日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
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52 巻, 2 号
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  • 鬼木 正臣, 生越 明, 荒木 隆男
    1986 年 52 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rhizoctonia solani Kühn 1858のAG-1に所属する菌157菌株を供試し,土壌法による完全世代の形成を検討した。土壌法では前培養の培地にPPYDA(ジャガイモ30gの煎汁11に,ブドウ糖0.5g, ペプトン5g, 酵母エキス5g, 寒天20g添加)を用いた。
    その結果,培養型IA(イネ紋枯病系)で6菌株, IB(樹木苗くもの巣病系)で1菌株, ICで2菌株,計9菌株に完全世代の形成が認められた。
    子実体の形態および大きさから, R. solani AG-1の完全世代はThanatephorus cucumeris (Frank) Donk 1956と同定した。
  • II. テンサイ根面細菌の立枯病菌に対する抗菌性とテンサイ生育促進効果
    李 王休, 生越 明
    1986 年 52 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    テンサイの根面から分離した細苗のテンサイ苗立枯病菌に対する抗菌性を培地上で調べ,抗菌性の強い株を選択した。Aphanomyces cochlioidesに対して抗菌性を有する細菌は18.2%(199/1,094株)であり,その多くはRhizoctonia spp., Pythium spp.にも抗菌性を示した。抗菌性細菌の多くはfluorescent pseudomonadsで,次いでnon-fluorescent pseudomonads, bacilliであった。これら抗菌性細菌はテンサイの生育期間中,根面に存在しており,いつでも分離することができた。
    選択した細菌をテンサイ種子に処理して育苗し,生育促進効果,病害防除効果を調べた。バクテリゼーションによって,発芽を促進するもの,茎葉重および根重を増加するもの,立枯病防除効果を示すものがあった。このうち立枯病防除効果は,主としてPythium spp.に対するもので,生育初期の効果が重要であった。発芽促進,生育促進,立枯病抑制に効果のある細菌の多くはfluorescent pseudomonadsであった。
  • I. 接種前および接種後の温度変動がいもち病の発病に及ぼす影響
    金 章圭, 茂木 静夫
    1986 年 52 巻 2 号 p. 184-192
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌接種前および接種後に罹病性品種愛知旭を23/15C・23/15C (接種前昼/夜処理温度・接種後昼/夜処理温度), 29/21C・29/21C, 23/15C・29/21Cと29/21C・23/15Cの異なる温度条件下に置き,第4葉期幼苗に接種し,病徴発現に及ぼす温度の影響を調べた。形成された罹病性病斑数は接種前29/21C・接種後23/15C処理区で他の温度処理区よりも多かったが,全処理期間が長いほど病斑数が漸減した。一方,接種前23/15C・接種後29/21C処理区では,全処理期間が長いほど病斑数が漸増した。接種72・96・120時間後の侵入率を調査した結果,処理温度と処理期間による一定の傾向は認められなかったが,接種120時間後まで侵入率が増加する傾向があった。侵入後の菌糸伸展・被侵入細胞数の増大は処理温度によって大きく影響され,接種後29/21C処理区では接種96時間以降に著しい増加が観察されたが,接種後23/15C処理区では接種時点から120時間目になっても菌糸伸展・被侵入細胞数の増加が強く抑えられることを認めた。従って,低温環境下での病徴発現の遅れは侵入菌糸の増殖活動の抑制によることが明らかとなった。
  • 藤澤 一郎
    1986 年 52 巻 2 号 p. 193-200
