日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
62 巻, 2 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • I.非機会的結合決定の原理と同一罹病性遺伝子数群内でのその確認
    清沢 茂久, Donna PURBA, Md. Shamsher ALI, 沖中 泰, 清水 勉, 斉藤 明彦
    1996 年 62 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    シミュレーションモデルを用いて,4抵抗性遺伝子系における非機会的結合の型やパターンを決定する原理について研究した。非機会的結合には二つの型が見られた。ここで非機会的結合とは次のような場合を言う。菌の二つの遺伝子座に関して,非病原性遺伝子と病原性遺伝子を考えた場合(例えばabと+a+b),観察値(シミュレーションにより得られた頻度)と,期待値(非病原性遺伝子座間の機会的結合を仮定したときに得られる値)との差に三つの型が見られた。頻度a+と+bが共にabと++より大きい場合[交差型(C)]と,abと++が共にa+と+bより大きい場合[非交差型(N)]と,両者に差が無い場合である。この非機会的結合の型と,四つの非病原性遺伝子座間の六つの組合せについて,この型の組合せパターンは,多くの場合新しい品種の遺伝子型により決定され,時には古い品種の遺伝子型により決定される。新しく栽培される品種(シミュレーションの中での移動値の受容者)により決定される場合には,受容者の抵抗性遺伝子同士の組合せと罹病性遺伝子同士の組合せでは非交差型,罹病性遺伝子と抵抗性遺伝子との組合せでは交差型となる。前の(古い)品種(シミュレーションの中では供与者)により決定される場合には非機会的結合の型は,新しい品種による場合の逆になり,抵抗性-抵抗性と罹病性-罹病性で交差型,抵抗性-罹病性で非交差型となる。ただし,供与者と受容者が同一数の罹病性遺伝子を持つ場合は,各病原性遺伝子に同一相対適応値を与えた場合には逆にならない。このような非機会的結合型は与えた適応値により多少の変化をする。
  • II. 異なった数の罹病性遺伝子を持った宿主群間の品種の交替
    清沢 茂久, Donna PURBA, Md. Shamsher ALI, 沖中 泰, 清水 勉, 斉藤 明彦
    1996 年 62 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    抵抗性遺伝子座間の同一罹病性遺伝子数を持つ群内の組合せに関して,非病原性遺伝子座間の非機会的結合について前報で提案した原理が,その他の組合せにも適用できるかをシミュレーションの方法で検討した。その結果,前報の結果も含めて次のことが明らかにされた。宿主遺伝子型の切り替えにより起こる病原菌の非病原性遺伝子に関する非機会的結合には,供与者(古い遺伝子型)により決められるときと,受容者(新しい遺伝子型)により決められるときとがある。前者では,抵抗性遺伝子と罹病性遺伝子との組合せで非交差(N)型の非機会的結合が生じ,他は交差(C)型の非機会的結合を示す。種々のS群(同一数の罹病性遺伝子を持つ遺伝子型の群)の組合せの非機会的結合の型やパターンは概ね上記の原理に基づいて決まるが,種々の要因によって変化を見せる。非機会的結合パターンを変えるものは,上述の,1)宿主遺伝子型の切り替えの方向が最も大きな影響を与え,それ以外に,2)罹病性遺伝子の数で分類した群の組合せ,3)個々の病原性遺伝子の適応値,4)抵抗性遺伝子と罹病性遺伝子が相補的に存在する遺伝子座の数,などがパターンの変化をもたらす。種々の遺伝子型,例えばA+++を大量に作ると宿主内のA抵抗性遺伝子に対応するa非病原性遺伝子の関連した対a-b, a-c, a-dは非交差型の非機会的結合を,他の対b-c, b-d, c-dは交差型となる。この場合N:Cは1:1となり,この一連の研究の目的であった抵抗性品種から採取した菌のN:C比が1:1かそれに近かったことを十分に説明し得るものと考えられる。
  • 對馬 誠也, 内藤 秀樹, 小板橋 基夫
    1996 年 62 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    圃場において,イネもみ枯細菌病菌懸濁液を出穂期28∼31日前の3品種のイネに噴霧接種し,接種後8∼11日に最上位葉鞘を,また同21∼27日に止葉葉鞘を採取し,S-PG選択培地を使用することにより葉鞘ごとの病原細菌の検出頻度を調べた。その結果,最上位の葉鞘からの本病原細菌の検出頻度は節間伸長後に顕著に低下するのが認められた。また,葉鞘ごとの病原細菌量は,対数正規性を示したことから,最上位葉鞘における本菌量は葉鞘ごとの細菌量を調べることにより,比較的正確に推定できることが示唆された。次に,接種時期を変えた圃場において,止葉葉鞘での本病原細菌保菌頻度(FFP)と発病との関係を調べた。その結果,FFPと出穂期1週間後の発病度との間には高い正の相関(=0.78)が得られたが,同2, 3週間後では相関は認められなかった。これらの結果から,止葉葉鞘上の病原菌が圃場での本病の初期発生に重要な役割を果たしていること,および止葉葉鞘保菌頻度が本病の発生を予測するための一つの有効な手段となることを示唆していると結論した。
