-
羽野 卓三, 秋月 麻友子, 土井 光則, 岩城 久弥, 崎山 晃宏, 松原 和夫, 太田 茂
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2022-059
発行日: 2023年
公開日: 2023/03/23
ジャーナル
フリー
HTML
目的:診療所と調剤薬局をシームレスに経験する実習を行い,処方計画をシャドーイングすることで,学生の気付きに変化があるかを検証した.
方法:薬学部5年生14名を対象に,外来患者の病態および処方意図について解説を行った後,実際の外来患者の処方計画を学生自身が行った.実習前後で,処方計画に重要と思われる要素を8個列挙させた.
結果: 共起ネットワーク分析では,実習前には薬剤,患者の既往や病態に関するもの,実習後では患者の生活や習慣を示す語が抽出された.質的解析によるカテゴリーは,薬剤(適応・用法・用量),患者の身体的背景,患者の生活・意識特性の3群が抽出され,実習前の3群の頻度は49.2%,47.5%,3.4%,実習後は33.1%,44.1%,22.8%であり,患者の生活・意識特性が増加した.
結語:今回の体験実習により,学生は処方計画の理解が深まり,患者の生活や意識特性に沿った要素をより考慮する必要性に気付きがみられた.
抄録全体を表示
-
西崎 有利子, 吉田 林, 五十鈴川 知美, 浅井 将, 牛久保-酒井 裕子, 速水 耕介, 黒岩 美枝, 川嶋 芳枝, 金子 正裕
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2022-053
発行日: 2023年
公開日: 2023/04/15
ジャーナル
フリー
HTML
電子付録
生体の構造と機能を理解する生物系機能形態学実習では,動物愛護や新型コロナウイルス感染症拡大下での教育という社会的要請に応えつつ,優れた医療人・薬剤師を育成することを目指している.今回,タブレット端末を用いた “バーチャル” な解剖とラットの観察を併用した対面形式による解剖実習を行い,スケッチ課題を課した.以前の従来型のラット解剖実習の課題得点と比較したところ,“バーチャル” な解剖実習の得点が有意に高かった.実習後,教育効果を検討・改善するために,受講学生にアンケート調査を実施した.多くの学生がデジタル教材の利点を活かして一時停止や反復観察をしており,概ねわかりやすく満足できる実習であったと回答があった.今回の試みにより,動物愛護や感染症対策等の社会的要請にも応えられたと考えられる.今後,臨床系科目との連携を目指して動画内容や題材をさらに改善し,優れた医療人・薬剤師の育成に寄与する実習につなげていきたい.
抄録全体を表示
-
畦地 拓哉, 齊藤 有希, 小柴 聖史, 鈴木 賢一
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2022-049
発行日: 2023年
公開日: 2023/04/15
ジャーナル
フリー
HTML
本研究では,実務実習中の薬学生が抱くがん化学療法に関わる患者・薬剤師のイメージとその変化を調査した.外来化学療法実習の参加前後にアンケート調査を実施したところ,薬剤師の役割として,副作用モニタリングの重要度は実習後に最も高くなった.一方,抗がん剤の臨床薬理やpharmacokinetics/pharmacodynamics,医療費負担への理解の重要度は実習後で低く,これらの関わりや活用が不足していると考えられた.自由記述回答からは,薬学生は「がん患者」に対して不安や痛みなどの弱い面だけでなく,がんを受け入れて前向きに治療に取り組む姿勢を併せ持つイメージ,「がん患者指導に関わる薬剤師」に対して「がん患者」が抱える想いに寄り添い,患者一人ひとりに適した薬学的管理を行うイメージをそれぞれ形成していると考えられた.薬学生が抱くイメージを踏まえて,治療効果や副作用のみならず経済面や臨床薬理の面からも実習生を様々な患者と向き合わせることが重要であると考える.
抄録全体を表示
-
巽 道代, 熊谷 聡美, 七戸 俊明, 片山 真育, 武隈 洋, 菅原 満
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-001
発行日: 2023年
公開日: 2023/05/10
ジャーナル
フリー
HTML
電子付録
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の流行は薬学教育に大きな影響を及ぼした.COVID-19感染対策として,栄養サポートチーム(NST)実習は遠隔配信(オンライン,対面での交流なし;以下,オンデマンド実習)に移行した.今回,NSTで協働する医師,歯科医師,管理栄養士,理学療法士,薬剤師が協力し,薬学生の学生指導に活用できるオンデマンドコンテンツを作成した.オンデマンド実習の効果を検証するため,実習前後の実習生の知識習得度,実習生の実習担当者(薬剤師)に対する評価,および学習意欲の変化を調査した.また,顧客満足度分析すなわちcustomer satisfaction(CS)分析により,研修の満足度を調査した.実習生の知識量と学習意欲は実習後に大きく向上した.CS分析の結果,実習の理解・達成において,最も改善が必要なのは「チームにおける薬剤師の役割の理解」と「薬剤師がNSTに参加することのメリットの理解」であることが示唆された.オンデマンド実習は病院実習において教育効果があることが示された.