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道内のアスパラガスから分離された長さ500-600nmのひも状ウイルスの寄主範囲と諸性質について調べた。本ウイルスは汁液接種した11科37種の植物のうち8科26種に感染が認められ,ナス科,アカザ科の多くの植物に感染し,アスパラガスには無病徴感染した。本ウイルスの粗汁液中での不活化限界は,耐熱性(10分)55~60C,耐希釈性5,000-10,000倍,耐保存性(20C)21~23日であり, dip法で電顕観察したウイルス粒子の多くは,長さ580nm,巾13nmの形態を示した。感染葉の超薄切片像ではウイルス様粒子の集団は細胞質中にのみ観察され,感染による細胞器官の変化は認められなかった。純化ウイルスを用いて作製した抗血清の力価は1/1024(重層法による)で, SDSを含む寒天ゲル内で本ウイルスと明瞭に反応した。また,本ウイルスとPotexvirus群の数種ウイルスとの血清学的関係を免疫電顕法で調べた結果,本ウイルスはcactus virus Xおよびnarcissus mosaic virusの各抗血清とは陽性の反応を示した。以上の諸結果から,本ウイルスはPotexvirus群に属する未記載のウイルスと考えられasparagus virus IIIと命名した。
  • 黄 炳國, Wolf-Dieter IBENTHAL, Rudolf HEITEFUSS
    1986 年 52 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    全生育期間を通じてうどんこ病に感受性である品種Peruvianと生育後期抵抗性を示す品種Asseを供試して,健全および罹病植物の異なる器官における14CO2同化, 14C分布および14C-carbonate吸収を比較した。第1および第4本葉期の罹病植物における14CO2同化の低下は,同程度に罹病しているにもかかわらず, AsseにおいてよりもPeruvianで大きかった。Peruvianでは下位葉3枚がうどんこ病に罹病している第3本葉によって固定された14Cは同葉にとどまり,他部位への移行はほとんど認められなかった。第4本葉期の下位3葉が罹病したAsseの健全な第4葉における14CO2同化の低下はPeruvianより少なかった。しかし,同葉から葉鞘などの他部位への14Cの移行はAsseに比べてPeruvianにおいて顕著であった。うどんこ病に罹病すると,実生苗の根による14C-carbonate吸収が低下したが,その減少はAsseよりもPeruvianにおいてより大きかった。Asseの根から吸収された14Cの罹病葉への移行割合はPeruvianの場合に比べ,より大きかった。これらの結果から,春まきオオムギではうどんこ病罹病により光合成産物および代謝産物の移行の正常なパターンが阻害され,その程度は生育後期抵抗性をもつ品種に比べて感受性品種においてより顕著であると結論された。
  • 一谷 多喜郎, 高松 進, D. J. STAMPS
    1986 年 52 巻 2 号 p. 209-216
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    既にわが国で報告のある4種のほかに,オオムギとコムギの褐色雪腐病菌として新たに3種を記載した。これらの菌の分離頻度と病原性試験の結果から, P. okanoganenseP. iwayamai, P. paddicumと同じように重要な病原菌であるが, P. vanterpooliiP. volutumは重要なものではないと結論された。
  • 内藤 繁男, 杉本 利哉
    1986 年 52 巻 2 号 p. 217-224
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    夏期,テンサイ採種畑で開花期の花,葉および茎に白色綿毛様菌糸を密生し,軟腐症状を伴なう病害が発生した。病斑は暗緑~淡褐色,不定形を呈し,また罹病組織上にしばしば黒色そ糞状菌核を外生した。病斑からはSclerotinia sp.が高い割合で分離された。本菌は菌核,子のう盤,子のう,子のう胞子などの形態および構造,培養菌そう,菌糸生育温度ならびに対峙培養した菌株間の菌糸反応などの生理的性質から, Sclerotimia sclerotiorum (Libert) de Baryと同定された。その子のう胞子を開花期のテンサイ地上部に接種すると,ほ場での発病と同じ症状がみられた。すなわち発病は初め花にみられ,ついで病斑から表面に伸び出した菌糸が周囲の健全な葉や茎をつぎつぎと侵して,最後は花茎の大半が枯死した。一方開花していないテンサイでは茎葉の発病はほとんどみられなかった。子のう胞子は開花期のインゲン茎葉にも強い病原性を示したが,開花前はほとんど発病がみられなかった。本菌によるテンサイ菌核病はこれまで根部病害としてのみ知られていたが,本報告で子のう胞子による感染とみられる地上部病害の発生が明らかにされた。
  • 八重樫 博志, 山田 昌雄
