日本公衆衛生看護学会誌
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6 巻, 2 号
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巻頭言
研究
  • 河原田 まり子, 本田 光, 田仲 里江, 進藤 ゆかり
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:地域保健活動の推進に活用できるソーシャル・キャピタル測定尺度を開発し,信頼性・妥当性を検討する.

    方法:5市町の保健師13名と地域住民13名を対象にインタビュー調査を行い,42の質問項目を作成した.予備調査は199名の保健師係長相当職を対象に郵送法質問紙調査を行った.本調査は4市町の地域住民1,000名を対象に郵送法質問紙調査を実施した.

    結果:項目分析で12項目を削除し,探索的および確認的因子分析により,5因子20項目の最適解を得た.因子は「地域の人々の信頼と支え合い」,「目的縁による仲間づくり」,「まちの専門職への親和性」,「地縁による関わり」,「近隣とのおつきあい」と命名した.Cronbachのα係数は全体で0.92,関連概念を測定する他の尺度との相関係数は0.4~0.6であった.

    結論:本尺度は,地域保健活動のソーシャル・キャピタルの測定尺度として一定の信頼性と妥当性を有していることが確認された.

  • 高橋 佐和子, 荒木田 美香子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:本研究の目的は,大学生の薬物使用に関するリスクによる薬物乱用防止教育へのニーズの違いを明らかにし,大学生の薬物乱用防止教育への示唆を得ることである.

    方法:全国17大学の大学2年生を対象とした,留め置きによる自記式質問紙調査による横断的研究である.分析対象数は1,477名であった.

    結果:大学生の薬物乱用防止教育への意欲や関心は低いことが明らかになった.大学生が好んだ教育は,「学外講師が授業時間内に集団に対して入学時のみ」の実施であった.薬物乱用経験のある群はより充実した教育を好む傾向がある等,薬物乱用リスクによって教育的ニーズに違いがあった.

    結論:大学生の薬物乱用防止教育は,全体に向けた興味関心を高める講義に加え,学生をよく知る教員がディスカッションなどを取り入れつつ行う選択科目を開講するなど,学生の意欲・意識に合わせて学習形態や回数等を選択できるプログラムが効果的であろう.

  • 斉藤 恵美子, 鈴木 良美, 岸 恵美子, 澤井 美奈子, 掛本 知里, 中田 晴美, 五十嵐 千代, 麻原 きよみ, 永田 智子, 森 豊 ...
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 2 号 p. 150-158
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:本研究は,保健師教育課程選択制導入前後の保健師による学生の実習での技術到達度を比較し,教育内容を評価することを目的とした.

    方法:2013年と2015年に保健師学生の実習指導を担当した東京都特別区の保健師を対象として,無記名自記式質問紙調査を実施した.2013年は86施設,2015年は78施設の保健所・保健センター各1名を対象とした.2013年は特別区内の全ての教育機関が統合カリキュラム,2015年は14校中10校が選択制カリキュラムであった.質問項目は,保健師教育の技術項目と卒業時の到達度,回答者の年代,経験年数,職位,施設の保健師数,実習期間と学生数等とした.

    結果:各年での有効回答49人,35人を分析対象とした.その結果,2015年の24項目の技術到達度が2013年よりも有意に高かった.

    考察:全体の4割の小項目の技術到達度が上昇し,低下した小項目はなかったことから,保健師による評価としての選択制導入後の学生の到達度が高まったことが示唆された.

  • 長澤 ゆかり, 山口 忍, 綾部 明江, 鶴見 三代子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:市町村保健師の持つ精神障がい者支援に関する意識と市町村の精神保健福祉活動の実施状況との関連を明らかにする.

    方法:平成25年7月~8月に市町村保健師550人を対象として自記式質問紙調査を実施.

    結果:有効回答205件(有効回答率37.3%).市町村では「定期相談事業」は73.7%,「デイケア事業」は49.8%が実施し,「随時所内相談」などの活動は,96~100%が実施していた.90%以上が「市町村保健師にとって精神障がい者支援は重要」で「実施すべき」と考え,60%以上が活動にやりがいを感じていたが,保健師特有の活動方法を意識しているのは,半数以下だった.

    考察:精神分野では保健師特有の活動が浸透していないと推察されたが,定期的に対象者と接点がある方が支援に対する意識が高まることが示唆された.経験を重ねることが,保健師自身の積極的な取り組みや市町村全体の精神保健福祉の充実につながると考えられた.

活動報告
  • 金子 仁子, 佐藤 美樹, 標 美奈子, 三輪 眞知子
    原稿種別: 活動報告
    2017 年 6 巻 2 号 p. 168-177
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:子育て支援に関するコミュニティ・ミーティング(CMと略す)を用いたアクションリサーチの経過を記述し,ソーシャル・キャピタル(SCと略す)の醸成の点から評価した.本報告では,住民主体の活動推進の技術向上に寄与したい.

    方法:A地区(人口3,400人)で,地域の子育ての状況把握,CM準備会を行い,CMを住民・行政職員・大学とで協働実施し,CM後に参加者へのアンケート・インタビューを実施した.

    結果:CMでは子育て当事者の発言から交流の場の必要性が共有され,交流の場の開設方法が検討された.CM後に住民主体で子育て広場が開設された.1年後インタビューでは「CMがきっかけで参加者,団体のつながりが深まった」があがった.

    考察:CMでは参加者間のニーズ共有化が図られ,終了後参加者・地域内の団体のつながりもでき,CMは橋渡し型SC醸成を推進した.子育て広場が開設され,A地区での子育てシステムが強化された.

  • 伊丹 恵子, 武本 昌子, 石井 陽子, 富田 早苗
    原稿種別: 活動報告
    2017 年 6 巻 2 号 p. 178-186
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/23
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    目的:発達要支援児の適切な発見と早期支援のため,3歳児健康診査(以下,3健)の結果から支援が必要な児の1歳6か月児健康診査(以下,1.6健)の特徴を明らかにし,親子にとって有効な問診項目を検討することである.

    方法:A市で2010~2013年度,1.6健と3健両方を受診した児385名を対象に,発達に関連する問診票55項目を用いて分析を行った.

    結果:1.6健は異常なしであったが3健で発達要支援となった児は6.8%,1.6健で発達要支援,3健で異常なしとなった児は17.8%であった.問診項目を異常なし児と発達要支援児に分け検討した結果,見落としと考えられる項目はなく,拾いすぎと考えられた項目が「たえず動き回る」「食事の心配がある」等7項目あった.

    考察:見落とし項目はなく,1.6健問診項目の一定の評価ができたと考える.拾いすぎと考えられた項目は,表現の工夫と整理を行い,今後も健診場面での親子の様子,他の問診項目の判断と併せて評価する必要があろう.

連載企画 公衆衛生看護のグランドデザイン可視化への挑戦
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