日本植物病理学会報
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39 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • I. 技法と応用例
    鈴木 直治, 木村 郁夫, 児玉 忠士
    1973 年 39 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ萎縮病ウイルスは2本鎖RNAをもつため罹病イネから宿主の核酸とRDV-RNAと分別定量できる。ここではセルロース・カラム・クロマトグラフィーで分別を行なった。罹病イネの頂葉と第2葉とを集めて2gとし,これに薬剤と32Pとを吸収させて24時間後に核酸を抽出しrRNAとRDV-RNAについてOD260とcpmを測定し,cpm/OD260値がrRNAでは低下せずRDV-RNAでは低下させることができればその薬剤は薬害なく抗ウイルス剤としてはたらくと考えた。シクロヘキシミドは両種RNAのcpm/OD260値を平行して低下させ,実際に強い薬害をともなった。ブラストサイジンS,カスガマイシンはそれぞれ3,160μg/g生重でrRNA, RDV-RNAへの32Pのとりこみをむしろ促進し,6,320μg/g生重では両種RNAへの32Pのとりこみを抑えるがその程度は低く,水耕液中に2,40ppmで一生を通じて与えても治療効果はなかった。
  • 谷 利一, 吉川 正明, 内藤 中人
    1973 年 39 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンバク子苗第1葉から抽出したリボ核酸標品は,E. coli無細胞系において,Mg2+およびATPとその再生系の存在下で14C-フェニールアラニンを酸不溶性区分にとり込む。最適条件下におけるとり込み能はポリ-Uをtemplateとした場合の1/10であった。本実験系を用いて,Puccinia coronata接種後のエンバク葉におけるメッセンジャーRNAレベルの蛋白合成の量的変化を測定した。罹病性品種のビクトリアでは,template活性は菌の栄養生長期(接種1および2日後)には無接種の対照区とほとんど変わらなかったが,夏胞子堆形成開始期の接種4日後には対照の1.4倍に増加した。一方,抵抗性品種の勝冠1号では,活性は菌体の発育が遅延する時期(接種28および48時間後)において無接種区と差異がなかった。
  • 堀野 修
    1973 年 39 巻 1 号 p. 14-26_3
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    ストレプトマイシン耐性菌の微細構造,薬剤処理による培養菌の死滅過程および薬剤を根部から吸収させたイネの体内増殖菌の形態学的変化を観察した。本細菌の基本的構造として最外層に細胞壁,その内側に細胞質膜があり,内部には繊維状の核様物質,リボゾーム,ポリゾームとみられる粒子および2種類の顆粒が認められた。細菌は分裂直前に細長く伸長し,伸長と同時にまず核様物質が分裂する。ついで細菌のほぼ中央部の細胞壁に陥入が起こる。その後陥入は徐々に細胞内に深く切れ込み,隔膜形成が起こり細胞質が2分されて分裂を完了することが認められた。供試薬剤,2-amino-1, 3, 4-thiadiazole (ATDA)によって形成された本細菌の阻止円について,その周縁部細菌を観察したところ,細胞質の電子密度は低下し,リボゾームの減少が認められた。細菌細胞質は各所で凝集する傾向があり,不整形で膜のない破生間隙が生じた。細胞質が局所的に集合し,しだいに大きな集合体となり,その周囲に厚さ20-40nmの壁が形成されて球状構造に発達した。この構造は阻止円周縁部の細菌でのみ形成されるようである。球状構造は0.2μmで高電子密度の外層と低電子密度の内層によって包まれ,内部は電子密度の高い物質が充満していた。球状構造に関する所見は他の属の細菌体内で形成される芽胞構造とよく一致したが,本報告では芽胞類似構造と仮称した。ATDA吸収葉の道管中,とくに孔紋道管に侵入した細菌では変性がはげしく,細胞質が体外に溶出していた。一方,らせん紋,環紋両道管内の細菌では細胞内諸構造の変性が少なかった。侵入道管のちがいにより細菌の変性程度が異なることは,道管の種類によって薬剤の量的差異があるためかもしれない。らせん紋道管に侵入した細菌の特徴として,体内にエーテル可溶性の大きな顆粒(直径520nm)がしばしば観察された。