    1986 年 52 巻 2 号 p. 225-234
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    6カ国産イネいもち病菌計130菌株についてレースと交配型の検定を行った。日本のレース判別品種(および国際レース判別品種)により同定したレースの数は,ソ連産菌株で3種類(3種類),中国産菌株で7種類(9種類),ネパール産菌株で2種類(2種類),タイ産菌株で3種類(2種類),インドネシア産菌株で4種類(4種類),およびコロンビア産菌株で5種類(12種類)であった。日本のレース判別品種と国際レース判別品種とで検定した結果は必ずしも一致しなかった。また,供試菌株の約40%は,一部の品種における反応が反復実験の度に異なったため,レースを同定できなかった。レース反応が一定しない理由としては,菌自体の病原性変異のほか,一部の判別品種の遺伝的不均一性が関与していると考えられる。中国およびコロンビア産菌株では両交配型の存在が確認されたが,ソ連およびネパール産菌株では交配型Aだけが確認された。なお,インドネシア産菌株の交配型は,全供菌株試とも交配型aであった。
  • 阿部 秀夫, 玉田 哲男
    1986 年 52 巻 2 号 p. 235-247
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    他報に報告した北海道のテンサイそう根病発生土壌から分離された宿主範囲の異なるPolymyxa betae数菌株を用い,種々の植物に接種を行なった結果,本病の病原ウイルス(BNYVV)の伝搬はテンサイに寄生性のあるテンサイ,ホウレンソウ, Chenopodium murale菌株に認められたが,テンサイに寄生性のないシロザ,アオビユ,スベリヒユ菌株には認められなかった。ウイルス保毒のテンサイ菌株はコアカザで増殖することによってウイルスフリー化した。このウイルスフリー化株は汁液接種によってBNYVVを全身感染させたテンサイで増殖したとき,再びウイルスを獲得した。BNYVVの感染性は室内で15年間風乾および湿潤でそれぞれ保存した土壌中でもP. betaeの生存と共に保持されていた。さらにP. betae休眠胞子および遊走子をBNYVV抗血清液に浸漬してもウイルスの感染性は保持されていた。BNYVV粒子はP. betaeの変形体に接したテンサイ根の細胞質中,未熟遊走子の液胞および原形質中に認められた。また本ウイルスは根の組織片を含まない休眠胞子塊の磨砕液からELISA法によって検出された。これらの結果から, BNYVVの伝搬はP. betaeの系統とその菌が増殖した植物に依存していることが明らかになった。さらに本ウイルスはP. betaeの菌体内に長期間保持されているが,菌体内では増殖していないと考えられる。
  • Shaw-Ming YANG
    1986 年 52 巻 2 号 p. 248-252
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1984年,テキサス州Bushlandに栽培されているヒマワリからPuccinia helianthiのこれまでに未知の1レースが分離された。本菌の北米の4レース、アルゼンチン産のAntonelliによる10レース、およびLucianoとLucianiによる4レースのいずれに対しても抵抗性である本菌レース判別系統・品種はすべて今回新しく分離されたレースには感受性であった。さらに,北米産の4レースに対して抵抗性であるとされた5つのgermplasma linesのヒマワリ、HA-R1, HA-R2, HA-R3, HA-R4およびHA-R5もまた本レースに感受性であった。これらの結果から,本分離株はヒマワリさび病菌の新レースであることが示された。
  • 対馬 誠也, 脇本 哲, 茂木 静夫
    1986 年 52 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    イネもみ枯細菌病菌P. glumae Kurita et Tabeiをイネ体から分離するための選択培地を作成した。その組成はKH2PO4 1.3g, Na2HPO4 1.2g, (NH4)2SO4 5.0g, MgSO4・7H2O 0.25g, Na2MoO4・2H2O 24mg, EDTA-Fe 10mg, L-シスチン10μg,ソルビット10g,フェネチシリンカリウム50mg,アンピシリンソーダ10mg,セトリマイド10mg,メチルバイオレット1mg,フェノールレッド20mg,寒天15g,蒸留水1lである。6属32種63菌株の各種細菌について本培地上での発育とコロニーの形状を調べた結果, Pseudomonas属以外の細菌は発育せず,またPseudomonas属細菌でもP. glumae以外の多くの菌株では発育が抑制された。
