • 長谷川 佳孝
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10020
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    [早期公開] 公開日: 2026/05/14
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    薬局薬剤師が地域医療における重要な役割を果たすためには,臨床研究を通じたエビデンス発信が不可欠である.しかし,学術的アウトプットは極めて限定的であり,時間的制約や研究スキルの不足など多層的な障害が存在する.当社グループが構築した学術活動支援体制は,「学術教育の推進」「質の高い学術アウトプットの発信」「店舗で実践する新規プラットフォームの開発」の3つの施策から構成されている.入社3年目研修では2021年~2024年に1,758名のうち264名が一次審査を通過し84名が学会発表に至った.2013年~2025年に576件の学会発表,2022年~2025年に22件の論文採択を支援している.薬局間情報共有書や医薬品副作用データベース(JADER)活用など実践的な取り組みも進行中である.組織的かつ体系的な学術活動支援体制が,薬局薬剤師の職能向上と地域医療への貢献を実現するための有効な方策であることを示唆している.

  • 岡田 直人
    原稿種別: 総説
    2026 年10 巻 論文ID: e10009
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    [早期公開] 公開日: 2026/03/19
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    近年,医療の高度化・複雑化に伴い,薬剤師には薬物治療の最適化に主体的に関与する専門職としての役割が求められている.そのため,臨床現場の疑問を起点として研究を実践し,論理的思考力や問題解決能力を涵養することは,薬剤師教育において重要な位置を占める.しかし,現在の臨床現場では,研究を継続的に実践する薬剤師は限られているという問題がある.その背景には,臨床現場で研究を実践する文化の未成熟,研究支援体制の不足,研究の意義やビジョンが共有されにくいといった様々な構造的課題が存在する.本総説では,医療現場における薬剤師の研究活動を教育プロセスの一部として捉え直し,研究推進を阻害する要因を整理するとともに,著者らの施設における具体的な教育実践を紹介する.そして,臨床の場で研究をどのように位置づけ,持続的に実践していくべきかについて考察する.

原著
  • 井上 信宏, 大野 修司, 山内 理恵, 久保 元, 山﨑 正博
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10003
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/07
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    電子付録

    本研究では,薬学生が使用する認知的学習方略の相互の因果関係と経時的な変遷を明らかにすることを目的として,一私立薬科大学におけるある学年集団を6年間に渡り追跡調査した.その結果,大学入学当初の深い処理方略の使用傾向が,最終学年での使用に大きく影響すること,また深い処理方略は,浅い処理である反復作業方略による抑制的な影響を受けることが示唆された.さらに,反復作業方略とまとめ作業方略の使用は,個人差を伴いながらも6年間で徐々に減少することが本研究の対象集団において明らかになった.これらの知見から,高度な専門的内容を学修する薬学部において,学生がより効果的に学べるように導くためには,大学入学の早期から深い処理方略の重要性を認識させ,浅い処理の方略に過度に依存させないような学修支援が有効であると考えられた.対象集団の特性を考慮する必要はあるものの,本研究結果が薬学部における長期的な学修支援の基盤構築の一助になることを期待している.

  • 河合 洋, 大島 新司, 小島 裕, 高橋 直仁, 関 俊暢
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10004
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/07
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    電子付録

    薬学生が薬剤師として大学教育の成果を生かした活動をするには薬剤師国家試験合格は必須であるが,その合格率は大学間で差が大きい.入学時の学力や大学での教育成果その他の要因が影響していると考えられる.薬剤師国家試験合格率と入学時試験学力の関連を解析し,薬剤師国家試験成績に対する大学教育の効果を定量する簡便な指標の算出を試みた.薬剤師国家試験合格率は入学時試験学力と強い相関を示した.入学時試験学力から予測される合格率と実際の合格率の差を大学在学期間の成長度の指標(大学教育効果,REPP)として算出し,その性質を解析したところ,REPPは入学時試験学力とは相関がなく,薬剤師国家試験成績や進級率と緩やかな相関を示した.また,薬剤師国家試験合格率予測精度を高める作用を示した.REPPは入学時試験学力とは弁別的な薬剤師国家試験成績の指標であり,薬系大学における教育の効果を測る指標として有用と考えられる.

