東北地方(むつ市,盛岡市),栃木県西那須野地方,長野県伊那地方のオーチャードグラスにモザイク病の発生が認められた。病徴は軽いモザイク症状,鮮明なクロロティックストリーク症状,えそ性の病斑を伴う症状など変化に富む。病原ウイルスは,直径約28nmの球形粒子で,分子量約1.4×10
6の核酸および分子量29,000のコート蛋白を含み,不活化温度は80∼85Cであった。ウイルスは汁液接種でオーチャードグラス(アキミドリ),コムギに高率で感染した。エンバク,オオムギ,ライムギにも低率で感染したが,トウモロコシ,アワ,エノコログサ,チモシー,ブロムグラス,ライグラス,トールフェスキュなどに感染しなかった。病徴の異なるオーチャードグラスのウイルス分離株CLおよびMの各抗血清(力価320倍)は,CFMVと強い陽性反応を示したが,CMMVとPMVとは反応しなかった。本ウイルスは不活化温度が高いが,以上の性質から,オーチャードグラスに発生しているウイルスはCocksfoot mottle virusであると結論できる。本病の和名をオーチャードグラスモザイク病,ウイルスの和名をコックスフットモットルウイルスと記載することにしたい。
わが国のオーチャードグラスの栽培品種,アオナミ,アキミドリは本ウイルスに対し感受性が高く,次いでキタミドリで,オカミドリは感受性が低かった。本モザイク病の発生は長期連作草地でとくに注意を要する。
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