  • 玉田 哲男
    1973 年 39 巻 1 号 p. 27-34_2
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    ダイズ矮化病のウイルス(SDV)は,大別して矮化系統群と黄化系統群とに分けられた。矮化系統はダイズに矮化症状(葉柄,節間の短縮)を示し,黄化系統は葉の退緑,縮葉,下葉の脈間黄化症状を示した。野外ではダイズ,エンドウおよびシロクローバ,ラジノクローバが両系統に感染していたのに対して,インゲンは黄化系統のみ,アカクローバは矮化系統のみに感染していた。
    矮化系統群から矮化強毒系統(SDV-DS)と矮化弱毒系統(SDV-DM)および黄化系統群から典型的症状を示す黄化系統(SDV-Y)を選び,3分離系統について比較した。マメ科28種の植物にアブラムシ接種した結果,SDV-DSは13種,SDV-Yは16種に感染した。SDV-DS感染植物はダイズを除き無病徴かまたは軽微な病徴しか示さなかったのに対して,SDV-Y感染植物は萎縮,黄化,赤化などの激しい病徴を示した。SDV-DSとSDV-Yはいずれもジャガイモヒゲナガアブラムシのみによって媒介され,その伝染様式は同一であった。SDV-YとSDV-DSあるいはSDV-DMとを同時にダイズに接種すると,それぞれの単独感染より病徴が激化し,縮葉,萎縮,黄化症状を示した。しかしSDV-DSとSDV-DMとの混合感染個体は両者のほぼ中間の病徴を示した。混合感染植物を接種源としてアブラムシで接種すると病徴が分かれ,各系統が再分離された。SDV-YとSDV-DSあるいはSDV-DMとの間では,完全な干渉効果が認められず,重複感染の特徴である萎縮,縮葉症状を示したが,SDV-DSとSDV-DMとの間には完全な干渉効果が認められた。
  • 後藤 岩三郎
    1973 年 39 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 葉鞘接種の侵入度による定量的データと,噴霧接種の病斑型による定性的データとは,いもち病菌とイネ品種との関係の因子分析で同じ結果を与えた。(イ)菌系・菌型の第1因子負荷量が第2因子以下の負荷量よりもいちじるしく大きく,したがってその寄与率もまた大きい。(ロ)品種の第1因子得点は第2因子以下の得点よりも大きく,平均抵抗度と密接な相関関係にある。
    病原性の分化は中間程度の抵抗反応にまでおよぶものである。
    2. 森島によれば,菌型はインド,日本両群に区分される。本報告は各群を別個に対象としているので,菌系・菌型の第2因子負荷量における分化は認められなかった。N菌型を中心にして,侵害品種群を多くする方向にC-1, 2, 5さらにT菌型が分化する。別の方向にC-3, 6菌型が侵害品種群を特殊化して分化する。侵害品種範囲を拡大することで両菌型群は接近している。
    3. 第1因子負荷量のより大きい菌系は,解析対象のより多くの菌系と共通性の大きいものである。またその小さい値の菌系は特殊なものである。このことは単独あるいは少数菌系による検定の必要な場合の指針になるであろう。
    4. 病斑型では同じ抵抗性反応群に入る品種でも,葉鞘検定によるデータの第1因子得点の異なるものがある。そしてこれは平均抵抗度からも知られる。遺伝子組成も異なるものである。葉鞘接種法は中間程度の抵抗性を含めて検定出来る方法である。
  • 久能 均, 石崎 寛
    1973 年 39 巻 1 号 p. 42-48_4
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    オオムギうどんこ病菌吸器嚢への寄主ミトコンドリアのとりこみ過程を電子顕微鏡によって観察した。寄主ミトコンドリアは吸器の樹状突起付近に集まる傾向が見られた。それらのミトコンドリアの中,あるものは吸器嚢膜に接着していた。また,吸器嚢の一部がミトコンドリアの方に向って伸びて接着している場合も認められた。接着面ではミトコンドリアの外膜は消失し,そのクリステと基質が吸器嚢基質と直接接触していた。ミトコンドリアは次第に吸器嚢内部にとりこまれ,ついでクリステがバラバラになるようであった。これらのクリステは吸器嚢膜の内側にならんでいる場合が多かったが,完全に内部にとりこまれている場合も認められた。吸器嚢膜は1枚の単位膜からなっていたが,上記の様なミトコンドリアのとりこみが行なわれた部分では,本来の1枚の吸器嚢膜とミトコンドリア外膜を形成する2枚の単位膜との接着が明らかに認められた。
