1995年8月,東京都東村山市の施設でペチュニア(
Petunia×
hybrida Vilm.)に,花や茎葉が急速に腐敗する激しい障害が発生した.初め花弁に水浸状の病斑が生じ,すぐに腐敗して萎れ,次いでがく,茎,葉へと急速に進展し,暗緑色水浸状に軟化腐敗し,茎枯れ,葉枯れを起こした.罹病部には小虫糞状の微小な黒粒(単胞子性胞子のう)と汚白色の菌糸が豊富に形成された.この黒粒は,灌水マット上や地表面の花殻にも認められた.罹病部からは,PDA培地上で,白色から黄褐色をおびた汚白色となり,黒色の小粒を菌そう全面に散生する糸状菌のみが分離された.分離菌株を接種したペチュニア,エンドウおよびオシロイバナは,自然発生のペチュニアの場合と同様の病徴と標徴を示し,罹病部からは接種菌が再分離された.病原菌は単独培養で,単胞子性胞子のうと胞子のう胞子を,IFO 5985菌株との対峙培養で接合胞子を形成した.接種試験の結果および形態的特徴から,病原菌を
Choanephora cucurbitarum (Berkeley & Ravenel) Thaxterと同定した.病原菌の菌そう生育は10∼40°Cで認められ,適温は30°C付近であった.本病をペチュニアこうがいかび病(Choanephora blight of common garden petunia)と命名することを提案する.
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