  • 生井 恒雄, 貫名 学, 富樫 二郎
    1996 年 62 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌の病原性因子探索のための一連の実験として,イネいもち病菌の感染におよぼす本菌の2種の毒素,テヌアゾン酸,ピリキュロールとその関連化合物の影響を調べるとともに,胞子発芽液からそれら化合物の検出を試みた。イネ品種愛知旭(Pi-a)を用い,8葉期の葉鞘裏面組織をカミソリで剥離し,得られた組織を数段階の濃度に調整した供試化合物の懸濁液で2時間前処理した。処理終了後,供試組織をよく水洗し非親和性レースの菌株(TH67-22v,レース031)の胞子懸濁液を塗布接種して,40時間目に侵入菌糸の伸展度を比較した。その結果,いずれの供試化合物においても20μg/ml以上の濃度で前処理した組織では,本病菌の罹病度ランクが対照区のそれに比べて高くなる傾向が認められ,これら化合物が本病菌の感染に対して罹病性誘導活性を持つことが明らかとなった。活性は供試化合物のうちピリキュロールが最も高く,逆にジヒドロピリキュロールは弱かった。供試菌株の胞子発芽液からはジヒドロピリキュロールが検出されたが,他の化合物は検出されなかった。
  • 吉川 信幸, 笹本 和稔, 桜田 学, 高橋 壮, 柳瀬 春夫
    1996 年 62 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ニホンナシから分離され,リンゴステムグルービングウイルス(ASGV)のV-3株と呼ばれていたウイルスに関して,ゲノムの3'末端領域のPCRによる増幅,塩基配列およびコードされるタンパク質のアミノ酸配列の解析を行った結果,V-3株には2種類のカピロウイルス(分離株V3-1とV3-2)が含まれていることが明らかになった。V3-1は,ゲノムの3'末端2661塩基において,ASGVのリンゴ分離株(P-209)と3塩基の置換が認められるのみであった。一方,V3-2は,3'末端1669塩基において,P-209とは89.1%の相同性であるのに対し,ユリから分離されたCTLVの2分離株,Li-23とLとは,それぞれ95.9%と95.6%の相同性であった。ゲノムがコードするORF2のアミノ酸(313アミノ酸;aa)配列の比較では,V3-2とP-209間で94.8%, V3-2とCTLV (Li-23とL)間で97.4%の相同性が認められ,ORF1の外被タンパク質(CP)領域(237aa)のアミノ酸配列では,V3-2とP-209間で97.5%, V3-2とCTLV (Li-23とL)間で99.2%の相同性であった。またORF1のCP領域の上流側277aa(別のフレームでORF2をコードしている領域)のアミノ酸配列の比較では,V3-1とP-209間で99.3%の相同性であるのに対して,V3-2とP-209間では61.0%で,V3-2とCTLVの2分離株Li-23とL間では,それぞれ85.6%と93.8%の相同性が認められた。以上から,V3-1はASGVのリンゴ分離株とほとんど同一であり,V3-2はユリから分離されたCTLVに類似していることが明らかになった。現在,ASGVとCTLVは,主に分離される原宿主の違いから別種のウイルスとして扱われているが,両ウイルス間でゲノムの塩基配列やコードされるタンパク質のアミノ酸配列に高い相同性が認められること,また生物学的および血清学的にも区別できないことから,CTLVはASGVの系統であると提唱したい。
  • 曵地 康史, 斉藤 光, 鈴木 一実
    1996 年 62 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    レタス腐敗病罹病レタス葉をすき込んだ培土にてレタス(Lactuca sativa L.品種サクセス)をポット栽培した。収穫期に,腐敗病罹病結球中葉の切片(厚さ150μm)を作製し,フルオレセインイソチオシアネートで標識したPseudomonas cichoriiに対する蛍光抗体で染色し,蛍光顕微鏡下で観察した。病徴が未だ認められていない切片において,P. cichoriiに特異的な蛍光が気孔に観察された。病徴は,表皮に,続いて葉肉に認められた。蛍光は,病徴に先んじて表皮の細胞間隙に認められ,続いて葉肉の細胞間隙に認められた。すなわち,P. cichoriiはレタス結球葉に気孔感染し,表皮の細胞間隙で増殖した後,葉肉の細胞間隙で増殖することが明らかとなった。また,病徴はP. cichoriiの増殖に伴って生じることが示唆された。
  • 景山 幸二, 多地 美砂子, 梅津 雅一, 百町 満朗
