わが国の21世紀における心身医学は, 医学の細分化, 技術化と同時に疾病構造の変化が進んでいることから, その役割はますます増すであろうことが推察される.文明化に伴って自動化や機械化が進み, 同時に社会, 職場システムの変化による生活習慣病と新しいタイプの疾患, たとえばeating disordersやpanic disorders, social phobiaなどが増加している.これらは多因子疾患であるので原因の特定が困難で, 治療にも抵抗し, 慢性の経過をたどることが多い.それゆえ治療においても心身相関の考え方に基づく教育治療的アプローチが必須となるべきである.そくにanorexia nervosaは心身症としてのアプローチが必要であると考える.ここでは薬物治療に抵抗している冠攣縮性狭心症, 潰瘍性大腸炎の症例を呈示した.2例とも心身医学的アプローチ(自律訓練法, 脱感作法, 絶食療法, group therapyなど)を併用したことによって改善した.また気管支喘息の経過中, 攣縮性狭心症を合併, 薬物治療に抵抗し, ついに致死状態に至った症例を紹介した.この患者の重症化の原因は心理・社会因子の配慮の欠如であることが明らかであった.21世紀は高齢化社会に突入するが, 機能性疾患など慢性に経過する疾患の患者はさらに増加することが予想される.したがって心身相関の考え方は病気の診断, 治療のみならず, 健康を維持・増進させる健康医学においても今後一層普及させるべきであると考える.
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