心身医学
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56 巻, 3 号
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巻頭言
第56回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
シンポジウム/がん医療における心身医学の役割~多職種の立場から~
  • 小山 敦子, 大島 彰
    2016 年 56 巻 3 号 p. 212
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
  • —臨床医の立場から—
    三浦 勝浩, 石風呂 素子, 三輪 雅子, 内山 佳代子, 丸岡 秀一郎, 村上 正人
    2016 年 56 巻 3 号 p. 213-216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    近年の抗腫瘍薬の開発は目覚ましい進歩を遂げ, 切除不能進行がんに対する薬物治療の成績は飛躍的に向上しているが, 従来のがん診療は臓器別の生物学的側面のみに重点が置かれているため, 多様化するがん診療現場のニーズを十分に満たしているとは言い難い. よって臓器横断的ながん治療の総合的知識とエビデンスに基づく適切な診療の実践はもとより, がん患者の身体的, 心理的, 社会的, 霊的痛みに対して最適な治療を提供する能力をもつオンコロジストの養成が急務である. そのためには従来のカリキュラムに加え, 心身医学や臨床心理学の知識とそれらを生かしたコミュニケーション技術の向上, ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践などを学習目標に組み込んだ, 全人的医療人の育成が必要である. 本稿ではがん治療医の立場から, 緩和ケア, コミュニケーション, 治療的自己といったキーワードを軸にがん診療における心身医学のポテンシャルについて総説する.
  • —リエゾンナースの立場から—
    宮田 郁
    2016 年 56 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    2007年4月にがん対策基本法が施行され, がんの心身医学的アプローチの基本である精神腫瘍学を取り巻く状況は質量ともに激変している. 心身医学的ケアにおいて, 患者・家族に最も近い場所で, 24時間かかわることができる看護師が担う役割は大きい. しかし, 多くの情報の中から, 患者・家族の心身の状態をアセスメントし, 多職種との連携の中で看護の専門性を活かした心身医学的ケアを実践することには, ある程度の訓練が必要となる. 心と身体をつなぐケアを専門領域とするリエゾン精神看護専門看護師は, がん領域においても, その専門性を活かすことができるが, 患者・家族と連続的なかかわりができる立ち位置にいることは少ない. したがって, 専門看護師としての6つの役割 (実践・コンサルテーション・調整・倫理調整・教育・研究) からも, 心身医学的ケアにおいては常に自己研鑽し, 看護師 (ジェネラリスト) に伝えていく重要な役割を担うことが期待される.
  • —ホスピス医師の立場から—
    中島 美知子, 中島マリア 美知子
    2016 年 56 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    中島医院において終末期在宅緩和医療を受け死亡した患者 (うち, がん患者約90%) における安らかな看取りの成功要因を探るため, トータルペインの4要因 (身体的, 精神的, スピリチュアル, 社会的) を評価基準とし在宅緩和医療の質の調査を実施した. その中で心身医学的役割であるスピリチュアルペインのケアに注目する. 1995年4月~2014年4月末まで19年間の985症例の, 遺族を対象とした文書によるアンケート調査を実施し, 回収率は31.6%であった. 「看取りが大変安らか/安らかだった」が91.8%であった. トータルペインの各要因別の苦痛緩和率はスピリチュアル55.7%, 精神的73.5%, 身体的85.4%, 社会的88.8%であった. 「看取りが安らかであること」と「スピリチュアルペインの緩和」には相関関係が示され (p<0.001), スピリチュアルペインが緩和されるとがん末期患者は安らかに死ぬことができることを立証した. あわせて遺族の記述より「スピリチュアルペイン緩和」の具体的内容を考察する.
  • —ホスピス病院付き牧師の立場から—
    中島 修平
    2016 年 56 巻 3 号 p. 231-242
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    症例 (85歳女性) は骨肉腫下肢切断術後末期の深刻な幻肢痛と幻肢感覚で1年余苦悶した. 安らかな看取りのため在宅ホスピス移行後, オピオイドなどによる鎮痛治療は効果なく, 34病日に病院付き牧師の臨床牧師カウンセリングによるスピリチュアルケアを導入した. トータルペインの視点から顕著なスピリチュアルペイン要因であった罪責感, 喪失感, 死の恐れなどに注目し, 祈り, 讃美歌, 死生観認知のシフトなどのスピリチュアルケアの源泉を適用した. その結果, 幻肢痛, 幻肢感覚ともに著明に改善し, その後104病日間の高QOL期を過ごして安らかに死亡した. 本症例はスピリチュアルケアの倫理原則をも示しており, 今後がん医療における疼痛治療での心身医学的なスピリチュアルケアの方法, 効果, 作用機序などさらなる研究の必要を示唆している.