    1996 年 62 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pythium sulcatumは,しみ腐れの症状を示しているニンジンから分離される優占種であり,人工接種により同じ病徴を示した。本菌は,特に春作で苗の段階から収穫期まで無病徴の貯蔵根および吸収根から分離された。また,無病徴の貯蔵根における感染部位は上部に限られており,実際に病徴が現れる部位と一致していた。P. sylvaticum, P. ultimum, P. coloratumおよびP. spinosumもニンジンの根および根や葉の残渣から分離されたが,病原性はほとんどなかった。吸収根の残渣は,P. sulcatumの第一次伝染源であることが認められた。また,本菌はニンジンを連作している圃場に広く分布していた。
  • 抗菌物質およびシデロフォアの役割
    Karden MULYA, 渡辺 実, 後藤 正夫, 瀧川 雄一, 露無 慎二
    1996 年 62 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas fluorescens PfG32は,バーミキュライトを含む非殺菌処理土壌で育成されたトマトにおいて青枯病の発病を抑制した。PfG32は抗菌物質とシデロフォアを産生することがわかったので,上記発病抑制におけるこれらの物質の役割を明らかにするため,Tn5挿入によるそれぞれの非産生変異株を分離した。ポット試験の結果,親株を浸根処理したトマトの青枯病発病度は33.3であり,対照と比較して約1/3と低かった。シデロフォア非産生変異株で処理した場合,発病度が41.7∼43.7であったのに対し,抗菌物質非産生変異株に浸根したトマトの青枯病発病度は62.3∼72.9となり,抑制効果が低下したが,完全にはなくならなかった。従って,PfG32による青枯病発病抑制の主要な要因は抗菌物質の生産であると推定されるが,他の要因も存在するものと考えられる。
  • 曵地 康史, 斉藤 光, 鈴木 一実
    1996 年 62 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ポット栽培したレタス(Lactuca sativa L.品種サクセス)の第7葉をPseudomonas cichorii菌液中に浸漬した。高湿度30°C条件下で7日間静置培養したところ,レタス腐敗病の激しい発病が認められ,レタス葉に生存するP. cichorii菌数は1.3×108cfu/gとなった。20°Cで静置培養した場合,レタス腐敗病の発病は顕著に軽く,レタス葉に生存するP. cichorii菌数は105cfu/g以下となった。例年,腐敗病が多発する圃場において栽培されているレタスに生存するP. cichorii菌数の推移と腐敗病発病との関係について検討した。土壌に生存するP. cichorii菌数は,定植37日前から収穫時まで104cfu/g dry soil以下であった。結球前のレタス体に生存するP. cichorii菌数は104cfu/g以下であった。結球期のレタス葉に生存するP. cichorii菌数は対数正規分布を示し,P. cichorii菌数が105cfu/g以上を示すレタス葉で腐敗病の発病が認められた。外葉と結球葉に生存するP. cichorii菌数には正の相関が認められ,それぞれ結球初期と中期以降に増加した。また,外葉の発病株率と結球葉の発病株率にも高い正の相関が認められた。すなわち,P. cichoriiは結球期のレタス葉において葉面微生物として生存しており,菌量が105cfu/g以上となった場合にレタスに病徴が生じ,外葉に感染したP. cichoriiが結球葉における発病の伝染源となる。
  • 倉舘 公子, 生井 潔, 宮坂 篤, 桂幸 次, 伊東 久美子, 羽柴 輝良
    1996 年 62 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rhizoctonia solaniのプラスミドと相同性を示す転写物の検出を菌糸融合第1群から第6群の25菌株を供試して,各群から抽出したプラスミドのクローン断片をプローブとしてノザンハイブリダイゼーションによって行った。プラスミドを保持している菌株の全RNAから,各群のプラスミドと相同性を示す転写物が検出された。検出された転写物の大きさは,菌糸融合第1群では6.8kb,第2-2群培養型III Bでは2.8kbと1.2kb,第2-2群培養型IVでは7.6kbと2.7kb,第3群では5.8kb,第4群では0.5kb,第5群では3.6kb,第6群では8.0kbであった。プラスミドの転写物は,同一菌糸融合群から抽出されたプラスミドのみと相同性を示し,異なる菌糸融合群とでは相同性を示さなかった。
  • 道後 充恵, 豊田 秀吉, 松田 克礼, 松田 一彦, 国領 ゆきえ, 大内 成志
    1996 年 62 巻 2 号 p. 153-155