抄録全体を表示
-
西牧 可織, 二瓶 裕之
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-005
発行日: 2023年
公開日: 2023/05/27
ジャーナル
フリー
HTML
数理・データサイエンス・AI教育(応用基礎レベル)に対応する授業として「医療データサイエンス入門I」を,薬学部をはじめとする複数の医療系学部で開講した.本稿では,その授業デザインと教育用ロボットを活用した教材について紹介する.「医療データサイエンス入門I」では,薬剤師など医療従事者を目指す学生がAIやプログラミングに興味を持つよう教育用ロボットを活用した.また,学修プラットフォームとして「医療データサイエンス学修サイト」を作成し,Google Colaboratoryを用いたプログラミング演習をサイトに組み込むことで,ロボットを活用しながら応用レベルの基礎学修項目を体系的に学修できるよう工夫した.
抄録全体を表示
-
筒井 和斗, 小林 典子, 中村 友紀, 岩田 紘樹, 山浦 克典
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-010
発行日: 2023年
公開日: 2023/07/06
ジャーナル
フリー
HTML
慶應義塾大学では,4年次の実務実習事前学習のセルフメディケーション実習に実務実習を修了した6年生が準備・実施に関与している.これにより,下級生の実践的な実務実習イメージの形成に寄与するだけでなく,上級生自身にも実務実習の振り返りや知識の再確認を促すなど,双方への学修効果が期待される.本研究では,4年生に対して実習前後に,6年生に対して実習後にアンケート調査を実施した.その結果,4年生は6年生が実習に関与することで,実践的な経験を積むことができ,実務実習のイメージや将来の自分像の形成および知識の理解が深まるなど様々な学修効果があったことが明らかになった.また,6年生自身も来局者役の立場を経験することで,来局者の心情を理解すると共に,内省を深め,自身の実務実習を振り返るなど学修効果があったことがわかった.
抄録全体を表示
-
川上 美好, 園部 尭仁, 上田 祥貴, 吉山 友二
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-009
発行日: 2023年
公開日: 2023/08/09
ジャーナル
フリー
HTML
トレーシングレポート(Tracing Report: TR)は,情報提供・連携ツールとして近年着目されている.今回,北里大学薬学部実務実習事前実習において,新たにTR作成実習を導入しその有用性を評価した.模擬薬局を利用して「後発医薬品への変更可の処方箋を持参した患者への対応」に関するロールプレイを行った.その症例について医師への情報提供の内容を考え,TRを作成した.終了後に学生272人にアンケートを実施した.回収率は100%であった.TRという言葉を事前に知っていた学生は28.7%であった.98.1%の学生がTRについて「十分またはやや理解することができた」と回答し,88.3%の学生が「次年度の薬局実習の中で,TRを作成して医療機関に情報提供できると思う」と回答した.事前実習でTRを知り,模擬薬局での実践を通して情報提供の内容を考え,実際に作成したことは,薬局実習での実践に繋がると考える.
抄録全体を表示
-
広瀬 雅一, 松田 幸久, 山中 智香, 猿橋 裕子, 藤井 早由利, 長崎 信浩, 高根 浩
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-004
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/15
ジャーナル
フリー
HTML
改訂モデル・コアカリキュラム下での実務実習の受け入れ経験を有する薬局の薬剤師は,実習指導を行ったことへの達成感を得ていることや実習生への対応に不安を感じていること等が,我々の先行研究で明らかになった.本研究では,薬局における日常業務の視点から薬剤師が実習指導を議論するワークショップを開催した効果を,先行研究と同じ43項目からなるアンケート調査によって評価した.2つのセッション(症例への薬学的介入の議論,薬剤師や事務員の能力を指導に生かす方法の検討)を実施後の調査で,43項目中12項目で参加者の意識に有意な正の変化が示された.項目別では,指導内容の認識に関する項目で肯定的な変化が得られたことに加えて,実習生との関係に関する項目でも有意な正の変化が認められた.本ワークショップは,薬局薬剤師の実務実習に対する理解と受入意欲を向上させる効果が期待できることが示された.
