近年虐待,家庭内暴力の報道が増加しているが,心療内科を受診する患者の多くは不安,うつの症状を呈し,重症難治例の患者に被虐待歴がみられることも少なくない心身症の発症,持続に被虐待歴の関与も考えられ,不安,うつとの関連性を中心に調査した九州大学医学部心療内科を初診した外来患者564名に対し,心理テストとして不安尺度はSTAI-I,II(状態特性不安)を,うつ尺度はSDSを用い,自傷行為およびその衝動の割合を調べ,小児期の身体的被虐待歴の有無で分けた2群において,おのおの比較検討した身体的虐待(physical abuse)を受けた割合は,うつ病性障害12 7%,摂食障害16 3%,疼痛性障害10 8%,不安障害16 7%であり,また過敵性腸症候群(IBS)12 5%,functional dyspepsia(FD)51%であったうつ病性障害,不安障害においては, abused群かnon-abused群よりSTAI-I,IIが有意に高かった(p<0 05).自傷行為およびその衝動性の割合は,うつ病性障害,疼痛性障害,不安障害においては, abused群がnon-abused群より有意に高かった(p<0 0001)今後,性的虐待(sexual abuse)を含めた虐待についてのグローバルな心身医学研究が,わが国においても推進されていく必要性がある
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