片頭痛および筋収縮性頭痛の心身医学的特性を明らかにする目的で, 心理的側面, ストレスに対する反応性, 自律神経機能の側面から検討を行った。 さらに精神生理学的治療手段としてのBiofeedback療法を施行し, その有用性および心理的因子との関係につき調査した。 心理テストとして, Manifest Anxienty Scale(MAS), Self-rating Questionnaire for Depression(SRQ-D), Maudsley Personality Inventory(MPI), Egogram Check List(ECL), Yatabe-Guilford Personality Test(YG test)を施行した。 ストレスに対する反応性を, Mirror Drawing Test(MDT)を用いて, task performanceを検査し, 状況不安としてとらえた。 自律神経機能検査法にはMicrovibration(MV)を採用した。1) 片頭痛に比し筋収縮性頭痛では, MAS, SRQ-D, MPIのN項目で有意に高値を示した。両疾患群とも低不安群のエゴグラムは, ほぼ同様のパターンを示し, NP-dominant FC<AC型であった。 高不安群のエゴグラムは両者に違いがみられ, 片頭痛ではCPが高く, 筋収縮性頭痛ではACが高値を示した。 自律神経機能に問題を有すると考えられた症例は, 両疾患群とも約60%を占め, 差は認められなかった。 状況不安としてのMDTに異常を示したものは, 片頭痛に比し筋収縮性頭痛に有意に多く, 73.7%であった。2) Biofeedback療法の有効率は, 片頭痛に対する皮膚温フィードバック法では84.2%に有効であり, 筋収縮性頭痛に対するEMGフィードバック法では70.3%であった。 biofeedback有効例および無効例の心理的側面を比較検討すると, YG testで外向性格のもの, MASでは低不安のもので有効率が高かった。 抑うつ尺度では高度抑うつ群で最も有効率が低かったが, 有効群, 無効群の間に有意差は認められなかった。これらのことから, 片頭痛および筋収縮性頭痛では, 自我状態や自律神経機能の面で共通する点が多いことが示唆された。 一方, 不安, 抑うつの傾向やストレス状況下におけるtesk performanceに相違が認められ, これらの因子が, 両疾患の精神生理学的および症候学的特徴の形成に関与していることが想定された。 さらにbiofeedback療法の有効性を確認するとともに, その治療過程に心理的因子が関与していることが示唆された。 近年, 両疾患の精神生理学的な類似性が論議されているが, 総合的な立場から比較検討した報告は少なく, 今後さらに精神生理学的研究をはじめとし, 治療学的側面も含めた幅広い研究が必要なものと考えられた。
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