    P. glumae 37菌株を本培地上で培養したところ,菌株によりA型(赤褐色,全縁,中高)またはB型(中心淡赤紫色~赤紫色で周辺乳白色,全縁,中高,培地をわずかに退色)のコロニーを形成した。
    供試したPseudomonas属細菌の中ではP. avenaeのみがP. glumaeのB型と類似のコロニーを形成し,両者の識別は困難であった。P. glumaeの本培地での平板効率はPSA, NA, YPDA各培地のそれよりも高く,本培地を使用して罹病イネ体からP. glumaeの分離を試みたところ,形成されたコロニーの48~100%が目的菌であった。P. glumae Kyu 82-34-2で作成した抗血清は極めて特異性が高く,すべてのP. glumae菌株とは寒天ゲル内沈降反応で1本の沈降帯を作ったが,供試したすべてのP. avenae菌株とは反応しなかった。従ってS-PG培地で識別できないP. glumaeP. avenaeも血清反応を利用することにより識別することが可能である。
  • 江原 淑夫, Gaylord I. MINK
    1986 年 52 巻 2 号 p. 260-269
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリモザイクウイルス(Y系統)の感染性はbovine pancreatic ribonuclease (RNase)と混合することにより低下する。この感染性の低下はウイルスと本酵素の混合比およびpHに影響される。本酵素はウイルス粒子表面に結合するが,この結合はpHにより可逆的である。pH6では結合し易く,濃度を高めるとウイルスはaggregationを生ずるが, pH8にするとかなりの量が解離し,感染性もある程度回復する。きわめて高濃度のRNaseにより,ウィルス粒子は崩壊するが,それはpH8よりも6で急速に進行する。低濃度ではウイルス粒子表面に結合した本酵素が細胞内で感染開始の過程に影響し,感染性の低下をもたらすと考えられる。
  • 大村 敏博, 高橋 義行, 匠原 監一郎, 美濃部 侑三, 土崎 常男, 野津 祐三
    1986 年 52 巻 2 号 p. 270-277
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ縞葉枯ウイルスで免疫したBALB/cマウスから得た脾細胞とマウス骨髄腫細胞, P3-X63-Ag8-U1を融合させて抗体産生細胞を作成した。抗体価の最も高い単クローンを選抜した後,マウス腹腔内に接種し,経時的に腹水を得た。腹水の抗体価は培養上清のものよりも200-400倍高く,また接種後の日数が長い程高かった。1頭のマウスからリングテストによる力価が800-1,600倍の腹水が11.4-22.5ml採取された。腹水に含まれる抗体産生細胞を次のマウスに接種し,継代したところ,採取腹水量は継代とともに低下し,抗体価も2~3代目には初代の1/2に低下した。本抗体を用いてラテックス凝集反応法および酵素結合抗体法によって,罹病イネおよび保毒ヒメトビウンカからウサギ血清と同様にウイルス抗原を検出することができた。
  • (1)発生,病徴および分離
    長井 雄治, 深見 正信, 村田 明夫, 渡辺 恒雄
    1986 年 52 巻 2 号 p. 278-286
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    千葉県で栽培されている夏どりニンジンと冬どりニンジンの直根部に近年しみ状斑点が発生し,品質低下と減収の原因となっていた。県内各産地のしみ状病斑から,いずれもPythium sulcatumが分離された。本病は連作畑で発生し,特に収穫前に長雨に遭遇すると多発する。病原菌の寄生性はニンジン根部に限られ,葉枯れや立枯れは起こさず,ニンジン以外の作物には寄生しなかった。夏どりニンジンでは,主として収穫期の直根に径3~5mmの円形または長円形の褐色水浸状病斑を生じ,ひどい場合には病斑表面は軟化腐敗する。冬どりニンジンでは,直根上の病斑は径2~3mmの褐色斑点で,やや陥没し,しばしば病斑中央に縦の亀裂を生じる。いずれの作型でも,側根は褐変腐敗し,脱落しやすい。病徴は作型により異なり,その原因は品種,発生時期,土壌条件などの違いによるのではないかと推測された。
  • 渡辺 恒雄, 長井 雄治, 深見 正信