  • 河合 洋, 大島 新司, 小島 裕, 高橋 直仁, 関 俊暢
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10005
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/18
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    電子付録

    良質な薬剤師の供給を目指して薬系大学では様々な工夫がなされているが,薬剤師活動の前提となる薬剤師国家試験の合格率は大学間で差が大きい.薬剤師国家試験合格率は入学時の学力に強く規定されているが,大学における教育効果の影響も無視できない.入学時試験学力の影響を調整した指標を用いた大学間比較により,薬剤師国家試験成績に向けた大学教育効果と薬学教育評価結果との関連を解析した.数量化1類による解析では,医療人教育,成績評価,教職員組織の項目が大学教育効果と関連を示し,さらに上・下位層では自己点検の項目,下位層では実務実習,問題解決能力醸成教育など薬学教育カリキュラムに関する項目も関連を示した.また,試験対策偏重施策による薬剤師国家試験成績向上効果は検出されなかった.大学教育効果の向上には,医療人教育や問題解決能力醸成を含む幅広い教育および的確な成績評価を実践する教育姿勢の充実が重要と考えられる.

  • 近藤 福子, 池田 徳典, 中嶋 弥穂子, 内田 友二
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10006
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/18
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    電子付録

    薬剤師の役割は多様化し,チーム医療や患者ケアへの積極的関与が求められている.将来的なワクチン接種業務への貢献を見据え,本研究では薬学部における筋肉注射実習の教育効果と,学んだ内容の実務実習への活用について,2021~2023年度の「実務実習事前学習(筋肉注射)」受講者364名および実務実習後アンケート回答者346名を対象に検証した.筋肉注射実習後,筋肉注射の知識,技術,実践に対する自信のいずれも有意に改善し,学部での筋肉注射実習の教育が効果的であることが示唆された.一方で,筋肉注射実習で学んだことを臨床での実務実習に活用できた学生は少数であった.しかしながら,注射手技の見学時の理解促進,注射製剤の違いへの理解深化,患者や医療者とのコミュニケーションに役立ったとの意見が得られた.そのため,今後はケーススタディや事前目標設定の導入を通じ,学部教育と実務実習を繋ぐ学びの連続性を高める教育的工夫が求められる.

  • 武田 香陽子, 平田 收正
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10007
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/18
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    継続的な薬学教育改革や臨床教育へのシフトに伴い,研究実績の低迷や大学院進学者減少といった問題が報告されてきた.この問題の解決のため,研究する上での障壁を明確にし,薬学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度版(2022 MCC)のG.研究能力における各学習目標の自己評価能力と,総合的な研究能力の自己評価との関連を評価することを目的とした.対象者は薬剤師の60%以上が従事している地域薬局または病院に勤務している者とした.薬剤師は431名(81.5%)が「研究は必要である」と回答し,476名(89.9%)が臨床現場での研究実施に障壁を感じていた.臨床能力育成のための学部教育の必要性は,465名(87.9%)が「必要である」と回答した.2022 MCCのGの学修目標と研究実施能力に関する自己評価の関連を評価したところ,すべての能力について自己評価は低かった.そのため,研究実施時に感じる様々な障壁に対する支援と研究能力育成のための学部教育の充実の必要性が明らかとなった.

  • 井出 名月, 堀 英生, 齊藤 将之, 舘 知也, 今井 大輔, 宮崎 剛, 今井 敬司, 塚本 知男, 服部 芳明, 林 きよみ, 鈴木 ...
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10016
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/22
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    本研究では,新しく開発した地域中核病院と市内薬局の連携を強化し,地域包括ケアシステムを進めるARCSモデルを取り入れた研修会の有効性を明らかにするため,薬局薬剤師を対象にアンケート調査を実施した.また,研修会によるトレーシングレポート(TR)送付枚数の変化,研修会で作成したチラシ及び薬局検索システムの活用状況について調査し,カークパトリックモデルに準じて評価を行った.結果,研修会が参加者の連携に対する意識や行動に変化を与え,連携強化に繋がるものであることが示唆された.また,TRの提出頻度の増加,記載内容の改善,並びにチラシ及び薬局検索システムの有効活用が認められ,カークパトリックモデルの4段階にまで到達した可能性が示された.以上より,本研修会の有効性が示唆された.他地域において本研修会を応用することにより,全国的に病薬連携が促進され,地域包括ケアシステムの推進に繋がると考える.