抄録全体を表示
-
岩澤 晴代, 岸本 成史, 長谷川 仁美, 安原 眞人, 厚味 厳一, 北 加代子, 安藤 崇仁, 渡邊 真知子, 横山 和明, 板垣 文雄 ...
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-020
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/15
ジャーナル
フリー
HTML
薬剤師に求められている職能の変化を受け,薬学生は様々な知識を関連づけて学び,活用する能力を養う必要がある.帝京大学薬学部では,薬学基礎から薬学臨床の内容を関連づけ統合的に理解することを目的として,2020年度6年生前期にオンデマンド形式による分野横断統合演習を実施した.受講生の到達目標自己評価(48項目)は,全ての項目で授業後に有意に上昇した.授業後アンケートの「理解の深まり」と「満足度」の評価が高い学生のグループは,定期試験平均得点率も有意に高かった.授業を受けた感想から,本科目は個人学習による理解を深める効果や自主的な共同学習を促す効果もあったと考えられた.今回実施したオンデマンド形式の授業による分野横断統合演習は,教員側が段階を踏んだ課題提示を行うことで,学生に自主的な学習を促すことができ,「理解の深まり」と「満足度」および定期試験の結果から効果的なプログラムである可能性が示された.
抄録全体を表示
-
橋本 怜史, 西丸 宏, 八巻 史子, 加瀬 義夫
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-026
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/12
ジャーナル
フリー
HTML
薬学生の学力低下が問題となっており,各大学は薬学教育の質を担保すべく対策を実施している.本学でも低学年時から支援を行っており,特に重要な最終学年では国家試験形式の試験を行って学習状況を把握し,学生の学習状況に応じて個別面談を行っている.これまで,模擬試験の成績推移と国家試験の合否の関係については解析がされていたが,個別面談の効果については検証がなされていなかった.本研究では,面談の回数,対象者の成績,時期の違いが面談の効果に与える影響を解析した.まず,2017~2021年度に行っていた面談の実施方法と効果について検証を行った.検証結果に基づき,2022年度の面談実施方法を修正し,その効果について検証を行った.面談方法の違いが面談の効果に与える影響を解析した結果,面談を早期に幅広い成績層の学生に行うことが重要であり,同じ学生に複数回面談を行うことの効果は小さいことが示唆された.
抄録全体を表示
-
刀根 菜七子, 石川 さと子, 三島 健一, 冨田 陵子, 松末 公彦
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-025
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/12
ジャーナル
フリー
HTML
学生の能動的な学修意欲の涵養につなげるために,1年次前期開講科目「薬学化学入門」に濃度・単位をテーマとしたグループワークを取り入れた.入学直後から学生が疑問を他者と気軽に共有し,楽しみながら学修できる契機にするとともに,その効果を検証した.参加者の感想を分析した結果,「違う-考え方-知れる」,「いろいろ-意見-聞ける」,「濃度-計算-理解」などの語句が共起していた.プレ・ポストテストの結果では,グループワークにより回答者の43%で得点が上昇し,有意差が認められた.さらに,プレ・ポストアンケートの結果を解析したところ,濃度および単位それぞれについて,回答者の29%と40%が苦手意識を改善していた.実施したグループワークの効果が明らかになったため,今後テーマの選定を工夫し,グループワーク後に個別の学修支援を組み合わせることで,化学に対する学修意欲のさらなる向上につながることが示唆された.
抄録全体を表示
-
土肥 弘久, 大和 幹枝, 伊藤 俊将, 水谷 顕洋, 廣澤 伊織, 松野 純男, 長南 謙一, 宮﨑 美子
原稿種別: 実践報告
2023 年 7 巻 論文ID: 2023-031
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/11
ジャーナル
フリー
HTML
社会構造の変化に伴い医療者へのニーズも多様化している.この状況に適応できる薬剤師を養成する方法の1つに分野横断型教育がある.我々は,薬局・病院実務実習を終了した学生を対象に症例検討を実施する際,基礎から臨床分野の様々な講義を受講することで分野間の繋がりを意識できるかを3年間のアンケート調査により検証した.その結果,分野横断型カリキュラムへの興味の有無により学生の学習に対する認識に違いがあった.多くの興味を持った学生は,横断的な思考を臨床で活かしたいという意識がある一方,興味を示さなかった一部の学生は,薬剤師としての知識を獲得することへの意識が強く,知識を「患者」の治療に活用するという視点が欠如しているように思えた.実務実習を経験した学生を対象に分野横断型授業を実践することは,5年間の振り返りだけでなく症例を多角的に捉えることの重要性など気付きを与える機会として重要であると思われた.
抄録全体を表示