蒸留水で2回洗浄したジャガイモ疫病菌の胞子(遊走子のう)を用い,直ちに14×で発芽試験を行うと,再蒸留水に懸濁した胞子の間接発芽は強く抑制された(3時間で9%の発芽)が,北海道農業試験場の水道水に懸濁した胞子は速やかにかつ高率に発芽した(3時間で78%)。この水道水に含まれる無機イオンが間接発芽に好適と考えられたので,8種の無機塩(CaCl
2, Ca(NO
3)
2, MgCl2, MgSO
4, KCl, K
2SO
4, NaClおよびNa
2SO
4)の種々の濃度の溶液の間接発芽に及ぼす影響を調べた。これらの溶液に胞子を懸濁して22×に22時間置いた後,14×に冷却して発芽させたところ,発芽にもっとも好適な溶液は0.3mMのCaCl
2で(1時間で71%の発芽),0.3mM MgSO
4がこれに次いだ(65%)。ナトリウムおよびカリウム塩の効果は小さかった(<23%)。 Na
2SO
4以外の供試塩類は陽イオン10mMの濃度で発芽を強く抑制した(0∼5%)。水素イオン濃度も間接発芽に影響し,CaCl
2濃度が0.1mMの時,最適pHの8.0では1時間で90%の発芽が見られたが,pH 4.5では発芽は完全に抑制された。以上の結果および水道水の含まれる陽イオンのAnn. Phytopath. Soc. Japan 60 (4). August, 1994 447種類と濃度を踏まえ次の処方の塩類溶液を調製したところ,間接発芽に極めて好適であった:0.2mM CaCl
2, 0.05mM MgSO
4, 0.05mM KH
2PO
4, 0.5mM NaHCO
3, 0.01mM Fe-EDTA-Na。この溶液を用いて間接発芽に及ぼす胞子濃度の影響を調べたところ2.5×10
4個/ml以下の濃度ではほとんどすべての胞子が発芽したが(2時間で97%), 10
5個/ml以上では発芽が顕著に抑制された。
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