日本公衆衛生看護学会誌
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6 巻, 3 号
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巻頭言
研究
  • 大西 竜太, 平野 美千代, 佐伯 和子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 3 号 p. 240-248
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    目的:3歳児の養育における統制場面でのスマホ使用に関する母親の認識を明らかにする.

    方法:3歳児の統制場面でのスマホ使用について20~30代の母親10名に対し半構造化面接を実施し,質的記述的分析によりカテゴリーを抽出した.

    結果:母親は【スマホは子どもの育ちと親役割を奪う存在だ】,【スマホは頼れる「お守り」として私と子どもを支えてくれる】,【便利なスマホは私にとって魅力的である】と統制場面でのスマホの特徴を認識していた.また,【親としてスマホを管理する責任がある】,【スマホが存在する中での親としての在り方と向き合う】という親としての意志を認識していた.

    考察:スマホは親子への問題性がありながらも,統制の補助手段として有効かつ母親にとって魅力的なツールであった.親子にとってのスマホの良し悪しを踏まえ,母親がスマホをコントロールしながら使うためには,親としての意志の持ち方が重要と考えられる.

  • 宮田 莉英, 平野 美千代, 佐伯 和子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    目的:介護予防教室に参加する高齢者の教室参加意義と生活への認識の関連を明らかにする.

    方法:A市の介護予防教室へ通う高齢者378名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,基本属性,介護予防教室への参加意義(以下,参加意義),生活への認識で構成した.分析は,因子分析および多重ロジスティック回帰分析を用いた.

    結果:調査票は回収314名,有効回答率75.4%であった.参加意義は【自己成長の促進】,【心身社会的側面への刺激】,生活への認識は【精神・社会的充実】,【健康志向】が抽出された.各参加意義には生活への認識【健康志向】(OR=15.7,OR=3.85)が有意に関連し,【自己成長の促進】には生活への認識【精神・社会的充実】(OR=1.12)が有意に関連した.

    考察:参加意義は生活への認識のとらえと関連があることから,高齢者の生活の認識にも着目して,介護予防教室を展開していく必要がある.

  • 嶋津 多恵子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 3 号 p. 258-267
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    目的:全国の保健所設置自治体におけるプリセプター保健師の現状および支援体制を明らかにすることを目的とした.

    方法:全国の保健所設置自治体で平成24~27年度にプリセプターを担当した保健師を対象に,無記名自記式の質問紙調査を実施した.

    結果:有効回答は335名(42.5%)から得られた.プリセプターから指導を受けた経験のある者が34.9%,保健師基礎教育課程は保健師専修学校45.7%が最も多く,担当した新任保健師は大学が88.1%を占めていた.プリセプターのキャリアは都道府県で管理期,その他では中堅後期が多かった.プリセプター研修は76.1%の実施であり,受講者も67.2%に留まった.人材育成について話し合う会議は月1回以上が33.0%,事例検討会の頻度は,自治体種別により有意差がみられた.

    考察:プリセプター研修,人材育成について話し合う会議及び事例検討会の充実,中堅後期及び管理期の保健師が中堅前期のプリセプター保健師を支援する段階的な指導体制が求められる.

  • 仁村 優希, 佐伯 和子, 青柳 道子
    原稿種別: 研究
    2017 年 6 巻 3 号 p. 268-277
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    目的:大都市における高齢者の見守られ意向および見守られたい相手の関連要因を明らかにすることを目的とする.

    方法:対象は5町内会の65歳以上の高齢者とした.無記名自記式質問紙を用いて,個人属性,町内の人との交流,見守られの現状,見守られへの期待と心配,見守られることに対する意識を調査した.関連要因の分析は,χ2検定,Fisherの直接確率検定を用いた.

    結果:回収数は526部,有効回答数は511部だった.74.0%に見守られたい意向があった.住民から見守られたいという希望は,安心感の獲得と人とのつながりの期待が有意に高かった.介護や保健医療の専門職の希望は,生活の維持への期待が高かった.生活支援サービスや機器によるシステムの利用希望は,他者からの干渉と相手を信頼できないことの心配が高かった.

    考察:高齢者は見守る側との関係性を考慮し,見守られへの期待と心配の内容により見守られたい相手を選択していると考えられる.

活動報告
  • ―活動評価の試行に参加した保健師の意見調査より―
    大井 靖子, 山田 洋子, 松下 光子
    原稿種別: 活動報告
    2017 年 6 巻 3 号 p. 278-287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    【目的】開発した市町村保健師活動評価方法を試行し参加者の意見から本評価方法の意義と活用方法を検討する.

    【方法】試行に参加した4市町村12名の保健師より本評価方法の意見,保健師としての能力向上に役立つか等を聴取し,意見内容の類似性に沿って分類整理した.

    【結果】評価試行後の意見・感想は「事業の方向性・位置づけや保健師の考えが整理できた」「保健師自身が現状や目標を意識していないことに気づいた」等であった.保健師としての能力向上に役立つかについては「複数の保健師で話し合うことで複数の考えや視点に気づくことができる」「後輩保健師の考えや意見を確認できる」等の内容であった.

    【考察】開発した評価方法は,保健師が活動の目的目標および自身の思考過程を認識し保健師間で共有することで,個々の保健師の能力向上につながっていた.活用に向けては管理的立場にある保健師が現場保健師の思考を整理する役割を担うことが重要である.

  • 平野 美千代, 佐伯 和子, 本田 光, 水野 芳子
    原稿種別: 活動報告
    2017 年 6 巻 3 号 p. 288-296
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/27
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    目的:実践能力向上を目指したA大学院の公衆衛生看護学実習構築のプロセスを明らかにし,修士課程における実習のあり方を検討することを目的とする.

    方法:A大学院と実習施設の協働による実習内容と指導体制の構築過程を記述し,実習指導者らに半構造化面接を実施した.分析は,記述内容は時間軸で整理しインタビュー内容は質的記述的分析を行った.

    結果・考察:個人・家族を対象にした実習は,継続訪問を行い担当事例のケアを責任をもち引き継ぐこと,個別支援のための地域アセスメントが特徴であった.地域,社会システムを対象にした実習では,地域アセスメントに基づく事業計画立案・実施・評価は,現場の保健師の実践にも即役立つ内容であった.一方,個人・家族,地域,社会システムを連動,発展させる効果的な実習方法が課題となった.両施設の協働に関しては,実習内容や学生の状況の共有,指導の方向性の明確化,保健師活動の本質を丁寧に話し合うことの重要性が示唆された.

連載企画 公衆衛生看護のグランドデザイン可視化への挑戦 公衆衛生看護実践の基盤整備
学術実践開発委員会報告
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