  • 丸山 剛, 亀井 大輔, 福村 基徳, 山本 仁美, 加藤 里奈, 小林 文, 小林 靖奈
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10017
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/24
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    目的:PBLなどのアクティブラーニングは学生の学修態度等の向上に寄与してきたが,新規学修内容の習得を主目的とする授業への導入には課題がある.本研究では,当該授業での学修意欲や知識習得等の向上を目的とし,シリアスゲームを導入した.方法:Kahoot!を用いたシリアスゲームを薬学部3年生に実施した.学生を対照群(従来型講義)とゲーム群(シリアスゲーム)に分け,授業前後にテストとアンケートを実施し,学修効果を評価した.結果:新規学修内容に関するポストテストにおいて,ゲーム群は対照群より有意に高い平均点を示した.また,ゲーム群の全学生が楽しさと集中を実感し,学修意欲等の向上が示唆された.考察:シリアスゲームは新規学修内容の習得を主目的とする授業における手法として有効となり得ることが示された.今後,協働的要素を強化することで,学修効果と長期的な知識定着の向上が期待される.

  • 栗坂 知里, 小林 秀昭, 秋山 晴代
    原稿種別: 原著
    2026 年10 巻 論文ID: e10041
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/27
    ジャーナル フリー HTML

    薬剤師国家試験では,知識に加え技能・態度を含む総合力が求められるものの,その実体については漠然としていた.生成AIは知識問題に対しては高い正答率,技能・態度を含む問題に対しては正答率の低下が予想された.そこで本研究では技能・態度を含む総合力について考察することを目的に,Microsoft Copilotを用いて第110回薬剤師国家試験のうち病態・薬物治療科目および実務科目との複合問題を分析した.その結果,全体の正答率は78%(39/50問),必須と理論問題は100%(各15/15問),実践問題では病態・薬物治療科目60%(6/10問),実務科目30%(3/10問)であった.誤答要因として,①リード文や設問文中の制約条件,②知識の運用,③ガイドラインや添付文書における運用上の取り決めなど,が見いだされた.生成AIの誤答分析が技能・態度を含む総合力について理解するための目安となる可能性を示した.

短報
  • 髙橋 真樹
    原稿種別: 短報
    2026 年10 巻 論文ID: e10010
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/26
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    電子付録

    第2期薬学教育評価結果を受け,新規の学修成果評価ツールとして「状況設定問題」を開発した.状況設定問題は,保健医療や公衆衛生におけるリスク・マネジメント及びクライシス・マネジメントにおいて,個別の知識・態度等の何をどう組み合わせるかに関する実践的思考・判断能力を問う2問1組の多肢選択問題であるが,その有用性については検証されていない.そのため,2024年度にトライアルを実施し,第110回薬剤師国家試験結果と併せて検討を行った.受信者動作特性曲線下面積は,卒業認定の可否や国家試験の合否について中等度の予測能を示した.状況設定問題で評価した学修成果は,卒業認定の水準よりも国家試験合格レベルに近いことが示唆された.状況設定問題の第1問に相当する国家試験問題の正答率はクライシス・マネジメントを扱った問題において低い傾向にあり,教育課程の編成及び実施に関して検証が必要であることが示唆された.

