心身医学
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57 巻, 2 号
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巻頭言
特集/緩和医療学
  • 吉内 一浩
    2017 年 57 巻 2 号 p. 114
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー
  • —総論にかえて—
    金井 良晃
    2017 年 57 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    緩和医療すなわち緩和ケアは, がんのみが対象ではなく, 終末期のみが対象ではなく, quality of lifeの改善が目的であり, 死期を早めるような行為ではないと定義されている. Physical, psychological, social, spiritualの多面的要素で構成される 「全人的苦痛」 が緩和医療の基礎となる概念であり, 4つの苦痛は互いに影響しあうと理解すべきである. ホスピスから始まった緩和ケアは現在 「疾患の早期から適応となる」 とされ, ホスピスケアは終末期緩和ケアのひとつの形ととらえることができる. 国内では施策によってがん緩和ケアが浸透はしたが, がんと診断された時からの緩和ケア, 緩和ケアの質向上, がん以外の疾患に対する緩和ケアが課題となっている.

  • 松岡 弘道
    2017 年 57 巻 2 号 p. 124-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    がん対策基本法が制定されて, 10年が経過した. 「緩和医療の推進」 は国の施策であるが, 中でも 「疼痛緩和」 は重要なテーマの一つである. 心身医学を専門とするわれわれが, 「疼痛緩和」 に寄与できる点は多いと考える. 本稿では, 一般的な疼痛緩和に加え, 心身医学が役立てるという点も意識して執筆した. 日々の臨床の一助となれば幸いである.

  • 松田 能宣
    2017 年 57 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    呼吸困難は主観的な症状であり, がん患者において非常に頻度の高い症状である. 評価の際には呼吸困難を引き起こしている原因をしっかり特定することが重要であり, 症状の程度についてはNumerical Rating Scaleなどの患者の主観的な評価尺度を用いて評価を行う. 治療については可能であればがんに対する放射線治療や抗がん剤治療など, 原因に対する治療を行う. 対症療法としては酸素療法, 薬物療法などがあるが, 薬物療法の中ではモルヒネが第一選択薬である. 呼吸困難に関連する病態として悪性胸水, 死前喘鳴についても述べる.

  • 原島 沙季, 吉内 一浩
    2017 年 57 巻 2 号 p. 144-151
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    がん患者は病状進行や治療に関連してしばしば消化器症状による苦痛を経験し, 治療や患者の生活の質に影響を及ぼす. がん患者の代表的な消化器症状としては, 嘔気・嘔吐, 便秘, 腹水がある. 各症状のマネジメントにおいては, 原因・病態の評価を適切に行い, 薬物療法, 非薬物療法を組み合わせた対応が重要である.

  • 北田 志郎
    2017 年 57 巻 2 号 p. 152-159
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    在宅での医療行為は通常病院で行われるものより制限されることが多いにもかかわらず, 多くの在宅患者は病みつつも健やかに生を全うする. 生活の場である在宅という場そのものが, 患者のレジリアンス発現因子となっていると考えられる. レジリアンスの発現に資する医療者のかかわりには患者家族への生活支援が含まれるが, 特に 「患者の過ごす場所」 をめぐる意思決定支援と, ホスピストライアングルなどの病診連携体制を含めた環境調整が重要である. また, 病院での緩和ケアチームに精神科医がいるように, 在宅においても心身統合的に関与する精神科医が存在することには意義がありうる.

原著
  • 尾辻 美沙, 佐藤 菜保子
    2017 年 57 巻 2 号 p. 160-172
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    背景 : 音楽のもつリラクセーション効果やストレス軽減効果から, 医療現場でもBGMが活用されている. 本研究は, 聴き手の精神的健康状態と状況, BGMの嗜好性の関連を検証し, 医療現場における効果的なBGM選択に関し検討した.  方法 : 大学生を対象にCES-Dと, BGMの嗜好に関する質問で構成する質問紙調査を実施した (有効回答数100名).  結果 : 抑うつ傾向の高い人ほどBGMの嗜好性が低く (p<0.05), オルゴール, 自然の音, 陽気で楽しげな曲, 情熱的で激しい曲は聴き手の状況により, 嗜好性が異なった. また, 元気を出したいときほど速いテンポ, 不安なときや夜眠れないときほど遅いテンポを好む傾向にあった (p<0.0001).  結論 : 聴き手の精神的健康状態, 置かれた状況によってBGMの嗜好性は異なることが明らかとなった. 病院内の環境や患者の状況により, BGMのテンポや音の種類, 曲想を考慮する必要性がある.

  • 岩垣 穂大, 辻内 琢也, 増田 和高, 小牧 久見子, 福田 千加子, 持田 隆平, 石川 則子, 赤野 大和, 山口 摩弥, 猪股 正, ...
    2017 年 57 巻 2 号 p. 173-184
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究は, 原発事故によって福島県から東京都・埼玉県に避難されている高齢者の個人レベルのソーシャル・キャピタル (以下, SC) とメンタルヘルスの関連を明らかにすることを目的とした. 調査は2014年3, 4月に実施し, 3,599世帯を対象に自記式質問紙調査を行った. 回収できた772世帯分 (回収率21.5%) の中から, 65~85歳までの高齢者229名分を分析の対象とした. 多重ロジスティックモデルにより, 個人レベルのSCとストレスとの関連について分析したところ, 性, 年齢, 経済状況, 持病の有無, 転居回数を調整しても, 近隣住民への信頼・助け合いの意識などの認知的指標や近隣であいさつを交わす人数, 趣味・娯楽活動への参加頻度といった構造的指標が低い群ほど, 高いストレス状態にあることが統計学的に有意に認められた. したがって, 豊かなSCを醸成することによりメンタルヘルスを向上させる支援が今後重要になると考えられる.

英文誌から
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