日本公衆衛生看護学会誌
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最新号
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巻頭言
総説
  • 高林 知佳子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 66-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:日本の家族介護者のセルフケアに関する国内文献を整理し,家族介護者のセルフケアの内容と関連要因,予測される成果を明らかにする.

    方法:医中誌Webを用いて2023年9月までに登録されている文献から17件を選定し,分析した.

    結果:セルフケアの内容は【健康に暮らしていく土台づくり】【抱え込まない介護】【暮らしの質の充実】の3カテゴリー,関連要因は【心身の不調や病気】【介護負担の重さ】【ソーシャルサポートの有無】の3カテゴリー,予測される成果は【健康とメンタルヘルスの向上】【在宅療養・介護の継続】【主観的幸福感の向上】の3カテゴリーが抽出された.

    考察:家族介護者のセルフケアの実践は家族介護者自身の身体的・精神的健康の維持や在宅介護の継続につながるだけでなく,家族介護者が身近にある幸せを感じられることにつながることが考えられる.看護職は家族介護者の心身の不調や病気の程度,介護負担の重さ,ソーシャルサポートの有無の状況を多角的にアセスメントし支援することが重要である.

  • ―先行研究結果の内容分析―
    廣瀬 瑠華, 岡本 玲子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:幼児・小・中・高・大学生の各時期について,食習慣・食行動やその関連因子の特徴を比較することで,就労期前に重視されるべき食生活と関連要因の全容を明らかにする.

    方法:医学中央雑誌Web Ver.5を使用し,全61件の文献を対象とした.対象者の食習慣・食行動及び関連要因を抽出し,コード化,サブカテゴリ化・カテゴリ化を行った後,時期間での特徴の比較を実施した.

    結果:463のコードが抽出され,101のサブカテゴリ,20のカテゴリに分類された.抽出された食習慣・食行動やその関連因子は,各時期の発達段階の特徴が反映されていた.また,20のカテゴリのうち19のカテゴリが複数の時期に共通して見られた.

    考察:幼児期から大学生期にかけて全体を捉え,対象者の特に発達段階に合わせて段階的,継続的な介入を行うことが,健康的な食習慣・食行動の効果的な習得のために重要であることが示唆された.

原著
  • 多田 碧樹, 規家 美咲, 岡本 玲子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 86-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:在日外国人女性(以下,在日女性)を産前から支える公衆衛生看護技術(以下,技術)を明らかにする.

    方法:母子保健領域で在日女性の支援経験がある自治体保健師を対象とする半構造化面接を行い質的記述的に分析した.

    結果:研究参加者は17名であり,語りから,在日女性が困る状況・ニーズ,即ち言語障壁,文化障壁,関係障壁,法・制度障壁,支援体制の脆弱性について,12カテゴリの技術が抽出された.具体的には,《言語障壁を軽減する対面手段の複数活用》,《文化障壁を克服する手がかりの探索》,《支援者との関係障壁を低減する並走コーディネート》,《不法滞在事例の健康を保護する対応捻出》,《外国人支援に資する知識・経験知の蓄積》などであった.

    考察:今回,在日女性を産前から支える技術の体系的整理がなされたことにより,今後の切れ目のない支援と体制整備に資する技術習得方法の開発が期待できる.

  • 岡田 恵子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 96-107
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:医療的ケア児と家族の支援における保健師の役割と役割形成プロセスを明らかにする.

    方法:政令指定都市保健センターの保健師8名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプロ―チ(M-GTA)を用い分析した.

    結果:保健師の役割形成プロセスは《保健師としての立ち位置と自信の揺らぎ》,《低い自己評価による関わりの躊躇》を経て《自らを支援に向かわせる気づきの重なり》を得る中で《保健師の役割の自覚》に至った.保健師は地域を基盤に活動する強みを活かし【子どもの療育・就園・就学の支援】【家族の精神的支援】【地域のネットワークづくり】などの役割に力を発揮していた.

    考察:医療的ケア児支援では,継続支援により【自信と肯定感の獲得】をしたこと,また【保健師だから担えることの気づき】【保健師の強みの気づき】【自らの保健師活動のコアの気づき】という活動のコアとなる気づきを得たことが保健師の役割形成を促す力となっていた.今後,保健師の「揺らぎ」を活動の活性化につなぐためのサポートとして,職場で支援目標の共有の必要性が示唆された.

研究報告
  • ―自治体に勤務する保健師の視点から―
    廣金 和枝, 三森 寧子, 岡本 玲子, 髙田 恵美子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 108-117
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:保健師基礎教育で学校保健実習を経験した自治体保健師の捉える学校保健実習の実習意義,望ましいと考える学校保健実習の到達目標と実習内容を明らかにする.

    方法:学校保健実習を経験した自治体保健師8名を対象に半構造化面接法によるデータ収集および質的記述的分析を行った.

    結果:実習意義は,【基礎教育での実施が有益】,【就業してからの子どもの支援実施に有益】の2カテゴリー,望ましい実習到達目標は,【学校における健康に関する活動の実際を理解(実践)できる】,【学校診断からの活動の展開プロセスを理解(実践)できる】などの6カテゴリーが抽出され,実習到達目標の達成を可能にする実習内容として,22コードが抽出された.

    考察:学校保健実習を経験した自治体保健師は,地域単位で学校を捉え,健康課題の抽出による活動や,特別な支援の必要な子どもの理解や支援など,より実践に寄与する実習到達目標とその達成を可能にする実習内容を望んでいた.

  • 荒木 真唯, 蔭山 正子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:精神疾患のある母親への保健師による妊娠期から3歳児までの育児支援技術を明らかにすることを目的とした.

    方法:精神疾患のある母親を妊娠期から育児支援をした経験年数6年以上の保健師7名に個別インタビューを行い,質的記述的に分析した.

    結果:育児支援技術として【産後の紆余曲折に何とか耐えうる準備を妊娠期から行う】【子どもの安全な育児を継続するための母親の病状と養育力を把握・判断する】【多機関とともに子どもの健全な成長発達のための環境を整える】【信頼関係構築を目指し,母親のニーズを意識して支援する】【母親のリカバリーを促すための,母親の生活力を高める】のカテゴリが生成された.

    考察:保健師は妊娠中から産後の病状悪化を見据える,安全な育児を継続するための病状管理,子どもの成長発達を促す視点を持つといった支援を行っていた.

  • 髙本 佳代子, 松本 憲子
    2024 年 13 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    目的:日本の行政保健師が行う健康なまちづくりに関する研究の動向及び研究成果を明らかにする.

    方法:市町村保健師による健康なまちづくりについて選抜した文献30件について研究の動向と研究成果の内容分析を行った.

    結果:最も多くの論文が出されたのは2018年であった.「公衆衛生看護技術や支援内容」の研究が15文献と最も多く,健康なまちづくりに関連する「地域づくり」や「地域の強み」などについて,定義づけや概念構築したものが5文献,「地域保健活動に関連する評価尺度開発」が5文献,「地域活動に参画した住民の特徴や変化」の研究が4文献,健康なまちづくりを実際に推進する研究としては,「健康な地域づくりの推進条件」のみと,1件にとどまっていた.

    考察:健康なまちづくりの施策推進・評価に向けての研究が進んでいないことが明らかとなった.今後は持続可能で効果的・効率的な健康なまちづくりの施策推進・評価の研究の必要性が示唆された.

災害・健康危機管理委員会報告
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