  • 安田 康, 橋本 章, 添田 吉則, 野口 照久
    1973 年 39 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    チオファネートーメチル(Th-M; dimethyl 4, 4'-o-phenylenebis (3-thioallophanate))に対して感受性の異なるイネ紋枯病菌(Pellicularia sasakii)およびリンゴ斑点落葉病菌(Alternaria mali)を用い,本殺菌剤の代謝を検討した。その主代謝産物はmethyl 2-benzimidazolecarbamate (MBC)と同定され,他に量的には少ないが,methyl 5-hydroxy-2-benzimidazolecarbamate (HMBC)およびP. sasakiiによってのみ生成する未知物質Xも見出された。非感受性菌であるA. maliによるMBCおよびHMBCの生成は感受性菌のP. sasakiiによるよりも早かった。MBCのP. sasakiiに対す抗菌活性は,Th-MおよびHMBCより強かった。A. maliに対しては,いずれの代謝産物もTh-Mと同様,ほとんど抗菌活性を示さなかった。
  • I. 保毒虫の口針そう入方法とウイルスの吐出
    孫工 弥寿雄, 桜井 義郎
    1973 年 39 巻 1 号 p. 53-60_1
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. 保毒ヒメビウンカ体内で増殖したイネ縞枯病ウイルスがイネへ媒介される過程を明らかにするために,イネ組織への口針そう入方法,吐出ウイルスの検出ならびにその性質の一部解明を行なった。
    2. 保毒虫が寒天膜内に形成する唾液鞘は,細長い刀剣状をなして虫齢あるいは雌雄間で長さ,分枝数が異なった。イネ表皮上または組織内各部位への食痕・唾液鞘形成状況の観察により口針そう入状況を追跡調査した結果,いずれも維管束部が圧倒的に多く,そのうち篩管と導管部比率は葉で73:27,葉鞘で67:33と篩管部が著しく多く,そう入数や唾液鞘の分枝数も他部に優った。抵抗性の異なる品種間では,強い品種(草型CまたはAb)は弱い品種(草型A)に比べ食痕数が著しく少ない傾向が認められた。
    3. 保毒虫が健全なイネ茎葉の生材料で1~22時間,凍結材料切片で6~18時間吸汁してその切片内に吐出したウイルスは,無毒のシロオビウンカにより再び同切片から確実に回収された。吐出ウイルスの不活化温度は罹病葉内のウイルスと同じく54C 5分付近のようである。このように比較的安定しているとみられ,上記の吐出ウイルスの検出試験と合せ考えると,たんぱくをコートしたウイルス粒子ではないかと推定された。
  • 田中 智, 塩田 弘行
    1973 年 39 巻 1 号 p. 61-66_2
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. ジャガイモ葉巻病ウイルスを接種したPhysalis floridona Rydb.およびDatura stramonium L.の幼植物から健全モモアカアブラムシによってウイルスの回収試験を行なった。その結果,上葉,接種葉および下葉からウイルスが回収されはじめたのはそれぞれ,接種後2~4, 0~2および6~8日間飼育した区であった。ウイルスの回収率は接種2日以後は上葉が他の部位より高かった。
    2. これら接種植物の病徴は,上葉では接種後6~7日目に脈間退緑がみられはじめたが,接種葉および下葉では10日目以後にならないと病徴がみられなかった。
    3. 電子顕微鏡によって接種植物の葉の主脈について,その篩部壊死を観察した。その結果,篩部壊死は接種後5日目の上葉および接種葉ですでに認められ,10日目には5日目の約3倍に増加した。
    4. 壊死細胞は細胞質の凝固,崩解したもの(DC)と細胞中に網目状および繊維状を示すもの(NC)との2つの型が観察された。そのうち,DCは接種後間もない植物において,1本の植物体では上葉が下葉より多かった。
    5. ウイルス粒子はDCを示す細胞および網目状を示す細胞中に観察されたが,繊維状を示す細胞中には認められなかった。
    以上の結果から,PLRVに感染した植物においては,まずウイルスが増殖し,そののち篩部壊死(内部病徴)が生じ,つづいて外部病徴があらわれてくるものと考えられる。
  • 土崎 常男
