日本植物病理学会報
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30 巻, 1 号
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  • I. イネ白葉枯病菌の含硫アミノ酸代謝と発病機構
    渡辺 哲郎, 関沢 泰治, 小田 信
    1965 年 30 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. イネの生葉および生根の含水メタノール抽出物の乾燥メタノール不溶分画中にイネ白葉枯病原細菌増殖因子の存在を認めた。この分画のペーパークロマトグラフィは本病の罹病性あるいは抵抗性品種の間で差を認めなかつた。
    2. 本田穂孕期のイネから同様の方法でRf 0.1付近から結晶性沈澱物を分離し, 赤外分光および標準ペーパークロマトグラフィからシスチンであると認めた。
    3. 本菌のL-シスチン要求性は最少培地中, 増殖度・濃度両軸対数グラフで1∼10μg/mlの間で直線的関係がみられた。
    4. イネ植物体中のシスチン量は人工気象室内栽培のイネでは見掛け上イネ白葉枯病菌の増殖を支えるに足り, 発病に関与しうる量であつた。
    5. イネ植物体の含水メタノール抽出物の乾燥メタノール可溶部からペーパークロマトグラフィにより2種の本菌増殖抑制因子の存在を認めた。
    6. 本菌のL-シスチン要求性はシスティン, ホモシスティン, メチオニンなどの含硫アミノ酸と代替可能であり, 硫酸塩, 亜硫酸塩, チオ硫酸塩, 硫化物などの無機態硫黄は単独あるいはセリンの存在下においても代替不可能であつた。またビオチン, チアミン, ビタミンB12なども本菌の増殖を支えなかつた。これにより本菌にはシスティン-メチオニン間およびシスティン-シスチン間の相互変換系の存在および無機態硫黄からの有機態硫黄合成能力の欠除が判明した。
    7. 上述より本菌は増殖に無機態硫黄を利用できないことからシスティンを要求し, イネ植物体中において増殖するためにも有機態硫黄が要求され, 無機態硫黄からのシスティン合成系をイネに依存しているものと考えられる。
  • 小室 康雄, 岩木 満朗
    1965 年 30 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. TMV-黄斑系およびTMV-トマトえそ系 (ともに1963年トマトから分離) はウキクサ体内でTMV-普通系と同様増殖することが明らかになつた。しかしウキクサ上にはなんら病徴は認められなかつた。
    2. CMV, AMV, TuMV, WMVはウキクサに対し数回の接種試験を行なつたが, 寄生性は認めることができなかつた。
    3. PVXがウキクサ上で増殖することが以下の実験により明らかとなつた。
    i) ウキクサに対し接種すると, 接種後日時の経過とともに検出されるウイルス量が多くなつた。
    ii) ウキクサにPVXを接種すると接種後1週間内外で多くの個体に vein-clearing の病徴が現われた。その病徴のある個体でのウイルス濃度は病徴のない個体のウイルス濃度よりはるかに高かつた。
    iii) 病徴のある個体から電子顕微鏡 (dip 法) によつて粒子を観察したところ約500mμのひも状粒子が多くみられた。一方, 健全ウキクサについてはこれら粒子は全く観察されなかつた。
    iv) 病徴のあるウキクサからの搾汁液は, 抗PVX血清とスライド法により明らかな凝集反応を示した。
    4. TMV-普通系とPVXをウキクサに重複接種したところ, 両ウイルスともウキクサ体内で増殖していることが明らかになつた。そして病徴はPVXを単独に接種した場合とほぼ同様であつた。
  • 石家 達爾, 河上 双葉
    1965 年 30 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    群馬, 滋賀両県から採取した罹病桑条を実生苗に接木した桑苗を供試して, クワモザイク病の病徴発現と温度との関係を試験して次の結果をえた。
    1. 病徴は15℃と23℃においては現われるが, 31℃ではほとんど mask し, 発病の程度は15℃よりも23℃の方が激しい。
    2. 31℃でわずかながら現れた症状はヒダの前駆症状と考えられた葉の肥厚硬化, 葉脈の透明化であつた。
    3. 15℃においてはわずかの輪紋以外はすべてがモザイクで, それが昂進すると enation を生ずることから, それもヒダの前駆症とみなした。
    4. 23℃では病徴発現の傾向は複雑で, 病穂採取地, クワの生育時期などによつて著るしくおもむきを異にした。群馬の材料ではすべての時期を通して激しい enation を生じ, 他の症状はみとめられなかつたが, 滋賀の材料ではモザイク, enation, 輪紋, 黄斑の各症状がみとめられ, それらの出現には特異的な推移が示された。
  • 村山 大記, 小島 誠
    1965 年 30 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) ジャガイモ葉巻病ウイルスはモモアカアブラムシ (Myzus persicae Sulz.) により容易に Physalis floridana Rydb. に伝搬される。
    2) 接種虫頭数が多くなればウイルスの伝搬率は高くなり, 保毒モモアカアブラムシは単独飼育で50∼90%の伝搬率を示した。
    3) 接種後2週間目のP. floridana を接種源として使用し得ることを認めた。