  • —心理士の立場から—
    厚坊 浩史
    2016 年 56 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    がん患者は, 診断, 治療, 療養など, 多くの要因に苦しめられる. わが国では, 緩和医療における研修会などで精神的苦痛への対応を取り上げる機会が増えており, 医療スタッフによる患者の精神的支援レベルは向上していると思われる. 一方, 従来精神的健康度の高くない患者 (例えば精神疾患や発達, 知能の問題などを抱える患者) ががんに罹患することで, 希死念慮や自殺関連行動といった問題を引き起こすことがある. 疼痛への慣れや身近な人の死, 居場所のなさ, 人の迷惑になっている, などの精神的負担はQOLが低下し, 精神的な問題が増強して知覚される. 精神医療スタッフは, このような患者に対して専門的な支援を行うという重要な役割を担うことが求められる.
ワークショップ/災害医療に貢献する心身医療
  • 村上 典子, 藤田 之彦
    2016 年 56 巻 3 号 p. 249
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
  • 河嶌 讓
    2016 年 56 巻 3 号 p. 250-256
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    東日本大震災において, 災害精神保健医療へ対応をするため多くのこころのケアチームが被災地で活動した. しかし, 全体の活動実績を分析すると, チームの活動内容や実績に大きな差が出たり, 必ずしも現地のニーズに対応できていなかったりと, 一部に非効率的な実態があることが明らかになった. これを受け, 厚生労働省は2013年4月に災害派遣精神医療チーム (Disaster Psychiatric Assistance Team : DPAT) を設立した. DPATが立ち上がったことで, これまでの震災時などの精神保健医療における活動内容が大きく変わるわけではないが, 公的な組織としての枠組みや統一した活動マニュアルを策定したことで活動方法が明確になることにより, DMATやJMAT, 日本赤十字社などの他の医療機関, 自衛隊, 消防, 警察などの他省庁との連携が効率的に行われ, 被災された方々, 支援している方々への適切な支援につながることが期待される.
  • —日本小児心身医学会の活動からみえること—
    福地 成
    2016 年 56 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    日本小児心身医学会が行った東日本大震災後の被災地支援の実情を紹介した. また, 一つの学会による支援に限定せず, 全般的な専門職団体が行った被災地支援のあり方について改めて考察を行った. 有効に活用された支援とそうではないものがみられ, その違いは被災地内のニーズを正確に把握することができたか否かにかかわっていると考えられた. 発災直後に計画された支援は, 専門職団体としての専門性の発揮に偏る傾向がみられた. 一方, 当初被災地で求められた支援は, 公衆衛生全般にかかわることができる「なんでもやる医師」であった. 被災地ではあらゆる事柄が時間経過に伴って変遷しており, 支援する側はその変化を正確に察知して, 時機に沿った支援を提供する必要があると考えられた. 外部支援者を大量に受け入れることが既存の地域システムへの脅威ととらえる力動が働き, 外部支援に強い抵抗感を抱くこともあると考えられた.
資料論文
  • —心療内科受診者におけるストレス反応とエゴグラム (SGE) の関連—
    今津 芳恵, 松野 俊夫, 村上 正人, 林 葉子, 杉山 匡
    2016 年 56 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    心療内科に通院中の患者233名を対象に, ストレス反応を測定するPublic Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム (以下, PHRF-SCL〔SF〕) と自己成長エゴグラム (以下, SGE) を実施し, その関連を検討した. SGEの得点のクラスター分析から, 「A高位Wタイプ」, 「A低位Mタイプ」, 「FC低位Vタイプ」, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」が抽出された. それぞれについて, PHRF-SCL (SF) の下位尺度ごとに偏差値を算出し, 一元配置分散分析により平均の差を検討した. その結果, 「FC低位Vタイプ」はストレス反応が他のタイプより高く, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」は他のタイプより低かった. PHRF-SCL (SF) とエゴグラムとの関連が認められ, その関連性は先行研究と一致するものであり, PHRF-SCL (SF) の構成概念妥当性の一端が検証された.
連載:初心者・心理職のための臨床の知 ここがポイント!~病態編~
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