1995年夏,高温・多湿,遮光環境下のオドンティオダ属(オドントグロッサムの属間交雑系)の一群の展開葉に急性の細菌性とみられる葉腐症状が発生した。病株から一種類の細菌のみが分離され,6菌株をオドンティオダ属の健全株に接種したところ, 35°C前後の湿室・暗黒下(2日間)で同様の症状が再現された。また,同条件下で本分離菌はラン科植物のミルトニア,エビネ,ツルラン,ホシケイランおよびサギソウに葉腐症状を引き起こしたが,シンビジウム,カンラン,カトレア,デンドロビウム,フウラン,ファレノプシスおよびパフィオペディルムには有傷接種でも明瞭な病徴を示さなかった。本分離菌はグラム陰性の周毛性桿菌で,各種細菌学的性質からいずれも腸内細菌科に属する
Enterobacter cloacae (Jordan 1890) Hormaeche and Edwards 1960と同定された。本病は高温に弱い植物の抵抗性が低下するような特殊な環境下で発生し,本菌はオドンティオダ属洋ランに対して日和見性の病原細菌と推察された。
E. cloacaeによるラン科植物への病害の報告は初めてであり,本病をオドンティオダ葉腐細菌病(bacterial leaf rot:新称)としたい。
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