    4) 18および130°CでP. floridana に接種したところ, 18°C区では感染がおきたが, 13°C区では明瞭な病徴をあらわさなかつた。一例のみ擬似病徴を示したが, 1ヵ月後ガラス室に移したところ明瞭な病徴を生じた。
    5) バレイショアブラムシ (Macrosiphum euphorbiae Thom.) は本ウイルスを媒介する。
    ジャガイモヒゲナガアブラムシ (Aulacorthum matsumuraeanum Hori) およびバレイショアブラムシの本病ウイルスの伝搬率はモモアカアブラムシのそれに比較して低く, 単独飼育では10∼20%であつた。
  • 第1報 土壌中におけるネグサレセンチュウ (Pratylenchus spp.) の Fusarium spp. に対する行動
    平野 和弥, 河村 貞之助
    1965 年 30 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ネグサレセンチュウの Fusarium spp. に対する土壌中での行動を検討した。
    (1) P. penetrans の均等に分布する汚染土壌に Fusarium spp. の菌そうを接種したとき, 線虫の分布は不斉一に変動し, 線虫は菌そうに隣接した土壌ブロック (サンプルA) に多く集まつた。中でもF. oxysporum を接種した場合はもつとも著しく, 菌接種144時間後のサンプルAにおける線虫の検出比率は, 対照の50%に比較して69.2%に増大した。またF. oxysporum f. lycopersici, あるいはF. roseum f. cerealis を接種した場合は, F. oxysporum を接種した場合と比べて線虫の集合は少なかつた。
    P. coffeae による汚染土壌に Fusarium sp. の菌そうを接種したとき, 線虫の分布はP. penetrans においてみられたと同様な変動を示し, サンプルAにおける線虫の検出比率は, 対照の50%に比較して73.0%であつた。
    (2) P. penetrans による汚染土壌に Fusarium spp. の培養滬液を接種したとき, F. oxysporum およびF. roseum f. cerealis の培養滬液を接種した隣接土壌ブロック (サンプルA') で線虫の集合がみられた。接種144時間後のサンプルA'における線虫の検出比率は, 対照の50%%に比べてF. oxysporum では68.3%, F. roseum f. cerealis では62.0%に増加した。
    (3) Fusarium の菌そうとP. penetrans の浮遊液を殺菌土壌中のそれぞれ異なつた位置に接種したとき, 線虫は菌の存在に対して反応を示し, 供試菌の中ではF. oxysporum がもつとも著しかつた。F. oxysporum の菌そうを接種した隣接土壌ブロック (サンプルB") における菌接種144時間後の線虫の検出比率は, 対照の16.3%に対して35.7%に増大した。またF. roseum f. cerealis を接種したときの線虫の行動は, F. oxysporum の場合より弱く, サンプルB"における線虫検出比率は25.8%を示した。
    Fusarium sp.とP. coffeae を用いて上述と同じように接種したとき, P. coffeaeFusarium sp. に対する行動は顕著で, サンプルB"における線虫の検出比率は対照の15.2%に対し36.1%に増加した。
    (4) Fusarium の培養滬液とP. penetrans の浮遊液を殺菌土壌中のそれぞれ異なつた位置に接種したとき, 線虫の行動は菌そうを接種した場合の結果と同様な傾向を示したが一般に弱かつた。
  • 松尾 卓見, 桜井 善雄
    1965 年 30 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本論文にはニセアカシヤ枝枯病の一病原菌 Fusarium solani f. robiniae n. f.〔Hypomyces solani f. robiniae n. f.〕について記述した。本菌は形態および培養性質からみて Fusarium solani Mart. emend. Snyd. et Hans.〔Hypomyces solani Rke. et Berth. emend. Snyd. et Hans.〕に属するものである。本菌は雌雄同体で和合型のヘテロタリズムを示す。子嚢時代をもつことが報告されているF. solani f. cucurbitae, F. solani f. pisi, F. solani f. mori, F. solani f. xanthoxyli とは不稔であつたが, 本邦2箇処の Populus spp. の樹皮から分離されたF. solani とは交配可能であつた。このことはポプラ菌が本菌と同一であることを示唆しているものと思われる。F. solani の種々なる分化型 (form) と相互接種試験をしてみると, 本菌はニセアカシヤ枝に病原性があり, カボチャ苗・インゲン苗・エンドウ苗・ジャガイモ茎・クワ枝・サンショウ枝に病原性が認められなかつた。ジャガイモ塊茎やサツマイモ切苗にはやや病原性があつた。一方, 供試した F. solani の他の分化型の全部はニセアカシヤに病原性がなかつた。これらの結果から, 本菌に Fusarium solani Mart. emend. Snyd. et Hans. f. robiniae Matuo et Sakurai n. f.〔Hypomyces solani Rke. et Berth. emend. Snyd. et Hans. f. robiniae Matuo et Sakurai n. f.〕なる新分化型名を与えた。
