日本植物病理学会報
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28 巻, 1 号
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  • II. Endo-polymethylgalacturonase と endo-polygalacturonase の性質の比較
    後藤 正夫, 岡部 徳夫
    1963 年 28 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. E. carotovora のアルカリ側に至適pHを有するDPaはペクチン酸よりもペクチンに対して活性が高く, 酸性側に至適pHを有するDPbはペクチンよりペクチン酸に対して活性が高い。前者は endo-PMG, 後者は endo-PG であると認められた。
    2. endo-PG はpH 3.5∼6.0で作用し, 4.0∼4.5付近に至適pHを有する。endo-PMGはpH 4.3∼9.0で作用し, 8.0∼9.0付近に至適pHを有する。各酵素の作用pHは菌株によつて若干異なる。
    3. endo-PGはアルカリ側で安定であるが, endo-PMGは不安定なものが多い。酸性側ではいずれも不安定である。
    4. endo-PMG は endo-PG に比較して低温で高い活性を示す。
    5. endo-PMG, endo-PG とも大部分60°C, 10分の加熱で不活性化するが, C1菌株の endo-PMG は同温度処理で65%の活性を保持する。
    6. endo-PG は透析によつて完全に失活し, K+, Na+, Mg++, NH4+で活性化するが, Ca++では活性化しない。endo-PMG は透析で若干失活するが, Ca++で活性化される。Chr. 10菌株の endo-PMG は透析処理によつて著しく活性を増大する。
  • 村山 大記, 横山 竜夫
    1963 年 28 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 供試抗BSMV血清は複雑な抗原抗体系を有することが寒天ゲル中沈降反応の結果認められたが, 同種健全植物汁液による吸収を行なつた吸収血清は常に単一抗原抗体系を示し, 寒天ゲル中に1本の沈降帯が認められた。
    2. 吸収血清に見られた1本の沈降帯は常に抗原を入れた凹みのすぐ近くに生じ, 両端が抗原側に弯曲した鋭利な三日月形あるいは弓形であつた。この沈降帯は抗血清を罹病植物粗汁液あるいはその純化液で吸収した場合に消失し, ウイルス抗原による反応の結果と考えられた。
    3. 他のすべての沈降帯は抗原を入れた凹みと抗血清を入れた凹みのほぼ中間の寒天中に直線状に生じ, これらの抗原物質はウイルス抗原よりも寒天中をより速く拡散する正常植物タンパクと思われた。
    4. 本実験における硫安塩析法による純化免疫原で調製した抗血清のうち, オオムギを用いたものでは少なくとも4種, コムギでは少なくとも5種, トウモロコシでは少なくとも4種の植物成分に由来する抗体を含むことが認められた。
    5. 吸収試験の結果, 各罹病植物に共通な抗原物質はウイルスなることが認められた。
    6. ウイルス抗原による沈降帯は抗原と抗体との拡散の結果考えられる2円の交点の軌跡上にあると考えられた。
  • 罹病果皮組織における Pectin 分解と d-Galacturon 酸の作用
    宮川 経邦
    1963 年 28 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. P. digitatum およびP. italicum に侵害された柑果皮組織内には強い polygalacturonase (PG) 作用が見出され, 初期の罹病組織には多量の d-galacturon 酸が遊離することが観察された。
    2. 両病原菌は果皮抽出成分あるいはそれに glucose を加用して培地とした場合には遊離酸を生成しないが, pectin を添加したときには遊離酸として d-galacturon 酸を生成した。
    3. d-Galacturon 酸は他の酸と同様に柑果皮組織に対して軟化作用 (maceration) を示し, pectin 分解酵素とともに組織の病変に重要な役割を果たしているものと想像される。
    4. d-Galacturon 酸は未熟果に対しては発病を助長する作用があり, 他の酸と同様に果皮組織の抵抗力を破壊するものと考えられる。
  • 大畑 貫一, 後藤 和夫, 高坂 〓爾
    1963 年 28 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    茘支江 (抵抗性) および愛知旭 (罹病性) にいもち病菌 (P2菌) を葉鞘接種し, 寄主細胞並びに侵入菌糸の生死を経時的に観察した。また上記品種に病原力の異なる菌株 (P2菌および53-33菌) を接種した場合の寄主細胞の生死, 寄主組織のTTC還元作用, nadi 試薬による呈色反応, phloroglucine-HCl による呈色反応の変動を調べた。
    茘支江でも愛知旭でも接種後12時間目には侵入がみられたが, この時期までは両品種とも被侵入細胞は生きていた。接種後18時間目以降茘支江では被侵入細胞はほとんど死んだが, 愛知旭では菌糸がある程度伸長しても細胞は生きており, 被侵入細胞の死は遅延した。隣接細胞の死は接種後24時間目までは茘支江に多かつたが, 44時間目には愛知旭で多かつた。
    茘支江では被侵入細胞内での菌糸の死は寄主細胞の死よりやや遅れるようにみられた。
    茘支江でも病原力の強い53-33菌を接種すると寄主細胞の死は遅延し, 寄主組織のTTC還元作用, nadi 試薬および phloroglucine-HCl による呈色反応は罹病性品種におけるそれらの反応と類似した。また愛知旭に同菌を接種した場合, 被侵入細胞の死, 隣接細胞の死はP2菌を接種した場合よりも更に遅延した。
  • V. ダイコンRウイルスの諸性質
    栃原 比呂志