  • 井上 信宏, 山本 弘, 富澤 崇, 湯本 哲郎, 若菜 大悟, 佐久田 博司, 林 明夫, 赤池 昭紀, 細江 智夫
    原稿種別: 短報
    2026 年10 巻 論文ID: e10023
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/09
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    本研究は,薬学部における医療デジタルトランスフォーメーション(医療DX)教育の現状と課題の解明を目的とし,Web上でのシラバス等の調査と,全国薬学教員へのアンケート調査を実施した.Web調査の結果,医療DXを科目名に明示する事例は確認されず,シラバス内の記述において既存科目の一部として組み込まれている実態が明らかとなった.アンケート調査(回収率47.5%)では,81.6%の学部が医療DX教育を実施していたが,その内容は電子処方箋やオンライン服薬指導など,すでに臨床現場で実装されている項目に重点が置かれていた.一方で,デジタル治療薬(DTx)や医療情報プラットフォーム等の次世代技術に関する教育の実施率は低く,授業時間も1~3コマに限定された.その理由の一つとして時間的制約が教育進展の障壁となっている可能性が示唆された.以上の結果から,現場対応型の教育は進展しているものの,技術がもたらす医療変革の意義まで含めて包括的に理解させるための教育体制は,いまだ途上であることが明らかとなった.

  • 井上 信宏, 大野 修司, 山内 理恵, 久保 元, 江上 佳那, 山﨑 正博
    原稿種別: 短報
    2026 年10 巻 論文ID: e10033
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/10
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    電子付録

    本研究では,一私立薬科大学の薬学生1~6年生を対象に,メタ認知的方略の因子構造を6学年相当のコホートにおいて横断的に検討した.検証的因子分析の結果,対象薬学生のメタ認知的方略は,モニタリング方略とプランニング方略の2因子構造で捉えられることが示唆された.加えて,試験成績が得られた2年生,4年生及び6年生において方略と成績との関連を探索的に検討した結果,モニタリング方略を起点とする一定の関連パターンが観察された.以上より,薬学生におけるメタ認知的方略は2因子構造として把握される可能性が示唆され,教育的支援を検討する際にモニタリング方略に着目することが重要であると考えられた.

実践報告
  • 市川 智恵, 湯本 哲郎, 小田中 啓太, 木村 聡一郎, 石橋 芳雄
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10001
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/13
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    電子付録

    本学の微生物学実習は,薬学教育モデル・コアカリキュラム(コアカリ)平成25年度改訂版におけるSBOsの「技能」項目に,大学独自の項目を加えて作成されたカリキュラムである.そこで本稿では,学生の技能習熟度および実習が座学科目へ与える影響を調べ,令和4年度改訂コアカリ下でも本実習が適するか検討した.微生物学実習後の学生に対して質問紙調査を行い,学生は技能項目の習熟度の申告とともに実習への取り組み姿勢や実習の感想などを回答した.その結果,およそ9割以上の学生が,コアカリの「技能」項目を補助があれば1人でできる程度に習得できていることが明らかとなった.また67.8%の学生が実習後に座学科目に対する興味が増加していた.本研究から,現行の実習内容は薬学生に必要な内容を網羅しつつ学修にはポジティブな影響を与えていることが示され,改訂コアカリ下においても十分に有用な実習であると考えられた.

  • 刀根 菜七子, 岩尾 卓朗, 髙田 芙友子, 田中 泰圭, 道具 伸也, 三島 健一
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10002
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/26
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    福岡大学薬学部では,調剤実習に処方解析をテーマとしたグループワークを取り入れている.調剤実習で実臨床に近い調剤を体験することで,単なる手技の習得にとどまらず,学修者の様々な気付きを促すこと目標とした.今回,2024年度の調剤実習の効果を確認した.調剤に関する理解度は,全ての項目において実習後に有意に高まっていた.これまでの学修を調剤実習で活かせたと感じたことでは 「計算」,「薬」,「調剤」,「添付文書」等の語句が抽出語として確認できた.このうち「計算」,「薬」,「添付文書」は,勉強不足だと感じたこととしても頻出していた.今後調剤する際に意識したいことでは「患者」が頻出上位の1つであった.実践した調剤実習により,手技の習得に加え,個別最適化のための処方解析の重要性や,調剤を含めた薬剤師業務の中心には「患者」が存在することを,非臨床の空間にて経験してもらう機会となったことが確認された.

