日本植物病理学会報
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63 巻, 5 号
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  • 大藤 泰雄, 内藤 繁男
    1997 年 63 巻 5 号 p. 361-365
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    盛岡における,コムギ縞萎縮ウイルスの冬コムギへの感染とコムギ体内での増殖の季節的過程について調査するために,圃場試験を行った。コムギ縞萎縮病感受性品種ナンブコムギでは,汚染圃場に播種およそ2カ月後の11月30日に初めてウイルスが根より検出された。その後,ナンブコムギの根部・茎葉部におけるウイルス検出率およびウイルス濃度は,積雪下の5°C以下の温度条件で増加し,融雪前に高い水準に達した。同一圃場で通常の時期に播種したナンブコムギでは,発病率は96%であった。これに対し,抵抗性品種ハチマンコムギでは,ウイルス検出率は低く推移し,病徴も認められなかった。汚染圃場と未汚染圃場との間での相互移植試験では,春の病徴発現に有効なウイルスの感染は, 10月中旬から11月上旬に起こっていた。これらの結果から,感染適期に感染し冬期間低温下で増殖したウイルスにより,病徴出現前の高いウイルス検出率・濃度と引き続く高率の発病が引き起こされることが,示唆された。
  • 塚本 浩史, 郷原 雅敏, 津田 盛也, 藤森 嶺
    1997 年 63 巻 5 号 p. 366-372
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    水田雑草の中で最も重要な一年草のノビエ(Echinochtoa spp.)をその病原菌を接種することによって制御する研究を温室内で行った。Exserohilum monoceras, E. rostratum, Bipolaris sorokiniana, Curvularia lunata, C. aeria, Collototrichum graminicola, Pyricularia griseaおよUstilago trichophoraを日本で採集した罹病ノビエから分離した。各々の種の中で最も病原力の高い菌株を選抜した後,イヌビエ(E. crus-galli var.cnus-galli)の有芒種に対する除草活性を噴霧接種あるいは滴下接種によって比較した。それぞれの接種法で,E. monocerasおよびC. lunataの接種によって,残草量は80%以上減少した。滴下接種の方が噴霧接種より除草活性が高かった。 E. monocerasは,日本の水田で発生するイヌビエ(有芒種および無芒種),ヒメタイヌビエ(E. crus-galli var. ƒormosensis),タイヌビェ(E. oryzicola)およびコヒメビエ(E. colona)に対して,高い除草能力を示した。しかしながら,C. lunataはヒメタイヌビエおよびタイヌビエに対して低い除草能力しか示さなかった。
  • 切田 雅信, 阿久津 克己, 渡辺 雄一郎, 津田 新哉
    1997 年 63 巻 5 号 p. 373-376
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    千葉県のピーマン圃場から分離されたトウガラシマイルドモットルウイルス日本分離株(PMMoV-J, MAFF No.104032)の全塩基配列を決定した。PMMoV-Jは全長6357塩基からなり,互いにオーバーラップしていない4つのORFsをコードしていた。全長PMMoV-J cDNAから作製した感染型クローンは,幾つかの検定植物において親ウイルスと同様の反応を示した。PMMoV-Jの全塩基配列および推定されるアミノ酸配列を他のtobamovirusと比較をしたところ,スペインで分離されたpepper mild mottle virus(PMMoV-S)と塩基配列において7塩基,アミノ酸配列において3残基のみの違いが認められ,非常に高い相同性を示した。さらに, PMMoV-Jは既報告のPMMV-SとTMV抵抗性トウガラシを含む数種の検定植物において同一の反応を示した。以上のことからPMMoV-JはPMMoV-Sときわめて近縁であることが示唆された。
  • 村上 泰弘, 西野 友規, 平嗣 良, Ahmad YUNUS, 一瀬 勇規, 白石 友紀, 山田 哲治
    1997 年 63 巻 5 号 p. 377-380
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    植物関連細菌が持つ原核型iaa遺伝子の役割を調べるために,オリーブこぶ病菌(Pseudomonas syringae pv. savastanoi)のiaaオペロンを広宿主範囲ベクターpRK415に導入した組み換え体プラスミドpTOY1を構築し,これを根頭癌腫病菌(Agrobacterium tumefaciens A208)に導入した。A. t. A208は感染した植物細胞でのみIAAを生産するのに対し,組み換え体A. t. A208 (pTOY1)はそれとともに恒常的にIAAを生産する.組み換え体A. t. A208(pTOY1)を接種したトマト茎にはA. t. A208に比べて大きなクラウンゴールが形成され,さらにポテトディスクでもカルス誘導が促進された。一方,A. t. A208あるいはA. t. A208 (pTOY1)をポテトディスクに接種した後,植物防御応答に関連するphenylalanine ammonia-lyaseの酵素活性を経時的に調べると,A. t. A208よりもA. t. A208 (pTOY1)接種でポテトのPAL活性が低下した。したがって, A. t. A208 (pTOY1)の強病原性は, A. t. A208 (pTOY1)によって生産されたIAAによって感染現場で植物防御応答が抑制された結果であると考えられた。