    1986 年 52 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    千葉県産のニンジンしみ腐病罹病株から同一とみられる多数のPythium菌が分離された。その代表の2菌株(A-1とA-4)は,ニンジンの根だけに病原性を有し,菌糸の生育速度は非常に遅い。PDAやコーンミール培地上でのコロニー半径(1日当り)は最適温度の28C下で8mmにも達しない。胞子のう(hyphal swellings)は球形,亜球形あるいは落花生形で, PDAほか各種培地上でたやすく形成するが,遊走子のうや遊走子は観察できなかった。雌雄同菌糸性がほとんどで,雄精器は通常1~2個,まれに3~4個が各蔵卵器に付着する。雄精器細胞は,棍棒状,かぎ型など様々な形をし,外壁の一部に切れこみやくぼみを有する。卵胞子は未充満で,卵胞子膜は薄い。本菌は,生理的および形態的特徴から, Pythium sulcatum Pratt and Mitchellと同定した。
  • 阿久津 克己, 駒形 智幸, 奥山 哲
    1986 年 52 巻 2 号 p. 292-301
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イノシン処理したB. cinereaの菌糸細胞で核の行動に変化が認められ,特に菌糸の先端細胞で核の数,形状および細胞内配列が無処理の菌糸細胞のそれらとは著しく異なった。イノシン処理した菌糸細胞では,形状が異なる数個の核が集合して数個所に存在し, 1~2個の出芽様突起を有する核が高頻度で観察された。無処理の菌糸細胞で,核は菌糸の伸長方向に沿って比較的等間隔で縦列に配列したが,処理菌糸細胞では2個の核が斜めまたは並んで配列し,太い菌糸細胞では並んだ核が高頻度で観察された。次に電顕観察から,無処理の菌糸細胞で観察された核では,有糸分裂を示す核内器官(紡錘体極構造,微小管)が認められた。イノシン処理した菌糸細胞では,核模の一部が突出した核,突出部が発達し,分離しかけた核など,無処理の菌糸細胞では見られなかった形状の核が観察され,この様な核では有糸分裂関連核内器官が認められなかった。
  • 楠木 学, 花田 薫, 岩木 満朗, 張 茂雄, 土居 養二, 與良 清
    1986 年 52 巻 2 号 p. 302-311
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    新葉にねじれや黄化,成葉に黄色またはえ死斑を現わすソテツから径28nmの小球形ウイルスが分離された。このウイルスは汁液接種した12科39種の植物のうちソテツ, C. amaranticolor, C. quinoa, C. serotinumホウレンソウなどに全身感染したが,寄主範囲は狭かった。粗汁液中での不活化温度は60~65C(10分),希釈限度1×10-3~5×10-3,保存限度は18~24日(室温)であった。また全身感染したC. amaranticolorC. serotinumでそれぞれ29.82%の高率で種子伝染した。ウイルス粒子は感染細胞の細胞質や原形質連絡糸内でさや状構造の中に配列したり,細胞質内で結晶状に配列して観察された。純化ウイルスはしょ糖密度勾配遠心により3成分に分かれ, Amax=260nm, Amin=237nmの核タンパクの吸収値を示した。本ウイルスは純化ウイルスを用いて作製した抗血清と特異的に反応し, 1/128の力価を示したが,わが国で既知のnepovirusグループのいずれのウイルス抗血清とも反応しなかった。土壌伝染は認められなかったが,本ウイルスをnepovirusグループの未記載ウイルスと考え,ソテツえそ萎縮ウイルス(cycas necrotic stunt virus: CNSV),本病の病名をソテツえそ萎縮病(cycas necrotic stunt disease)と命名した。
  • 生井 恒雄, 遠藤 真木, 遊佐 正広, 山中 達, 江原 淑夫
    1986 年 52 巻 2 号 p. 312-319
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本実験では,子のう殻様構造物(perithecium-like structure; PLS)を形成するPyricularia菌の探索と, PLS形成および交配による子のう殻形成過程の比較観察を行った。供試10菌株中,オヒシバいもち病菌1菌株,シコクビエいもち病菌2菌株およびアワいもち病菌1菌株の合計4菌株が単独培養中にPLSを形成することが認められた。供試した培地の中では,粉末酵母エキスを含むオートミール培地上でPLS形成が良好であった。PLS形成能を持つ4菌株の相互交配の結果,交配型の異なる菌株同志ではいずれも両菌叢の接触線をはさんで2列に子のう殻が形成され, 4菌株とも両性株と判断された。なお, A型同志のオヒシバ菌915とシコクビエ菌TEST A-11との交配では,菌叢接触部に空の子のう殻が列状に形成された。単独培養によるPLS形成過程と交配による子のう殻形成過程を比較観察した結果,培養7日目の両者の菌叢内に子のう殻の原基とみられる太い菌糸の菌糸塊が共通して認められた。その後の形成過程の観察でも, PLSは殻部内に子のうおよび子のう胞子が形成されないこと以外は交配により形成された子のう殻と区別できなかった。これらの結果から, PLSはPyricularia菌の空の子のう殻と考えられた。