  • 庄司 雅紀, 恩田 光子
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10011
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
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    本稿では,中学生を対象としたメンタルヘルスリテラシー教育に認知行動療法(cognitive behavioral therapy: CBT)の視点を取り入れた一実践を報告する.大阪の私立中学・高校で実施されている基礎薬学講座の一環として,中学2・3年生に対し,こころの健康,うつ病の理解,自動思考と感情・行動の関係,自動思考記録表を用いたセルフケア,相談先の情報を,60分間の講義とワークで提供した.講義終了後,無記名アンケート19件を分析したところ,難易度は「ちょうどよかった」が78.9%で最も多く,CBTを用いたセルフケアについて「役立ちそうだと感じた」が84.2%であった.自由記述からは,セルフケア技法への関心,うつ病への理解と偏見の修正,他者への接し方や相談先への気づきが確認された.本実践は,中学生へのCBTの基礎的枠組み導入とメンタルヘルスリテラシー向上に一定の有用性を示し,薬学教育者による学校現場へのアウトリーチの可能性を示唆した.

  • 三浦 基靖, 河本 小百合, 柏倉 康治, 内田 信也
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10019
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/14
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    薬学教育において臨床現場で必要とされるコミュニケーション能力の向上が求められている.そこで没入感を体感できる仮想現実(VR)に着目し,薬局窓口での医療面接に関するVRコンテンツを導入し,本コンテンツが学生にどのように受け止められるかを把握することを目的とした.高校生及び薬学生を対象に「臨場感」「行為主体感」「有用性」「臨床一致性」に関する評価を実施した.いずれも肯定的な評価が得られ,特に「臨場感」は85.1~97.9%,「有用性」は93.7~98.8%と高く,実務実習経験の有無に関わらず多くの学生が肯定的に評価した.自由記述の共起ネットワーク分析では,実習内容や学年によって関心の焦点が異なり,低学年は薬剤師と患者の関係,高学年は具体的な薬剤の使用法にも注目していた.これらの結果から,本VRコンテンツは薬剤師業務の理解を深め,臨場感を体験できる教育ツールとして活用できる可能性が示唆された.

  • 井上 信宏, 山内 理恵, 江上 佳那, 大野 修司, 久保 元, 山﨑 正博
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10022
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/09
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    電子付録

    本研究は,私立大学薬学部の6年生に対し実施された,学習に関する任意の個人面談について,面談の前後で学生の「学習への不安感」がどのように変化するかをvisual analog scale(VAS)を用いて客観的に検証した一例である.本結果では,「学習への自信」「課題把握」「学習意欲」「学習への不安」の全項目において,面談は学生の不安感を有意に軽減させる効果を示していた.特に,極度に不安を感じている学生にとって,教員との面談は不安感の劇的な改善に繋がることが示唆された.また,薬剤師として必要な薬学知識の修得を確認する総合演習科目の試験前後で不安感が高まりやすくなることから,適切な介入タイミングの示唆が得られた.学生が援助要請に至るきっかけは学生のジェンダーのみでは説明できず,個人的な要因が複数関与し得るため,面談に至らない学生を支援へ接続する仕組みの整備が重要である.本報告は,薬学部における学生の援助要請行動に基づいた面談の実践例として,その有効性と課題を提示するものである.

  • ―過疎地域の中規模病院における効果検証―
    鶴居 勝也, 栗原 祥吾, 荒木 遼太, 小川 紗知, 譲原 千広, 波多 晶子, 中澤 美樹子, 橋爪 和恵, 窪田 真弓, 田口 雅登
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10024
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/09
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    過疎地域の中小病院では研究活動に関する実践知の継承が困難であり,前報では公立南砺中央病院診療技術部職員の97.4%が研究活動に不安を抱えていること,また研究計画書作成や倫理審査対応など,薬剤師が研究遂行に必要な実践知の継承・共有に寄与し得る領域が存在することを示した.これらを踏まえ,当院では大学と協働し,薬剤師主導の多職種リカレント教育を試験的に導入した.本研究ではその効果を検証するため,研究計画,データ収集,統計解析,発表準備を段階的に支援する研修会を実施し,前後でアンケート調査を行った.研修前に職員の半数以上が挙げた6つの不安要因のうち4項目が有意に軽減し,学会発表回数は2022年の11回から2025年には16回へ増加した.薬剤師主導の多職種研修は,職員の不安要因の軽減と研究活動への関心を高める行動変容を生むことから,教育資源の限られた中小病院の研究支援方策としての有効性が期待される.