    1963 年 28 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ダイコンRウイルス (RRV) (分離系宮原5 (R) と倉吉2 (R) とを供試) の寄主範囲, 物理的性質, 純化, および電子顕微鏡による観察を行なつた。比較のためダイコンPウイルス (RPV) (分離系P0 (P) と筑後10 (P) とを供試) も用いた。
    1. 宮原5 (R) はタバコとソラマメの接種葉に local lesion を生ずる点を除けば, 寄主範囲はP0(P) とほぼ同じであつた。耐熱性は50∼55°C 10分, 耐稀釈性は1:1,000∼1:10,000, 耐保存性は25°Cで2∼3日であつた。
    2. RPVの純化と同様な操作によつてRRVの純化を試みたところ, 直径12∼13mμの球状粒子と, 少数の幅が12∼13mμで長短さまざまの紐状粒子とが観察された。しかしRPVその他のカブモザイクウイルス群に属する諸ウイルスで見られている650∼750mμの長さの粒子はごく少数しか見られなかつた。この標品の紫外線吸収は260mμと280mμとのいずれにも吸収の山がみられず, 260mμ付近に高原状を示す吸収曲線を示した。これと異なりRPVの吸収曲線は260mμに吸収の山がみられ, TMVに似た吸収曲線を示した。
    3. 罹病コカブ葉汁液の病原性は, 多くの場合RPVよりRRVが低かつた。しかし補体結合反応試験の結果は両者で大きくは異ならないことを示した。
    4. 直径12∼13mμの球状粒子は, おそらく長いウイルス粒子が分割されてできたもので, 抗原性は保たれているが, 病原性は失われているのではないかと考える。RRV罹病コカブ葉の粗汁液を用いて沈降反応試験を行なうと, RPVと異なり球状ウイルスが示す粉状の沈殿物を生ずることからみて, 粗汁液中ですでに多くの球状粒子が存在するものと思われる。
    5. モモアカアブラムシは罹病コカブから健全ダイコンにRRVを容易に伝搬した。
    6. 罹病コカブ汁液を凍結乾燥保存したものは31カ月を経ても病原性を保持していた。
  • 小室 康雄
    1963 年 28 巻 1 号 p. 40-48_1
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. わが国に発生しているトマト条斑病株にどんな種類の病原ウイルスが含まれているかを明らかにする目的で行なつた実験である。1949年から1961年に至る間に, 主として関東地方を中心に採集した37株をそれぞれ数種検定植物に汁液接種してウイルスの種類を判定した。その結果, 25株 (67%) からはTMVが, 9株 (24%) からはTMVとCMVが重複して分離された。TMVあるいはCMVがPXVと重複している株は各1株ずつ得られた。またCMV単独の株も1株あつた。
    2. TMVの分離された25株中, 14株はトマトに汁液接種して条斑病の病徴再現に成功したが, 11株は病徴再現に成功しなかつた。またCMVの単独で得られたものも, トマトに接種して病徴再現に成功しなかつた。TMVが単独で分離された25株中, トマトに病徴再現のできた14分離系は, すべてタバコに local lesion をつくるものであり, 病徴再現のできなかつた11分離系中5株はタバコに local lesion をつくるもの, 6株はTMVの普通系であつた。
    3. タバコに local lesion をつくる分離系は数種植物に対する汁液接種, TMV普通系との交叉免疫接種, TMV普通系抗血清との凝集反応, アブラムシによる伝搬試験および耐熱性などについての試験結果から, Ainsworth (1933), Smith (1957) の記載したTMVの tomato streak 系, Holmes の分類による Marmor tabaci var. canadense と判定された。
    4. トマト上の病徴をTMV単独の場合とTMVとCMV重複の場合と比較すると, 葉片のえそ斑点や茎での条斑はTMV単独の場合の方が激しく, 明瞭であり, 重複株は葉片のえそ斑点は細かく, 茎での条斑はみられなかつた。またTMV単独の場合は上葉にモザイクを伴わない株が多く, 重複株では上葉に激しいモザイク, 奇型, 糸葉を示している株が大部分であり, また株全体の矮化, 叢生もTMV単独のものに比べ激しい傾向があつた。
  • (第4報) ヒシモンヨコバイによる伝染
    田浜 康夫
    1963 年 28 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 桑樹萎縮病の多発地帯である熊本県玉名郡岱明村外5カ所および鹿児島県指宿郡山川町からヒシモンヨコバイを採集し, 重症萎縮株を20日間以上吸汁させまたは病株上で産卵孵化生育させた成虫を無病苗に放飼接種した結果, 採集地により差があるが10∼100%の個体が本病を伝染した。
    2. 萎縮病株上で孵化し伝染能力を有するヒシモンヨコバイは, 約20∼40cmの健全実生苗を最短5∼12時間加害すれば感染をおこす。
    3. 本病原ウイルスの桑樹内における潜伏期間は最短25日, 最長265日で, 普通40∼50日で発病するものが多い。
    4. 本病のウイルスは保毒ヒシモンヨコバイの卵によつて伝染しない。
  • (第5報) 冬期伐切による発病の抑制
    田浜 康夫
    1963 年 28 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1963/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 桑樹の冬期伐切は萎縮病の発病抑制にはきわめて効果的であり, これを連続実施すれば発病は極度に抑制され, その実害からほとんどのがれることができる。
    2. 冬期伐切と夏刈りとを交互に行なうと冬期伐切を行なつた年は萎縮病の発病率が低いが, 翌年夏刈りを行なうと急に発病率が高くなる。
    3. 中症, 軽症の萎縮病株に対して冬期伐切を行なうと翌年病徴の発現しないものが多い。これは一時的な陰蔽現象である。
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