  • 真田 正幸, 松下 亀久, 下川 英俊, 伊東 理世子
    1986 年 52 巻 2 号 p. 320-329
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)の普通系(TMV-OM)およびトマト系(TMV-T)を接種した数種のNicotiana属植物におけるβ-1, 3-glucan hydfolase活性の変化を調べた。TMV-OMに感染したN. glutinosaN. tabacum var. Xanthi-nc,およびTMV-Tに感染したWhite Burleyでは,局部病斑の出現と共に著しい酵素活性の増加がみられたが, TMV-OMに感染したWhite BurleyとXanthiでは,その増加はみられなかった。局部感染性の植物における酵素活性は,高濃度のTMVを接種したときに高く,また,局部病斑域はその周辺組織より高かった。しかし,物理的(高熱白金耳処理)および化学的処理(3N塩酸処理)で人工的に壊死斑を形成させた葉では,その酵素活性の変化は見られなかった。つぎに, N. glutinosaの感染葉を切りとり,連続25Cと初あ35Cに保ち,その後25Cに移して培養したとき,その酵素活性は顕著に増加し,その場合には局部病斑が形成された。しかし,連続35Cで培養したときには酵素活性の増加も局部病斑の形成も認められなかった。また, N. glutinosaの感染葉を蒸留水に浮べて暗黒,または10-4M DCMU溶液に浮べて連続照明(5,000 lux)下, 25Cで培養したとき,その酵素活性と局部病斑数は減少したが,暗黒下でglucoseを与えると,両者は連続照明下で培養したときとほぼ同じ値を示した。一方, laminarinを含むポリアクリルアミドゲル電気泳動において,本酵素はTMV-OM感染のN. glutinosa, XanthiおよびWhite Burleyでは1本のバンドとして確認されたが, TMV-OM感染のXanthi-ncおよびTMV-T惑染のWhite Burleyでは移動度の異なる新しいバンドがさらに1本認められた。
    本研究において, TMV strainsの接種により局部病斑を形成するNicotiana属植物ではβ-1, 3-glucan hydrolase活性の特異的な増加が認められた。TMVの感染によって起こるβ-1, 3-glucan hydrolase活性の急激な増加は, Local lesionの形成に必要なGlucan合成のために起こるものと推察されるが,これは今後の研究によって検討する。
  • 藤原 將寿, 奥 八郎, 白石 友紀, 大内 成志
    1986 年 52 巻 2 号 p. 330-335
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オオムギ苗の第1葉を切除すると第2葉に,第2葉を切除すると第1葉に,根や根部に残存する胚乳を切除すると,第1,第2葉にうどんこ病菌の感染に対する抵抗性が誘導される。抵抗性は切除2時間以内に誘導され,少くとも6時間,長い場合には120時間以上持続する。器官の切除は,接種菌の菌糸の生長には影響を与えない。根と共に胚軸を切除すると,抵抗性は誘導されず,第1葉ではむしろ感受性が誘導されるので,オオムギ苗におけるうどんこ病菌に対する誘導抵抗性や,抵抗性の維持には,胚軸が重要な役割をはたしているものと考えられる。
  • Wen-hsiung KO, Richard K. KUNIMOTO
    1986 年 52 巻 2 号 p. 336-337
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    マカダミア実生(12~18カ月苗)の茎の地上部10~20cmの部分の表皮を剥ぎ,そこにコムギ・エンバク培地で24C, 30日間培養したK. clavusを接種すると3週間以内に発病し, 3カ月以内に枯死した。本法により, K. clavusに対するマカダミア実生の抵抗性選抜を検討した結果, Macadamia integrifoliaでは20本中18本が, M. ternifoliaでは5本中3本がそれぞれ枯死した。本法は迅速かつ正確であり,大規模な抵抗性選抜育種において有効であると考える。