  • 佐野 義孝, 棚橋 恵, 川田 学, 小島 誠
    1997 年 63 巻 5 号 p. 381-384
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    新潟県のダイズ圃場(品種:エンレイ)から分離したダイズモザイクウイルス分離株(SMV-CN)および感染大豆種子由来のSMV-B87分離株は,高橋らが報告した5系統(A, B, C, D, E)のうち, CおよびB系統に各々属した。また, Cho and Goodmanが報告した判別ダイズ8品種に対する病原性から, SMV-B87はG3系統に, SMV-CNはG7系統に最も近いことが判明した。2分離株の外被タンパク(CP)遺伝子を含むゲノム3'末端領域(約1260塩基)の配列を決定し,得られたデータを既報のSMV4分離株(N, G2, G7, CH)のものと比較したところ, B87とNおよびG2の分離株間で極めて高い相同性が認められ,推定されるCPのアミノ酸配列はB87とG2間で100%一致した。SMV-CNの塩基配列には比較的変異が認められ,いずれの分離株ともCP領域で91%, 3'非翻訳領域では87%から89%の相同性しか示さなかったが, CPのアミノ酸配列は95%から97%の相同性を示した。したがって,ダイズ品種における病原性の相違にかかわらず,各SMV分離株のCPが,特にアミノ酸レベルで高く保存されていることが確認された。
  • 秋山 浩一, 大口 富三, 高田 楝吉
    1997 年 63 巻 5 号 p. 385-387
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリつる割病菌(F. oxysporum f. sp. cucumerinum)を5-アザシチジン存在下で24時間培養し,その後, bud cellを分離してPSA培地上にコロニーを作らせた。このコロニーを培養してキュウリに対する病原性を調べたところ,萎ちょう症状を起こさない変異株が得られた。これら病原性変異株8株について調べた結果, PSA培地上でのコロニーが野生型に比べて小さいもの,あるいは, PSBで培養した時のbud cell形成能が低下したものが数株存在した。しかし,乾燥重量から判断される生育度とbud cellの発芽率は親株とほぼ同じであった。また,それらの病原性の変異は遺伝的に安定であった。5-アザシチジンはDNAメチル化の阻害剤であり,動物,植物,糸状菌などで特定の遺伝子の発現に遺伝的に安定な影響を与えることが知られている。これらのことは, F. oxysporumの病原性に, DNAメチル化による遺伝子発現の調節機構が関与することを示唆している。
  • 勝部 和則, 赤坂 安盛
    1997 年 63 巻 5 号 p. 389-394
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウ萎ちょう病発生土壌で健全に生育するホウレンソウの根面から分離した非病原性F. oxysporum S3HO3菌株はホウレンソウ萎ちょう病を発病抑制できるが,土壌施用効果は収穫期まで持続しなかった。これを改善するために,耕種的に本病を軽減できる移植栽培を組み合わせ,ホウレンソウの苗に本菌を前接種した。この場合,非病原性F. oxysporum S3HO3菌株分生子懸濁液を,播種前の床土1g当たり106 cfuになるように混和すると防除価96.3で発病抑制効果が最も高く,収穫期まで持続した。一方,育苗中に本菌分生子懸濁液(107 bud-cells/ml)を灌注接種(床土重量の1/10容(v/w))する方法では,播種10日目(移植5日前)に灌注接種した場合の防除価は87.1で,これより早い時期の灌注接種よりも発病抑制効果が高かった。この生育中の灌注接種は,作業上簡便であるが,防除価は播種前の床土に混和接種する方法には及ばなかった。
    非病原性F. oxysporum S3HO3菌株はホウレンソウをはじめ,キュウリ,メロン,トマト,ナバナ,シュンギク,ミツバなど6科17作物に対して病原性を示さず,他の作物への影響がないと考えられたので,農家圃場において移植栽培との組み合わせによる萎ちょう病防除試験を実施した。夏取りの作型において本菌株を播種前に混和接種した床土で育苗したホウレンソウ苗を萎ちょう病汚染圃場に移植した結果,本法は直播(慣行栽培)に比較して発病を顕著に抑制し,移植単独の発病軽減を上回り,太陽熱消毒と同等の防除効果があった。
    以上のことから,非病原性F. oxysporumと移植栽培を組み合わせたホウレンソウ萎ちょう病の防除法は実用的であると考えられた。
  • 森脇 丈治, 大久保 博人, 堀江 博道, 粕山 新二, 佐藤 豊三
    1997 年 63 巻 5 号 p. 395-398
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Isolates of Colletotrichum higginsianum Sacc. and C. gloeosporioides (Penz.) Penz. et Sacc. were grouped into three genotypic species based on arbitrarily primed PCR with primer of the repetitive motifs (CAG)5. One group consisted only of C. higginsianum isolates. The other two groups contained isolates of C. gloeosporioides and excluded C. higginsianum. These results may support Sutton's consideration that C. higginsianum is not a synonym of C. gloeosporioides.