  • 後藤 正夫
    1965 年 30 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    白葉枯病に感染した稲葉を一度水中で切り戻ししたのち, 稀釈したフクシン液を吸収させると, 健全部は一様に色素を吸着して暗赤色に着色する。しかし病原細菌の増殖部位は色素の浸透がなく緑色のまま残り,健全部と明瞭に区別される。この非染色部分を潜伏病斑と仮称した. 染色の難易は葉令によつて若干異なつた。根を通じての染色も可能で. 感染した根冠部を明瞭に区別することができる。
  • 後藤 正夫
    1965 年 30 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1964年, インドネシヤ, ボゴールで水稲に一種の細菌性病害が発見された。病原細菌をP. oryzicola と比較同定した結果, インドネシヤ菌は Erwinia carotovora の一系統と考えられた。またP. oryzicola はむしろP. marginalis に近縁の細菌であることが窺われた。両細菌による水稲上の病徴はきわめて似ており, 病徴のみで区別することは困難であつた。
  • 飯塚 典男, 飯田 格
    1965 年 30 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1958年, 盛岡で罹病ラジノクローバから1つのウイルスを分離した。このウイルスは汁液接種で容易に伝搬され, レンゲ, ナタマメ, クロタラリヤ, スイートピー, インゲン, エンドウ, アルサイククローバ, クリムソンクローバ, レッドクローバ, サブクローバ, ソラマメ, コモンベッチ, ヘァリーベッチ, ササゲなどを全身的に侵した。フジマメ, アルファルファ, キバナルーピン, アズキ, ヤエナリ, スイカ, キウリ, マルバマアサガオ, キンギョソウ, トマト, ダチュラ, フィザーリス, ペチュニア, Nicotiana rustica, N. sylvestris などの接種葉からは本ウイルスが回収できた。これらのうち, ヤエナリおよびスイカの接種葉には常に壊死斑点を生じた。また, タバコ, グルチノーザ, ビート, ホーレンソウ, センニチコウおよび Chenopodium amaranticola には感染しなかつた。
    本ウイルスは汁液のほか低率ながらマメダオシで伝搬された。しかしマメヒゲナガアブラムシ, マメアブラムシおよびモモアカアブラムシでは伝搬されなかつた。耐熱性, 70~75℃10分, 耐希釈性は10万~100万倍であり, 耐保存性は25℃で60~90日, 室温 (18~20℃) では91日以上であつた。Dip 法による電子顕微鏡観察で長さ約450mμ前後のひも状粒子を認めた。罹病植物の表皮細胞内には特異な隅体 (Corner inclusion body) が観察され, 罹病エンドウの超薄切片の観察によつて, 細胞内にウイルスの集団らしきものを認めた。本ウイルスはカナダの White clover mosaic virus 抗血清との間に明らかな沈降反応を示した。
    寄生範囲, 病徴, 伝搬方法, 物理的性質, ウイルス粒子の形態および血清反応などから考察して, 本ウイルスは, アメリカ, ニュージーランドおよびヨーロッパ各地で報告された White clover mosaic virus のグループに属すると同定した。
  • 第1報 菌株と品種との相互関係ならびに冬胞子の諸性質
    高橋 幸吉, 山田 昌雄, 高橋 広治
    1965 年 30 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 1965/01/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    わが国の各地から集めた多数のコムギ赤さび病菌を供試して本菌の寄生性分化の研究を行なつている際に姫路産のP130号菌がコムギの幼苗第1葉上で冬胞子堆を形成したことを見出したのを端緒として, 多数の本菌々株およびコムギ品種を供試して約1.5葉期のコムギ幼苗の第1葉に接種し, その上における冬胞子堆形成状態を観察した。P130号菌はその所属する生態型37Bの数菌株およびその他の生態型の多数の菌株と比較して明らかに多量の冬胞子をしかも速く形成した。供試菌株のうち病原性が弱くて供試品種の大部分に夏胞子堆を全く作り得なかつた生態型1A, 1Bの場合を除いてはすべての菌株が接種後25日までにいくつかの品種の上に冬胞子を形成した。すなわち従来の知見と異なつて, わが国に分布する赤さび病菌の大部分がコムギ幼苗の第1葉に比較的容易に冬胞子を形成することが明らかである。しかしその程度は菌株により, またコムギ品種によつても著しい差があり, 概して多少の抵抗性が示される組合せの場合に冬胞子の形成が多い傾向がみられた。
    幼苗上の冬胞子堆形成には7つの型があるが, 一般的には夏胞子堆の周囲に二次的に同心円状に形成される夏胞子堆環の位置に夏胞子堆の下から冬胞子堆が生じて置き代わり, 断続または連続した環状に形成される。したがつて冬胞子堆はコムギの成体上のものとは異なつて多くは裸生し, 胞子もやや短かく頂端が円いものが多い傾向がある。発芽は成体上のものと同様に形成直後に可能である。
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