  • 向畠 博行, 名畑 清信, 山本 孝〓
    1986 年 52 巻 2 号 p. 338-342
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Stem blight of tulip in Japan was first found in Toyama Prefecture in late-April, 1982. The diseased plants stagnated and their stems were covered with light pink mycelia in which orange sporodochia appeared. A Fusarium fungus isolated from the diseased plants was proved to be causal agent of the disease and it also showed pathogenicity to barley in inoculation tests. The causal fungus was identified with Fusarium roseum f. sp. cerealis ‘Avenaceum’ by its morphological characteristics.
  • 佐藤 守
    1986 年 52 巻 2 号 p. 343-346
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas syringae pv. atropurpurea NIAES 1309株をイタリアンライグラスあるいはタバコ葉に接種し, 1週間後に再分離すると, pCOR1プラスミドを離脱し,コロナチン生産能を喪失した菌株が高頻度に得られた。植物体中にプラスミド離脱の誘導物質の存在が推定された。pCOR1を除去された菌株は,イタリアンライグラス葉に病徴を示さないが,組織内では野生型と同様によく増殖した。
  • 奥 八郎, 白石 友紀, 大内 成志
    1986 年 52 巻 2 号 p. 347-348
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウ褐紋病菌の胞子発芽液からエリシターを調製し,それによって無傷のエンドウ葉に誘導された局所抵抗性は,エンドウ褐紋病菌の感染阻害には有効であったが,エンドウうどんこ病菌の感染に対しては無効であった。
  • 宇杉 富雄, 山本 省二, 土崎 常男
    1986 年 52 巻 2 号 p. 349-354
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A sap transmissible virus was isolated from satsuma mandarins showing ringspots on fruits in Arida district of Wakayama prefecture. Symptoms of herbaceous plants inoculated with the virus were slightly different from those of satsuma dwarf virus (SDV). The virus particles were polyhedrons of approximately 28 nm in diameter and consisted of three centrifugal components. Double immunodiffusion and cross-absorption tests showed that the virus was heterologously related to SDV. Satsuma mandarins inoculated with the purified virus developed typical ringspots on fruits.
    These results indicate that the virus is citrus mosaic virus causing mosaic diseases in satsuma mandarins.
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