    1973 年 39 巻 1 号 p. 67-72_1
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. 福島県農試圃場より採集したインゲンモザイク病6株を用い,検定植物への汁液接種,dip法による電顕観察により病原ウイルスを調べたところcucumber mosaic virus (CMV), bean common mosaic virus, bean yellow mosaic virusの3種ウイルスと,日本で未報告と思われるウイルス1種が検出された。
    2. 本ウイルスの寄主範囲はかなり広く,マメ科植物12種,ナス科植物7種,アカザ科植物3種,ゴマ科,ツルナ科,ヒユ科の植物各1種に感染が認められた。
    3. 本ウイルスは低率ではあるがモモアカアブラムシ,マメアブラムシで非永続的に伝搬された。また粗汁液中の不活限界は耐熱性(10分)55-65C,耐希釈性1,000-10,000倍,耐保存性(15C) 5-10日であった。
    4. 本ウイルスはクロロホルム処理,分画遠心分離,しよ糖密度勾配遠心分離により純化され,純化ウイルスを電顕観察すると径25-30nmの球形粒子が認められた。
    5. 本ウイルスはpeanut stunt virus (PSV)と血清学的に密接な関係にあることが認められたが,chrysanthemum mild mottle virusとは血清学的にやや遠い関係にあることが示された。一方本ウイルスは,broad bean wilt virus, CMV-Y strainとは血清学的な関係は認められなかった。
    6. 以上の結果から本ウイルスをPSVと同定し,PSVのJ系統(PSV-J)と呼ぶことにした。PSVが米国以外の国で検出されたのはこれが最初である。
  • 冨山 宏平
    1973 年 39 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    非親和性疫病菌レースの感染を受けたジャガイモ葉柄切断面細胞の過敏感細胞死の過程について,温度調節装置を備えたニコン倒立顕微鏡を用いて観察を行なった。過敏感細胞死の過程は2相からなり,第1相は原形質流動の停止であり,第2相は中性赤染色性のそう失である。原形質流動が停止した時点で液胞の中性赤染色性はなお保持されており,かつ新しく中性赤を吸収することができる。
    これらの過敏感死の過程に要する時間に対する温度の影響を調べた。過敏感細胞死に要する時間を測定する場合に貫入時間の測定が問題となるが貫入後の菌糸の伸長度の測定から逆算して貫入時間を決定した。各々の時間の測定はすべて筆者らの常法(前諸報告)に従い,接種後の時間に対して各々の現象の%のカーブをつくり,そのカーブから時間を読みとった。葉柄(品種リシリ)を縦断した切断面細胞に切断18時間後に非親和性レースを接種した。接種細胞(菌の侵入を受けた細胞)の10∼20%で原形質流動は貫入後約30分で停止した(20, 25,および30C)。接種細胞の50%では原形質流動は貫入後約37分(20C) 40分(25C) 45分(30C)にそれぞれ停止した。原形質流動停止から中性赤染色性そう失までの時間は30分(20C) 10分(25C), 10分(30C)であった。
  • 三沢 正生, 宮崎 栄一郎
    1973 年 39 巻 1 号 p. 79-80
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 大橋 祐子, 下村 徹
    1973 年 39 巻 1 号 p. 81-82_1
    発行日: 1973/01/01
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 1 号 p. 84a
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 1 号 p. 84b
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 1 号 p. 84c
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 1 号 p. 84d
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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