  • 緒方 憲太郎, 刀根 菜七子, 小迫 知弘, 松尾 宏一, 林 稔展, 山内 淳史, 安高 勇気, 三島 健一, 北島 研, 大田 博, 宮 ...
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10026
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/19
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    医療現場では質の高いチーム医療が実践されているが,さらに変化する医療と多様化する患者対応のために,医療者を目指す学生たちに対して,医療専門職としての資質と能力を涵養することが求められる.多くの医療系大学ではこれに応えるべく,卒前の多職種連携教育(IPE)を実施している.福岡大学では効果的なIPEの実践に向けて,ワークショップと事例検討を実施し,その直後に学生の認識をアンケート調査して,課題を抽出した.教育介入直後の反応を捉えた結果,薬学部,医学科および看護学科において,学生の認識に臨床経験が影響していることが考えられた.さらに薬学部生は,自身の役割や患者・医療スタッフを認識する力が他学科生に比べて十分に育まれていない,あるいはその獲得が遅れている傾向が示唆された.これらは実務実習において初めて培われるべきものではなく,今後,薬学部生が低学年次よりこれらを段階的に学ぶIPEの導入を検討していきたい.

  • ―研修前後のアンケート調査と英語力確認テストによる解析―
    浅井 彰太, 吉井 圭佑, 阿蘓 寛明, 林 秀樹, Listen W. Benjamin, 豊村 隆男, 後藤 秀貴, 徳永 智典, 山西 ...
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10032
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/10
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    電子付録

    本研究では,就実大学薬学部が開講する薬学海外研修の教育的効果を明らかにするため,2023年度オーストラリアのアデレード大学で実施したプログラムを対象に,参加学生にアンケート調査および英語力確認テストを実施した.研修後の総合満足度は平均8.9点(10点満点中)と高く,英語学修に対する意欲や自己肯定感の向上が認められた.英語4技能テストではすべての技能で得点率が上昇し,特にリスニングとスピーキングにおいて顕著な伸びを示した.英会話時間の長い学生ほど,研修前後におけるスピーキング得点の増加率が高い数値となった学生が多かった.また,「行動力・チャレンジ精神」「異文化理解」などの自己成長に関する記述が多かった.このことは,本研修が英語力向上のみならず,薬学教育モデル・コア・カリキュラムの目指す人材育成とも一致し,学修意欲や将来展望の形成にも寄与していることが示唆された.

  • 緒方 憲太郎, 安高 勇気, 刀根 菜七子, 小迫 知弘, 三島 健一, 神村 英利, 松末 公彦
    原稿種別: 実践報告
    2026 年10 巻 論文ID: e10040
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    福岡大学病院では,薬学実務実習に外来化学療法センターにおける看護師シャドーイングを導入し,薬学生の多職種連携に対する理解を深め,薬剤師の役割を再考して,その学びを実習に反映させる実習プログラムを構築した.本研究では,実習前後における薬学生の理解に関する自己評価を解析し,本プログラムの教育効果を検討した.その結果,評価したすべての項目において実習後のスコアは有意に上昇し,「看護師の役割」,「患者・家族の問題点を見いだすこと」,「薬剤師の役割」において顕著であった.さらにテキストマイニングの結果から,他職種のプロフェッショナルに触れることによって,薬学生の視野が広がり,多角的な問題抽出へとつながったことが考えられた.本プログラムは多職種連携に対する意識および臨床的視点の獲得に有効な教育法であり,多職種連携教育の重要性が高まる中,薬学教育における有用な教育手法の一つとなり得ると考えられる.

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