  • 草刈 眞一, 岡田 清嗣, 瓦谷 光男
    1997 年 63 巻 5 号 p. 399-402
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Gray mold disease of clematis was found from 1995 to 1997 in the garden of Osaka Agricultural Forestry Research Center. Typical symptoms were leaf spot and tip burn of leaf, with the spots sometimes having zonate rings. Many spores appeared on the leaf spots under humid conditions. A Botrytis species was consistently isolated from the infected leaves. The conidiophore of the fungus was apically branched. The conidia were about 8-16×5-10μm (mostly 9-13×6-8μm) under SEM, many micro-projections appeared on the surface of conidia. The fungus infected eggplant and tomato leaves and strawberry fruits. Symptoms on inoculated plants were similar to those of gray mold disease caused by Botrytis cinerea. The fungus from clematis was identified as Botrytis cinerea Persoon: Fries based on morphological and cultural studies.
  • 河野 敏郎, 高橋 義行
    1997 年 63 巻 5 号 p. 403-405
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The flocculation test using high density latex (HDLF) which gives a reaction figure very similar to that of sensitized sheep red blood cells was established for simplified detection of rice stripe virus from infected rice plants and viruliferous insect vectors. Furthermore, six other plant viruses such as rice dwarf virus, odontoglossum ringspot virus, cymbidium mosaic virus, turnip mosaic virus, carnation mottle virus and cucumber mosaic virus were detected by HDLF of each infected host. These dilution end points for the positive reaction of sap were 1:8×103 to 1:16×103. Though weak non-specific reactions of HDLF were observed in sap from some healthy plants, they could be prevented by diluting sap more than 1:100.
  • 道後 充恵, 豊田 秀吉, 松田 一彦, 備後 美紀, 直木 優子, 加藤 靖也, 松田 克礼, 反保 宏行, 大内 成志
    1997 年 63 巻 5 号 p. 406-408
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A specific growth inhibitor of Pseudomonas solanacearum, 3-indolepropionic acid, was tested for its effect on bacterial wilt of tomato in a hydroponic culture system. The compound had no apparent adverse effect on tomato plants at concentrations below 10μg/ml and completely protected tomato plants from wilting at 5-10μg/ml in the presence of 108cfu/ml of the pathogen. The compound was found to be glucosylated in tomato plants, suggesting that it could be used as a control agent of bacterial wilt for large scale hydroponic tomato culture.
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