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宿主のオオムギ細胞を死滅させず,うどんこ病菌の吸器形成のみを特異的に抑制する物質の検索を試みた。すなわち,切離したオオムギ子葉鞘内表皮にうどんこ病菌を接種し,種々の濃度のインドール化合物の水溶液に浮遊させ,うどんこ病菌の吸器形成に及ぼす影響を調べたところ,トリプタミンが顕著な選択的効果を示した。すなわち,100μg/mlのトリプタミンを処理した場合でも95%以上の宿主細胞が生存したのに対し,うどんこ病菌の吸器形成は10μg/mlの処理で完全に阻害された。以上の結果から,トリプタミン無毒化遺伝子のクローニングとこの選抜化合物の併用によって,オオムギうどんこ病菌の形質転換体選抜系が確立されるものと考えた。
  • 中村 茂雄, 岩井 孝尚, 本藏 良三, 宇垣 正志, 大橋 祐子
    1996 年 62 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリモザイクウイルス(CMV) RNA3の3a遺伝子を切断するようにデザインしたリボザイム(840塩基の3aアンチセンスを含む)導入形質転換タバコの1系統の自殖後代において著しい抵抗性のばらつきが観察された。これら抵抗性の強弱と導入遺伝子転写産物の蓄積量との間に相関関係は認められなかった。特に強抵抗性個体においては,接種後の上位葉から導入遺伝子がほとんど検出されず,その部分分解産物が確認された。このことから,強いCMV抵抗性の要因は導入遺伝子の直接の働きではなく,宿主細胞が導入遺伝子の配列に特異的なRNA分解活性を獲得した結果,導入遺伝子のみならず感染したCMVのRNA3の相補鎖が分解され,ウイルス抵抗性が発現した可能性が示された。
  • 畔上 耕児
    1996 年 62 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Vibrio fischeriの発光遺伝子を導入したBurkholderia glumaeおよびB. plantariiは,植物体上では恒常的には発光せず,発光による検出のためには植物を培地に包埋して培養する必要がある。しかし,培養しても発光強度は必ずしも十分でなかった。そこで,強い発光強度が得られる培地,温度条件について検討した。両種を16種類の培地で培養すると,半合成培地上での発光強度が合成培地での発光強度に優った。また,特に前者は1%グリセリン添加LB培地とLB培地で,後者は1%グリセリン添加PPGA培地とPPGA培地で,強く発光した。いくつかの培地におけるグリセリンと鉄の有無は,両者の発光強度に顕著な影響を及ぼした。測定前に20∼23°Cに保った菌体の発光が最も良好で,29°Cに保った菌体の発光は弱かった。
  • 磯田 淳, 門脇 義行, 荒瀬 栄
    1996 年 62 巻 2 号 p. 167-169
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1991年,島根県農業試験場水田のイネ品種ヒメノモチに橙黄色,大型不整形病斑(関口病斑)を形成する変異株が出現した。変異株から得た種子(170粒)を播種すると,162粒(95.3%)が関口病斑を形成し,8粒(4.7%)は形成しなかった。関口病斑形成(A系統)および無形成(B系統)イネからの種子をそれぞれ播種すると,A系統種子ではそのほとんどすべてが関口病斑を形成したが,B系統種子ではその形成の有無がほぼ1:3の比率に分離した。AおよびB系統イネのうち関口病斑を形成した個体から得た種子を播種後,2, 3イネ品種と交配し,F1種子の関口病斑形成の有無を調査した。その結果,関口病斑形成イネ相互の交配では調査したすべての個体で関口病斑が形成されたが,その他の正常イネ品種との交配ではまったく形成されなかった。以上の結果は,関口ヒメノモチに発生した関口病斑が関口朝日同様,劣性遺伝子により支配されている可能性を示唆した。
  • 佐藤 豊三, 上田 進, 飯島 章彦, 手塚 信夫
    1996 年 62 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アネモネおよびスモモ(プルーン)の両炭疽病菌は既にColletotrichum gloeosporioidesと報告されているが,病原の同定に疑問が生じたため,それらの再同定を行った。新病害報告のもととなった菌株を含め,アネモネでは静岡・愛媛県産菌株,スモモ(プルーン)では長野・岡山県産菌株を調査した結果,培地上の生育はC. gloeosporioidesより遅く,コロニー裏面が淡橙色から赤色を帯びる菌株が半数以上に及んだ。アネモネ炭疽病菌の分生子は無色,単細胞,紡錘形,長楕円形または円筒形で変異に富んでおり,スモモ(プルーン)炭疽病菌では紡錘形ないし楕円形であった。両病原菌の付着器は小型で,淡褐色または灰黒色,厚膜,棍棒形,倒卵形ないし楕円形で切れ込みはほとんどなく,C. gloeosporioidesのものとは明らかに異なった。以上の特性と形態より両病原菌はColletotrichum acutatum Simmonds ex Simmondsと同定されるべきものと判断された。両炭疽病の病原の訂正を提案する。
