Xanthomonas citriのSmooth菌株XCJ18より放出され,Smooth菌株XCJ19で増殖したテンペレートファージPXC7は,周縁が不規則で小型の不透明な溶菌斑を形成する。このファージは,77°Cで10分,クロロホルムで1分,あるいはUV (15W, 40cm)で75秒照射することによって完全に不活化される。
Smooth菌株XCJ19(S)が,PXC7に感染して溶原化すると,そのファージが高頻度の自然誘発をすることによって,溶原性Dwarf型変換体(D (PXC7))となる。同変換体からは溶原性S型復帰突然変異体(S (PXC7)),抵抗性S型復帰突然変異体(S
rPXC7)および感受性S型復帰体(SD)を二次的に生ずる。D (PXC7)の一部の菌体は鎖状となり,Sに対して感染性をもつヴィルレントファージCP
2に抵抗性となる。
S (PXC7)とS
rPXC7はテンペレートファージPXC7を吸着しなくなるとともにヴィルレントファージCP
2に対して抵抗性となる。この事から,
Xanthomonas citriにおけるPXC7の吸着部位はPXC7のみに特異的ではなく,CP
2にも共通であり,吸着部位の変化がS (PXC7)とS
rPXC7の細胞に防禦的装置をあたえて,CP
2による感染とPXC7による重複感染とをともに阻止するものと推論される。これらの変化にともなって,S (PXC7)もS
rPXC7もともに一部の菌体が鎖状となる。しかし,変換した菌の形態,ファージ吸着能,ファージ感受性などの性状はSDには見られない。したがって,これらの変換はXCJ19が溶原化したあと,その溶原性を維持するかあるいは抵抗性に変化することによって起こるものであることがわかる。
S, D (PXC7), S (PXC7), S
rPXC7およびSDを多針法で夏カンの葉にそれぞれ接種すると,すべてのS型菌は同程度によく増殖し,9∼11日で最大発病率を示す。一方,D (PXC7)は増殖が悪く,潜伏期間が長くなり,21日目になって95%程度の発病率を示し,しかも病斑は小さい。S (PXC7)とS
rPXC7とは葉組織内でもそれぞれの集落特徴と溶原性あるいは抵抗性をたもち変化がみられないが,D (PXC7)では9日後から一部の細胞に溶原性または感受性のS型菌に復帰したものが見出される。これらの結果から,
Xanthomonas citri XCJ19株に由来するもののうち,S型菌は,ファージPXC7に対する溶原性,抵抗性,あるいは感受性のいかんをとわず,野生株と同程度にいずれも病原力が強く,しかもその強弱の差がみられないのに対し,Dwarf型菌(D (PXC7))はファージPXC7の高頻度自然誘発によって増殖が著しく抑えられるために弱い病原力を示すことがわかる。
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