日本公衆衛生看護学会誌
Online ISSN : 2189-7018
Print ISSN : 2187-7122
ISSN-L : 2187-7122
7 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
研究
  • ―離島の地域におけるエスノグラフィー―
    川崎 千恵
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 3 号 p. 110-118
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    目的:高齢者にとっての地域活動への参加の意味を記述し,ソーシャル・キャピタルを醸成する地域活動の背景にある,社会的文脈を探究することとした.

    方法:エスノグラフィーを用いて,A村B地域の高齢者12人への半構造化インタビュー,参加観察,地区踏査,インフォーマルインタビューによりデータを収集し分析した.

    結果:B地域の高齢者にとっての地域活動への参加は〖日常が変わり,これまでと違う自分になる〗ことであり,〖地域の人とのつながりを取り戻す〗ことであった.そして,そのことにより〖安らぎのなかで生きる力が湧いてくる〗ことであった.

    考察:地域活動への参加の意味には社会的文脈が関連しており,高齢者は「結い」を追憶し,失われたものを再生する共同行為により信頼や互酬性を取り戻し,安寧や生きる力を得られるものと考えられた.また,共同経験を通して社会的性格が変えられ,高齢者に変化がもたらされたと考えられた.

  • ―未就学児をもつ親に着目して―
    池田 雄二郎, 佐伯 和子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 3 号 p. 119-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    目的:父親の親役割に対する母親の満足感の関連要因を明らかにすることを目的とした.

    方法:対象者は3~6歳の未就学児をもち,配偶者のいる母親とした.調査票は無記名自記式質問紙を用いて郵送法で回収した.調査項目は,基本属性,夫からのサポート,父親の育児参加頻度,父親の親役割に対する母親の満足感とした.分析はt検定および重回帰分析を行った.

    結果:調査票は398部配付して183部回収し,うち有効回答は179部(45.0%)であった.父親の親役割に対する母親の満足感の平均得点は34.5±10.0点(10–50点満点)であり,父親の育児参加頻度(β=0.20),夫からのサポート(β=0.68)と関連していた.

    考察:父親の親役割に対して母親が満足するには,父親の育児参加や夫からのサポートが重要であった.特に夫からのサポートは,育児の負担が集中している母親にとって精神的な支えとなり,安定して育児をするために重要と考えられる.

  • 上田 みずほ
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    【目的】乳児早期までの子どもの保護者が経験したヒヤリハットの発生要因を明らかにする.

    【方法】近隣市町に在住する4か月児健康診査を受診する子どもの保護者428人を対象に質問紙調査を行った.調査項目は,保護者の背景,子どもの発達とし,ヒヤリハット発生要因に関連するものについてSPSSver15を用いχ2検定にて解析した.

    【結果】有効回答が332人(77.6%)から得られ,59%の保護者がヒヤリハットを経験していた.経験していない保護者との間で,背景では同居家族,育児支援者,事故防止教育の項目で,子どもの発達では,定頸,「両脇を支え立たせると足をピョンピョンする」の項目で有意差を認めた.

    【考察】本調査から子どもの事故防止につながる情報が得られた.ヒヤリハット発生要因として,子どもに目配りできる大人の不在と事故防止教育の欠如が推測された.

  • ―震災直後から災害急性期に焦点をあてて―
    安齋 由貴子, 桂 晶子, 坂東 志乃, 河原畑 尚美, 千葉 洋子, 二瓶 映美, 小野 幸子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 3 号 p. 134-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    目的:東日本大震災後の急性期における高齢者の避難所生活の体験について明らかにする.

    方法:参加協力者9名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.

    結果:高齢者は【寒さに耐える雑魚寝生活】【生きるための最低限の水と食べ物】と生命を維持するために最低限の生活を強いられ,【簡易トイレでの慣れない排泄】【日用品の不足による着の身着のままの生活】【不衛生を強いられる生活】という不衛生な環境で生活していた.さらに医療機関の被災や移動手段が断絶したことから【不十分な医療や介護による疾病の悪化】が生じていた.また,避難所での【生死を分けた被災者の人間模様の共感や忍従】を経験し,【「生」の強さの実感と人々が支え合う生活への感謝】と支援してくれた多くの人々に感謝していた.

    考察:高齢者の避難所生活のために,地元住民や関係者,他機関からの支援者との効果的な支援体制を構築していく必要性が示唆された.

  • 小澤 涼子, 吉田 礼維子, 大森 純子
    原稿種別: 研究
    2018 年 7 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    目的:保健師が捉える第一次産業従事者にとっての健康を明らかにする.

    方法:第一次産業が主要な町に勤務する経験年数が5年以上の保健師8人に半構造化インタビューを行い質的記述的に分析した.

    結果: 保健師が捉える第一次産業従事者にとっての健康には,【自然の恩恵を生業として暮らしている】【生活を守るために稼ぐことを優先している】【働くために体を資本としている】【働く仲間をいたわっている】【生産者として食文化を発信している】【自分の生業に誇りを持っている】の6つの安寧な状態としての意味内容があった.

    考察:保健師の捉えから第一次産業従事者にとっては,自然に合わせて働き,家族や仲間との間柄を重んじ,生産者として暮らしを営むことそのものが安寧な状態としての健康であると考えられた.自然や仲間との暮らしや,生産者の役割から従事者を理解することによって健やかに働き暮らすための支援の検討が可能となると示唆された.

feedback
Top