  • 亀谷 満朗, 鈴木 陽一, 花田 薫, 伊藤 真一, 田中 秀平
    1996 年 62 巻 2 号 p. 175-176
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1991年福山市で採集したジニアのモザイク症状株の病原ウイルスについて,宿主範囲,病徴,アブラムシ伝搬性,粒子の形態,血清学的類縁関係などを調べた。その結果,ウリ科植物に全身感染しないこと,N. glutinosaなどにひだ葉を生じること,モモアカアブラムシにより非永続的伝搬されること,径約30nmの球状粒子であること,抗tomato aspermy virus (TAV)血清と反応したことなどからTAVと同定された。TAVによるジニアのモザイク症状は未報告であり,病名をジニアモザイク病としたい。
  • 佐藤 守, 難波 成任, 且原 真木, 川北 弘, 三橋 渡, 河部 暹
    1996 年 62 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    レーザ・スタイレクトミー法とPCR法を組み合わせた新しいphytoplasma検出法の開発を行った。黄萎病(RYD)罹病イネを吸汁中のトビイロウンカの口針をレーザ光線で切断し,そこから流出する純粋な師管液をガラス細管に採取した。その師管液中のphytoplasmaのPCR法による直接検出を試みた。師管液をそのままで,あるいは95°C, 5分の熱処理を行った後,テンプレートDNAとして用い,また,2組のプライマー・ペアーによりphytoplasmaの16S rRNA遺伝子領域(1.37kbと0.75kb)をPCR増幅させた。その結果,罹病イネから採取したほとんどすべての標本から予想されたサイズのPCR産物が得られたが,健全イネ由来のものからは全く得られなかった。PCR産物の制限酵素切断パターンおよび塩基配列の決定により,それらはRYD-phytoplasmaの16S rRNA遺伝子由来のものであることが証明された。以上により,レーザ・スタイレクトミー法とPCR法を併用したこの新しい検出システムはphytoplasmaを鋭敏に,かつ特異的に検出出来ることが明らかになった。
  • 村井 雄一朗, 後藤 正夫
    1996 年 62 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Amaranthus cruentus(和名:アマランサス;仙人穀)の葉に黄色の暈を伴う褐色ないし赤褐色,直径数mmの円形斑点をつくる細菌病が発生した。病原細菌は普通寒天平板上で比較的生育の遅い,粘性の白色集落を形成した。この細菌はA. cruentusの葉に自然発病と同じ病斑を形成してコッホの原則を満たしたほか,モロコシに赤色条斑を,またシロクローバおよびアルファルファ上に黒色病斑を生じた。一方,アマランサス科のハゲイトウ,ヒユナ,ケイトウをはじめ17種の植物には病原性を示さなかった。本細菌の細菌学的性状は,ソルビトール分解能で陽性と陰性を示す菌株が存在したほかは,モロコシ条斑細菌病菌(Burkholderia (Pseudomonas) andropogonis)のそれと完全に一致した。これらの性状から本細菌をB. andropogonisと同定し,病名をアマランサス斑点細菌病と呼称することを提案する。
  • 白田 昭
    1996 年 62 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本の栽培ヒラタケから分離されたヒラタケ腐敗病細菌Pseudomonas tolaasii S8501菌株は,病原因子として毒素tolaasinを生産することが確かめられている。この菌株を供試してtolaasinとは異なる病原性因子の検索を試みたところ,本菌は毒性活性を有する揮発性成分を生産することが判明した。この揮発性成分は接種ヒラタケ上で多量に生産され,隣接する新鮮ヒラタケに腐敗を誘導することから,病原因子の一つであると判断された。そこで,この揮発性毒素をtovsinと仮称した。tovsinは植物種子の発芽を阻害し,きのこの糸状菌や植物,昆虫の病原糸状菌の伸長を阻害したが,細菌の増殖はあまり阻害しなかった。tovsinの活性の検出にはレタス種子の発芽阻害が適しており,1日で判定できた。また,tovsinの生産性はP. tolaasiiを接種するきのこや培地の種類によって著しく異なり,ヒラタケでは良く生産されたがエノキタケではほとんど生産されず,ペプトン液やキングB培地では比較的良く生産されたがPDAでは生産きれなかった。グルコースの添加は生産性を著しく阻害した。Tovsinは0°Cや-20°Cで捕捉され,アルカリ性で,刺激臭があり熱安定性であった。また,人工栽培室や収穫後詰められたパックの中に罹病ヒラタケが混在した場合,そこでtovsinが生産され発病を助長する可能性のあることを指摘した。
