全国有数のジャガイモ産地である鹿児島県および長崎県のそうか病菌の菌種と病原性およびその遺伝子的特徴を明らかにした.鹿児島県は
S. turgidiscabies,
S. scabieiの2種がそうか病菌の主体であったが,長崎県は
S. scabieiが多数を占め,両県とも
S. acidiscabiesの発生は一部であった.また,分離株の病原性とPathogenicity island(PAI)の関連を調査したところ,病原性を示した菌は
S. scabiei,
S. turgidiscabies,
S. acidiscabiesのいずれかの菌種となり,すべての菌株がサクストミン合成遺伝子(
txtAB)を保有していた.ほとんどの菌株は
txtAB,トマチナーゼ遺伝子(
tomA)とnecrosis-inducing protein遺伝子(
nec1)を保有していたが,長崎県および佐賀県から分離された
S. acidiscabies菌株については
txtABのみで,
tomAと
nec1を欠いていた.また,病原性
S. scabieiについては16S-23S rRNA ITS領域で大きく2つの遺伝子型(TタイプとJKタイプ)に分けられた.また,一部の菌株では2種類のITSを保有するタイプ(B)も存在することが明らかとなった.特に,
S. scabieiのメラニン非産生株はすべてTタイプに属していた.さらに,菌種ごとに菌の形態と生理学的性質を調査した結果,いずれの菌種も基準菌株およびこれまで報告された菌株とほぼ一致した.
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