心身医学
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60 巻, 1 号
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巻頭言
特集 ストレス関連疾患の合併症状
  • 金澤 素
    2020 年 60 巻 1 号 p. 19
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 研, 佐竹 立, 櫻庭 美耶子, 福田 眞作
    2020 年 60 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    機能性消化管障害である機能性ディスペプシア (FD) と過敏性腸症候群 (IBS) はお互いに合併しやすく, 内臓知覚過敏や消化管運動異常, 心理的要因の影響, 急性胃腸炎後の発症例など類似する病態も多い. 心理面では不安, 抑うつの合併が多く, 消化管外症状としては, 線維筋痛症, 慢性疲労症候群などとの併存が多いと報告されている. また, 機能性消化管障害では, 同様の症状を有する器質的疾患の除外が重要であり, それぞれの鑑別診断についても記述した.

    本学の健康増進プロジェクトにおいて, 一般住民を対象としたアンケート調査でFD症状群とIBS群を抽出した. FD症状群は非FD群と比較して有意にCES-Dのスコアが高く, IBS群では, 非IBS群と比較して, CES-Dスコア, ピッツバーグ睡眠質問票の総合得点が有意に高く, 抑うつ傾向, 睡眠障害の合併が示唆された. また, 両群は高率にoverlapしており, それらは抑うつ傾向が強かった.

  • 佐藤 康弘, 福土 審
    2020 年 60 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    神経性やせ症, 神経性過食症に代表される摂食障害は, 多様な合併症状を呈し, 治療をさらに困難にしている. 神経性やせ症患者では, 極度の栄養不足と脱水から, 肝機能障害, 腎不全, 便秘, 脱毛など, 全身に多様な症状が出現する. 中でも低血糖, 電解質異常に起因する不整脈, 治療介入初期の再栄養症候群は死につながる危険性がある. 成長期における身長増加の停滞, 骨粗鬆症は体重回復後も影響が残る可能性がある. 過食排出型患者では自己誘発嘔吐によるう歯や, 嘔吐, 下剤, 利尿剤乱用による電解質異常が深刻な問題となる. 一方精神面では神経性やせ症でも神経性過食症でも不安, 抑うつなどの精神症状や, パーソナリティ障害の合併を認めることは多く, 治療上の障害となっている. ED患者の治療には, 心身にわたる合併症状への適切な対処が求められる.

  • 北見 公一
    2020 年 60 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    慢性頭痛をストレス関連障害として心身医学的にとらえるための解説を述べた. 慢性頭痛は心身症であり, 性格傾向や痛みの認知機能と深い関連がある. 緊張型頭痛や片頭痛などの一次性頭痛が慢性化する機序, 特に中心となる睡眠障害と傍脊柱筋筋膜痛およびその背景にあるストレス耐性について解説した. 慢性頭痛をストレス関連障害として診断治療するためには, 診断基準に準拠するのみならず, ナラティブな個人史を重視し, 心身医学的アプローチが必要不可欠であることを述べた.

  • 安野 広三
    2020 年 60 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    疼痛性障害は1つまたはそれ以上の部位における疼痛が臨床像の中心であり, 著しい苦痛や機能障害をきたし, その発症や経過に心理的要因の関与があると判断される病態をいう. この病態に相当する病態名はいくつかあるが, その1つに機能性身体症候群がある. 機能性身体症候群は痛みを中心とする身体症状群を呈する機能性疾患を指し, 過敏性腸症候群, 緊張型頭痛, 線維筋痛症などが含まれる. 近年, 機能性身体症候群の病態に中枢性感作が大きな役割を果たしていることが推察されている. 中枢性感作とは中枢神経のメカニズムにより疼痛の増強が起こる病態である. 本稿では疼痛性障害の合併症について, 機能性身体症候群および中枢性感作の観点から検討してみる.

  • 竹内 武昭
    2020 年 60 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    うつ病は2030年に疾病負荷 (Global Burden of Diseases) 1位になると予想される疾患であり, 身体疾患との関連が注目されています. 鑑別疾患として甲状腺機能低下, 副腎機能低下, 認知症, パーキンソニズム, 睡眠時無呼吸症候群, 鉄欠乏, 亜鉛欠乏, 双極性障害, アルコール依存症などが重要です. うつ病は慢性疾患との併存が多くbio-psycho-socialな対応が必要です. 併存疾患として脳卒中, 糖尿病, 冠動脈疾患が多いと報告されています. 脳卒中との併存では希死念慮に特に注意が必要で, 三環系抗うつ薬やSSRI (selective serotonin reuptake inhibitors), SNRI (serotonin and norepinephrine reuptake inhibitors) に運動療法の追加が効果的とされています. 糖尿病との併存では薬物療法に認知行動療法を追加すると効果的とされています. 心不全とうつ病の併存ではSSRIの使用には明確な医学的根拠が不足しており, 認知行動療法の有用性が示唆されています.

症例研究
  • 河西 ひとみ, 関口 敦, 富田 吉敏, 船場 美佐子, 本田 暉, 樋上 巧洋, 藤井 靖, 安藤 哲也
    2020 年 60 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    目的 : 過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) と自己診断して受療する患者の中には, 腸管ガスに困難感をもつ一群 (いわゆる, IBSの 「ガス型」 ) が存在する. われわれはIBS患者を対象に, 内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (cognitive behavioral therapy with interoceptive exposure : CBT-IE) の日本語版を作成し, 臨床介入研究でIBSの重症度 (IBSSI-J) やQOLが7割以上の患者で改善されることを報告してきた. そこで, IBSの診断基準を満たすものの, 腸管ガスの訴えが優勢な患者にIBS症状の改善を目的にCBT-IEを適用した症例を経験したので報告する.  症例 : 症例は20代女性, IBS混合型. 主訴は 「排便が頻回にある」 「多量の腸管ガスの貯留と排ガス」 . 数年前から複数の他院に通院し薬物療法を受けたが改善せず, X病院に紹介され受診した.  経過 : CBT-IEは全10回のセッションからなり, 心理教育, 認知再構成, 内部感覚曝露, 現実曝露などから構成されている. 介入前のIBSSI-Jの得点は, 325 (重症) であり, 介入終了時には355 (重症) であった. IBS症状は改善せず, 腸管ガスに関する訴えも残った.  考察 : 面接全体を通して腸管ガスの臭いに関連した訴えが続いた. 患者は認知再構成に拒否感を示し, 面接はCBT-IEの内容から逸れてしまった. 腸管ガス症状に自己臭恐怖が併存する患者は認知の変容が困難であることがしばしば経験される. 自己臭恐怖には森田療法が有効という症例報告があり, このような病態には, ①認知の内容を直接変容させない森田療法的技法と, ②腹部膨満への有効性が示されている瞑想の両方が含まれる第3世代のCBTのAcceptance and Commitment Therapyの適用も考えられ, 検証の余地がある.

連載 心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ
地方会抄録
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