  • 古屋 廣光, 松本 勤
    1996 年 62 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1983年から1984年にかけてコムギ眼紋病の進展状況を調査した。本病原菌の分生子は調査した10月から根雪が始まる直前の12月中旬まで飛散しており,この時までに発病個体率は70%に達した。この場合の感染は子葉鞘の発病が葉鞘に達したのではなく,葉鞘地際部に直接飛散した分生子によるものと考えられた。その後,12週間にわたって10cm以上の積雪が継続した。融雪直後の発病は根雪直前に比べてかなり激化していたことから,積雪下で病斑は大きさが拡大するとともに内側の数枚の葉鞘にも進展する可能性が考えられた。稈における発病は根雪が終わってから5週間後に始まって急激に増加し,11週間後にはほぼすべての稈が発病するに至った。稈における発病の多くは根雪前の感染にもとづく葉鞘の発病が主要な感染源となっているものと推察された。
  • 原田 幸雄, 岩間 俊太, 福田 達男
    1996 年 62 巻 2 号 p. 199-201
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Puccinia chrysanthemi on Chrysanthemum morifolium has been described as a hemi-form rust with uredinial and telial states. However, spermogonial state was found on leaves of C. morifolium inoculated with teliospores and also on infected leaves of C. morifolium collected from fields in early summer. P. chrysanthemi, therefore, has a brachy-form life cycle and is an autoecious species. In teliospore germination, two kinds of basidia were observed; the one with a binucleate cell and two uninucleate cells, the other with four uninucleate cells. Both binucleate and uninucleate basidiospores were formed.
  • 茶谷 和行, 豊田 秀吉, 緒方 陽子, 是枝 一春, 吉田 健二, 松田 克礼, 辻野 恵一郎, 大内 成志
    1996 年 62 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In an attempt to produce the powdery mildew and black spot disease resistant rose plants (Rosa hybrida), we established an efficient inoculation system for precise evaluation of the resistance or susceptibility of rose cultivars to those diseases. In this system, the top leaflets of fourth trifoliate leaves generated from lateral buds of rose cuttings were used for inoculation with conidiospores of Sphaerotheca pannosa or Diplocarpon rosae. Two cultivars, “Paul's Pink” and “Magic”, were found to be strongly resistant to the powdery mildew pathogen and the “C line” of wild rose (R. multiflora) was highly resistant to both powdery mildew and black spot pathogens. These results suggest that the wild rose would be a useful gene source for providing a true disease resistance to commercially valuable cultivars of rose.
  • 1996 年 62 巻 2 号 p. e1
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top